ビジネス

『御社の営業がダメな理由』/藤本篤志/新潮新書

 本書はあくまで企業の営業部門を強化するための本だが、著者の人間観には共感できるところが多く、面白く読めた。私は営業とは縁もゆかりもない人間だが、学生時代に宗教のパンフレットを戸別訪問して売るという活動を何年かやっていたので、営業の大変さの一端は体験しているつもりである。
 私はきれいごとを言わない人が好きである。著者は、優秀な人材は全体の2割で、6割は平凡、残りの2割は不良であり、成人してしまえば、その人の能力はまず伸びないと言い切る。大体その通りだろうと思う。その認識をもとに著者の営業強化案がある。
 私は、政治でも経済でも教育でも改革をやるなら、凡人が取り組めるようなやり方でなければ実を結ばないと思っている。だが、世に改革案はあふれているが、中にはすばらしい業績をあげた飛び抜けた能力の持ち主のやり方を紹介して、これを見習え、というものが少なくない。そんなものを凡人に与えても真似の出来るわけがないと思う。この点でも著者と考え方が近い。
 著者は、無駄な時間を省いて営業時間を増やし、営業マネージャーは部下の話を一日30分聞き、外部の研修に頼るのではなく社内で培った営業の経験を社員に伝える等という誠に地味で誰にでも出来そうな方法を提案している。このやり方が実際にどのくらいの成果をあげているのか分からないが、少なくとも伝説的な武勇伝を押しつけて叱咤激励するやり方よりははるかに勝ると思う。 (荻野誠人)

『「人を動かす人」になれ!』/永守重信/三笠書房

 著者は大証2部から東証1部に上場した日本電産の社長で、最近のベンチャーでは珍しく大成した人。一代でここまでの企業を作り上げた秘訣とベンチャー企業の社長としてのあり方が書かれています。(Kiyohide Yamada)

『販売は断られたときから始まる 』/E・G・レターマン/ダイヤモンド社

 「セールスマンは落胆ということを知らない人物でなくてはならない」。「売れない時代」の失望と無力感を吹き飛ばす、熱烈なセールスマン・シップが本書のテーマだ。まずセールスマンに求められるのは、世の中に役立っているという信念だと筆者は言う。販売活動によって、人々の生活は向上し、工場生産も安定、しかも税収入も 増加する。セールスは現代社会に不可欠な活動である。この信念があれば、燃えるような熱意が生まれ、人のために尽くし、顧客の仕事を自分の仕事と思う熱意も高まるはずだ。また事前準備も周到におこなわれなくてはならない。正確な商品知識を身につけ顧客のニーズを把握する。こうした努力が信用の基礎を築き、成功を引き寄せるからだ。さらに売り込みに失敗しても、少しも気にする必要はないと筆者は言う。失敗は教訓をつかみ、精力的に再チャレンジするためのチャンスである。要は「自分の才能と販売能力をいやがうえにも試そうと深く心に決するきっかけにすればよいのである。アメリカを代表するセールスマンである筆者の情熱に、セールスマンならずとも、自信とヤル気をかき立てられる一冊。(服部桂子)