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自分の知らない自分

上杉守道

自分のことは自分が一番よく知っている、と思うのは普通の感覚である。しかし、自分の知らない自分があることも事実である。

ある日、私は医者から腫瘍ができている、と宣告された。私にとっては寝耳に水である。もちろん自覚症状などない。信じられない、というのが正直な感想だ。いや、信じたくない、と言ったほうが正しいのかもしれない。しかし、医者が示す検査結果をみると、そう納得せざるをえない。つらいことではあるが、これは否定しがたい事実のようである。

人の心は弱い。可能なかぎり「こと」を起こさずに目の前の危機をやり過ごしたいと思う。しかし、目をつぶって我慢しているだけでは通り過ぎてくれない危機もある。

見たくない現実を直視するためにも、自分の知らない自分を指摘してくれる「嫌な」他人は貴重な存在である。自分の気づかなかった欠点を鋭く指摘してくれる友人などは、えがたい存在ともいうべきなのだろう。


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