宗教

『老師と少年』/南直哉/新潮社 NEW

 現在、恐山の院代を勤める禅僧が書いた本です。
 引きこもりと言われる少年達の心象風景を、老師と少年のやりとりの中で浮き彫りにし、道標となる本だと思います。
 僧界からの評判は良くないらしいのですが、これを読んだ子供達からは絶大な支持だそうです。
 実際に思春期の子供達の相談にも乗っている方で、ご自身も引きこもりの状態があり、それを克服したのだそうです。
 引きこもりに戸惑う子供や親御さんの助けとなれる本だと確信しています。(如風)

『「お坊さん」の日本史』/松尾剛次/生活人新書/NHK出版

 仏教公伝538年から平成の現代まで、日本仏教の歴史を辿りながら、それぞれの時代において、僧侶が政治と庶民にどのように関わり、影響を与えたか、今日的な問題(妻帯や戒律軽視など)を踏まえながら、平易な文章で詳しく解き明かす日本仏教入門書であり、日本仏教を問いただす提言書でもある。各時代の代表的な僧侶が検証されているが、特に鎌倉新仏教の遁世僧・叡尊の教団のハンセン病患者救済や尼寺の創建には胸を打たれた。同じ著者による『鎌倉新仏教の誕生』(講談社現代新書)には、勧進、非人・女人救済、葬送の論理などがさらに深く検証されている。(下町カラス)

『大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」』 /池上彰/講談社プラスアルファ新書

 素朴な疑問に答える形で、イスラム世界の誕生から現在までを、ユダヤ教とキリ スト教も含めて、宗教から歴史にわたって解き明かすジュニア手引書。写真がふんだんに取り入れられ、短いコラムも満載。複雑に絡み合った現実を削ぎ落とした素朴な問いは、真理にずばり切り込む鋭さを持ち、それに対して、解答も明白で白黒をはっきりさせている。判らないことについては、どこまで判っているか、どのように考えられているかを添えている。宗教から捉えた現代史書。(下町カラス)

『宗教世界地図』/石川純一/新潮文庫

 宗教に疎いとよく言われる日本人。だが世界各地の紛争には宗教が深くからんでいる。本書は30余りの紛争と宗教の関係を図入りで簡潔に解説した入門書。世界情勢を知ろうというのなら、必読書と言える。(荻野誠人)

『ブッダのことば』/岩波文庫

 「スッタニパータ」と呼ばれる原始仏典。いわゆるお経である。最古の仏典で、お釈迦様の教えを最も忠実に表していると思われる。訳者中村元氏の注釈を参照しながら読み進んでいくと、今の日本の仏教教団とは全く違った、宗教らしくない原始仏教の姿が現れてくる。そこには素朴な実践的な教えがあるのみで、お釈迦様自身も一修行者であって、何ら権威を帯びてはいない。
  『般若経』『法華経』『浄土経』など日本で有名な仏典はすべて大乗仏典であり、お釈迦様の死後何百年も経ってから成立したものである。大乗仏典や現代の仏教教団のみを知っている人はこの書を読んで大いに驚くかもしれない。
 なお、岩波文庫ではこの他にも原始仏典が6冊刊行されている。 (荻野誠人)


『マンガ 禅の思想』/蔡志忠/講談社+α文庫

 普通の人にはチンプンカンプンと言われる禅の世界を描いた漫画。
 漫画になっても内容が難しいことに変わりはないのだが、目に見える形で表現されているため、一段と取っつきやすくなっている。名僧・高僧がどんな顔に描かれているかも一興である。普通の人が悟ることはまず無理だが、本書に書かれた悟りのうち自分が理解できる部分を心のよりどころにするだけでも、毎日の生活が大いに違ってくる。(荻野誠人)

『尼は笑う』/麻生佳花/角川書店

 尼さんの出家から修行の日々、心身の変化 などを軽妙に語ったエッセイ。とっても楽しく 笑ってしまい、心も元気になりました。 (『心の風景』愛読者)

『釈尊のさとり』/増谷文雄/講談社学術文庫

 宗教学、仏教学の権威である増谷文雄氏が、ある県民大学の地方講座で同題にてなされた講演筆録をもとに著されたもの。釈尊のさとりの内容、由来をリアルに、平易に説かれている。釈尊のさとりは直観であること、それが知性化されて完成されたというところがよく理解できる。仏教の真髄が随所にちりばめられて光っている小冊子である。(向井俊博)

『仏教の思想』(上・下)/梅原猛/角川文庫

 インド、中国、日本の仏教思想の概説書。日本の仏教者としては、最澄、空海、親鸞、道元、日蓮などが登場する。著者の見解は実に大胆、明快。仏教の専門家ではないので、その見解の中には定説からはずれているところもあるのだろうが、文章が生き生きとしていて面白く、かつ個性的で、退屈な学術書とは全く違う。特に、釈迦、キリスト、ソクラテスを比べて仏教の特色をはっきりと定義した第一章はすばらしい。(荻野誠人)

『聖書の天地』/犬養道子/新潮社

 聖書を手にとって、物語のところは理解できても、その先どう踏みこめばいいのか戸惑い、なかなか精神の糧とできない人が多いのではないかと思う。本書は、聖書が何を我々に語りかけているのか丁寧に手引をしてくれる好著。かつて婦人雑誌『ミセス』に連載されていたものをベースに、加筆し体系的にまとめたものとある。(向井俊博)