科学

『マザーネイチャーズ・トーク』/立花隆/新潮文庫

宇宙を含めた自然と科学についての、立花隆と一流の科学者との対談集。自然の懐の深さとその深奥にアプローチする一流の科学者のものの考え方がわかる本。現実には、科学の純粋性はゆがめられ、様々な環境問題、医療問題などが起きているが、そうした物事の本源を考える上で示唆に富んだ本だと思う。文庫としては、内容が新しい(1990−93年の自然科学雑誌に掲載されたもの)のも魅力だ。(三浦秀雄)

『カラー版 ハッブル望遠鏡が見た宇宙』/野本陽代、R.ウィリアムズ/岩波新書

4ページ目の写真を見るだけで衝撃が走る。北斗七星に近いほんの一角を撮影した写真には、二千個近い銀河が写っていて見る者を圧倒する。大気を通さずに鮮明な深宇宙の姿が撮影できるのは、米国のスペースシャトルで打ち上げられた、題名のハッブル宇宙望遠鏡による。解説も平易で、宇宙の姿を身近にしてくれる好著。他に大型の写真集も書店に並んでいるし、最近はパソコン用CD-ROMも出た。(向井俊博)

[参考] 最新情報は以下のURLより入手できます。(toma)

http://oposite.stsci.edu/

『宇宙の旅 二百億光年』/森本雅樹/岩波書店

独特の語り口で宇宙の誕生、宇宙の果て、私たち人間の存在について平易に描き切っている。難解な類書を多読される前に、この一書をお勧めしたい。一見、少年文庫といった感じであるが中身は濃く、楽しく読めるうえに宇宙へのロマンもついかきたてられる。(向井俊博)

『相対性理論』/アインシュタイン/内山龍雄訳、解説/岩波文庫

相対性理論を初めて世に問うた記念碑的論文。アインシュタインが二十六歳のとき、ドイツの物理学誌に発表したもの。専門家から見ると、簡明で、理解しやすい美しい論文なのだそうだ。本文庫に収められた意図は、門外漢に鑑賞してもらうことにあるのではないかと思う。内容が理解できなくても、コーヒー一杯の値段で、それまでの物理学、天文学を塗り替えた世紀の天才の息吹に触れられるのが嬉しい。(向井俊博)

『新井素子のサイエンス・オデッセイ』/新井素子/新潮文庫

若手SF作家、自称理科音痴新井素子さんが五人の第一線科学者にインタビューした対談集。我々と同じ常識レベルからの切り込みに、最先端の科学の片鱗をこれまた日常レベルのイメージに訴える形で答えてくれていて、これが真面目でいて面白いのだ。例えば、科学者が味覚の説明をして、甘いとか辛いとか言っても、舌の神経からの電気パルスが脳のある部分に行って感じているにすぎないと説明すると、新井さんがすかさず「それを聞くと、グルメってバカみたい。所詮は電気の流れ方の差だけ・・・」とやるといった具合。「生きてる」とはどういうことかに始まり、光コンピューターの話まで、先端科学の香りが文庫本一杯につまっている。(向井俊博)