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精密検査

荻野誠人


 先月、血尿らしきものが出てしまいました。実は半年前にも同じようなことがあったのですが、さすがに2度目ですと、少し深刻に受け止めました。ネットで調べると、最悪の場合、ガンの可能性もあり、のんきに構えていられる状況ではないようです。ヤバイ、とこのときは心臓の鼓動が増えました。

 即日、近所の泌尿器科へ行って、検査。尿に血が混じっていることは確認。でもその場では、何とも言えないな〜とのこと。1週間後に、超音波検査と再度の尿検査の指示・・・。

 いつも死が意識のどこかにある人間ですが(ホントです)、とうとうオレのとこにもやって来やがったかな〜と思いました。「今、治療に金がかかったらすご く困るなあ、もうちょっと後にしてくれないかなあ」とか、肺ガンで2人の幼子を残して若死にした親友を改めて思ったり、とか、いろんなことを考えましたが、読んでもたぶん面白くないので、省略。

 ただ、毎日大切に生きてきて、よかったな、と思ったのが我ながら一番印象に残りました。ああしとけば、という後悔の念は湧きませんでしたね。

 結局、一番心が揺れ動いたのは、最初にネットで調べたとき。その後は、普通に生活し、食欲不振や不眠になったりすることもありませんでした。「ボクって、意外と大丈夫じゃん」と思いました。小心者ですから、こういうときに醜態をさらすかもしれないという予感が以前からあったのですけどね・・・。最終的な結果が出ていないので、誰かに話すこともありませんでした。おそらく異変に気づいた人はいなかったでしょう。

 もっとも、亡くなった親友に言わせれば、「まだ病気の宣告も受けてない癖に、なに悟り澄ましたようなこと言ってやがるんだ」ということになるんでしょうが・・・。親友の笑いが聞こえてくるようです。

 1週間後。超音波検査は、初めてでした。どんな機械なのか、よく観察することもなく、仰向けに寝ると、何かひんやりしたものを腹部にベタベタ押しつけられました。余りいい気分じゃありません。私がやせてるから、中が見やすいそうです。その日の結果は、肝臓・腎臓・膀胱・前立腺など異常なし。尿からガン細胞検出せず。血液も出ておらず。まず心配することはないとのこと。念のため、別の機関に検体を送って検査をやってもらうので、2週間後、また来院せよとのお達し。やっぱりホッとしますな。

 2週間後、2月5日。やはり異常なし。要するに血尿?の原因不明。「前立腺が一時的に炎症を起こしたんだろうね」「じゃ、日常生活でどんなことに気をつけたら?」「原因が分からないんだから。ワハハ〜」「そうですか、ワハハ〜」という感じで終わりでした。

 誰しもいずれは死につかまってしまうわけですが、今回は「初心者」にとってちょうどいい予行演習をさせてもらったと思っています。

2013・2・15


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