「涼宮ハルヒ」の既刊情報&感想
著者 谷川流 レーベル 角川スニーカー文庫

表紙画像のリンク先はbk1です。

涼宮ハルヒの憂鬱 タイトル 涼宮ハルヒの憂鬱
初版 2003/6/10
ISBN 4-04-429201-9
感想 新人作品のくせにザ・スニーカー誌で連載され、巻頭特集され、ついに表紙になり、 スニーカー文庫の販促ポスターにまでなってしまったので、 一体どんな話なのかと思って読んでみました。 やられました。こんなに笑い転げたのは久しぶりです。
大爆笑です。(笑)
ストーリーと設定はベタで古典的なSFです。キャラも思いっきり今風のベタ萌えです。でもそのバランスが素晴らしい。 ちょうど森岡浩之の「星界」シリーズを読んだ時と同じような印象ですね。 このキャラだからこのストーリーが活きていて、 このストーリーだからこのキャラが活きているんですよ。 SF・ファンタジーの設定に必然性を求める私ですが、 ハルヒなら「必然性なんてものは後から勝手についてくるのよ!」とでも言うのでしょう。
そして高飛車で、誰よりも特別な存在になりたがっているハルヒが、 実はとても普遍的な孤独を背負っているという、この矛盾がたまらなく良いですね。(笑)(2003/12/20)
涼宮ハルヒの溜息 タイトル 涼宮ハルヒの溜息
初版 2003/10/1
ISBN 4-04-429202-7
感想 今回も映画制作という、学園SFでは実にベタなネタであります。 フィクションの中でフィクションが作られる、いわゆる劇中劇のパターンですが、 作品世界である第一段階のフィクションと、映画の中の第二段階のフィクションの境界が あいまいになっていく設定は面白いですね。 フィクションとは何か、ファンタジーとは何かを考えさせてくれますし、 現実において信じられない事件が起きてしまう現代の風刺にもなっています。
ただ、決して面白くない訳ではないんですけれど、1巻があまりにもよく出来過ぎていたので、 完成度で見劣りしてしまいますね。 でも今のスニーカー文庫は、 話題の新人に少々無理をさせてでもタイムリーに本を出させるという賭けに出なければならないのでしょう。 レーベルとして起死回生のチャンスなのですから。
1巻の完成度を維持して5、6巻あたりまで出せれば安定した人気を得られると思うのですが、 はたしてそこまで行けるでしょうか。まずはまもなく出る3巻に注目です。(2003/12/20)
涼宮ハルヒの退屈 タイトル 涼宮ハルヒの退屈
初版 2004/1/1
ISBN 4-04-429203-5
感想 単行本が出るのが待ちきれずに雑誌連載を第4話まで読んでしまったのですが、 単行本には第3話までしか収録されませんでした。 それは何故かというと、書き下ろし分が本来の第3話であって、 第4話よりも時系列的に前のエピソードだからなんですな。 あとがきにも色々書いてありますが、連載は色々ハプニングあって、それを見ているのも楽しいです。(笑)
で、内容なんですが、個々の話は面白いのですが、1巻通しての強烈な印象がないですね。 キャラは素晴らしいし、SFとしても読めるものになっているのですが、ストーリー、とりわけオチが弱いです。 もともと1冊で完結していた話をシリーズにしてしまった無理が、 2巻、3巻と続いて出てしまっているように見えます。 キャラ萌えの人にはともかく、ストーリー重視の人へアピールするには苦しいですね。
とはいえ、作者は角川スニーカーの新人賞大賞受賞者であり、 安井健太郎、吉田直がそうであったように、この作者も角川の強力な後押しを受けることになりそうです。 早くもコミック化が決まったようですし、作品内容だけでなく、 角川の営業手腕に注目してみるのも一興でありましょう。(笑)(2003/12/29)
涼宮ハルヒの消失 タイトル 涼宮ハルヒの消失
初版 2004/8/1
ISBN 4-04-429204-3
感想 2冊目、3冊目で停滞してしまったのでどうしたものかと内心思っていましたが、 4冊目でストーリーが、キャラが、設定がまた動き出しました。 既成概念をぶち壊して突っ走る、1冊目のあのパワーが戻ってきました。 そうだ、谷川流!当たり前になってしまったものを変えていく、この冒険心が必要なんだ!(笑)
新キャラの安易な投入に頼ったりするのではなく、既存のキャラで作品世界を広く深くしたことも素晴らしいですね。 長門有希の変化にもびっくりですが、キョンの思い切りの良さにはもっとびっくりです。 4冊目にしてようやく、キョンは名実ともに主役になれたんじゃないでしょうか。
今後の展開がとても楽しみですね。 不安定ではありますが、この作者はライトノベルというジャンルに胡座をかくのではなく、 ジャンルそのものの方向性を変えていく力を秘めていると思います。
でも3年前&改変後の長門有希のイラストにはメガネをかけさせて欲しかったなぁ。(笑)(2004/8/13)
涼宮ハルヒの暴走 タイトル 涼宮ハルヒの暴走
初版 2004/10/1
ISBN 4-04-429205-1
感想 こういう形で1冊にまとめてきましたか。 このシリーズのザ・スニーカー誌連載分は、内容が本当に変則的で、 読んでいる方が「この話はどうやって単行本に入れるつもりなんだろう?」と悩んでしまいます。 現時点で単行本未収録の話が3編ありますが、方向性がバラバラでどれも同じ本には収録されそうにありません。 それぐらい涼宮ハルヒの連載は実験的で変わっています。 単に思いつきとその場しのぎなだけかも知れませんが。
1話目の「エンドレス・エイト」はまたも出てきた時間ループもの。 でも「うる星やつらビューティフル・ドリーマー」みたいで読んでいて飽きません。 SF色が強いのに、懐かしさを感じさせます。 2話目の「射手座の日」も、スラップスティックと長門の微妙な心理が描かれていて面白いです。
一方、3話目の書き下ろし中編「雪山症候群」は、言いたいことは分かるのですが、必然性で疑問符が付きます。 オイラーを使った謎解きは面白いです。作者はホント、次元数とか好きですね〜。 が、その謎解きの内容と雪山からの脱出との間にどういう関係があるのでせう。 そこのところを説明してもらえないとフェアでないです。 あ、あと、謎解きの解答のxとzの値を入れ替えたら駄目なのかな?(2004/10/16)
涼宮ハルヒの動揺 タイトル 涼宮ハルヒの動揺
初版 2005/4/1
ISBN 4-04-429206-X
感想 表紙のデザインが変更されて、「次の表紙こそはキョンだ!」という期待は裏切られました。(笑)
短編集な訳ですが、苦し紛れに出したんじゃないかな、という気がします。 特に「朝比奈ミクルの冒険」は、雑誌掲載時に「これは単行本に入れられないだろう」と即時に思い、 実際、「暴走」にも入らなかったので永久に葬られたのかと思っていましたが、 今回、ページ合わせみたいな感じで収録されました。良いんですか、これ。(汗)
単行本未収録といえば「涼宮ハルヒ劇場」という、これまた無茶な短編があるのですが、 「消失」でちらっと触れたくらいで、なかなか本編とからんできそうにないですね。
ストーリーが進んだとすれば「朝比奈みくるの憂鬱」くらいでしょうか。 次の長編にも出てくるであろう少年がちょっと気になります。 ひょっとして「涼宮ハルヒ劇場」とも繋がってるのかな?
全体に面白いことは面白いのですが、なんだかぎくしゃくしていますね。 完成度はむしろ「絶望系 閉じられた世界」の方が上なんじゃないかと思います。(2005/4/29)
涼宮ハルヒの陰謀 タイトル 涼宮ハルヒの陰謀
初版 2005/9/1
ISBN 4-04-429207-8
感想 前巻はシリーズものとして無理に進めている閉塞感があったのですが、今回は吹っ切れた感じ。 「学校を出よう!」の理屈っぽさが加味されているにも関わらず、とても前向きで軽快。 そして、かなりな大風呂敷を広げてきました。
読み終わってしまえば、なあんだという話なのですが、それをハラハラドキドキさせて読ませる技量はさすが。 朝比奈みくるを過去にタイムスリップさせる場面などは爆笑ものです。 こういうところをシリーズ当初は勢いで書いていたかも知れませんが、 今は計算ずくで書けるようになっているのだと思います。
もちろんアラもあります。 亀少年や新たな敵など、この巻内で収束しないネタは構成的にちょっとなぁと思うのですが、 この先への伏線だと考えましょう。 まぁ、そんな細かいことは抜きにして、とにかく読んでいて面白かったですし、 次巻以降も楽しみになってきました。 朝比奈みくると長門有希の変化もよく描けていると思います。長門有希は本当に変わったなぁ。(2005/9/24)
涼宮ハルヒの憤慨 タイトル 涼宮ハルヒの憤慨
初版 2006/5/1
ISBN 4-04-429208-6
感想 雑誌連載分ということもあり、シリーズ全体として見たストーリーはほとんど進んでいません。 しかしそれで面白くないかというと、いやいや物凄く面白いです。
特に「編集長★一直線!」はこの作者が得意とするメタフィクションとして良く出来ています。 文芸部会誌を作っていくことそのものが読んでいて楽しいですし、できた会誌の中身もひねってあります。 伏線も恐らく敷いてあるのでしょう。
「ワンダリング・シャドウ」の方もラストのあたりは伏線っぽいですよね。 こんなに伏線ばかり作って本当に回収できるのかと思いますが、 その一方で焦る必要もないなとも思っています。 どうも谷川流さんは話がどんどん伸びていってしまうタイプの作家のようですが、 それでつまらなくはなっていないですからね。 そもそもこの作中世界に明確な始まりと終わりはない可能性があります。 時間は流れていますが、それが唯一一方通行の時間とは言えないことは作中で繰り返し示唆されていますし。 言い方を代えると、このシリーズは典型的なキャラクター主導の小説でありながら、緻密な時空間設定のおかげで、 この手の作品にありがちなストーリーの停滞を巧妙に避けることに成功しているように見えるのです。(2006/5/3)
涼宮ハルヒの分裂 タイトル 涼宮ハルヒの分裂
初版 2007/4/1
ISBN 978-4-04-429209-6
感想 簡単に言ってしまうと「涼宮ハルヒ版『学校を出よう!』」。 そもそも谷川流さんの作風というのはかなり尖がったメタなのですが、 マイルドな「ハルヒ」が角川の強引な販売戦略で売れてしまったために、その尖り方が隠れがちでした。 が、「ハルヒ」でもとうとうやってしまいましたね。あからさまにメタを予感させるシナリオ分岐!
この「分裂」において予想されるメタ構造が、これまで「学校を出よう!」で使われてきたものと同じだと決め付けるのは早計です。 なんたって谷川流さんは「絶望系」なんてものを書く大ボラ吹きなのです。 平気で物語をひねって引っくり返してバラバラに分解してしまう人なのです。いくら疑っても疑いすぎることはありません。 次巻の「驚愕」が出るまで、しつこいくらいメタ構造に対して疑い深くなっていようと思います。
この作品は市場にメタゲームとして受け入れられるのでしょうか? それともメタさえもネタとして市場は消費して行くのでしょうか? 私は後者のような気がしていますが、どちらにしてもその様子はしっかり記憶しておく価値があります。 きっとこれからも繰り返されていく光景でしょうから。まぁ、過去にも繰り返されていた可能性も否定しませんけれども。
それにしても今回は「学校を出よう!」で披露された量子力学と深層心理学を融合させたような見事なSF設定が用意されているでしょうか。 用意されていても大半の読者には受け入れてもらえないような気もしますが、 ただメタなだけじゃ虚しいですし、うーん、どこまで期待して良いものでしょう。(2007/4/3)

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