−−−第五章−−−
大きな桃と間違えられていたタイムマシンも故障してしまったので、
当分の間、【瀧 一矢】はおじいさん達と暮らす事になりました。
一矢はタイムマシンの試乗テストをしていただけなのです。
その時に、運悪く!?おばあさんに見つかってしまったのでした。
おじいさん達その事を何回話したか分かりません。
しかし、ボケ老人達に理解させる事は不可能でした。
「桃太郎、お前はわしの若き頃の野望を叶えるために生まれてきたんだと思う。
だから、お前はその野望を叶えないといかんのだぞ!!」
一矢はもう口答えをする気はとうの昔に失せていました。
逆らえば殺されると言う事を悟っていたからです。
仕方がないので一矢は話を合わせる事にしました。
「その野望って何ですか?」
「それはだな、日本一強い男、つまり最強の男になることじゃ!!」
「へっ?」
一矢が聞き返してしまったのも無理はないでしょう。
すでに、このおじいさん、おばあさんは日本一強いと思っていたのですから・・・・・
「腑抜けた顔をするでない!!」
「おじいさん達より強い人がいるのですか?」
「この辺では見かけないがのぅ・・・・・
だが、鬼ヶ島にはたくさんいるらしいぞ!!
なんてたって鬼だからのぅ!!」
「おじいさんは鬼ヶ島に言った事ないんですか?」
「若い頃行こうとは思ったのだが病にかかってのぅ。」
「どんな病気ですか?」
「脚気じゃ。」
「へっ?」
桃太・・・・・いや、一矢は目が点になりました。
「脚気・・・・・ですか?」
「そうじゃ、脚気じゃ!!」
「ただの脚気で鬼退治をやめたわけですか?」
「何!!桃太郎、おまえは万全の体調でないときに鬼退治に行って、
鬼どもにわしが殺されてしまえば良いと思っているのか!!」
「い、いや、そんな事は・・・・・お、思ってもいません!!」
おじいさんが怒りだしたので一矢は慌ててそう言いました。
「おじいさんなら『多少のハンデがあっても勝てるのではないかな?』
と思っただけですよ!!」
とつけ加えました。
これでどうやらおじいさんの怒りも静まったようです。
「桃太郎、鬼はいろんな妖術を使うという噂じゃ!!
だから万全の体調でなければ鬼退治に行けなかったのじゃよ。
だが、その時の無念が今晴らされようとしているのじゃ!!
頼んだぞ、桃太郎!!」
おじいさんはそう言うと桃太・・・・・いや、一矢の肩を叩きました。
「へっ?」
一矢は、おじいさんが言った事をすぐには理解できませんでした。
そして、自分に課せられた使命を知ったとき、一矢は呆然と立ち尽くしていました。