『寸鉄』抄
玉井道敏
*46才になって、少し物を言いたくなりました。いつ迄続くかわかりませんが、あなたを刺す気はありませんので、付き合って下さい。少し気障で少し鋭く、少しの辛辣と少しのへそ曲がり、少しく評論家で少しくナルシスト、まあこんなところです。
*後始末の出来ない技術の開発は、汚染を招くだけである。
*男の甲斐性なんてくだらないものは捨てて、ダメ男で開き直るところから、世の中変わるように思う。
*マスコミの堕落は、陳腐な常識論で大衆を説教すること。
*多くの男は組織の上に乗っかって架空の実力を蓄えている。多くの女は個で本当の実力を蓄えている。その差!
*人類が生き延びねばならないという必然性は何もない。人類はせっせと滅びへの定向進化の速度を早めている。
*自立した個人が、ゆるやかに連帯する社会の構築。
*人というものは、期待しすぎては裏切られるし、無視しすぎては恨まれます。つかず離れず、適度な位置を保ちながら、連体のネットワークを造っていけたらと思います。
*財テクからの完全なドロップアウト。次は出世からの完全なドロップアウトをめざす。
*自分の世界を少しでも拡げてくれる人は最高の恩人である。
*10数年間心に暖めていた(ドイツの)クラインガルテン(大型市民農園)をこの目で視る。個と集団の見事な調和、社会の一つの理想の姿。
*私は自分の子供のためには生きない。玉井家のためにも生きない。勿論日本国のためにも生きない。自分のためにだけ生きる。
*組織に幻想を抱いてはいけないし、抱かせてもいけない。
*幼稚園、小学校時代に、自分に対し理不尽にふるわれた教師の暴力を、今頃になって初めて他人事のようにさりげなく話題にする長男と次女。教師諸君! あなた達は常日頃子供の自尊心によって救われていることを忘れてはいけない。
*親の背中をみて子供は育つと申しますが、最近の私は、子供の背中をみて育っています。
*リーダーの素質 いかに、めげずくじけずに、人の世話ができるかということ。
*自分の夢を、子供に夫に妻に血族に、そして国家に企業に地域に組織に託すのはやめよう。自分の夢は自分に託そう。
*無駄と余裕こそがいい発想を生み出す。
*「〜すべきである」「〜しなければならない」という指導者意識の払拭、(私は)役人として、この強迫観念と常に闘っている。
*被害妄想かもしれませんが、 最近自分の周辺で、自分に対する天敵がふえつつあるように感じます。日頃の自由気ままな言動や行動が、既存の枠組の秩序から一歩も出られない、また出ようとしない人々を刺激し嫉妬を覚えさせているのかもしれません。
*技能が機械に置換わるということは、人間と自然、人間と人間の交流が断ち切られることでもある。
*農業、農村をトータルとしてとらえる。自然科学だ、社会科学だなどとケチなことをいわないで、直観的にトータルにとらえる視点が絶対に必要です。
*無数の生物、無生物が、約300万種類を数える植物・動物が、52億人を数える人間同士が、意味のあるものないもの(人間が勝手に決めているだけ)が共存できる雑の世界、
その対極は何でも一色に染めようとする、一つの価値観を万人に押し付けようとするファッショの世界。人間の歴史は、雑の世界とファッショの世界の限りないせめぎ合いの歴史かもしれません。
*ハコベ、ミミナグサ、スズメノカタビラ、オオイヌノフグリ、ツメクサ、今春もおなじみの雑草が我が家の庭でのびのびと育っています。雑草を排除することが差別意識につながるのでは、最近何となくそんな仮説を持っています。
*親のエゴイズムによるエセ愛情が子供の伸びようとする力を封じる。
*生物、無生物を問わず、存在するものは全て、存在するというそのこと自体に絶対的な価値を持っているのであって、存在のあり方や優劣を云々するのは二次的な問題であると思います。
*頭脳というものは実に便利なものです。考えること即実現することという錯覚を起こさせます。頭脳というものは実にやっかいなものです。
*どれだけ稚拙であっても自らの頭で考え、自らの言葉でしゃべり、自らの文章で書くことが人を動かすのです。
*生産する人は農林漁家であっても、多くの人が農林漁業にかかわるような社会システムを造り上げることが大事だと思います。
*権力(いばること)への嫌悪と権力者(いばる人)への憎悪が自分の行動を規定し、エネルギー源となっています。
*お金の貯金は少しも増えませんが人の貯金は確実に増えています。
*80歳になる大学時代の恩師からやんわりと寸鉄への忠告をいただきました。読まされる側の立場も考えよ、いつも正義感面するなというあたりかなと受けとめました。いくつになっても恩師はありがたいものです。
*仮説“社会の止めどなきスピード化と効率化が社会の無機化を加速する”。
*できる(といわれる)人間だけを集めてもいい仕事はできません。有象無象がいてはじめていい仕事ができるのです。
*人に恐怖感を与えたり、緊張感を強いたり、褒賞をちらつかせることによって物事をなしていくようなやり方は絶対にしたくない。
*何事も最初は一人から出発し最後は一人で終わる、この覚悟さえあれば他に多くを求める必要はありません。
*運動を感じさせない運動をすることの必要性。
*やりにくくしてといては知恵をしぼれという、社会全体がマッチポンプ化しています。
*公私、大小に関わらず、自分にしかできない“最初にして最後のひと仕事”を完結し、積み重ねていくことが、人生のいきがいではないでしょうか。
*いまだにアメリカぼけ、ヨーロッパぼけが進行する日本社会の中だからこそ、日本の地域〔日本国ではありません〕に回帰しようと思っています。根無草にはなりたくないから。
*“本物の百姓の心の奥底にアニミズム宿る”、そこに迫ってみたい。
*異常性は相対的なものであり、誰しもが所有しているものだと思いますが、その異常性こそが創造力の源泉となり新しいものを生み出していくような気がします。
*強者は弱者になることを極度に恐れるが故に、常に強者であり続ける為に見栄をはり虚勢をはり、なりふりかまわず最大限の努力をする。弱者の世界も徹すれば楽しいのに。
*原石が持っている可能性、エネルギーは、一方的に取り出され、磨かれ、洗練されることによって急速に失われてしまうのではないか。我々はあまりに磨かれた宝石を求め過ぎているのではないか。
*なんだかんだといっても、結局、ひとは、自分の考えや想いを無意識下で正当化しているものです。
*寸鉄も60号を数え人間でいえば還暦に達しました。今号は1400枚発行しました。今後も新鮮な気持ちで片意地張らずに続けていこうと思っています。何かとご支援下さい。
『寸鉄』は玉井道敏さんが葉書で発行されている個人誌です。ご許可を頂いて、1−60号から『心の風景』の趣旨に合うと思われる文を抜粋いたしました。本来の『寸鉄』には、家族・仕事・趣味・自然・時事問題等広い範囲の話題が取り上げられています。ここでご紹介しましたのは、全体の20分の1にも満たないことをお断りしておきます。(荻野誠人) |
玉井さんのメールアドレス/ mm-tama@mx1.fctv.ne.jp