ささやかなふれあい

礒ひろし

　僕は、食事やコーヒーなど、たいてい決まった店に行きますから、なじみの店員さんが何人かいます。あいさつ程度の会話だけですが、そういう人に会うとホッとします。

　ある意味では、その人に会いたくて、その店に行く要素もあります。付加価値とでも言うのでしょうか。また会いたくなる店員さんには、人間的な魅力があるように思います。

　僕が気に入っている店員さんの共通点は、笑顔です。タイプはそれぞれ違いますが、思いやりがあって、やさしい人たちです。相手は鏡と言うように、僕もやさしい気持ちになれます。

　その人たちは仕事ですから、愛想のいい店員を演じているのかもしれませんが、すこし話してみると人柄が伝わります。こちらから話しかける、というよりも、相手から話しかけてくださるパターンが多いので、仕事の邪魔にはなっていないと思います。

　相手も人間ですから、気分よく仕事をしていただきたいという思いもあります。僕も「こんな客がいたら、働きやすいだろうな」と思う客を、演じている部分もあります。

　お互いに、ほどよい緊張感があるから、気分がいいのかもしれません。 ささやかなふれあいですが、僕にとっては意味のある、ひとときです。

　４月になってから二人、顔を見なくなった方がいました。テレビ番組改編のように、最近異動があったのかな、と思いました。

　そのうちの一人と、偶然違う場所でお会いしました。違う店に変わったとのことで、「あいさつができて、よかった」と言われました。僕も、事情がわかりホッとしました。

　バイトの人で、「今月いっぱいで辞めるんです」と、教えてくれる人もいます。そう言われると、なんだかうれしくなります。ささやかではあっても、人とのふれあいは大事にしたいものですね。