I-beam:
Spar(スパー=主桁)とShearwebs(主桁間補強材?)からなる片持梁構造のI-beamは、軽量で強度が出せるので古くから航空機の主翼やその他の構造物に広く利用されています。これを模型飛行機に利用した場合、上下のスパーのちょうど中央にShearwebsを配置する事になりますが、隙間なくリブとスパーに接着するのは容易ではなく、テーパー翼だったりすると一層難しくなります。名機サギッタ(Sagitta600)はこのI-beam構造で、製作の手間はかかりますが大変頑丈です。多くの場合はこのShearwebsはスパーの前か後ろ側へ接着されるデザインとなっており、製作は容易になりますが、それでも上下をプランク材、左右をリブと確実に接着させるのは困難で、隙間が空いている場合が多い様です。中には製作者によりこの部品は省かれたりします....^^; さてこのShearwebsとは一体どういう部品なの物か? 何故用いられているのでしょう。

ここでI-beam構造の主翼(片持梁)に正荷重(正揚力)がかかったと想像します。上下スパーは逆方向にズレようとするのですが、これにShearwebsが応じています。そして上部スパーには圧縮荷重、下部スパーには引張荷重が働きます。それに上下メインスパーを曲げて引離そうとする力もShearwebsが応じています。ちなみに木材の圧縮:引張応力比はで、1:3以上で、単純には上部スパーが下部スパーの3倍以上の強度を有する事が必要となります。そして破断するのはたいていは翼上部からです。実際は対称翼でない限りキャンバーの強い上面プランクが強度の助けとなる為、上下スパーは同じサイズの材料が使われているようで、強度が十分であればその方法が何かと便利ですし....。肝心な事は正確に取り付けられたShearwebsは翼の強度を数倍以上高めるという事です。

さて、この重要な強度部材であるShearwebsが疎かにされがちなのは、主桁間補強材という日本語がその意味を曖昧にしている為ではないでしょうか? Shearwebs(しぃやぁぁうえっぶず) =>剪断応力を発揮する部材?
D-tube :
もう一つShearwebsの重要な働きは、前縁プランク翼においては前縁材、プランク材、メインスパーと共にD-tube構造を形成して、翼の捻じれ荷重に対してもガッチリと応力を発揮 する事です。だから隙間があっては効果半減!! Shearwebsが上下のプランク材に隙間なく接着され、完全なD-tube構造を形成していれば、パストラルのような1mm厚バルサ材の翼でも驚く程ガッチリした構造となります。前述のスパーの後ろ側へ接着されてようなデザインが多いのですが、これはI-beamとはならず、C-beamとなります。本来C-beamも同等の応力を発揮する筈ですがそれは上下スパー間にShearwebsが配置されている場合であって、上下スパーの前か後ろ側へ接着されている構造では製作はかなり容易になりますが、これではShearwebs材の発揮する応力と言うよりは接着材の剪断応力で荷重を受けている事となります。普通はそれでも充分な強度を発揮出来るくらいの丈夫なメインスパー材を設定してあるのでしょう。中には一番右側の様な物もありました。

KRCのKeithおじさんも、「機体製作で最も時間をかけるべき個所はShearwebsの取付けである」と言っており、さらには「もし隙間が空いてしまったら迷わず折って捨て、作り直す.....どうせ数分もかからないのだから」と言っていますが、私は翼根から組むので、コンマ数ミリ程度の隙間であれば翼端のリブベイに使いまわしています....^^。
Shearwebsの材料:
さて小型電動RCグライダーにおいてこのShearwebsにはどれくらいの材料が必要なのでしょうか? ムサシノ・パストラルには確か1.5mm厚のバルサ材が使われていたと思います。木目は縦方向で(スパー垂直方向)、この縦目に使用する事が大変重要です。リブと隙間なく接着された縦目の1.5mmハードバルサを縦に押し潰すのに必要な力はどれくらい必要でしょうか? それは大人一人分の体重をかけても潰す事は出来ないでしょう(私は重い....^^;)。たかが1.5mmバルサ材でも四方がちゃんと接着されていて、歪みが生じなければればそれを縦方向へ押し潰すのは容易ではありません。勿論対角線方向へ変形させるのも容易ではありません。
前縁材は要らない?!:
一年程前の事ですが、QRPロッキー/エレクトラ系の機体を飛ばしている会員の方に聞いてみました。ある方はQRPの機体は「きゃしゃ」だとおっしゃいます。良く聞いてみるとこのハーフプランク翼には前縁材が使われていないとの事。当たり前だと思って使用していた前縁材が使われていないとは驚きました!! しかし良く考えてみると、強度的に問題が無く前縁半径がちゃんと整形出来ればそれで良い訳ですネ。 最近流行の層流翼型類は前縁も尖っているし、サイズ的にも小型機では上下プランク材の突き合わせで十分なのでしょう。さらに軽量化も出来て目から鱗でした。但しD-tube構造を実現するには正確な接着が行われる必要がありますね。
ではメインスパーも省けるか?:
今度はオラライトでカバーされた主翼のスパー構造はどうなっているのか覗いていると、「この機体はスパーらしき物が無いんだよねぇー」(?!) とおっしゃる。それではここから覗いて見えるのは何でしょうと聞いてみると、その構造は3mm厚くらいのバルサ棒に半分切り込みが入っておりそれにリブを直角に差し込んで組み立てるとの事。ナール程昔作ったUコン機の様だ。つまりその棒には上部に切り込みが入っている筈で、それは組み立てを非常に容易にすると同時に棒材下部はスパー(下部スパー)の働きで上半分はShearwebsをかねるという合理的な構造の様です。しかしそれでは通常の上下スパー構造程の強度は発揮出来ない筈。そこで私は、このサイズでは棒材としてのメインスパーは必要無いのかも知れないと思いました。器材の軽量化と複合材の普及によって昔から常識的な構造も見直されて当たり前。ヒノキのスパー材を左右計4本も使用するとしないとでは2m級の機体では馬鹿にならない重量となります。
そういえば初期電動パイロン機、Graupner「Race Rat」にはスパーが無かったのでした。それでもあの薄いMH32翼の強度に問題が無かったのはスパンがわずか1mしかないのと、ちゃんとした前、後縁材が備わっていたからでしょう。余談ですが「Race Rat」からは、ギリギリ後ろの重心位置とそれに対する付属のエレベーター舵角ゲージの角度の少なさ(!!)、翼根エルロン(!!)等、学ぶ事が多かったと思います。そういえばジンプロップSimpropのBienne(ビーネ)は1.5mmフルプランク翼でメインスパーは無く、3mm程のShearwebsのみでした。ドイツ人はこのあたり早くから解っていたのでしょうかね? 但しビーネのShearwebsは横目で、多分最後はそこから破断したと思われます。
そこで考えたのが、ハーフプランク翼で上下スパーの変わりにカーボンロービングを張り付け、1.5mmバルサ縦目のShearwebsというI-beam構造です。そして前縁材は使用せず、前縁プランクの突き合わせで、但し長期使用を視野に入れて前縁にも傷防止のカーボンロービングを張り付けます。これで2m級のヒノキスパーの主翼と比べて100g程軽量で十分な強度を持った主翼が出来れば良いなと思います。
400モグラで試してみる:

ちょうど400モグラの主翼(スパン1.4m弱)製作予定があり、さっそく実行。材料は大量にあるタワーホビーの1/16”バルサ(約1.6mm、17g-24g)のみ使用。厳選素材ではないので良さそうな物を選び出し、両面をサンディングして一皮剥きます。こうしておくと後工程でのサンディングを大幅省略出来ます。下面プランク基本工法で組み立てます。上半角は二段。その前に素材をチェックしてみると、タワーホビーのバルサ材は主翼に使えそうな物は全てメディアムハードで、試しにプランク方向に曲げて見ると、相当硬い。そこで上下スパー変わりにカーボンロービングを張り付ける必要はなさそうなので今回は無し。長期使用を視野に入れて翼左右中央パネルの下部プランク前縁のみにカーボンロービングを張り付けます。これも飛行強度的には省略出来そうですが....。
組みあがった翼を捻じって見ると予想以上にガッチリ!! 手触りではこれほどの強度は必要無いとも思えます。中央上半角接合部も瞬間接着剤でButt-joint(突き合わせ)にカーボンロービングでスパー方向にリブ一区間補強したのみ。つまり、このクラスでは前縁材もメインスパーも省略出来るという事です。重量はオラライト仕上げで140g。 使用したバルサがちょっと重かったかナ? しかし良質の物であれば1mmバルサでもイケそうです。その際は上下スパー変わりにカーボンロービングを張り付けるI-beam構造が必要でしょう。
飛行強度は申し分なく、このE387翼の浮きはDisco400のフラットボトム系の比ではありません。今回は後縁にも気を使ったのが効いているのか、手投滑空テストでは田圃二枚分必要です。飛行強度的には頑丈過ぎるとも思え、固めの1.5mmバルサオンリー構造はもう一つ上のクラスでも使えそうです....^^。
D-tubeを正確に組めばスパーレス構造で十分! 前縁材も無用! さてこの結果を踏まえて次期田圃競技機を作ります!
