日本鱗翅学会 2001年 春の集い 講演要旨

日本産ダイミョウセセリにおける白紋変異の解析(予報)

加藤義臣、若林洋平

 ダイミョウセセリ(Daimyo tethys)は、日本をはじめとして台湾、中国大陸に広く分布し、特に後翅の白紋パターンに地理的変異を示すことで有名である(後[翅]に白紋の発達した、いわゆる「関西型」と、無紋の「関東型」である。両者の分布の境界線は、日本海側の若狭湾から琵琶湖の東を通り愛知県の伊勢湾に達する地帯にあると言われており、この地域では白紋の発達が中程度の、いわゆる「中間型」が分布する。演者らは、本種の地理的変異やその原因を理解するためには変異の量的解析と共に、行動学的・遺伝学的解析が必要であると考えている。

 今回は、白紋の解析方法に検討を加えるとともに予備的だが、解析データが得られた。しかし、得られたサンプル数もすくなく結論を得るには至らないが、問題提起の意味も含めて報告したい。

 材料の成虫は、主として乾燥標本を8地点から入手した。解析した個体数は合計で38個体であり、一地域当たりの数は2−8個体であった。解析方法としては、翅を胴体より切り離し、デジタルカメラ(オリンパス)で撮影した後その画像をコンピュータに取り込んだ。前翅については、NIH imageを用いてそれそれ[sic!]の白紋の面積を測定し、翅のサイズでその価を補正した。後翅についても同じ方法での解析を予定していたが、写真の解像力不足のため、デジタル解析は不可能であった。それで、肉眼的に白紋パターンの発現様式を5段階に分類して評価した。

 その結果、前翅の白紋パターンには地理的差異は認められなかった。一方、後翅表側については、東日本のつくば、三鷹、御殿場の無紋の個体と西日本の能瀬、九重、瀬高の明瞭な白紋を有する個体の2グループ、そして両者の中間に位置する金沢、菰野、彦根のグループに分類された。後翅裏面については、西日本の個体はもとより、東日本の個体にも小さいながら白紋は存在していた。これらの結果は従来から言われている「関東型」、「関西型」の区分に対応していたが、「中間型」が生息する地域は従来の説よりも広い範囲にわたっていた。

 今後はサンプル数や調査地域を増やすとともに、境界地域での個体の子孫の斑紋パターン、両型間での配偶行動などを調べてゆきたい。最後に、材料収集に御協力いただいた方々にこの場を借りてお礼申し上げる。

ボリビア採集事情 [パルモドキセセリの採集には十分注意を払って下さい]

長畑直和

 ボリビア北Yungas地方は、LaPazの国際空港から程近く、日本人採集者も良く訪れている。また、当地は昨年の日本鱗翅学会にて山崎氏[注:これは私のことなんですが、なぜ山崎氏になっちゃたんだろう?]より紹介された「パルモドキセセリ」なるものの産地でもある。パルモドキセセリのユーモラスな名前は、一部に受けたようで、学会以外でも度々その名を耳にした。しかし、北Yungas地方で日本人採集者が良く訪れている周辺は、国立公園に指定されており、昨年頃から"看板"が目立つようになり、レインジャーの監視活動も行われている。現地事情に詳しくない日本人が安易にパルモドキセセリを採集しようとすると、国立公園内で採集活動をしてしまいかねないので、今回警鐘を兼ねて報告する。(スルコウスキーモルフォの産地として有名なPongo辺りからSacramentoを経てCoricoまでの国道(?)は確実に国立公園内です。)

なお、北Yungas地方ではコカインの原料となるコカが合法的に栽培されている。隣国のゲリラはコカインを密精製して活動資金としており、当地に隣国武装ゲリラは多数潜んでいるらしい。隣国における日本人大使館占領犯射殺の一件や、○ジモリ大統領逃亡事件の余波を受け、実は当地は日本人にとってはそれ程気の抜ける地域ではないことも付け加えておく。