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日蝕貧乏知恵者猫の
2001年3月23日(金)〜24日(土)のオーロラ報告


オーロラ活動度予報:High
 友人たちはアンカレジに向かい、今頃はアラスカ最後の晩餐中?
 私はロッジを出て、ホームステイ。
 昼間も仮眠している時間はなく、そのまま夜に突入!
20:00  ゲストブックに書き込んで下さったきなこさんご一家が、ロッジに到着。
 ロッジのホストは一家でアイスホッケーの試合観戦に出かけてしまったので、ご到着時のご案内を私がすることになりました。(^_^;)
 想像通りアウトドア大好きとお見受けする素敵なご一家。
 さて、長旅の疲れを癒す暇もなく、オーロラの乱舞になるか?
21:00  今夜は出そうな気配。
 オーロラ活動度予報もHigh。
 太田さんと一緒に遅い夕飯を食べていたのだけれど、なんだか落ち着かない。
 窓の外を見てみると、相当明るいオーロラが立ち上って、既に頭上を通り東西をつないでいます。
 ゲッ!
 夕飯もそこそこに・・・ロッジに戻る太田さんに「きなこさん達に知らせて!」と告げて、支度を始めます。
22:00  再び明るい光の立ち上がりが東西からやってきました。
 ゴウゴウと音を立てているかのよう。
 ホームステイ先の奥様も気になるようで、「早く機材をセットしないとネ!」と声をかけて下さいました。
 北の空高い所でグルグル渦を巻いたり、ねじれた複雑な構造を見せたり、既に動きは活発です。
 奥様と二人で眺めていたのですが、オーロラが少し静かになった時に、とても明るい流れ星がカシオペアから北の地平線に向かって斜めに飛んでいきました。
 かなり明るく、またゆっくり飛んでいたので、私が「あっ!シューティング・スター!」と叫んでから奥様がその方向を見ても、まだ見ることが出来たほど。
 そして、それは
とても鮮やかなオレンジ色の軌跡を描いていました。
 奥様は「流れ星はよく見るけれど、大抵白っぽいわよ。あんなオレンジ色のは初めて!」と興奮気味。
 そして、とても明るかったので「ミールじゃないわよねぇ!」なんて冗談も出たりして。

 ずっとTVを見る機会がなく(TVをコンスタントに見られたのはアンカレジ滞在中のみで、すっかり浦島太郎状態。^^;;)、ミールのことは気になりつつもどうなったか知らなかったのだけれど、23日にフィジー沖に落ちたそうですね。日本上空を通過したのは昼間で、見えなかったとか。
 おまけに、タコベル(全米のタコス・チェーン店)が、フィジー沖にターゲットを置いて、そこにミールが命中したら全店無料セールを計画していたとか・・・。
 そういうニュースは入手できなくて、ミールの落下もタコベルの話も、知ったのは26日にフェアバンクスに到着した知人と会った時でした。
23:00〜
23:10
 もしかしたら今後ずっと忘れられないだろうというオーロラが出現したのはこの時でした。

 再び東の空から明るいサーチライトが立ち上り、次第にうねりだしていました。
 空には明るい緑白色のオーロラがうねっていて、ところどころにはピンクや赤い色がチロチロ見え隠れしていますが、東天の一部分はエアブラシで深紅のインクをペイントしたような・・・良く見る夜空に紛れてしまう赤ではなく、そこにクッキリと赤い色がペイントされているのが分かる赤なのです。
 徐々に燃えさかる炎のように色の濃さを増して、車のテールランプが目の前に近づいてくるように、見る間に光度を増して赤い光が自分に向かって迫ってくるような感覚に襲われました。
 本当に山火事のようです。
 奥様も私も大興奮。

 
ブラディ・レッド!
 全天が真っ赤に染まってはいないけれど、明らかに普通の赤いオーロラとは違います。
 もし全天がこの色に染まったとしたら・・・やはり綺麗というよりは不気味でありましょう。
 奥様も私も「こんなの見たことないよねぇ!すごいっ!」とキャアキャア大騒ぎ。
 ロッジの雪原では、きっと太田さんときなこさんご一家もご覧になっているのだろうな。このオーロラに出会えて良かったよねぇ!と思ったり・・・。

 そうこうしながらも、フィルムの残りを気にしながらシャッターを切る私。
 外に出るときに随分フィルムを持って出た筈なのに、この時点までに使い切ってしまい・・・この前代未聞の
血の滴るようなオーロラを撮影しているフィルムが持って出た最後のフィルム。
 もし、このフィルムがなくなってしまったら、あとは指をくわえて見ているしかありません。

 見る間に光度を増して目の前に迫ってきたブラディ・レッドのオーロラは、徐々に明るさを失って行き、10分後には何事もなかったように緑白色のオーロラがたなびくだけになりました。
 フィルムは事の最後までは捉えることができませんでしたが、取りあえず一番明るかった時は大丈夫でした。
 でも、撮れているかどうかは・・・非常に怪しい。
 「アンビリーバブル!」とか何とか叫びながら(奥様にもわかるように英語で叫んでいた自分が怖い。^^;;)パニックに陥っていたため、ピントがズレている気がします。(;_;)
 だいたい露出もかなりいい加減になっちゃったゾ。
 まぁ、撮れていたらメッケもんということで、私はブラディ・レッドに遭遇できただけで満足でございますぅ。
 我に返ったように、奥様が家の中に入って大声でわめきながらご主人を外に連れ出して来ました。
 「今夜のは違ったのよ!オーロラの縁や上が赤く見えていたのとは違うの。東の空が山火事みたいに真っ赤だったのよ。本当に真っ赤。赤い塊みたいにすごかったんだから!!!」と、かなり興奮した口調でご主人に説明するのですが、既にその時にはブラディ・レッドはかけらも残っていなくて・・・。
 折角TVを見ながらくつろいていたご主人、「う〜ん、何もそんなに騒がなくても・・・本当なの?」と一通り夜空を眺めた後で、そそくさと部屋に戻って行かれました。(^^;;)
 でも、ご主人はオーロラに全く興味がない訳ではないのです。NASAの、研究者ではなくてエンジニアだと思うのだけれど、フェアバンクスのポーカーフラットというオーロラを研究している施設にご勤務。
 滅多にないブラディ・レッド・・・教えてあげたかったけれど、部屋に戻る時間はありません。(^_^;)
 あれだけ外で騒いでいたら出てきてくれるかと思ったんだけど、TVが勝ってしまったって訳?

 私も慌ててフィルムを追加するために部屋へ。
23:30  再び頭上でグルグル渦巻きが始まり・・・。
 奥様も部屋に入られ、ご夫妻でソファーでくつろいでいらっしゃる様子。なんだか映画の1シーンを見ているよう。
 私と言えば、赤いダルマさんのように防寒具を身にまとい、出しているのは目だけ。ロマンティックの対極に居るようなものだわ・・・。
0:00  本当は太田さんやきなこさんご一家のいらっしゃるロッジ前庭まで行ったほうが視界が開けていて、オーロラ観望にも撮影にも良いのだけれど、機材を担いで移動するのが面倒になってしまいました。普通に歩けば5分ほどの道のりなのだけれど。思えば、昨夜は一睡もしていなくて、体力限界間近だったりする訳で・・・。
 この家の庭先では視界が開けているのは天頂付近だけなのですが、木立から立ち上がるオーロラというのも良いかも知れないし、写真の前景を変えてみようかしらん。

 ・・・と、より良い視界を求めて家の庭先に足を踏み入れたら、ズボズボと膝上まで埋まってしまいました。
 ロッジの前には南斜面だし、犬ゾリ、スノーモービル、沢山の人が踏み入っていますが、ここは飼い犬が走り回るくらいで誰も歩いていないのです。三脚をセッティングするにも四苦八苦、歩くだけでも雪まみれ。ブーツの中にも雪が入って・・・濡れた足は大丈夫だろうか?とちょっと心配。
 そうこうしていたら、ブレイクアップ。
1:00  ようやくオーロラは静かになったのですが、でも、空の所々が赤く見えます。
 オーロラ活動はかなり活発なのかな?
 静まり返った空の下、気温もだいぶ下がってきたようで、生木が裂ける音だけが響き渡ります。
2:15  東西の空につながる河のようなオーロラがずっとたゆたう。
2:30  天頂からピアノコンチェルトが響き渡りました。
 様々な色の無数の光の柱が、ピアノの鍵盤を叩くように激しく小刻みに現れては消え、折り重なって・・・本当に、こういう時には音が聞こえてきそうなんです。それがオーケストラの交響曲の時もあり、ピアノコンチェルトの時もあり・・・頭の中にはスコアさえ見えてきそう。
 しかぁ〜し・・・こういう時に限って途中でフィルムがなくなっちゃうのです。ナハハ・・・情けない。(;_;)
 やっぱりカメラは2台あったほうがいいかしらん?(今年も友人達に機材を没収・・・否、強制送還されて先に帰っていただいたのであります。手元に残ったのはカメラボディ1台、レンズ3本・・・。^^;;)
3:00〜
3:15
 北天に長い間ジッと動かない左カーブのオーロラがかかっていたのですが、突然動き出して、西の空にヒューッと音を立てて(聞こえている訳ではないですが)吸い込まれていきました。
4:00  パッチド(パルス・脈動)オーロラ
4:30  薄明
5:00  美しいブルーの空になってきましたが・・・既に意識不明寸前。眠い〜っ!
 もうダメ、撤収!
6:00  就寝
March 19-24, 2001 Aurora Gallery
spaceweather.comに投稿されたオーロラの画像。
UAFのJan Curtis氏撮影や知人LeRoy Zimmerman氏による
フェアバンクスでのパノラマのオーロラ写真もあります。
上記サイトの観測場所は北米、北欧など世界規模!

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