麻原党首演説

1.「政治を一人一人の手に――軍事問題を斬る――」

◎軍備に対する二つの考え方

 君達は、国を守るということについてどのような考え方を持っているだろうか。
 もちろん、多様化した現代の国際社会において、外交を抜きにして国を守るということは語り得ない。しかし、私達には大きな二つの選択肢が与えられているんだということだけははっきりと言えるだろう。それは、武力を持って、その武力によって国を守る、あるいは、国家の利益のために攻めるという、力を所有する考え方と、そうではなくて、この多様化した国際社会をうまく利用し、例えば中国の諸子百家の時代に存在した縦横家のように、うまく国と国との関係を利用しながら、弱い国家がキャスティングボートを握るというような方法を採るかの二つの選択肢しかないんだということをまず理解しなければならない。
 そして、自民党は、一応平和憲法である日本国憲法に基づいて武力は持っていないと言っている。しかし、既に自衛隊という強力な武力軍団を持っているということは、君達も知ってのとおりである。自民党の考え方の中には武力を所有することを肯定している考え方があるということは、君達も知っているとおりである。
 次に、社会党は、日本国憲法を遵守し、そして、一切武力を廃止し、そしてスイスみたいに完全な武力を持たない国としてやっていきたいと、非武装中立という考え方を持っている。しかし、これにも問題がある。スイスは確かに非武装中立、武力を持たない国だといわれているけれども、実際には国民全員が、いざ戦いとなったら戦闘できるような訓練をしているといわれている。
 そして、公明党、民社党は、自民党と同じように安保は必要であると考えている。
 共産党はどうかというと、今の自衛隊を破棄すべきであると、今の自衛隊を完全に廃止してしまうべきであると、そして、軍隊を持つべきであると、名前を変えてね。つまり、今の自衛隊に代わる軍事力を持つべきであると言っていると。これが、現在の大きい政党の一つ一つの考え方であると。

◎軍備に伴う二つの問題点

 で、私はどう考えるかというと、まず、軍隊を持つ持たないということは、これは国民の総意によって決せられなければならないものだと思う。現代は、間接民主主義である。つまり、君達の真心込めた一票によって国会に代議士を選出し、その代議士が君達に代わり、国政の重要なものに対して一票を入れるということが今の政治形態である。そして、軍事力を所有するかしないかというのは、これは国民にとって大きな問題なんだと。
 その大きな問題とは何かといったら、二つあるわけだね。一つは、私達が汗をして働いたお金の一部である税金を使って軍事をまかなっているということ。それからもう一つは、今の国際事情というものは社会主義的な国家か、あるいは自由主義的な国家かのどちらかにだいたい所属しているから――もちろん第三国という考え方もあるけれども、一応はどちらかの影響を受けているから――どちらかの陣営に入らなければならないと。日本の場合は、自由主義陣営と呼ばれるものに入っているね。これは、日米安保条約をもととして自由主義陣営と呼ばれるものに入っているわけだけれども。ということは、例えば、もしソビエト・アメリカ間の戦争が起きたならば、当然それに巻き込まれてしまいますよという問題があるんだと。この二つの問題を考えなければならない。
 逆に、日米安全保障条約があるから、ソビエトが日本に攻めてこられないんじゃないかなという考え方もある。
 そして、こういう条件をもとに、私達は果たして軍隊を持った方がいいのか、あるいは持つべきではないのかを考えなければならない。そして、もし持つとするならば、今の憲法、軍隊を持ちませんよという憲法を改正しなければならない。今、憲法上は平和憲法である。よって、軍隊を持たないという憲法であるということを改正し、軍隊を持ってもいいよということを、国民投票によって決するべきである。
 次に、もし持たないとするならば、果たして日本という国は外国から攻め込まれないのかという懸念があるわけだけれども、これもまた、確定的な要素というものがないと。確定的な要素というものがないということはどういうことかというと、要するに、攻めてこない保証はないんだということだ。
 じゃあ、麻原はいったい軍隊に対してどのように考えているんだと。じゃあ、今の日米安全保障条約というものは完璧なのかと。私はそうは思わない。もし、日本が自分の国を守るとするならば、それは少なくとも外国の援助なしに守るべきであると、ね。

◎軍事費の問題点――アメリカの圧力と税金の無駄使い

 じゃあ、なぜそういうことを言うんだと。今、アメリカの駐留に対して、日本はある程度の経済的な援助を行なっている。そして、米国議会の日本に対する圧力は、次には日本に駐屯している米軍のすべての経費というものを日本で負担してくださいと。そして、日本で負担するということは、私達の税金をそれに使いなさいよとアメリカは言っているわけだ。
 そんな馬鹿なことはないよね。なぜかというと、アメリカ人の給料を日本人が負担しなければならないと、ねえ。そして、いざ戦争になったとき、アメリカ人が果たして日本人を守ってくれるのかという問題もあるよね。それは、例えばアメリカの軍艦が日本の海上保安庁の船を標的に実演練習をしたという話もあるわけだ。つまり、アメリカ人にとって、日本人というものは働き者の蟻と同じ感覚であると。アメリカは、使えるものは使えという感覚で日本を見ているんではないかなと私は考えている。
 では、その証拠は他にあるのかと言われたら、もちろんありますと、ね。例えば、戦闘機の問題がそうだ。あるいは軍事施設の問題がそうだ。確かに、日本の今の自衛隊は、アメリカ的な試算をするならば、GNPの三パーセント以上の税金を使って防衛をまかなっている。しかし、そこで買われている、例えば戦闘機、例えば戦車、こういうものは実戦的ではないといわれていると。
 そして、それだけではなく、結局貿易黒字を解消させるために、アメリカがゴリ押しをしてその戦闘機を売りつけ、しかも、その機能における軍事機密的なことは明かさないと。つまり、私達は私達の国を守るという名目のもとに、大企業の利益を保全するという名目のもとに、日本国が売り渡されているんだということを意識しなければならない。
 そして、今回の消費税の問題。これを今、自民党では福祉目的税にするとかいろいろ言っているわけだけれども、もし、智慧ある者が、軍事費をきちんと使い、そして本当に防衛に必要な費用を捻出し、必要でないものを福祉に回すとするならば、消費税の廃止は簡単にできるはずなんだね。ところが、先程も言ったとおり、企業が豊かにならなければならないと。そして、自民党はその企業の政治献金によって成り立っていると、ね。そして、政治献金によって成り立っている自民党の政策のやり方によって、だれが迷惑を被っているかというと、一般の、本当に汗水流して働いている人達が迷惑を被っているわけだ。

◎決定権は国民の手に

 軍備については、必要だと考えるならば、きちんと国民投票によって、軍備は必要であると、私達の国を守るということは必要なんだという意識を持たなければならない。
 次に、軍備が必要でないとするならば、もし、防衛が必要でないとするならば、例えば近隣の国に大いに経済援助を行ない、そして、もし日本が攻められた場合、あれは私達の友人の国である。今まで恩を受けているから私達が協力して守ってあげようというぐらいの国際関係の改善がなされない限り、私達は、私達の国を守ることができないんだということをまず理解しなければならない。
 そして、その前に考えなければならないことは、私達日本国民一人一人が憲法の下に平等であるわけだから、日本国憲法は、軍隊を持たないと、武力を持ちませんよということが日本国憲法の原則だから、これに基づいて今の政治を考え直してみなければならないんではないかと私は考えます。だから、私の防衛に対する考え方は、まず、国民投票で今の憲法を遵守すべきであると、平和憲法を遵守すべきであると考えるならば、当然自衛隊は廃止すべきであると、当然安保条約も破棄すべきであると、ね。もし、軍隊は必要であると、日本国を守らなければならないんだと、防衛する必要性があるんだと考えるならば、国民投票を行ない、憲法を改正し、国民の了承を得て、堂々と軍隊を持つべきである。
 既に、第二次世界大戦が終了して四十数年が過ぎようとしている。私達は外国に対して、第二次世界大戦の償いは十分にできたはずである。日本国を日本人が守るということに対しては、どの国も干渉することはできないはずである。そして、この軍隊が合憲であるか、あるいは合憲でないかを判断するのは、あなた方の意思なんだということを理解しなければならない。あなた方一人一人がそれを考え、そして討論し、選択をしなければならないんじゃないかと私は考えます。

◎混沌とした国際情勢の中で――根本は一人一人の選択に

 私自身の個人的な防衛についての考え方はどうだといったら、もし現代、今の時代がファシズムであるならば、私は、例えば右だからこうだと、例えば左だからこうだと言うことができると。しかし、現代の政治形態はそうではない。あなた方の総意というものが政治の中に反映するわけだから、例えば自衛隊を破棄すると、そういう方向に固まれば、次はそれに対する外交について十分に練って、あなた方の総意を生かせるような国政を作らなければならないと考える。もし、国を守るための防衛というものが必要だよと考えるならば、それに合ってできるだけ税金を使わないようにして、効率的に軍隊を編成し直し、そして余ったお金をできるだけ福祉、あるいは教育といったね、未来の日本を作るための資金にするべきだと考えています。
 ソビエトの経済崩壊、ね、これはもう、皆さんも知っているかもしれないけれども、ソビエトがどんどんどんどん借金をし、そしてそれを紙幣の増刷という形でまかない、インフレーション、物価上昇、賃金上昇といったね、こういう経済的な問題によって崩壊しつつある状態であると。あるいは中東情勢においてアメリカの力の弱体化、こういうことを考えると、一九九〇年代の政治というものは、大変読みづらい動乱の様相を秘めているのではないかと私は考える。そして、それについては、あなた方も普段の生活をしながら、自分自身の目で、あるいは耳で政治に興味を持ち、そして、あなた方のレベルで正しい選択をし、日本の未来というものを作り上げてほしいと考えています。
 防衛の根本はあなた方の選択にある――これを最後の言葉として今日の私の話を終わりたいと思います。

2.「すべてに分かち合える幸福を」

◎本当の幸福を求めて

皆さんは、天命徳政という言葉を、ご存じでしょうか。天の命によって徳の政〔まつりごと〕を行なう。天の命とは、いったい何でしょうか。
 最後にお聴きになった、「マハーカーラーの詩」。このマハーカーラーというのは、インドの創造・維持・破壊を行なう破壊神といわれているシヴァの別名でもあります。そしてこのシヴァ神の詩は、現代のいろいろな苦しみにあえいでいる私達を見て、シヴァ神が大変悲しんでいらっしゃることを表わしています。シヴァ神は私達が自己の苦しみを破壊し、そして本当の幸福になることを心から望んでいるのです。そのシヴァ神のご意思が天命なのです。
 そして天命徳政とは、シヴァ神のご意思どおりに行なわれる政治のことを指します。例えば一般の生活を考えた場合、大変物価が高い。そして、少しずつ少しずつ、私達は貧しい生活を強いらされるようになってきているのです。これは何とかしなければならない。
 そして教育問題。子供達は日々の生活の中でたくさんの正しくないデータ、例えばテレビによる暴力の場面だとか、あるいはセックスの場面だとか、あるいは麻薬などの薬物の場面だとかを見ながら、それを自己のデータとして子供達は取り込んでいっている。あるいは悪口、あるいは盗み、暴力といったたくさんの悪いデータを、自己の内側に取り込んでいっている。そして成長し、苦しむ。このままではいけない。
 例えば福祉。私達が六十歳、七十歳になったときに、いったい安らぎはあるのだろうか。このような問題に対して、本当に心から取り組まなければならない。
 そしてそれは、心を磨く修行をしている者達が本当に目を覚まし、他の人の利益のために努力をしなければならない。そして、今がその時期なんだよというのが、「天命徳政」の意味です。

◎安らぎと豊かさを

 私と私の仲間は、まずアストラル音楽によって、皆さんに少しでもリラックスした空間が提供できたらなということで、この運動を始めました。 そして、「消費者共同体」。これは皆さんの台所を少しでも楽にしていただくために、まず野菜と果物を、現在販売されている市価の、まあだいたい六割引くらいのね、値段で提供できたらということで、運動を始めています。
 そしてもう一つは、「新しい医療を考える会」。これは現代の西洋医学だけではなく、中国の医学、インドの医学、チベットの医学、あるいはヨーガを背景とした医学といったものをミックスさせて、皆さんに提供しようと。今まで、例えば肩凝りだとか腰痛、あるいは現代医学では治らないといわれていた病も、これでかなり治るのではないかと思っています。まあ、実際にそういう体験談を豊富に持っています。そしてそれを、皆さんに提供しようと。これが“有言断行”なんだということです。

◎“有言断行”とは

 有言断行とは何かといったら、まず、言ったことは必ず行なうと。するとね、例えば今回のこのコンサート、まだあまり人が集まっていない。まだ麻原の運動というものは、みんなに浸透していないんじゃあないかと思うね。いや、それは確かにそのとおりですと。そして、この渋谷・中野・杉並で、これだけ多くのコンサートを開けば、そんなに人が集まるもんじゃあないでしょうというふうにスタッフは答えるでしょう。
 しかし、私はそうは思わない。この少なくとも三つの運動――もちろん五つぐらいの運動を用意していますけれども――少なくとも三つの運動、三つの運動とは、綺麗な音楽を聴いていただいて、皆さんにリラックスしていただく。そして、皆さんの台所を少しでも楽にしていただいて、ゆとりのある生活をしていただくと。そして、皆さんの病が本当に消えてしまったらなという思いから、皆さんに新しい医学を提供すると。この三つの運動が少なくとも本当に動き出す十月中旬ぐらいからは、間違いなく、中野は中野の人達でコンサート会場がいっぱいになると、渋谷は渋谷の人達でコンサート会場がいっぱいになると、杉並は杉並の人達でコンサート会場がいっぱいになるというような状況をつくりたいと思います。そして、そうするために努力することが、天命徳政を実践することなんだと、そして、それこそが有言断行でもあるんだということです。

◎真実をもって

 仏教の教えに十の戒めというものがあります。一つは殺しをしない、そして生き物達を慈しむ。第二に盗みをしない、そして人に施す。第三に邪淫をしない、これは愛のないセックスをしないということ。第四に嘘をつかない。第五に悪口を言わない。第六に必要のない言葉を話さない。第七に人と人とを仲たがいさせるような言葉を話さず、人と人とを心から結び付けるような言葉を話す。第八に心に貪〔むさぼ〕り、第九に心に嫌悪、第十に心に真理を否定するようなこと、これを考えないと。  そして、この中の第四番目、嘘をつかないと。この嘘をつかないという言葉を発展させた言葉、それが有言断行です。そして私は、“有言断行”、それからもう一つ“天命徳政”、この二つの言葉を今回キャッチフレーズとして、皆さんと接していきたいと考えています。

◎歩みを共に

 私も二十代の前半から、この東京都の中野の近くに住んでいました。その頃貧しかった私は、ね、その日に食べられないこともあって、まあ果物だけをかじって、その日を終わらせたりとかそういうこともあった。そして、そういう貧しさのわかる者でなければ、本当に台所の苦しさというものはわからない。そして、台所の苦しさがわかる者であってこそ、初めて本当に皆さんの立場に立てるのではないかと思います。
 そしてこれからも、皆さんの苦しみを私の苦しみとして、一緒に歩いていきたいと考えています。今の日本を、そして今の子供達を、そして今の社会のあり方を一緒に考えていきましょう。そして、一緒に努力をしようではありませんか。






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