麻原党首演説

1.「教育の基本、一票の大切さ」

◎現代教育を振り返って――豊かな心を育むために

 はい、それではね、今日は「教育問題と一票の価値について」という、政治に関する話をしたいと思います。
 まず、私はいったい、教育についてどのように考えているのかと。今、一般的に教育問題として取りざたされている考えというものは、要するに現代の教育が学力偏重主義であるだとか、あるいは試験重視主義であるということだけれども、私は、そういうことはどうでもいいと考えている。
 どうでもいいと考えているというのは、いったいどういうことなのかとあなた方は思うかもしれない。じゃあ、今の子供達の精神状態を悪化させている試験というものを肯定するのか、あるいは、学歴さえ良ければ一流会社へ就職できるといった、このような学校時代からの差によって自分の生き方というものが決められてしまう社会を肯定するのかと言われれば、肯定はしない。しかし、その前に、私達はもっと大きな、教育の根本的なところに立ち返ってものを考えなければならないんじゃないかということを、私は言いたいわけだね。
 じゃあ、何を言いたいのかというと、それは、私達が心を豊かにするということや、私達の子供が、愛する子供が、ね、心を豊かにするということについて、もっともっと根本的なところから問題を考えていかなければならないのではないかということなんだね。いくら試験の形態を変えたとしても、それは私達の子供達の苦悩というものを取り去ることにはならないのではないかということを、私は言いたいわけだ。

◎教育の根本――子供達の未来を左右するデータ

 では、いったいお前は何を教育の根本だと考えるんだと問われるならば、それはデータですよ、データとお答えしたいわけです。データとはいったい何だというと、こういうことだね。例えばね、ここにコンピューターの機械があるとしよう。まあ、某メーカーの宣伝をするわけじゃないけれども、9801というコンピューターの機械があると、ね、ボディーがあるとしましょう。それは当然、フロッピーディスクを入れなければ動かないと、ね。そして、そのフロッピーディスクの命令以外のことはできないんだと。つまり、どういうことかというと、私達もそれと同じように、与えられたデータ以外の選択はできないんですよと言いたいわけだ。
 そこで現代の教育問題を考えてみると、例えば、子供達の心の現われの一つとしての言葉ね、これはどうだろうかと考えた場合、「現代の子供は、私達の時代に比べてずっとずっと言葉が悪くなっている」と、今のお父さん、お母さんはおっしゃる。しかしね、その子供達が発している言葉の源はいったい何だろうか。だれの影響によって、何の影響によって、子供達がそういう言葉を発しているんだと考えるならば、次のことが言えるよね。
 まず、日常の家庭における会話ですよと。次は、学校で友人同士がなす会話ですよと、ね。そして、その源となっているのは、テレビのアニメーション、あるいはマンガの中に出てくる登場人物の言葉ですよと。そして、子供達はそれを見、学び、そして知識として蓄え、自分の言葉として使っているんですよと。
 ではいったい、アニメーション、あるいはね、そのマンガをだれが書いているんだ。何のために書いているんだ。それは簡単だ。それは、大人がたくさんのお金をもうけるために書いている。そして、そのマンガの影響によって、あるいはアニメーションの影響によって、子供達は言葉を悪くしているんだね。いや、言葉だけじゃないよね。そこに出てくる暴力、あるいはセックス、ね、あるいは人生観といったものが彼らを支配しているんだということにも気付かなければならない。
 しかし、ここに気付かないでだよ、つまり、子供達の根本的なデータに対して注意を払わないで試験制度を改革したとしてもだよ、あるいは試験制度を廃止したとしても、あるいは授業時間を短くしてもだ、あるいは授業中に子供同士の遊びを加えたとしても、それは一向に子供達の本当の意味での成長につながるわけがないよね。なぜならば、授業時間を短くすれば、子供達はその余暇を利用して、本来人生にとってマイナスになるデータを多量に取り入れるわけだからね。だとするならば、試験の廃止、あるいは改革を云々する以前の問題でしょと、私は言いたいわけです。

◎審判者としての自覚を――日本を変える一票

 次に、一票の価値の問題について話したいと思います。
 今の国民の六割、七割の人は、自民党を支持していない。しかし、日本の第一政党はどこかといったら、自民党なんです。そして、もし大多数の国民が自民党の政治に対して不満を持っていて、日本の選挙制度が、例えば昔のギリシャのような、あるいは現代のスイスのような、直接民主政治、つまりね、大きなことはすべて自分達で決めるといったような選挙制度だったならば、あるいは政治制度だったならば、この自民党の悪政や、日本の政治は、即、変わっていたかもしれない。
 しかし、そうではなくて、今の日本国憲法は間接的な政治、間接的な民主政治を説いているわけだよね。つまり、あなた方が心を込めて投票したその一票の力が一つの群をなし、塊となって、そして、ある候補者に対して投票されると。で、一定の票数を取ったならば、その人は例えば衆議院議員、例えば参議院議員、あるいは都議とか県議とか区議とかいった形で、あなた方に代わって政治をすると。つまり、あなた方が本当の意味で政治に参加できる時期というのは、一票を入れるそのときだけなんだ。
 ところがね、そのときにあなた方は、選挙なんかどうせやったって、俺の一票なんかが何の力があろうかと考える。しかしだよ、今、日本国民の四五パーセントもの人がその一票を投入していないんだよ。そしてもし、四五パーセントの人すべてが、例えばある団体に、日本を変えるような団体に、あるいは指導者にその一票を投じたならば、今の自民党は第一党ではなくて第二党になるんだ。つまり、あなた方がばかにしているその一票というものを、あなた方は軽いと考えているかもしれないけれど、その軽いと考えている一票が、この今の崩壊しつつある日本の政治というものを救うことができるんだということを理解しなければならない。
 確かに、今回の参院選で四五パーセントの人が投票しなくても、自民党が敗北し、政局に大きな変化が現われたではないかと言う人もいるかもしれない。しかし、本当の意味で政治が変わったとは言えないよね。そして、今こそ本当の意味での改革が必要なわけだよね。そのためには、選挙の際には立候補している人の主張をよく考え、あなた方の最良の理解の上に立って選挙に臨むべきである。そして、そうすることが、政治を変え、国を変え、そして教育を変えるんだということを理解しなければならない。
 もう一度言うよ。あなた方は審判者なんですよ。あなた方が考えている、その軽い一票によって日本国はできているんだということを理解しましょう。そしてその軽い一票を、重たい一票にみんなでしていこうではないか。そのためには、今自分の一票が軽いと考えているあなた方の考えを変えなければ、日本の政治はどうすることもできないんだということを理解してほしい。
 はい、それでは、これで終わります。

2.「政治家に求められる資質と理想政治」

◎政治の現状――民主主義の理念はどこへ

 今日はね、理想的な政治というものはどうしたら実現されるのかということについて話したいと思います。
 今回の自民党総裁選挙の内容を見ると、納得できないような党内での展開が多数見られます。
 まず、派閥の領袖が――領袖ってわかるかな。要するに親分だね――派閥の親分が、例えば次は海部君がいいと決めたならば、本来、私達一人一人の一票によって国会に出ているはずの議員が、その領袖の言いなりになり、自分の判断を放棄して海部氏に一票を入れると。これが、派閥政治の実態である。つまり、民意が反映されるのではなくて、派閥の領袖の利益というものが、あるいは派閥全体の利益というものが重要視されると。
 いったい、このような反民主主義的な、時代遅れなものの考え方の上に成り立っている自民党政治によって、私達の未来、二十一世紀というものを拓くことができるのだろうか。

◎エゴを背景とした政治がもたらすものは

 確かに、昭和二十年に第二次世界大戦が終了して以来、今まで日本において戦争はなかった。しかし、日本から飛び立った米軍機が北朝鮮を攻撃したり、あるいは、沖縄から飛び立った米軍機がベトナムを攻撃したりしたという事実を私達は忘れてはならない。同じアジアの民族の、同じ肌の色をした者達が、日本を基地とする米国の戦闘機によって攻撃され、多くの人が死んだんだということを私達は忘れてはならないと思う。
 自分達がやってほしくないこと、例えば韓国の米軍が日本に攻めてきて、私達の同胞が死んでいく、例えばフィリピンの米軍が同じように飛んできて、私達の同胞を殺すと。もし、このような事実があったならば、君達は、それを良しと考えるだろうか。
 そして、今の日米の経済摩擦を見ると、自分達のことしか考えないという、エゴの理論が土台となって展開されているというように私には映ります。
 政治を改善するには、もっと政治家一人一人の精神的なレベルを向上させる、例えば、衆議院議員に立つ人達の精神的なレベルを一人一人向上させなければならない。大切なのは派閥ではなくて、国民一人一人の民意がいかに国政に反映されるかである。そして、政治家は自分自身を捨て、国民のために汗水たらして働くと。これこそが本当の政治家ではないかと私は考えます。

◎不安な将来――改められない政治家の姿勢

 外交問題においては、今後もっともっとアメリカのゴリ押しが続いていくでしょう。そして、日本国政府の土台が超一流企業の経済的な基金によって成り立っている、政治献金によって成り立っている体制を崩さない限り、政治家は自己の利益を根本として動くわけだから、その超一流企業の利益を守るために、国民がどんなに困ろうとも、それに対しては見向きもせず、私腹を肥やすために今の政治を続けていくだろう。七月の参議院選挙で自民党が大敗した背景には、そういった政治家に対する国民の怒りというものが反映されているのではないかと私は考えます。
 しかし、次の衆議院選挙ではどうだろうかと。自民党は私達の目を変えるために、若手の海部俊樹氏を国会に送り込んだわけだ。そして、総理大臣という重責を彼に任せたわけだ。しかし、派閥力学からいったならば、海部氏は三木派で、少数派閥である。少数派閥から出た総理大臣は、当然、大派閥の顔色をうかがいながら政治をやっていかなきゃならないと。
 そして海部内閣は、次の衆議院選挙に勝つために、私達に目くらましの一つや二つは仕掛けるかもしれない。例えば消費税を内税に変えてしまうと。あるいは、消費税の名目を福祉税に変えてしまうと。しかし、私達は当然、間接税、消費税以外にも、給料の中から税金を払っているわけだ。だとするならば、その中から、当然福祉については考えられなければならないのであって、別枠を設け、福祉税とすることはおかしい。
 今の政治の流れを見ると、このように多くの問題点、矛盾点を抱えている。この政治の流れを変えることができるのは、あなた方である。もともと日本人というのは、優れた知性を持っている。そして日本は、その知性の優れている人々の集合体だから、その一人一人がよくものを考え、そして正しく判断し、次の選挙に正しい一票を投じるということが、今の政治を変えていく道ではないかと私は考えています。政治を変えることができるのは優秀な知性の国民、あなた方一人一人であるということをよく理解し、そして自己の義務というものを認識し、次の選挙では投票してください。

◎政治家に求められる心の成熟

 いったい、私達はどのような方法によって、この難局というものを乗り越えることができるんだろうか。それには二つのアプローチが考えられる。
 第一のアプローチは、先程も言ったとおり、国民一人一人が自己の判断を信じ、そして、今は間接民主政治だから、それにきちんと参加をし、選択を誤らないということだ。第二のポイントは何かというと、立候補する人達が私利私欲を離れた、高い精神状態の持ち主であると。
 高い精神状態とはどういうことかというと、例えば政治献金を受け取ったとしても、それに対して全く心を動かさないと。政治献金をなされたならば、これはどういう意味ですかと。本当に日本の政治を思って献金をするなら、受け取りましょうと。もしあなたが何らかの利益を考えているなら、私はこれは受け取ることができないと。そういう対応の仕方をすると。
 あるいは自民党でなくても、社会党でも公明党でも構わないわけだけれども、政権を担当した党の一人一人の人達が、国民に対して真の愛を持つということ。自分達は国民のために政治家になっているのであると。自分達は国民の代表なんだということを忘れないと。理想的な政治というものを実現するためには、私達は、精神的な鍛錬をした者、心が成熟している人、こういう人達を国会へ多く送り込んで、今、国会で活動している人達そのものを入れ替えなければならない。そうしない限り、真の素晴らしい政治というものはあり得ないのではないかと考えているわけです。

◎真に善政を行なう人とは

 今から二千五百年前、あなた方もよく知っているお釈迦様、彼がインドに生まれました。そしてお釈迦様は、多くの魂を救済なさり、高い世界へ導かれたわけだけれども、お釈迦様の前生――前生というのはね、要するに、仏教では輪廻思想といって、人間は生まれ変わるものであるという考え方に立ってるわけだけれども――その、お釈迦様になる前の人生において、多くの国で王様になり、そして、高い心の持ち主であるお釈迦様は、その高い心をお使いになり、民衆のためにお尽くしになったという説話が残っています。
 そして、私は今、日本に本当に必要なものは何かといったら、その高い、成熟した心の持ち主が、今のけがれきった日本の政治を浄化する気持ちで国会に登場することではないかと考えています。
 この日本の社会には、宗教的な偏見をお持ちの方がたくさんいらっしゃるでしょう。しかしそれは、宗教というものの本質を理解していないがために起こる、誤った考え方である。宗教というものは、神に頼むものでもないし、仏に頼むものでもない。最も高い宗教というものは、自己の心を磨いていくこと、魂を成熟させていくことである。そして、その磨かれた心、成熟した魂の持ち主、あるいは、高い心、研ぎ澄まされた魂というものを極める修行をしている者、そういう人達こそが、多くの人の応援を受けながら選挙に出、そして国会に立ち、民衆の本当に求めている幸福というものをそこで考える。これが私の理想とする政治です。
 皆さんはどちらを選ばれますか。今までどおりの政治家のタイプを選ばれますか。それとも、魂を浄化し、そして民衆の代表として強い意識を持っている者、これを選ばれますか。その選択は投票所で行なってほしいと思います。
 それでは、これで終わります。






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