我が愛しの回転寿司

1993年10月作品

by Kenzi Mazima




日本に生まれてよかった。これが、お寿司を今まさに口に運ぼうとしている人々の素直な思いである。わたしはみなさんと同じように、かなりお寿司が好きなのだ。

しかし、お寿司の専門店にはなかなか足が向かないのは、やっぱり値段が高いからだろう。その専門店になかなか行けない人のために(かどうかわからないが)回転寿司屋さんがある。
回転寿司屋さんでは、お寿司がこの不況の中でも景気よく回っていて、人々の食欲はいやおうなしに高められてしまう。このお寿司の専門店についてはわれわれ関係者の中に深くたずさわっているかたがいるので、くわしい話はそのかたにおまかせすることにして、庶民の立場からの回転寿司理論をこれからくりひろげて行こうとかと思う。

わたしは最近、回転寿司を食べることを趣味の一番にあげられるほどひんぱんに食べていて、いつも一緒に行く友人もいる。もう、かれこれ1年近くつづいており、今年に入って少なくとも10万円を醤油につけて口に運んでいる計算になってしまう(笑)。今年に入って、まだ4店ほどしかまわっていないが、そのうちの3店のおはなしをすることにしよう。

まずA店。家から近く、開店時間も11時30分と早いので、土曜日は格好のターゲットとなったのである。おみそしるも飲み放題でいうことなしで、かなり長期間にわたって通いつづけることになった。
皿の値段は120円220円300円500円。500円は大トロで、店の中では「究極の大トロ」と表示されており、頼みづらさを増していた。「この大トロを食べられるようになったらココも卒業だな」と友人とよく話していたのだが、結局一度も食べずに卒業してしまったようだ(笑)。

そんなおり、いつものようにお寿司を食べていたら、一見、成金風のおじさんと若い愛人のようなおばさんが突然入ってきて、なんと!この大トロだけを食べ始めたのである!ぱくぱくと。
友人とそれを間近で見ていたわたしは、ただ口を開けて見守るばかり・・。 Sushi image1 結局2人で20皿以上食べて、店を後にしていったのだった。「おいおいバブルはどうなったんだ・・」と頭は混乱状態・・、「よしオレも大トロだ」と、脳には叫んだが、声は出なかった・・。

最近ではこのA店、いきなりわさびが辛くなったり、ひんぱんに握っている人が変わってお客に対する態度もコロコロと変わるので(笑)、次におはなしするB店によく足を運ぶことになったのである。ちなみにこの店の回転ベルトのラップタイムは1周3分17秒であった。

次にB店、ここは最近新しく生まれ変わったようで、立て看板もお店の前にずらっと並べられていている。さっそくいつもの友人と入ってみることにした。まず気がついたのが営業時間である。午後5時から深夜1時までというわれわれにとってはとても都合のよい時間帯である。

さっそく席に着き回転寿司屋さんではおなじみのパック緑茶を湯のみに入れ、おもむろにお湯を注いだ。メニューを見るとまず気になるのが値段である。この寿司屋さんでは120円200円300円という設定で、大トロは300円という低価格に設定されていた。まずわたしは手はじめに回転している白い魚に手をのばした。
わたしは回転寿司はよく食べるが、魚の名前はてんでわからないほうである。この白い魚はじつにおいしいものであった。
しかしこの白い魚はもう回転していないのである。今の白い魚を食べたいのだが、さてどうやって注文をしてみようかと考えた結果、メニューに載ってはいるが、どういうものかわからない魚をかたっぱしから注文することにした。
わたしは最初は貝の仲間かも知れぬと、ナントカ貝を頼んでみた。来た!白い。手が高速で伸びる。
しかし、違うのだ。あの独特の味と、なんとも言えないかたさは、この貝には存在しなかったのだった。

そこで次は「えんがわ」というものを注文してみた。寿司職人の右手が激しくうなる。来た!これもまた雪のように白い。こんどこそはと手がのびる。これだ!うまい!ついにわたしは生涯最高の伴侶を寿司屋で発見したのであった。
これ以来わたしのえんがわ病がはじまり、これをしずめるには、後日の「タイ」の出現を待たねばならないことになる。

しかしこのB店は良い。かなりお客様を大切にしている。握っている人はいつもひとりなので大変であろうが、味はいつ来ても変わらないという最高のメリットがある。わたしは、この握っている人に、 Sushi image2 いつからか「えんがわ」のお兄さんと呼ばれるようになった。友人はもちろん「ウニ」のお兄さんである(笑)。「ウニ」のお兄さんは実はもうひとりいるのだが、そのもうひとり「ウニ」のお兄さんを紹介しよう。

彼はたまに実家に帰ってきて、わたしたちとここに回転寿司を食べに来る。お金には糸目をつけないという特徴があり、ひどいときは、「ウニ」2皿、「ウニ」2皿、「ウニ」ひとつと、連続で頼むつわものである。この店のウニを見るとこころが踊るという素晴らしい発言もしている。

そんなとき、この店にわたしの人生を揺るがす魚が現れたのである。それはまさしく「タイ」であった。寿司屋の専門店に出入りする人には、なんだタイなんていつも食っておるよ、という意見をいただきそうだが、回転人にはとても珍しいネタである。わたしはおそるおそる「タイ」を注文して食べてみた。うまい、うまいのだ。こんなすばらしいネタがあるとは、と、こころがスキップする。

その時なんと「タイ」が数多く回転しはじめていたのであった。これはまさに「タイ」のダンス。
まるで亀を助けたわたしが竜宮城に案内されたようである。そこに「えんがわ」も混在しはじめ、これはもう寿司天国。わたしはサイフの中身が底をついても後悔なしと、目の前のダンサーを高速で手に取っていったのであった。このときはじめて3000円を越えた。これが週1回以上だからつらい。しかし、もうあともどりはできないのだ。
ちなみに、ここの回転ベルトのラップタイムは3分35秒であった。皿が3周すると10分放置された状態になるということである。

これは、A店に通っていたときのおはなしである。たまには違う店にでも行こうと新天地を求め、旅に出た。家からかなり遠いところにC店を発見した。日曜の昼どきともあってたくさんの(仲間)が席に座っており、いい店発見かと思わせる。
さて、店に入り、気になる皿の値段に目をやった。100円200円というかなり低価格の設定である。これはどうしたものかと、皿に手がのび食べてみた。ま、まずい・・最悪だ。友人も顔をしかめる。わたしはひと皿で外に出ようと友人を説得したが、それは寿司屋さんがかわいそうということで、数皿食べるはめになった。

この情けがわれわれ回転人にとっては致命的な間違いであることに気づくべきだった。握っている人をよくよく観察してみると、まるでファーストフードの店かと思わせる制服を着込み、手にはビニール袋をすっぽりとかぶせた高校生が機械で作成されたご飯に寿司ネタを乗っけていたのであった。

その絵はまるで、ラジオでも作るかのような手順である。わたしたちはその姿に仰天し、即座にこの店との決別を決心したのである。どうやらファーストフードのような制服を着ているところはだめなのではないかと、いやでも頭にインプットさせられたのである。この店にわたしたちはFランクを与えた。はやく忘れてしまいたい店である。

以上のように回転寿司屋さんにもおいしいところとそうでないところが当然ある。せっかく日本に生まれたのだから、お寿司をできる限りたくさん食べよう。まだ、わたしも研究しなければならないことが山のようにあるので、これからも毎週食べつづける必要があるのである。


(終わり)


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