「Dクラッカーズ」の既刊情報&感想
著者 あざの耕平 レーベル 富士見ファンタジア文庫(再版)

表紙画像のリンク先はbk1です。

Dクラッカーズ 接触−touch− タイトル Dクラッカーズ 接触-touch-
初版 2000/11/25
ISBN 4-8291-6107-8
感想 「どうする?」ひさびさにヤバイと思わせてくれる作品に出会いました。
正確に言うと再会しました。3年前にドラゴンマガジンでこれの原型となる短編を読んでいますから。 そしてその短編は人気投票において「棄てプリ」に敗れ、2年以上も陽の目を見ることがなかったのですが・・・ なんだよ!面白えじゃねえか!(笑)
富士見書房さん、どうしてこんなヤバイ作品にほこりを被らせておいたのですか? 2年前に単行本になっていれば富士見の宣伝力でヒット作にすることができたのに。勿体無いなぁ。
文体にはやや未完成な点が見受けられますが、 クールで、ヤバくて、そして切なく訴えてくるものがあります。 ドラッグももちろんヤバイのですが、 それにつけ込まれる隙を作ってしまっている希薄な人間関係がキツイです。 十二国記ほどの鮮明な迫力ではありませんが、このほうが身近に感じるものもちょこっとあります。 でも今からフルメタやブギーポップには追いつけないんですよ。遅い。遅すぎました。
しかし視点を変えて見れば、作者の書いているようにしぶといシリーズでもあります。 今後、タイムリーに単行本を出して少しずつファンを掴んでいって欲しいですね。 こんなシリーズが売れたら、それこそ世の中オシマイなのかも知れないけどさ。 本当にこれ出版して大丈夫だったんだろうか?教育委員会から訴えられたりして。
でもよい。わらわが許す!(笑)(2001/5/22)
Dクラッカーズ 2 敵手−pursuer− タイトル Dクラッカーズ2 敵手-pursuer-
初版 2001/7/30
ISBN 4-8291-6131-0
感想 スケールこそ小さいのですが、ヤバイ!イタイ!そしてカッコイイ!
とにかくドラッグに溺れ、抗争に巻き込まれていくキャラクター達が悲しいです。 誰も望んでいやしないのに、しがらみにガチガチに縛られていく様が 悲しいというよりも、もう痛いです。
ところが、その痛さ、虚しさの反面で、ウィザードや甲斐のなんとカッコイイ事か。 そのカッコ良さというのが即、切なさにも繋がってしまうのですが、 切なさ、虚しさとカッコ良さがぎりぎりのところでバランスを取っています。 いや、違うかな。バランスが崩れてぼろぼろ壊れ始めているのが良いのかも。(汗)
現代を舞台にしたライトファンタジーというのは、 安っぽく、ウソクサイものになってしまいがちですが、 これはなかなか現実味(幻想味?)を出せているんじゃないでしょうか。 カイムと甲斐の正体には意表を突かれましたし、千絵が推理で情報量の少なさを補っていくのも面白い。 ミステリーとしても良く出来ています。 次巻以降に期待大です。(2001/8/3)
Dクラッカーズ 3 祭典−ceremony− タイトル Dクラッカーズ3 祭典-ceremony-
初版 2002/1/30
ISBN 4-8291-6152-3
感想 なんかすんごい事になってきました。 青春あり、淡いロマンスあり、屈折したトラウマあり、バイオレンスありのファンサービス満点作品です。 ちょっとストーリーが分かりにくいですが、んなことぁどうだって良い! カプセルを噛み砕けば世界は薔薇色さ。特にウィザードがかっこいい〜! ・・・って思っちゃいけないんです、はい。 だってこれ、やってる事は完全に反社会的だもの。 現実にやったら洒落にならないし、人間としてやっちゃいけない事だと思う。 でも、その明かにすさんだ道をぎりぎりのところでかっこいいと思わせる、 現実と幻想の入り混じった混沌とした設定が素晴らしいです。 単に幻想的なのではなくて、設定として幻想を描きあげたライトノベルはあまり例がないんじゃないでしょうか。
そして物語は佳境へ、無慈悲な女王が統べる王国へと入っていきます。 自分の中にいつか築いた失われた故国。 私も、そこへ行きたくないと言えば嘘になる、非常に危険な誘惑です。(2002/1/27)
Dクラッカーズ 4 決意−resolution− タイトル Dクラッカーズ4 決意-resolution-
初版 2002/5/30
ISBN 4-8291-6165-5
感想 ドラッグファンタジー(笑)、いよいよ佳境。 話中のドラッグはアップ系なのに、ストーリーはダウン系なのもハズしていてなかなか良いです。
梓と景の築いた王国のシーンは、なんともやるせなくなります。 誉められたことでないことは分かっています。 でも実際にそういう経験がある者にとっては、批難される前にまず理解して欲しいと思うものなのです。 この作者はそれが分かっている。 まず等身大の視線から見つめてくれて、その上で解決しようと言ってくれている。 その手法を使った作者の手腕がどこまで汎用的に通用するものなのか、 人生経験の浅い私には分かりようもないのですが、少なくとも個人的には見事にツボにはまりました。
これだけキャラが(狭いけれども)深掘りされた作品が特に話題になることもない、 それくらい今のライトファンタジーは深い心理描写が当たり前になっているのでしょう。(2002/7/5)
Dクラッカーズ・ショート 欠片−piece− タイトル Dクラッカーズ・ショート 欠片-piece-
初版 2002/9/30
ISBN 4-8291-6178-7
感想 6作の短編は1つ1つだいぶ趣旨が変えてありますが、好みが分かれそうです。 残念ながらこの作者は一発ギャグがあまり面白くありません。王道のロマンスも上手くありません。 黄昏ているところでクスッとさせたり、しんみりさせたりさせるのは得意なんですけれどね。 だから私が気に入ったのは「狩猟」「逃走」「序曲」「台風」の4編です。 特に「序曲」はキャラ達がドラッグに溺れていく様を実にあっさりと描いていて、 それが逆に退廃的なムードを盛り上げています。 ドラッグは駄目だと言っておきながら、 主人公がドラッグを使うのをカッコ良く描いている「狩猟」「逃走」もヤバイです。 自分を戒めてくれる良い作品だと思います。
でも売れないなぁ。先駆性が無くて、マイナーなレーベルだと、よほどの完成度がないと売れないんでしょうね。 富士見ミステリー文庫、まだまだ苦難は続きそうです。(2002/10/6)
Dクラッカーズ 5 乱−rondo− タイトル Dクラッカーズ5 乱-rondo-
初版 2002/12/30
ISBN 4-8291-6189-2
感想 おいおいおい、一体誰が主人公なんですか。 この作者、ベタが好きだなんて大嘘です。 クライマックスのアクションシーンをほとんど敵方からしか描かない作品なんて滅多にあるもんじゃありません。(笑)
ストーリーは見事にまとまったというか、終わらなかったというべきか。 カプセルの仕組みには完全にしてやられましたし、女王、騎士、魔法使いの正体も良くできています。 ベルゼブブの講釈もメチャメチャ面白いです。 10年前のファンタジーでこんな理屈をこねることなんて許されなかったでしょう。時代の流れを感じます。(笑)
ただ残念なことに突き抜けた面白さを出せていないんですよね。 この作品じゃなければ味わえないというものがあるにも関わらず、作者はそれらを有効に利用できていません。 ペルゼブブの理屈は良いです。でも彼は脇役でしょ?それとも彼が主役? 梓と景の話をもっと書かなきゃ。二人の王国が先にあって、執行細胞の理屈は後から付けられたものでした。 クライマックスの決着の付き方もその伏線に沿ったものでした。 ならば二人の王国についてのベタな演出をもっと前面に出した方が良かったのではないでしょうか。 このシリーズの読者なら、大概はそれを望んでいたと思いますよ。(2003/1/15)
Dクラッカーズ 6 追憶−refrain− タイトル Dクラッカーズ6 追憶-refrain-
初版 2003/4/15
ISBN 4-8291-6204-X
感想 凄ぇ!やったじゃん!
凄ぇ、その1。梓と景でベタなロマンスをやってくれたことです。そーだよ。これだよ。これが読みたかったんだよ。 なんでこの路線でずっとやってくれないかなぁ。(笑)
凄ぇ、その2。「認識」という設定の可能性を積極的に追究したこと。 3つの人格が合わさってしまったベルゼブブ、バール、ベリアルを別々のパターンで相手に認識させちゃうわ、 「王国」を召喚しちゃうわ、完全にしてやられました。 人間の存在を「現実」と「精神世界」の両方に置くタイプのライトファンタジーの可能性を、 あざの耕平は大きく広げてくれました。 突き詰めると、こういうタイプのファンタジーってファンタジーではなくなってしまうのかも知れません。 だって現実に起こり得る一歩手前まで、物語の普遍性を獲得してしまっているんだもの。 ああ、なんか私ってペルゼブブみたいだな。ははは。(爆)
簡単に言いかえれば、誰でも梓であり、誰でも景である可能性があるのです。 え?そんな記憶はないって?ふふ、忘れさせられてしまったのかも知れませんよ?(笑)
まぁ、ともかく「Dクラッカーズ」は素晴らしい作品です。 設定も心理描写も、設定そのものがストーリーになっている点も凄いです。 でも売れませんでした。 どうして売れなかったのか富士見編集部もあざのさんも検討して、 次はヒット作を出して「ライトファンタジーにあざの耕平あり」と言って欲しいです。 こんな良いものを持っているんですから。(2003/5/1)
Dクラッカーズ・ショート 2 過日−roots− タイトル Dクラッカーズ・ショート2 過日-roots-
初版 2003/7/15
ISBN 4-8291-6215-5
感想 全体の構成もそこそこ凝っていますが、 なんといっても短編「同胞−accomplice−」が素晴らしいです。 本編の中でもこのシリーズの「悪魔」の正体が「共通認識」であることが明かになっていますが、 今回改めてそのことを説明し直しています。 凄い。 中世のハイ・ファンタジーならともかく、夢も希望もない現代を舞台にしたファンタジーでは、 とかく「魔」というものは安っぽくなりがちです。 UFOも超常現象もTV特番や週刊誌のネタとして消費されていくしかありません。 しかし「Dクラッカーズ」は「Missing」とともに、 現代でも「魔法」「魔族」というものが居られる場所を見付けてくれました。 同時に情報インフラばかりが突出してしまった社会の危険性を暴露する作品でもあります。 どうしてこれが売れないんでしょう。(笑)
ところで私はてっきり6巻で完結だと思い込んでいたのですが、まだ続きがあったんですね。(笑)
6巻でも十分きれいな終わりかただと思いますが、良いでしょう、 この作者ならきっととてつもないラストを用意してくれていると思います。 7巻に期待いたします。(笑)(2003/8/2)
Dクラッカーズ 7−1 王国−the limited world− タイトル Dクラッカーズ7−1 王国-the limited world-
初版 2003/12/15
ISBN 4-8291-6227-9
感想 シリーズ途中までは凝りながらも地味な話でしたが、 終盤はどんどんエンターテインメント性が増してきました。 最初からこの調子だったならもっと売れたのになぁ。 でも作者の成長が見られたことは収穫でしょう。
ええ、もう内容は素晴らしいです。 集団的無意識の中での認識が、通常ではありえない現象を引き起こす。 それは人間が精神的存在である限り逃れられない事実です。 「Dクラッカーズ」はこの事実に疑似科学的な解釈を加え、ファンタジーと現実の境界をあいまいにし、 ファンタジー世界を現実世界にまで押し広げてくれました。 ファンタジーというより人間科学的SFと言った方が良いでしょうか。 しかも涸れてしまった自然科学的SFと違って、まだまだ底が見えない広がりを持っています。
結局最後まで商業的には売れませんでしたが、 「Dクラッカーズ」は「こんな個性的な作品があったんだ!」と語られる存在になるでしょう。 いよいよ次が最終巻。楽しんで読むつもりです。(2004/2/7)
Dクラッカーズ 7−2 王国−a boy & a girl− タイトル Dクラッカーズ7−2 王国-a boy & a girl-
初版 2004/1/15
ISBN 4-8291-6236-8
感想 続編の可能性も持たせつつ、おとなしめの終わりかたとなりました。 いや、作者は派手にしたつもりかも知れませんが、 やっぱりアクション面もロマンス面もまだまだ弱いな〜。 もっとベタでお約束な演出を堂々と入れて良いと思います。 大丈夫、作品の核心さえしっかりしてる限り、コアなファンは逃げないですよ。 万人受けもして、コアなファンも唸らせることができれば、いつか脚光を浴びる時が来るはずです。 甲田学人の「Missing」を見習いましょう。
そして嬉しい知らせが入ってきました。 この作者の新シリーズ「ブラック・ブラッド・ブラザーズ」がドラゴンマガジンで連載開始です。 ドラマガ連載は人気が無ければ打ち切られてしまう厳しい舞台ですが、 逆に人気があればミステリー文庫などとは桁違いにガンガン宣伝してもらえるところでもあります。 「Dクラッカーズ」でものにできなかった人気作家に這い上がるチャンスを、今度こそ逃がさないで欲しいです。(2004/2/29)
Dクラッカーズ +プラス 世界 −after kingdom− タイトル Dクラッカーズ +プラス 世界 -after kingdom-
初版 2007/12/25
ISBN 978-4-8291-1985-3
感想 (未読)

竜人館に戻る。
このページに関するご意見、ご感想は、 ぎをらむ、こと嬉野通弥(ureshino@i.bekkoame.ne.jp)まで。