自然への関心を育てる

理科の学習は、親が子どもの自然現象に対する関心を育ててやることから始まります。自然現象には、小さいときからいろいろと関心を抱くものです。しかし、子どもの素朴な疑問に母親が答えられないために、子どもが関心をなくしてしまうことがよくあります。たとえば、「ママ、夕日ってどうして赤いの」と聞かれたときです。正しい答えがわからないときでも、子どもが幼児でしたら、「きっとお日さまもねんねするからお家に入って明るい電気をつけたのよ」とか「お夕飯の支度をするから火をおこしているのかしら」とか、何でもいいのです。子どもの疑問を受け止めてやり、何かしら投げ返してやればよいのです。子どもによっては「お山の向こうに行ったらお日さまのねんねするところがある?」と答えるかもしれません。そんな夢を持った答えが返ってきたらすぐに「そうね、大きくなったら、お父さんとみんなで出かけてみましょうね」などと言ってやりましょう。

これが小学生でも中学年以上になったら、光について自分で調べるようにしむけるのです。光の屈折で、色によって反射角度が違うことを自分で理解すれば、空が青いことなどもわかってくるのです。親は子どもが持った疑問についてよく知っていても、なるべくすぐに答えずに、子どもが自分で調べる方法を教えてやることです。そして自分が知らないことを、子どもが自学自習で理解したら、少し大げさにでもほめてやることです。

今の小学五、六年生の関心は、親の子ども時代とは雲泥の差があります。子どもが生意気なことを言っても、それが単に知識上のものや想像上のことでしたら、ばかにしたりせずに伸ばしてやるべきです。やがてかなり高度なことに関心を示すようになり、親にはますます理解できないことが出てくるでしょうが、子どもが自分で調べたり、先生に聞いたりすれば、学習意欲は向上していきます。このように関心を引き出したり、育ててやることが家庭教育で大切なことなのです

私が小学校の五年生のときのこと、担任の先生が「疑問帳」を作らせて「自然に対して疑問に思っていることを書きなさい、答えがわからなくてもいいのです。興味を持つことが将来役立つんですよ」というようなことを言われました。そこで毎日いろんなことを書きました。確か、クラス内でかなり多く書いたほうなので、ほめられた記憶があります。ちなみに、次のような内容でした。

・地球は丸いそうですが、どうしてわかるのですか。
・地球は速い速度で動いているそうですが、どうしてわかるのですか。
・地球は速くまわっているのに、なぜ倒れないのですか。

五十年ほど前のことですが、今もかなり覚えています。この子どものころからの疑問を解決すべく、私は教師になろうと決心しました。私の教え子の中には自分で図書館や科学博物館に行って調べる子どもが多くいました。調べてきたことを聞いてやり、ほめてやると喜びました。その後、教師になった生徒がかなりいます。少しでも私が役に立ったのであればうれしいと、今でも思っています。

ところで、最近、若者の理数系志望者の減少が目立ってきているようです。数学や理科の得意な子どもは、小学校時代から少なく、中学・高校と進むにつれてその傾向はますます顕著になります。ですが、「理数科が得意な人間は少なく、世の中で重用される」という事実を小さいころから理解させてやりたいものです。そして、生涯にわたってその才能を伸ばしていくことが、自分にとっても社会にとっても、すばらしく価値あることだということを教えてやりたいものです。

(平成7年7月)


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