KAN アルバム『TIGERSONGWRITER』 インタビュー



 うれしいっス、ありがたいっス。ソング・コング誌の武田さんのおかげで、このところずっとKANちゃんの取材ができてて、本当にうれしい。なので前作の『MAN』が出たあと、今回の新作『TIGERSONGWRITER』が日の目を見るまで、先行シングル2枚の取材もさせてもらっていて(このホームページでも公開中)、その度にアルバムの制作は難航してるという話を聞いていたので、他人事ながらようやくできあがったかなんて、感慨にふけっちゃったりして。

 いい意味で、相変わらずのKANワールド。それでいて初チャレンジもあったりして、なかなか興味深いアルバムであります。すでにアルバム聴いた方も少なくないと思うので、1曲1曲の話もわかりやすいのではないでせうか。

で、このホームページの常套手段でありますが、 ソング・コング誌に載せ切れなかったインタビューを、ここで公開させていただく次第。ではでは、お楽しみくださいませ。




キーボーディストの作ったアルバム


――いやあ、ついに出た新作『TIGERSONGWRITER』、よかった、よかった。作り始めたのは、いつごろでしたっけ?

KAN 曲作り始めたのは、一昨年の秋ぐらいですけどね。

――前作が出たのが、一昨年の5月でしたよね。

KAN はい。で、ツアー終わった当たりから作ろうとしてて。でまあ、スタジオに入ったのは去年の春ぐらいからですね。で、終わったのがほんのひと月前。

――じゃあ、1年近くやってたことになる?

KAN ですね。それ以上やってますね。

――それだけかかったのは、詞が書けないとかいうこともあって、締め切り決められても守れるもんじゃないって、前にいってましたっけ?

KAN そうですね。

――で、全曲出そろったわけじゃない状態で先行シングル出してたし、まあアルバム全体のコンセプトとかテーマとかがあって作ったアルバム、というわけではないですか。

KAN ないですね。そうね。毎回そういう言葉を考えた方がいいのかなと思って昔やったけど、でもヘンにそういうものを決めてもねえ。

――だからコンセプトとかはないとしても、でもやっていくうちにだんだん自分でも全容が見えてきて、こんなアルバムになりそうみたいなことは、やってる中でわかってきたり?

KAN 極端にバラバラだなっていうのが、やってくうちに見えてきて。でもまとめるっていったって、なんでまとめなきゃいけないのかっていう気持ちにもなるし、だからあまり考えずに。なんとなく自分がやってることが何かっていうのは、考える時はありますけどね。

――じゃあ歌詞にしても曲にしても、今回はこんなことに気をつけてやってみようとか、そういうこともなかったですか。

kadono KAN いや、それは曲単位で作りながらっていうのは、ありますね。わかりやすくいうと、ハード・ロックやりたいっていうのは前からあって、今回もできなかった。すごくわかりやすい話でいうと、いわゆるアメリカン・テイストのハード・ロックっていうのは、ギター・サウンドのね、そういうのはやりたいと思って曲は作ってますけど、詞が書けてないんですね。それは、前回のアルバムの時もそう。

――じゃあ、けっこう前から思い続けてること?

KAN うん。やっぱコンサートやってて何が足りないって、ハード・ロックがないんです。でハード・ロックって、コンサートで意味もなく"クル"じゃないですか。"キタッ!"て感じするじゃないですか。だからどうしてもコンサートの要素として、ほしいんですよね。それをやろうやろうと思って、曲はないことないですけど、詞が全く書けない。人間がやっぱ、ハードにならないとね。

――あ、そう。私は、KANちゃんが自然と音楽やってる中でそれは出て来ないもので、自分でもそれでいいんだと思ってると思ってた。

KAN うん、やってないのっていっぱいありますけど、それはやりたいとも思わないから。たとえば、いわゆる日本の演歌みたいなのとかね。

――でも、ハード・ロックはやってみたい?

KAN なんかちょっと、コンサートやってく上でほしいなっていう。

――KANちゃんはいってみればやはりキーボードの人で、でもハード・ロックってギターで作んないと出てこないんじゃない?

KAN それもあるでしょうね。でもまあ、僕が今作ってるヤツっていうのは、だいたい頭の中で作ってるんですけど、やっぱり中学生、高校生がコピーしたくなる、ギターのイントロからいきたいですね(笑)。ディープ・パープルの名曲のような、ギターのフレーズからガーンと入ってね。そういうのがやっぱり、カッコいいだろうなと思うし。でもまあ僕の場合は、頭の中で考えた方がいいと思う。ギターも中学生がビートルズやってる程度なんで、うん。いろいろ弾いてて、その中から出てくるって感じじゃないんで。だから頭で、こんなのカッコいいかなって考えるやり方。

――で、曲はすでにあるんだ?

KAN 曲は1〜2曲あります。

――でも結果的かどうかわからないけど、今回先に出たシングルはキーボード・メインのものになりましたね。

KAN ああ、「Songwriter」ですね。

――あと、カップリング曲もそうだった。

KAN そうですね。まあ「Songwriter」に関しては、いつものビリー・ジョエルの恒例のをまず作ろうと思って作ってたヤツなんで、当然ピアノの曲になるし、僕の過去の曲でいうと、「秋、多摩川にて」っていうのと全く同じアプローチで、全く同じアレンジメントなので、特に自分では特別な曲ではないんですけどね。できあがったらいい曲になったんで、自分の中では好きな曲ですけど。でも曲を作る発想は、いつものことだったんです。

――で、その曲だけではなくアルバム全体も、どちらかというとキーボードのアルバムになった感じはしますね。

KAN うん、そうですね。

――それは、自然にそうなった?

KAN うん。やっぱそうなると思います。だから「Oxanne〜」みたいな方が、意識して作ってますね。そういうの作ろうと思って作ってるし、べつにあんま考えないと、やっぱり鍵盤の曲になってしまいますね。

――あと曲を作りためていく中で、明るい曲もあればしっとりした曲もあるっていうふうに、全体のバランスも考えて作っていったりします?

KAN まあ普通に、いろんなのやりたいと思ってるだけ。だから頭の中では、同時に複数作ったりしてることもありますしね。ただ早い曲の方が作りにくいですね、オレは。ミディアムより遅い方が作りやすい。早い曲の方が、難しいですね。

――じゃあ早い曲は、自然に出てきちゃったというのではなくて、意識して作ってる?

KAN 意識して作ってる。

――やっぱアルバム全体のこととか考えると、必要だろうと?

KAN うん。アルバムとしてもコンサートとしても、やっぱり必要ですよね。

――やっぱアルバムに入れる曲は、ライヴのことも考えて選んでる?

KAN そうですね。べつにコンサートとリンクしてるわけじゃないんですけど、でもコンサートの本遍を作るのに、早い曲はほしいですよね。

――たとえば「適齢期ラヴ・ストーリー」みたいな曲?

KAN あれはそれがいいか悪いかはべつとして、毎年形変えてアマチュアの頃からもう通算13年ぐらいライヴでやってて、ああいうネタになっちゃったら、とりあえずはあれでよしとしてるんだけど、あれってあくまでおまけだから、やっぱり新しい早い曲は本遍にほしいですよね。

――やるって部分では、嫌いじゃないんですよね。

KAN うん。ただ作るのは、苦手かもしれないですね。

――あと作詞は前から大変て聞いてましたけど、その他の部分は今回どうだったんですか。

KAN レコーディング作業みたいなものは、全然苦労してないですし、頭の中でほぼ音の感じは作っちゃうんで、あとはそれを確実に小林信吾さんに伝えればいいという。

――作詞が大変とはいっても、たとえば「Songwriter」とか「SAIGON」なんかは、歌詞を書く以前に歌いたい内容があって、言葉を産み出すにもそんなに苦労しなかったというのでもないんですか。

KAN 「Songwriter」は、潜在的にあったと思います。で、メロディーができて作っていくうちに、その潜在的にあったものが、出てきたんだと思いますけど、結果的に。だから「Songwriter」という曲を作ろうと思って、作ったつもりはないですけどね。「SAIGON」は、これはコンサート用なんで。ていうか、ちょっとコンサートでやりたいことがあって、それで最適の楽曲を……ハハッ。

――つまりコンサートの内容と、この曲がリンクしてるってこと?

KAN この曲はそうですね。

――コンサートとリンクなんていわれると、なんか楽しいイメージがあるけど、でもこの曲って歌われてることが重いじゃないですか。

KAN そうなるようにしといたの(笑)。

――じゃあアルバムとライヴと、両方体験して初めて、うん、なるほどとか、あ、そうかっていえる曲?

KAN いや、これはこれで完成してます。コンサート見なきゃ成立しないっていうのじゃ、しょうがないですからね。だからそれはそれでいい。ただ僕の中ではこれ、もう1回ひっくり返して終わりなの(笑)。だまされたあっ! ていうので終わり。ハッハッ。

――何々? やだなあ、KANちゃんのその含み笑い、気になるなあ。歌詞的には重い曲だと思うんだけど、コンサート見るとそうじゃなかったりするわけ?

KAN いやいや、まあ前からいってるように、僕、歌で何をメッセージしようということはあまり考えたことないんで、作り手が考えてることと聴いてくれる人が全く違うこと考えても、それはそれで面白いことなんでね。まあちょっとコンサートでね、こういうことやる以上は、やっぱ世界平和をいっといた方が。今まで世界平和のことなんて、これっぽっちも考えたことなかったんだけど、急に考えてみて。ハッハッ。

――ああやだなあ、気になるなあ。まあじゃあ、コンサート楽しみにしてますか。で、この「SAIGON」とかあと「サンクトペテルブルグ〜」とか、いわば御当地ソングが今回入ってるけど、実際に行った実体験なの? まあ「サンクトペテルブルグ〜」は、その街自体は飛行機の中から見たもので、実際はパリに行った歌なんだけど。

KAN うん、そう。「SAIGON」はもう、ガイドさんとの会話を思い出しながら書いたようなもんです。「サンクトペテルブルグ〜」もワンコーラス目は事実で、そのあとは次の旅行の予定です。

――ワンコーラス目っていうのは、機上からサンクトペテルブルグが見えたっていうとこ?

KAN そう。その時の会話と、もう100%同じ。手を加えてない、もうそのまんま歌になった。で、ツーコーラス目は次の旅行の予定かなって(笑)。

――でもこの歌の内容のメインはパリなのに、どうして機上から見ただけの「サンクトペテルブルグ」がタイトルになったの?

KAN なんででしょうね。僕としては漠然とそうなっちゃったんだけど、考えてみるとおかしな話ですね。

――その機上から見たというのは実話で、今KANちゃんがいってたように、そのあとの部分は実話ではないからかな。

KAN そうなのかもしれないですね。で、サンクトペテルブルグは空から見て、あそこはちょっと行かなきゃいけないなと思った。すごく印象的だったから、覚えてたんだろうしね。

――で、サブ・タイトルに"ダジャレ男の悲しきひとり旅"ってついてるのが、KANちゃんらしい。

KAN これね、歌詞を書き上げたあとに、タイトルをつけるとしたら"ダジャレ男の悲しきひとり旅"っていうのが、全く歌の中味をいい当ててるんですよ。でも、誤解されるから嫌だったんですよ。笑う曲じゃないのに、笑われると思ってね。

――まあ確かに、ダジャレも入ってるしね。でも誤解されるかなと思っても、そういうお遊びはせずにはいられない?

KAN せずにいられないし、そういうことによって最終的には悲しみが増しますよね。すごいかわいそうな感じになるじゃないですか。ダジャレをいえばいうほど悲しいだろうなと思って、考えたんです。

――じゃあ、歌詞書いてるうちにふとノリで出てきたんじゃなくて、最初から狙いがあって作っていったの?

KAN いや、本当は思いつきかもしれないですよ。♪たーくさん アンデス山脈♪って歌詞が意味もなくあったりして、でもそれをつなげていくうちに、だんだんそうしようってなっていったっていう感じなんですけど。だから最初に意図的にダジャレを入れて、最後を悲しくすることによって、構成しようと思ったわけじゃない。やりながらだんだん見えてきた。だからもともとは意味もなく、言葉が引っかかっただけの寄せ集め。で、そこから考えていったの。

――あの、前々からKANちゃんが語学に興味を持ってたのは知ってたけど、海外旅行も好きなの?

KAN あの、語学っていうのは旅行に付随した趣味です。旅行をより楽しくするための趣味です。

――じゃあ、旅行が好きという方が先?

KAN そうですね、はい。

――そうだったんですか。てっきりいろんな言葉の語感が面白くて、語学検定受けたりまでしてるのかなと思ってた。

kadono KAN あ、語感の面白さは歌を作る上でもちろん興味ありますけど、それと語学は関係ないですね。いや、もちろんつながってるのかもしんないけど、単純に中国語始めたのは北京に行って、北京は好きだけど話しができないからどうしようもなかったっていう。これは言葉わかんないと、もう1回来てもなんにもなんないから、これはやんなきゃダメと思って。でやってくうちに、ごく初歩的なことでも通じると、メチャクチャうれしいじゃないですか。これはいいわと思って、上級者になると悩むから、カタコトでも通じるとうれしいっていうのをたくさん楽しもうと思って。で、次にフランス語やりたかったけど、北京語で発音の難しさに嫌気がさしたので、イタリア語からやったの。イタリア語はもう、本当に簡単だからね、発音はね。でまあ、自分の目安として検定3級っていうね。だからイタリア語3級取ったらフランス語、と思ってるんですけど取れないの。2回落ちた。

――でもコンサートのMCでいってたけど、ツアーで地方に行った時までも、その土地で検定受けたっていうから、よっぽどはまってるなと思って。

KAN 広島のコンサートと試験日が重なったんで、広島で受けたの。

――すごいよね、そこまでしてやるなんて。

KAN いや、単純にそれ受けないと、また半年先になるから。それも時間的に無理だったらやんないけど、時間的に大丈夫だったんで。

――それにしても、他人から見たらすごいっス(笑)。で、このサンクトペテルブルグを機上から見た時っていうのは、実際に行き先はパリだったの?

KAN そう。

――でもワイン畑うんぬんは、そのパリに旅行した時の実話ではなくて?

KAN うん。それは次に行きたいと思ってる(笑)。

――いつごろ行ったの?

KAN これは正確には、'95年の年末ですね。

――サイゴンは?

KAN サイゴンは'94年と'95年。

――なんで行ってみたかったの?

KAN ベトナムは、その前に中国行ってホンコン行って、台湾行って韓国行ってってやってるうちに直行便が関空から飛んで、これは行っとかなきゃなって意味もなく。知らなかったし。だから単純に行ったことないとこ行きたいし、そんな中でまた行きたいなと思ったのは、北京とベトナムとフランスとイタリアですよね。だから旅行の時期と期間に応じて、もう一度行きたいとこに行きながら、行ってないとこへ行くっていうのを、ちょっとやりたいなと思って。

――そのもう一度行ってみたいと思う所に、共通のなんか魅力があったりします?

KAN 単純に食べ物っていうのはありますね。やっぱり最初はガイドブック見て、フランスだと美術館とか教会とか、イタリアもそうですけど。で、ひと通り行ったんですけど、どうもなんともないんですよ。そういう芸術と、オレ縁がないのかなと思って。でも語学っていうとてもいい楽しみ見つけて、しゃべるのが面白いから何日いても楽しいんですけど、あとは食べ物ですね。さあ今日は何食べようって。で、明日は何食べようって、それ考えてるだけで1日終わるのが、とても僕にとっては精神的にいい休み方なんで。だからロンドンとかは、また行こうとは思わなかったしね。

――イギリスって食べ物に関しては、特にどうってことないもんね。

KAN うん。だから街もよかったし人もすごく優しかったけど、また行こうとは思わないのは食べ物ですね。でも中国とかホンコンは、楽しいですよね。

――じゃあ、あまりその国が歴史的に背負った宿命とか、そういうことには興味ない?

KAN 本当はちゃんと勉強した方が、より面白いと思います。たとえばパリ行ったって英語通じるけど、でもフランス語がしゃべれた方がいいというのと一緒で、歴史をわかって行くと、見え方も感じ方も違うだろうと思う。

――ですね。でもだったらこれは偶然なのかな、あの、サンクトペテルブルグは以前レニングラードっていったでしょ。で、サイゴンもホーチミンですよね。両方ともそういう名前が変わるというのは、歴史上大きな出来事があったからで、だからそういう重い歴史を背負った場所に興味があるのかなと思ったんだけど。

KAN いやいや、あの両方とも、ビリー・ジョエルの曲にあるの。だからサンクトペテルブルグはここなんだ、ビリー・ジョエルが歌ってた歌の場所はっていうのがあるから、ちょっと見てみたいという気持ちも、他の都市より大きかったでしょうし、あと「グッド・ナイト・サイゴン」ていう曲もありますしね。それは、アメリカ人のベトナム戦争の歌なんだけど。そういえばこれ、そのこととは関係ないけど、最初「ベトナム・ソング」にしようかと思ったんですよね。でもサイゴンの方がやっぱそれっぽいかなと思って、響きもきれいだしと思って。だからたとえばもうすごく単純な理由だけど、映画で見たシーンの場所に行くとうれしいってあるじゃないですか。その程度なんだけど、でもこのふたつの街には、特別な意識は少しだけありますよね。


タイトルは言葉のインパクトだけ


――それから「OXANNE-愛しのオクサーヌ-」のオクサーヌは、歌を聴けばまず誰でもわかるけど奥さんとカケてる、いわばダジャレだよね。

KAN ダジャレというか、これは美人の奥さんの歌作んなきゃって前から思ってたし、やっぱ名前はオクサーヌしかないって感じだったんですよね、僕としては。

――じゃあ、詞を書くのは大変大変ていうけど、この詞に関してはそれほど難産でもなかったのでは?

KAN これは比較的、難産ではない。

――大変だったのは?

KAN まあ「Songwriter」とか「サンクトペテルブルグ〜」は、なかなか書けなかったですね。何書いていいか思いつくまで長かったし、なんとなく方向が見えてからもけっこうね。「SAIGON」とかも、どうやって世界平和を書きゃいいかって(笑)。世界平和にしなきゃいけないっていうのは、あったんですけど、都合上(笑)。

――それが、さっきいってたコンサートの構成上ってことだ。気になるなあ(笑)。まあ、いいか。で「長ぐつ」とかは自分の心の中のことだから、それを言葉に置き換えるのって大変じゃなかった?

KAN いや、それはあまり時間かかってないですね。「長ぐつ」は、チャッチャッとできてますね。だからどうやってどう作ったっていうのが、わかんないんですよね。ちゃんと記憶に残らないっていうか。「君を待つ」なんかも、チャッチャッと作っちゃったし。これ精神的な意味で、何故楽に書けたのかっていう理由が、一個だけわかってる。これ「Songwriter」がシングルに決まってB面作んなきゃっていう、そのB面て気持ちがあるから書けたんですよ。シングル書けっていわれたら、書けない。だから「Songwrite r」っていうのは、シングル作れシングル作れっていわれてるから、書けるわけないですよね、だからずっと出てこなかった。

――そういえばカップリングの曲って、できればアルバムに入れたくないっていってませんでしたっけ?

KAN そうなんですよ。それはあったんですけど。で、いろいろあって、いろいろやってみたんですけど、やっぱこの曲は作ってみたらよかったから、結局去年のコンサートのメインの曲になりましたからね。だからB面用に作ってもいい曲だと思うと、絶対アルバムに入れたくなるから、「ドラ・ドラ・ドライブ大作戦〜」も「サンクトペトルブルグ〜」も、B面はライヴ(笑)。B面用に、アルバムに入れない曲を作るほど余裕はなかったし。だからB面どうするかっていうのは、今後も僕がすごく余裕のある曲数を書けない限りは、課題になってくるでしょう。

――そうですか。で、「月海」これ「げっかい」と読むのかな。

KAN 読み方決めてないです。なんでもいいです(笑)。字と意味はこれしかなかったんだけど、しっくりくる読み方がなかったんで、それは聴き手の感性に任せるという形にしたんです。

――それって、すごいなあ。たとえばラジオでかけてもらう時とか、なんていうの?

KAN だいたいでいいですよって。だってそんなもんじゃないですか。たとえば日本で中国人の名前ニュースでいったりするけど、それって絶対その人じゃないんだから。

――ああ、日本の漢字の読み方で読んで、中国読みで読まないからってことね。

KAN だからいいんですよ、読みたい人が読みたいように読めば(笑)。

――でもそれって、漢字だからいえるんだよね。なんて読もうと字を見れば、月と海のことだっていうのはわかるもんね。

KAN うん、そうですね。漢字という、意味を持つものだから。アルファベットでは無理でしょうね。

――それから「Song of Love〜」がわざわざ英語版て書いてあるということは、前に日本語版があったということ?

KAN いえ、これはハッタリです(笑)。

――じゃあ、最初から英語の歌にしようと思って作ったの?

KAN はい。

――じゃあクレジットに原詞と英詞って両方書いてあるから、べつに日本語の原詞があるのかなって思ったんだけど……。

KAN それもハッタリです(笑)。

――なんだか(笑)。で、丸々英語の曲っていうのは初めて?

KAN 初めてです。

――どうしてこれ、丸々英詞にしようと思ったの?

KAN メロディーから先に作ってて、普通だと16小節作って次にサビ作ったりとか、いろいろ考えるんですけど、これは延々繰り返すっていうのはどうなんだろうとかって思ったりして作ってるんです。で、最初はピアノだけで、最後はわーって盛り上がるっていうのをやったらカッコいいだろうなって思って、そうしようと思ったんですよ。でもそういう曲で日本語のインパクトが強いと、歌詞しか聴かれなくなる。それは僕がやりたいものじゃなくなるし、それも嫌だと思って、だったら英語にしちゃえと思って。

――初お目見えということは、トライしたのも初めてですか。

KAN 英語の歌詞をのせるのは、アマチュアの時にしょっちゅうやってた。日本語詞書くようになったのは、デビューしてからなんで。アマチュアの時って、歌詞はどうでもよかったんで。洋楽しか聴いたことないし、英語っぽいので埋めときゃよかった(笑)。ボキャブラリーは日本語より極端に少ないけど、洋楽が好きでそういうものを目指してやってた音楽なので、日本語つけるよりは英語をのっける方が簡単ではありましたね。まあ、韻をきちんと踏まなきゃいけないなと思ったので、かなり辞書を引いたっていうのはありましたけどね。

――ものすごく純粋に、愛を歌った曲ですね。

KAN それはもちろん、そうです。それでないと書けないですね。

――だからここまで純粋な愛の歌を、日本語で書こうとすると気恥ずかしくなっちゃうから、英詞にしたのかなって思ったんだけど。

KAN うん、それもあります。それにもし日本語でうまくやってのけたら、この曲が音楽じゃなくなっていくんで。ていうのは、どうしても曲によっては言葉の印象が強すぎて、言葉のことしか聴かれなくて、それに終始してしまう曲って過去にあって、まあ日本人の僕が日本人のお客さんの中でやってる以上、それは当然ていえば当然なんだけど。でもあまりに音楽を聴かれないっていうのは、ずっと何年も歌詞を書き出してからの悩みで、これは日本語がうまくいけばいくほど、最初にやりたいと思ったことから遠くなると思ったからやめた。でもいってることは、いいたいことですよ。あとは、響きの問題ですよね。

――この曲も、いかにもキーボーディストの曲って感じですよね。

KAN そうですね。ギター入ってないですしね。今回ギターは、「サンクトペテルブルグ〜」と「長ぐつ」と「Oxanne-愛しのオクサーヌ-」の3曲だけかな。

――それから丸々英語の曲はべつとすると、「SAIGON」のように英語が多い曲って、珍しいですよね。

KAN 珍しいです、うん。日本語で歌詞を書くっていう意識でやるようになった以上は、英語で書くことに意味感じなかったしね。

――じゃあ、やはりこれはさっきからいってる、コンサートとの絡みという事情があるから?

KAN うん、これはやっぱコンサートでこうなるっていう完成図があるから、これはやっぱりね、LOVE&DREAMといかないとダメなんですよね、アハッ。

――もう、気になるなあ(笑)。

KAN あと『英語にするってことは、言葉のキャラクターをなくすってことでもあるんですよ。これが中国語やイタリア語になると特別なものになっちゃうけど、歌詞の中に英語があるっていうのはすごく普通のことで、それを使うことに意味がないってことなんですね。

――それから「ドラ・ドラ・ドライブ大作戦〜」は、シングル・ヴァージョンよりも遊んじゃおうってことで、特製ミックスなの?

KAN そうです。どうせアレンジなんて、誰も聴いてないんだと思って(笑)。これは、なかなか細かい作業してるんですけどね。けっこう譜面もびっしり全部書いて、やってんですけどね。まあタイトルを「ドラ・ドラ・ドライブ大作戦〜」ていった以上、もうアレンジなんて聴かれないんですよ(笑)。だからいいの、それは。じゃあもう、徹底的にやってって。

――だからこれって、シングル用のレコーディングの時に録ってた音の要素を、リミックスしたんでしょ。

KAN ていうか、全部出したって感じ(笑)。

――でアルバム・タイトルなんだけど、これはトラ年ってことと「Songwriter」をくっつけた?

KAN いやあ本当にこれ、二大言葉のインパクトだけで。

――前に、ツアー・タイトルはつけること自体あまり意味がないっていってたけど、アルバム・タイトルはそんなことないですか。

KAN うん。ツアー・タイトルよりは、意味あると思うんですよ。それによってそのアルバムの雰囲気っていうのを、なんとなく左右するもんだと思うから、昔からいろいろ考えてますけど。で、いろいろ考えてやってみて後悔してるの、必ず。『野球選手が夢だった』って、オレ、今だったら恥ずかしくてつけられないもんね。あの頃は、これは新しいと思ったけど。

――うん。確かあの時もインタビューさせてもらったけど、これでタイトルのつけ方がわかったって、けっこう熱っぽくいってた記憶がある。

KAN うん。それは何故かっていうと、反対を押し切ってつけたから。なんか、パワーあるかもしんないと思って。

――で、そのあとが『ゆっくり風呂につかりたい』でしょ?

KAN そうそう。で、あれ失敗したと思って(笑)。

――そう? 私はあの頃、こういうアルバムの中味とは直接関係なくて、そしてどこかユーモラスでとっぽい、一般的にはタイトルらしくないタイトルっていうのが、KANちゃんの見つけたっていうことなんだろうなって思ってたんだけど。

KAN その時は見つけたと思って、反対されればされるほどがんばったし、それで押しのけて無理やりやったから、すごく興奮するべきことだったと思うの。でも、今考えたら恥ずかしい。

――で、私は『東雲』が出た時に、超シンプルなんでびっくりした。

KAN あの時は、タイトルがなかなかつかなかったんだよね。

――だからそんなタイトルへのこだわりっていうの知ってたから、今回はまたどういう思いでつけたのかな、何かあるはずって思ったんだけど。

KAN いやもう、聞いた時のインパクトだけ。

――しいていえば、アルバムの中の1曲をアルバム・タイトルにしたくはないですか。

KAN いや、それもいろいろあります。逆にそれによってその曲にちょっと重みが出たりする時もありますからね、うん。だから曲にもよるし、その時々ですけどね。

――だから『MAN』の時は、同名の曲がアルバム・タイトルになったことで、重みが増しましたよね。

KAN うん、そうですね。あの時もだからタイトルがつかなくてどうしようと思って、まあ、やっぱりあの曲がすごくいってることも音楽的にも僕の基本的なことで、まあ僕の中ではすごく真ん中のとこだから、あの曲しかないなあと思って。「〜二の腕〜」をタイトルにするわけにはいかないし。

――今回のタイトルって、まっすぐにマジでいくなら『Songwriter』なんだろうけど、それじゃちょっと重すぎるから、KAN的ユーモラスを付け加えるために、タイガーって頭に持ってきたのかな、なんて思ったんだけど。

KAN 結果的にはそうなってますね。ていうか、本当は逆なんですよ。まずタイガーがあって、ソングライターをつけちゃえと思って。

kadono ――そうですか。で、ミックス・ダウンが終わった時はほっとしました?

KAN いや、僕は歌詞書いた時点で、終わってますね。最後の歌詞を書いた時に。

――その気持ちって、いつもそう?

KAN 毎回、そうですね。

――で、さっきの「SAIGON」じゃないけど、どっかで曲作りながら、レコーディングしながら、次のツアーのこと考えてるんですか。

KAN そうですね。だからコンサートは先にアイデアがあって作る時もあるし、作ってるうちに、あ、これ、こんなことできるかなって思い始めることもあるし。それはいろいろありますね。やりたいんだけど、やりようがないって曲もあるし。

――冒頭にいってたハード・ロックとか?

KAN いやあ、あれは単純に歌詞ができないから。だからたとえば『MAN』でいうと、「夏は二の腕発情期」なんていうのは、やりたいんですけどやりようがなかったんですよね。ただやる曲じゃないし、踊るとちょっとかわいくなっちゃうし、どうしたらいいかわかんなくて結局やんなかった。

――ところで、今までツアーのタイトルってバカ長かったけど、今回短いですね。

KAN もう、飽きちゃった。

――また前回みたいな、落ち着いたピアノの弾き語りをじっくり聴かせるコンサートですか。

KAN いや、あんなコンサートは10年に1回でいいですね。

――そうですか。じゃあ、「SAIGON」のKANちゃんの含み笑いの理由が明白になるであろう、ツアーも楽しみにしてます。ありがとうございました。

KAN ありがとうございました。



 アルバムの話を真ん中に据えながらも、ついつい話の中味は広がってしまったりして。でも私としては興味深い話も聞けて、うれしいインタビューでありました。

 たとえば「月海」をどう読んでくれてもかまわないってのは、たまげた。"読み方の決めようがなかった"という彼の気分、気持ちは大切にしたいと思いつつ、でもやっぱ戸惑ってしまう。でもインタビュー中でもいったけど、それも漢字ってものの持つ特性ゆえ。見れば意味がわかるからある程度許されるし、これがアルファベットだったら逆に読み方が決まらないなんてことはありえない。ひとつのスペリングに、ひとつの読み方しかないものね。まあ、漢字ってやはり特殊な文字なんだなって、改めて思ったりして。

 それから「SONG of Love〜」を、日本語詞にすると言葉のインパクトが強くなって、音楽として聴いてもらえないから英詞にしたというのも、彼の音楽に対する思い入れが感じられるエピソードだと思う。KANちゃんの歌詞に対する評価が高いというのは、私は素晴しいことだと思うし、彼自身も別にそれを嫌がってるわけではないんだろうけど、あまりにも音のことに触れてもらえないと、ちょっとがっかりするみたい。前回のツアーのステージを、じっくり音楽を聴くものにしたのも、そういう気持ちの現われといえなくもないと思うし。

 ツアーのステージっていえば、インタビュー中で何度も出て来た「SAIGON」に仕掛けがあるらしい話は、本当に気になる。これはもう、絶対ツアーのライヴは行かなくては。そして「なんだ、この程度のことだったのか」なんてがっかりさせたら、KANちゃん、承知しないからねって。ブリブリ文句いってやろう(笑)。でも「なあるほど!!」なんて感服させられたら、ますますKANちゃんが好きになりそう!!


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