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アラスカ オーロラ便り1994
by 日蝕貧乏知恵者猫/福島 円
たった1台の対向車
 そうこうしているうちに、目の前には切り立った山が立ちふさがるように見え始め、それをやり過ごし、何度も何度も峠を越え、その山を通り越す間に写真を撮るために止まったり、小さな小さな集落をいくつか過ぎました。
 単調な風景の繰り返しと疲れのせいか、運転手と私以外のみんなはうつらうつらし始めたようで、車内はにわかに静かになりました。
 局から遠いせいなのか車載のラジオは全く入感しませんし、誰かが持ってきたカセットテープも聞き飽きて止めてしまいましたが、ドライバー役のF氏は淡々とハンドルを握っています。
 私はと言えば、相変わらず地図を片手に見えている山や氷河の名前を確認したり、地図に記載されている地名には果たして集落はあるだろうか?などという、密かな楽しみで居眠りどころではありませんでした。
 こういうところで仮眠しておかないと、夜にオーロラを堪能できないと分かっていても、こればかりは止められません。
 初めての土地ともなれば、なおさらです。

 1時間半から2時間は走ったでしょうか。
 静寂は、私の叫びにも似た声で破られました。
 デルタ・ジャンクションを出てから、最初にして最後の対向車とすれ違ったのです。
 気分としては、薄闇の迫った田舎道で「やっと人に出会えた!」ような暖かいものですが、それが消防車だったので思わず叫んでしまったのです。
 それは、「パクソンには2軒の宿泊施設があったけれど、昨夏にその内の1軒が火事で焼けてしまった」とフェアバンクスで聞いていたからでした。
 「まさか消防車はパクソンから来たんじゃないよね?」
 「え〜っ、じゃあ、我々の泊まる所はもうない訳?」……と、大爆笑。
パイプラインの写真
 その後、山を越える度に雪の量が全然違うことに気付いたり、巨大な雪の壁も見ました。
 山の頂上に広がる湖、その名も「サミット・レイク」を通過する時には、この真ん中でオーロラ撮影ができれば遮蔽物が何もなくていいのに……などと話しているうちに、夕焼けの空が透き通った美しいコバルト・ブルーの闇に変わって来ました。
 これはオーロラの兆しっ!!
 そして、ようやくハイウェイ沿いにポツンとある一軒宿に到着しました。
 「火事はここじゃなかったんだねぇ」
 これが到着第一声。(^^;;)


 パクソンはデナリ国立公園方面との分岐点になっています。(デナリハイウェイ。冬期は閉鎖)
 デナリという地名は、このハイウェイのほぼ中間地点のスシトゥナ河のデルタ入り口付近にありますが、地図に名前はあるものの集落があるという感じではありませんし、その手前のスシトゥナ・ロッジという所の方が心惹かれます。
 アラスカの地図を見て不思議に思うのは、同じ名前の山や河、町があるのですが、それらが何百kmも離れていたりするのが多いことで、デナリもその一例です。

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