激戦、東京4区!
麻原彰晃、最後の訴え!
激しい追い上げ、あと一歩!
予断を許さぬ熾烈な戦い!

 九〇年代、日本の政局はいかに? 焦点の消費税問題の決着を懸けて、政府自民党および野党各党は一月二十五日の衆議院解散を受け、一斉に総選挙に突入した。与野党逆転、政権交替の期待もあって、全国の立候補者総数が九百名を超えるという熱い戦いが全国各地で展開されている。その中でも、有数の激戦区として挙げられるのは、何と言っても東京四区。定数五名に立候補者十三名という乱戦。現職有利が伝えられるが、ここに来て新人候補者の追い上げも激しく、最後まで行方は混沌としている
 そんな中で、真理党党首麻原彰晃尊師の選挙戦が再び脚光を浴び始めている。一時期ささやかれた根拠のない誹謗中傷がようやく静まり、いよいよ最後の追い込みに入った模様だ。

 激戦である。各候補ともしのぎを削って、選挙戦はいよいよ活発になってきている。さる選挙通は、「四区は、野党主導型。共産の松本善明、公明の大久保直彦、社会は金子みつの後継者、外口玉子、自民は粕谷茂、それに二期目の高橋一郎。やっぱり現職が強い。台風の目は石原伸晃」と分析する。
 しかし、これら有力候補に不安材料がないわけではない。昨年東欧では共産主義国家の民主化運動が火を吹いた。共産主義の崩壊は世界的な流れである。既に時代が求めていない共産党の看板を背負わなければならない松本氏はその意味では苦しい。また、世代交替が進む中、松本、粕谷、高橋の三氏は既に六十三歳。新しい時代を担う活力としては高齢過ぎることは否めない。特に、粕谷氏は昨年持病の胆石で入院していることも不安材料。公明党は、総選挙で社会党に票を奪われることの懸念から、「自民党一党支配の打破」という国民の要望を無視して独自路線に走った。副委員長の大久保氏の責任は問われよう。高橋氏も、若さが売り物の保守系無所属の石原氏の登場が響く。ただ、その石原氏も消費税賛成という増税肯定の論拠に今一つ説得力がない。社会党は、沖田氏、外口氏の票の食い合いが怖い。有力候補といえども予断を許さぬ厳しい戦いと言える。
 そんな中で、各候補、智慧を絞った選挙戦を展開しているが、とりわけ麻原尊師の選挙戦のユニークさは他に類を見ない。「麻原氏は、案外選挙の天才かもしれない。視聴覚に巧みに訴えている」と、さる保守陣営の運動員はしきりに感心する。子供達の間でブームを呼んで、もうすっかりおなじみになった「しょうこう、しょうこう」の「麻原彰晃マーチ」、インドの神様で真理党のシンボルマークである、ガネーシャをあしらった「ガネーシャ帽子」、等身大の「ガネーシャ人形」、風船。今年に入ってからは、これらに加えて、尊師そっくりの「麻原彰晃人形」、尊師の修行歴とサクセスストーリーをつづったマンガ『あなたもなれるかも? 未来を開く転輪聖王』、真理党の政策をまとめた八十ページの小冊子『進化』が登場した。
 この麻原尊師の選挙活動を見た、杉並区に住むある在日外国人は「麻原さんの選挙活動はアメリカ的で、とても気に入ってるね」と語る。
 そして、去る一月二十八、二十九日はこの麻原彰晃「選挙グッズ」が総動員された。真理党のパレードが中野区と杉並区で行なわれたのだ。麻原尊師の乗るオープンカーを先頭に、麻原彰晃人形、ガネーシャ人形、そして前夜急きょ組織された鼓笛隊を含む運動員総数約二百名が、「消費税廃止」「教育改革」「福祉推進」「医療改革」のシュプレヒコールを上げながら選挙区内を練り歩いた。若い運動員達の明るい声といで立ちは、冬本番の中野、杉並の街を華やかに彩る。街角からはパレードに手を振る婦人、ガネーシャ人形を追いかける子供達で大いににぎわった。まさに、アメリカ的な底抜けに明るい選挙活動である。
 一部のマスコミでは、この麻原尊師の選挙活動について、「いったい、あれだけの資金がどこから出ているのか」といぶかる声も出ている。ところがこの活動、実際には驚くほど安い費用ででき上がっているようだ。
「ポスターやチラシを含めて、すべて私達運動員の手づくりです。かかっているのは材料費くらいですね。しかも、運動員もみんな尊師の弟子達で、言ってみればボランティア。つまり、人件費はゼロなんです。鼓笛隊も、みんなで楽器を借りてきて一夜づけで練習したんですよ。他陣営が想像する何十分の一、何百分の一ですんでいるでしょうね」「うちは“袖の下”で票を取るようなまねをしてませんから、こういう方面に回せるんです」と運動員達は笑う。写真週刊誌『フライデー』に、記者の注文に応じて、白いスーツを着、ベンツの前で赤いハンカチを振ったがために、「気分はすっかり『政党党首』」「『資金』は潤沢」と揶揄されるのもご愛きょう。既にマスコミでは「オウムの少女隊」と呼ばれるようになった清水“美人”姉妹をはじめ、とにかく「麻原尊師大好き」人間が大勢集まってのノリなのだ。
 こうした周囲の“騒ぎ”を横目に、麻原尊師は、「今回の選挙は二十一世紀を目前にした私達にとって大切な選挙です。消費税問題一つ取ってみても、強行採決という暴挙を敢行した自民党の“裏切り”を認めてしまえば、三%の税率はすぐに十五、二十%と跳ね上がってしまうのは確実です。一方、廃止を唱えながらも代替財源として増税を肯定している野党では、根本的には政治は変わりません。徹底した行革を断行すればいくらでも財源は確保できるのに、私利私欲のためにできない既成政党に日本の未来は任せられません」と言う。そして、戦後保守政治が四十年以上の長きにわたっていることについて、「そろそろ新しい形の政治家、政党が登場してもいいのではないか」とも。
 コマーシャル活動ばかりが注目されがちだが、八十ページにも及ぶ具体的な政策集『進化』を刊行するなど、その政治に対する誠実な姿勢は、イメージだけが取り柄で中身のない立候補者とは一線を画している。
 実際、今年に入ってから精力的にこなしている街頭演説では、麻原尊師は、この「消費税廃止」をはじめ、「医療改革」「教育改革」「福祉推進」「国民投票制の導入」という真理党の政策をダイレクトに、ひたすら訴える。その間になされた真理党による「消費税廃止署名」も、既に一万人を突破、最終的には六万人を目指すという。麻原尊師、真理党の主張が受け入れられ始めたのであろう。
 現職有利とはいえ、いよいよ票読みは混沌としてきた東京四区。すべては、ふたを開けてみなければわからないといったところか。「日本も世界もどんどんと新しい時代へと衣替えしている。その変化は今後、直接国民の生活にも及んでくる。その賢明な選択ができるかどうかですね。杉並、中野、渋谷は全国でも最も革新的な気風を持つ選挙区です。時代の変化を意識した、斬新な選挙結果が期待されるところですね」と、ある政治評論家は言う。
 健闘が伝えられる麻原尊師。並みいる強豪を向こうにして、当選ラインまで、あと一息である。

多彩な推薦者達――本当の政治を期待したい

 麻原党首を応援する顔ぶれはなかなか多彩である。杉並に住む、元裁判官の立津龍二さんは、「政治を基本から改革しなければ、国民すべてが平等に権利の主張できる、平和で住みやすい社会は実現しない。もう既製品のように画一化された政治家には期待できない」と言う。中野区の医師、中村浩一さんは、真理党の医療改革に関心を寄せる。「とかく政界の汚職が叫ばれる今、清潔高邁で才能に富んだ方に政界の暗雲を払拭してほしいですね」。公認会計士の柴田俊郎さん(杉並区)は、現在の政府と政治制度の利権癒着構造に不満を訴える。「今こそ因習や利権にとらわれない政治家が望まれる」と言う。
 麻原党首の出馬は「布教目的」という声も上がっているが、「日本の未来を真剣に考えている」と言うのは、中野区の都沢和子さん。「声を聞くだけで心が和み、暖かい気持ちになれます」。中野区の学生、鈴木義謙さんは「いつも暖かい微笑と、思いやりを持って私達に接してくれる」と麻原党首への期待を述べる。「国民の声を無視した自民党の消費税導入。具体的な方策を打ち出せない無責任な野党には政治は任せられない」と言うのは、やはり学生の東嘉一郎さん。
 選挙も女性の時代の観が強まっている昨今だが、杉並区のOL、西口千恵さんは、「初めて会ったときの感動は、言葉では言い尽くせません」と熱っぽく語る。「純粋な心を持ち、言ったことは必ず実行される」と言うのは、千代田生命営業主任の松崎美喜子さん。その選挙活動同様、支持者も多彩なようだ。




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