「カラミティナイト」の既刊情報&感想
著者 高瀬彼方 レーベル ハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズ

表紙画像のリンク先はbk1です。

カラミティナイト タイトル カラミティナイト
初版 2000/9/18
ISBN 4-89456-765-2
感想 鬼気迫る心理描写です。 リアリティの面では「十二国記」に、電波の面では「グラスハート」に匹敵すると思います。 智美と優子、主役2人の未完成な人格の描写については文句の付けようがありません。 青春小説として、今まで読んだ中で最高のレベルです。 自分の弱い心を見透かされているようで凄い怖いですね。 ほとんど泣きそうになりながら読みました。
ただ、現実面でのハードさが際立っているだけに、ファンタジーとしての物足りなさを感じてしまいます。 この作者はファンタジーを現実の一側面を映す鏡として使うことには成功しています。 しかしそのファンタジーは現実の延長であり、現実に従属するものとしてしか扱われていません。 いや、確かに実際の世界はそうだと思います。それは正しいでしょう。 でもそれでは「ファンタジー」とは呼べないんじゃない?(笑)
「フルメタル・パニック!」とか「すてプリ」とか、「十二国記」もですけれども、それらは「ファンタジー」です。 ファンタジーと作者のメッセージがセットで伝わってきて、それを分けるのは読者の仕事です。 けれども「カラミティナイト」は違いますよね。 作者のメッセージは強烈ですけれども、 それは現実を描くことで伝わってくるのであって、ファンタジーを通してはいません。 まぁそのストレートなところが、この作品の良さでもあるんですけれど、 もうちょっと読者の想像力が入りこめる余地を用意しておいてくれたら、と思います。 そうすれば、多分最後で泣けました。贅沢かな。(笑)(2002/10/3)
カラミティナイト 2 タイトル カラミティナイト2
初版 2001/9/18
ISBN 4-89456-893-4
感想 人間にとって大切なことってなんだろう?本当の自分ってなんなんだろう? そう思わせてくれる小説にまた会うことができました。
素晴らしいです! 1巻はあまりにも細々と書き過ぎて読むほうが置いてけぼりという感じが少しありましたが、 今回は適度に描写を抑えることで、読み手の想像を膨らますことに見事に成功しています。 クライマックスでの優子と智美はとても言葉足らずです。でも私は泣きました。 全部書く必要なんてないんです。書いていない部分は読者に任せてくれて良いんです。 それでも伝わってくるんです。何が伝わってくるかって? それはこの本を読まなければ分からないでしょうし、読んで感じることも人それぞれでしょう。 でもそれだからこそ、この本は読む価値があるのです。
描写を抑えていると言えば、ラストもそうですね。 客観的なことを淡々と並べるだけでキャラの心理をほとんど書いていませんが、 それが逆に、読み手の中にキャラの心理を再現させ、次巻への想像を掻き立たせています。 ファンタジーとしての弱さは相変わらずですが、もうそんなことは関係ねぇ! 完璧にしてやられました。ああ!続きが早く読みたい!(笑)(2002/10/11)
カラミティナイト 3 タイトル カラミティナイト3
初版 2004/1/18
ISBN 4-75843-067-5
感想 待ちに待った、マイナーレーベルにはもったいない戦慄の学園ファンタジーの新刊です。 相変わらずの凄まじい心理描写が、今回はラブコメを語るために使われています。 面白い!面白い!誤解に誤解を重ねる主役4人も良いですが、 助演女優賞をあげたいのが超平均的女子高生こと真島恭子! その俗物ぶりときたら、もー哀愁漂うほど。彼女こそ大宇宙に冠たる小市民。庶民の永遠の味方。 まさに運命でありディスティニー(待て)。 そうかぁ、この作者、こんなラブコメが書けるのか。 智美の「面白い本を他人にも勧めたがる病」とか、尾行を忘れて新刊チェックに没頭するところとかも、 この作者ならではの手腕ですね(ちょっと秋山瑞人に似てるかな?)。
敢えて弱点を挙げるならば、やはり心理描写とファンタジー設定との繋がりが弱く、 ファンタジー設定そのものも体系的でないところでしょうか。 「Missing」や「Dクラッカーズ」は、心理描写が構造的で、 それ自体がファンタジー面の設定とストーリーに直結していますが、 「カラミティナイト」は心理描写とファンタジーとが乖離してしまっていて、 しかも魔力というのが一体何なのかさっぱり分からないんですよね。 別に災禍の心臓なんてなくても、このシリーズの面白さとはあまり関係がないんです。 スニーカー文庫から出ている「ディバイデッド・フロント」も同じ弱点がありますから、 恐らくこの作者の癖なのでしょう。
もちろん、この弱点を補って余りある魅力をこの作者は持っています。 いつか、陽の目を見て欲しいですね。(2004/1/18)

竜人館に戻る。
このページに関するご意見、ご感想は、 ぎをらむ、こと嬉野通弥(ureshino@i.bekkoame.ne.jp)まで。