「イリヤの空、UFOの夏」の既刊情報&感想
著者 秋山瑞人 レーベル 電撃文庫

表紙画像のリンク先はbk1です。

イリヤの空、UFOの夏 その1 タイトル イリヤの空、UFOの夏 その1
初版 2001/10/25
ISBN 4-8402-1944-3
感想 この作者の本を先に何冊か読んでおいて正解でした。 いきなりこのシリーズを読んだら、おそらく戸惑ったと思います。 ドタバタのラブコメで始まって、そのまま1巻が終わってしまっていて、 どういう世界観で、作者のメッセージが何なのかはっきりしていないですからね。
でも。でもですよ。
「E.G.コンバット」と「猫の地球儀」を書いたこの作者なんですから、 裏に凄まじいバックボーンがあるのは間違いないんです。 単純にラブコメとして面白いですけれど、 ところどころに見受けられるシリアスな設定の切片が、 ラブコメだけは終わらないという期待を生み、先へ先へと読み進めさせます。 オリジナリティという面では・・・う〜ん、フルメタと被るところが多いと思いますが、 完成度が高いので許せてしまいます。
このシリーズも1年前に、いや2年前に読んでおくべきでした。 電撃hpは毎回買っているんですからね。 でも、まだ間に合うと思います。まだブレイク本番ではないでしょう。 「イリヤ」とは深いつきあいになりそうです。(2002/10/30)
イリヤの空、UFOの夏 その2 タイトル イリヤの空、UFOの夏 その2
初版 2001/11/25
ISBN 4-8402-1973-7
感想 もう「イリヤ」の世界にずぶずぶと頭まで埋没しております。 ここまで夢中になれたシリーズものは、一昨年に読んだ「十二国記」以来です。 とにかくねぇ、ハードなものを書ける人が、 渾身の技術でエンターテインメントを書くと、これほど面白いものはないですね。 伊里野については未だ謎ばかりだし、浅羽は未だに下駄履きの学園生活をしていますが、 一歩間違えばその全てが崩れ去ってしまいそうな緊張感がたまらないです。 まだまだ先の話になるかもしれませんが、 きっとこのスラップスティックにも終わりがあって、浅羽の日常が失われる時が来るでしょう。 そこに何が待っているのか?これを知らずして、もう21世紀は生きられません。(笑)
「ブギーポップ」以降の心理描写を重視した少年向けライトファンタジーの集大成は「フルメタ」だと考えていましたが、 「イリヤ」は「フルメタ」をも越える可能性を持つ、素晴らしい作品です。 この最初のパワーが巻数を重ねていっても色褪せないことを願っています。
実はまだ3巻をGETしていないのですが、電撃hpは揃っているので、 連載分をどんどん読んで行ってしまうつもりです。(2002/10/31)
イリヤの空、UFOの夏 その3 タイトル イリヤの空、UFOの夏 その3
初版 2002/ 9/25
ISBN 4-8402-2173-1
感想 なかなか単行本をGETできないので電撃hpで読み始め、 途中からGETした単行本を読んだのですが、 なんと連載時には少ないながら挿絵があるんですね。単行本では全くなくなっているのに。 一般に連載時のほうが挿絵は多いものですが、全部削除してしまうのも珍しいです。 これも電撃では非常によく名前を見かける鎌部善彦というデザイナーの人の演出なんでしょうか。
内容のほうは完璧です。コメディでは爆笑させてくれますし、シリアスでは戦慄させてくれます。 しかしこのメリハリの付け方は今をときめく電撃文庫というよりは、 1980〜90年代のオーソドックスなファンタジア文庫に近いものがあります。 だから私がハマったんでしょうけれど。 もっと遡るならば押井守版「うる星やつら」のような作品のリズムですね。
そしてストーリーは、想像していたよりもずっと早く、日常を蹂躙して動き始めました。 このままクライマックスなのか、これは序の口でまだまだ色々な事件が待ち構えているのか分かりませんが、 この先「イリヤ」という傑作をリアルタイムで読めることに、がらでもなく興奮しています。(笑)(2002/11/2)
イリヤの空、UFOの夏 その4 タイトル イリヤの空、UFOの夏 その4
初版 2003/ 8/25
ISBN 4-8402-2431-5
感想 素晴らしい。完成度から言えば「猫の地球儀」の方が上でしょうが、これでも十分過ぎるほど素晴らしいです。
秋山瑞人の作品の特徴は、情熱やロマンへのクールな視点にあるのかも知れません。 「イリヤの空」では青春を、「猫の地球儀」では地球へ行く事への情熱を見事に描写しながら、 一方でそれらが大人や現実社会と相容れないものである事も冷徹に示しています。 ただ救いがあるのは、最終的な結末が読者に委ねられていることと、 作者の「クールでありながらも本当は応援したいんだよ」という空気が感じ取れることです。 「イリヤの空」に登場する大人達、榎本や椎名は冷酷で罪深い。 しかし同時に青春への憧れというか言い訳というかそういうもやもやも持っています。 実は彼らこそが作者の分身なんじゃないかと思うんですよね。(笑)
一時の流行に乗るわけではなく、確たる実力で勝負してくるこの作者には元々熱狂的な支持者がいましたが、 知名度の面ではイマイチでした。 しかしこの「イリヤの空」でとうとう電撃文庫の舞台の中央に立ったというか、人気作家になりました。 欲を言えばあと1冊分シリーズを長くして売りにくるくらいの商魂があっても良いかと思いますが、 ここでスパッと終わらせるのがこの作者らしいのかも知れません。 ともかく、記憶に残る作品でした。次の作品を楽しみに待ちたいと思います。
あ、その前に「鉄コミュニケイション」を読むか。(笑)(2003/8/25)
タイトル それ以外のことについて言えば、
初版 2003/11/1(ドラマアルバム「イリヤの空、UFOの夏」付録)
ISBN なし
感想 「イリヤの空」最後の話は、「そんなことだから」「死体を洗え」に続く、 下駄履きにーちゃんの非日常的な日常を描いた番外編です。 「世界が滅亡するんだとしたら、お前ならまず何をしたい?」と聞かれて「鍋」と答える世界です。 押井守もそうですけれど、秋山瑞人という人、こういう汗だくの生活感を描くのが好きなようですね。 榎本や椎名、そしてこの話に登場する町田やイズミといった少し疲れ始めた大人たちが作者の分身であることに、 より強い確信を持つようになりました。
でもやっぱりこの路線だけじゃ長編は描けないですよね。 シリアスかコミカルか、とにかくメインのストーリーがあった上で、こうした番外編があるから面白いのでしょう。 (2003/11/8)

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