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Title.08
混沌
 

  『混沌』
  中国の歴史で春秋戦国時代は現代と比べられるぐらいの変革の時代であったようです。
鉄で作られた農器具が普及して、農業生産力が急速に高まり、土地の売買、貨幣経済が行われるなど、技術革新とはげしい競争もあったそうです。春秋時代のはじめに百数十あった国々は、つぎつぎに整理統合され、戦国の七雄からついに秦の始皇帝によって天下が統一されます。このような時代であっただけに競争に生き残るためには有能な人材を必要としました。そのため孔子孟子の儒家、老子荘子の道家、商鞅韓非子の法家など「諸子百家」と呼ばれる多くの学者、それらの主張する学派が形成されました。
  道家の中の荘子にこんな話があります。
 大昔あるところに、南海の王さまシュクと北海の王さまコツがいました。そしてその王さまの中央にコントンと言う王さまがいました。この三人の王さまはとっても仲がよく、二人はいつもコントン王に接待して貰っていました。ところがコントン王の顔ときたらノッペラボウだったのです。二人は話をします。我々、顔に七つの穴があるから生きていくのに楽しみもあるんじゃないの、いい音楽を聞くにも二つの耳があるからさ、口があるからおいしい料理も食べられる。それを考えるとコントン王は気の毒だ。そこで親友のコツ王とシュク王は、目口耳を作ってやることにしたのです。一日目は左の耳、二日目は右の耳、三日目は左目、四日目は右目、左の鼻、右の鼻そしていよいよ最後の七日目に口をあけてやったのです。ところが素晴らしい耳、目、鼻、口をつけて貰ったコントン王。せっかくつけて貰ったのにだんだん元気がなくなってついに七日目には、死んでしまったのです。
それはどうしてだったのでしょう?
実はコントン王、目もなく耳もありませんでしたが、自分自身の世界があったのです。静かで穏やかな自分の世界を楽しんでいたのです。ところがそれを知らない友人の北海王コツ、南海王シュクは耳の孔をあけて外界の音を聞かせてあげたのです。心の音を楽しんでいたのにラジオ、ステレオから流れてくるロック、そして更に追い打ちをかけて「君は遅れているぞ」と目を開けてインターネットの世界です。「どうだ、すごいだろう。」と次から次へと新しいものを与えたのです。「さあネットショッピングを教えてやろう。見ろよ、もう来たぜ。印度直送のカレーだぞ。トムヤンクンも来たぞ。パスタにボジョレヌーボーだぜ。さすがインターネットだ。香りを味わえよ。食べてみろよ。」 静かに自分の世界を味わっていた、コントン王は次から次に送りこまれるおいしい食べもの、美しい楽の音色、そして香りに何がなんだかわからないパニック状態に陥ってしまったのです。
コントンを漢字では混沌と書きます。
辞書によれば、混沌の意味は、
  @大昔、天と地がまだ分かれていない状態。
  A物事の区別がはっきりしないこと。
  B事態が流動的でどう決着がつくかわからない。とあります。
  二十一世紀情報技術化、IT化をなしえた現代。この現代をはたして荘子はどのように見ているのでしょう。
「お前たちこそまさに混沌の時代よ」と笑っているのではないでしょうか。

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