「鐚銭」について

「鐚銭(びたせん)」とは、広い意味では、「質の悪い銭(ぜに)」を意味しますが、狭い意味では、「日本において、室町時代 (AD 1336-1573) の末期から江戸時代 (AD 1603-1867) の初期にかけて、民間で作られた、円形方孔銭」を意味します。鐚銭の多くは、当時流通していた中国銭の模造貨幣で、早い話が、ニセガネです。当時、中国の経済力は日本の経済力よりも大きく、日本人は中国の貨幣を偽造して使っていました。鐚銭は、主に、日本と東南アジアとの間の海外貿易で使用されたものと考えられています。

鐚銭は、その鋳造方法によって、以下のように大きく三つに分類されています。また、ここで、「通用銭」とは「一般に流通している銭」のこと、「母銭(ぼせん)」とは「鋳型を作るさいの雛形になる銭」のことです。母銭から鋳型が作られ、さらにその鋳型から通用銭が作られていました。

  1. 鋳写鐚(いうつしびた)
    当時流通していた通用銭、とくに中国銭を、そのまま母銭として鋳造した鐚銭のことです。単純な模造貨幣です。
  1. 加刀鐚(かとうびた)
    当時流通していた通用銭に、部分的に修正を加えて母銭とし、その母銭を使って鋳造した鐚銭のことです。
  1. 改造鐚(かいぞうびた)
    全く新しく母銭を作って鋳造した鐚銭のことです。

BS-1

至道元寶
加刀鐚:草書至道
鋳造時期:室町時代末期
鋳造地:不詳
表:漢字銘文:「至道元寶」。「至」とは、「誠の、最高の」という意味です。内外郭
裏:内外郭
2.9g
D-23.3mm
美品
売却済み
この貨幣は、中国銭の模造貨幣です。もとの中国銭は、北宋の太宗、趙きょう(趙光義)の至道年間 (AD 995-997) に作られた至道元寶です。この至道元寶には、真書(楷書)、行書、草書の三体の銭文があり、いずれも太宗の親筆です。


BS-2

元祐通寶
加刀鐚:異寶元祐
鋳造時期:室町時代末期
鋳造地:不詳
表:漢字銘文:「元祐通寶」。「祐」は、「天佑」すなわち「神の下す助け」という意味です。内外郭
裏:内外郭
3.2g
D-24.0mm
佳品
売却済み
この貨幣は、中国銭の模造貨幣です。もとの中国銭は、北宋の哲宗、趙煦(ちょうく)の元祐年間 (AD 1086-1094) に作られた元祐通寶です。この元祐通寶には、行書銭と篆書銭があり、行書銭は蘇軾(蘇東坡)筆、篆書銭は司馬光筆と伝わっています。


BS-3

元符通寶
改造鐚:元符通寶、闊縁(かつえん)
鋳造時期:室町時代末期
鋳造地:不詳
表:漢字銘文:「元符通寶」。「符」は、「あかし、しるし」の意味です。内外郭
裏:内外郭
2.7g
D-23.3mm
美品
売却済み
この貨幣は、中国銭の模造貨幣です。もとの中国銭は、北宋の哲宗、趙煦(ちょうく)の元符年間 (AD 1098-1100) に作られた元符通寶です。



山下 秀一
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