★『トムは真夜中の庭で』/フィリパ・ピアス/岩波少年文庫
傑作とたたえられ、しばしば推薦図書として取り上げられているようです。大人が人前で読んでいても恥ずかしくない作品です。
主人公のトムはおじさんの家に預けられ、夜中にこっそり裏口のドアを開けてみると、そこには昼間見たのとはまるで違った光景が広がっているので
した・・・。
一種の時間旅行が描かれているのですが、みごとな構成で、作者独自の世界の創造に成功しています。意外な結末を迎える最後の場面は本当に感動的です。
決して道徳的な内容が中心ではないんですが、庭に入り込んだトムを見ることができるのは、純真な心を持った二人の登場人物だけです。そして、退屈して友だちがほしかったトムだからこそ、この不思議な庭に出会えたのです。
小学5年生ぐらいから、という指定がありますが、その年齢ではストーリーを追うだけになってしまうかもしれません。日本人の私にとってはヴィク
トリア朝時代の建物や家具の描写などは分かりにくいですね。訳文はちょっ と硬いところが感じられます。 (荻野誠人)
★『リトル・トリー』/フォレスト・カーター/ めるくまーる
チェロキー・インディアンの少年リトル・トリーは両親を亡くし、祖父母に引き取られる。テネシーの美しい自然のなか、寡黙だがユーモアに富み、確固たる個として存在する祖父との交わりを通じ、トリーはインディアンの生き方を学ぶ。季節の移ろいとともにもたらされる生と死の体験によって、人間も自然の一部であることを読者は実感することになる。被差別民族としてのインディアンの歴史や、〈白い人々〉の偽善と欺瞞といった体制への批判
も盛り込まれている。あなたの価値観を変えること間違いなしの感動物語!(白鳥こざる)
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