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捕鯨について

荻野誠人

 捕鯨について某NGOの人と議論しました。それをほとんどそのまま以下に掲載します。

 NGO Kさん 2000・1・13
 テレビ朝日・ニュースステーションに抗議してください
 1月10日放映のニュースステーションで、南極海における日本の調査捕鯨に対して環境保護団体のグリーンピースが「調査捕鯨は食用捕鯨の隠れみのとなっている」と抗議。 激しい争いとなっていると報道されました。そのなかでキャスターの久米宏氏が「牛も食べるのに、なぜクジラを食べてはいけないのだろうか」という、偏った発言をしていました。
 番組の内容は以下のとおりです。捕鯨に関して、下記4名のコメントが流れました。
 1. 浅草の「捕鯨船」というクジラ肉料理専門店の主人 「今まで食べてきて、クジラ肉で日本国が出来たようなもの。必要なくなったから捕らないというのはあんまりだ」
 2. 慶応大国際法の教授 「(クジラを捕ることが)環境破壊の危険性があればそのものに手をつけないという予防的アプローチという考え方がある」
 3. 梅崎義人(水産経済ジャーナリスト?) 「畜産肉に代わる食肉としてクジラを食する方法が確立されている」 『外国人の指摘する捕鯨禁止の不当性』(日本鯨類研究所出版)『動物保護運動の虚像』 (名古屋港水族館がシャチ捕獲の抗議者に対して参考書として紹介している)といった著書があります
 4. IWC(国際捕鯨委員会)の職員 「調査捕鯨として捕ったクジラを有効利用として食用にしても正当といえる」
 この後キャスターの久米宏氏が 「クジラが増えてきているのはどの資料を見ても明らかです。牛も食べるのだから、なぜクジラを食べてはいけないのか、欧米の人に質問したことがあるけれど、はっきりした返答をもらっていないのです。10年くらい前イルカ猟をを特集したら、イギリスで大問題になっちゃったんですよね」
 編集委員の萩谷氏が 「私も鯨肉を好んで食べた世代だが、現代では他のものでタンパク源は十分。牛などと違い鯨は数を人間がコントロールできないのだから同じと考えるのは無理」(比較的鯨保護に理解ある発言)
 「久米氏のコメントは国際的な流れに反し、偏った発言。キャスターとして世論を考えて発言してほしい。コメントを求めた人(上記4者)の中に鯨保護の立場の人がいないのも偏っている」 と抗議したところ、局の担当者は、「捕鯨賛成側のニュアンスになってしまった」と答え たとのことです。

 荻野誠人 2000・1・17
 いつもお世話になっております。荻野誠人と申します。先日のメールを拝見しました。私は、乱獲しないという条件付きで捕鯨には賛成なのですが・・・。今のところ、私の意見も 「牛を食べているのに、なぜ鯨は駄目なのか」という意見に近いです。久米さんの意見が偏っているとも思えないのですが。 おそらく以前に機関誌に発表されものを ちゃんと拝読していないのに厚かましいとは思いますが、お暇な時にでも貴会の捕鯨反対の論拠についてお教えくだされば幸いです。それではまた。何とぞお元気で。

 NGO Kさん 2000・1・24
 いつもお世話になっております。 先日は貴重なご意見をありがとうございました。 返信が遅くなり、申し訳ありません。私から当NGOとしての捕鯨反対の考えを簡単にご説明させていただきます。
 まず第一に鯨は生息数を人間がコントロールできない野生動物だということです。たとえ現在の調査で生息数が捕獲に十分とされていても、自然環境破壊や鯨の体内重金属汚染などの影響でいつ絶滅の危機にさらされるかなど予測できません。そのような状況の動物を他に食べるものがいくらでもある現代の日本が捕る必要はないと考えます。
 第二に、調査捕鯨として世界で日本だけが、年間約500頭のミンククジラを捕っていますが、1つの命ある生き物としてできる限り一頭でも犠牲をなくそうという考えです。牛などの畜産動物も命あるものとして鯨と同様に考えておりますが、鯨はあくまで嗜好品として食べられており、今すぐ無くなっても人間の生存に支障はないからです。どの動物にも人間同様、虐待されず、生きていく権利があると当会では動物の権利を擁護しております。
 第三に、鯨の性質上の問題です。鯨などの海洋哺乳類は感情、知能の面で大変優れた動物であることは良く知られております。彼等は家族単位で暮らしており、深い絆で結ばれています。水族館用のシャチ捕獲の時にも見られましたが、引き離された親子は鳴き叫び、水族館に運ばれてからも何も口にせず、餓死するほどでした。また、水族館ではシャチもイルカも寿命が野生より平均的に短いというほど、ストレスを感じやすい動物です。これは鯨にもいえます。このような性質の鯨を捕獲すれば、残された家族が心理的にかなりのダメージを 受けたり、寿命や体調などの生存に悪影響が及ぶ可能性があるからです。
 簡単ではありますが、以上のような考えから当会では捕鯨に反対しております。何かありましたら、またご意見いただけますと幸いです。今後ともご支援よろしくお願い申し上げます。                           

 荻野誠人 2000・1・31
 
荻野誠人です。まさかお返事頂けるとは思ってもいませんでした。お忙しいところを私のような無知な人間にお付き合いくださり、誠にありがとうございました。再びお手をお煩わせして恐縮ですが、ご見解に対する私見を述べさせていただきます。失礼な点は何とぞ御容赦ください。
 まず第一に鯨は生息数を人間がコントロールできない野生動物だということです。たとえ現在の調査で生息数が捕獲に十分とされていても、自然環境破壊や鯨の体内重金属汚染などの影響でいつ絶滅の危機にさらされるかなど予測できません。そのような状況の動物を他に食べるものがいくらでもある現代の日本が捕る必要はないと考えます。
▲野生動物ということでしたら、養殖以外の魚はすべてそれに当てはまります。しかし、よく知らないのですが、身近な魚で全面禁漁になったものがありましたか・・・。マグロなどは確か規制しているはずですが、捕獲は続いています。一応調査等の結果に基づいて、それを信頼してのことでしょう。 なぜクジラだけが例外扱いなんでしょうか。
▲「他に食べるものがいくらもある」とのお言葉ですが、人それぞれ食べたいものは違っていてもいいのではないでしょうか。ある人が牛肉を食べたいと思うのと同じように他の人は鯨肉を食べたいと思うのでしょう。どちらの希望も等しく尊重すべきでしょう。それなのに、上記のお言葉は、人の食生活を指図なさるかのような印象を受けるのですが。
 第二に、調査捕鯨として世界で日本だけが、年間約500頭のミンククジラを捕っていますが、1つの命ある生き物としてできる限り一頭でも犠牲をなくそうという考えです。
▲しかし、鯨を捕らなければ、代わりに牛が食べられたりするのでしょうから、 同じことだと思うのですが・・・。そもそも食用になる生き物の犠牲を減らすことなど不可能ではないでしょうか。人類全体が減食でもしない限り・・・。
 牛などの畜産動物も命あるものとして鯨と同様に考えておりますが、鯨はあくまで嗜好品として食べられており、今すぐ無くなっても 人間の生存に支障はないからです。
▲人間の生存に支障があるかないかで、愛護をお決めになるのでしょうか。命をもっている、という理由だけで愛護するのではないのでしょうか。では、牛は人間の食生活にとって大事だから、鯨よりは殺してもいい存在だ、ということになってしまいませんか。
 どの動物にも人間同様、虐待されず、生きていく権利があると当会では動物の権利を擁護しております。
▲動物の生きていく権利は同時にその動物が他の命を奪う権利でもありましょう。人間にも同じ権利があります。 自分の命を保つために、つまり食べるためなら、他の命を奪うことは罪でも虐待でもなく、通常の行為だと思うのですが。
 第三に、鯨の性質上の問題です。鯨などの海洋哺乳類は感情、知能の面で大変優れた動物であることは良く知られております。彼等は家族単位で暮らしており、深い絆で結ばれています。水族館用のシャチ捕獲の時にも見られましたが、引き離された親子は鳴き叫び、水族館に運ばれてからも何も口にせず、餓死するほどでした。また水族館ではシャチもイルカも寿命が野生より平均的に短いというほど、ストレスを感じやすい動物です。これは鯨にもいえます。このような性質の鯨を捕獲すれば、残された家族が心理的にかなりのダメージを受けたり、寿命や体調などの生存に悪影響が及ぶ可能性があるからです。
▲繰り返しになりますが、自然界の動物はすべて自分の命を保持するために、他の命を奪っています。その時、相手が優れた動物かどうかということは問題にならないと思います。例えばシャチはヒゲクジラ類を襲って食べるそうですが、人間もシャチと同じことをしても特に非難されるはずはないでしょう、同じ生き物として、自分の命を保つために行動したのですから。遊びで殺すのでも、動物実験のように長時間拷問を加えて殺すのでもありませんし。水族館は論外ですね。
▲確かに残された家族に悪影響が及ぶのかもしれません。それでも、南氷洋だけでミンク鯨は70万頭いると言われていて、日本が捕れるのは年間500頭ですから、全体の繁殖には問題ないと思うのですが。
▲それに、優れた動物だから、捕獲するなということですと、生き物に序列や段階をつけていくことになりませんか。 劣った生き物は鯨ほど大切にしなくてもいいという考え方につながっていきませんか。失礼な言い方ですが、それでは一種の「差別」になるような気がします。すべての生き物の命は同じではないのでしょうか。
▲もっとも貴会の考え方には、好意を感じる面もあります。人間なんだから、もっと慈悲深くてもいいではないか、 ということでしょうか? しかし、捕鯨をしている人や食べる人は悪いことをしているのではなく、生きるための行為をしているのですから、そういう人たちを「批判」「非難」「規制」することまでは出来ないと思うのですが。生き方の一つ、価値観の一つとして提出するのが限界なのではないでしょうか。
 以上です。お忙しいところをお読みくださり、誠にありがとうございました。無礼な点はお詫びします。 またお暇がおありでしたら、色々とお教えください。

 NGO Kさん 2000・2・11
 いつもお世話になっております。先日は、再度貴重なご意見をありがとうございました。私からまた返信させていただきます。
 まず養殖以外の魚も野生動物ではないかと言うことですが、確かに魚も鯨も野生動物である点では同じです。しかし、魚が毎年何百、何千という大量の卵を生むのに対して、鯨は2〜3年に1回1頭という出産率の低い動物です。さらに食物連鎖の頂点にいるため 、水銀やPCBなどの重金属による体内汚染の影響を最も酷く受けています。そして哺乳動物であるため、授乳によりこの汚染が子供へも移り、今後寿命の短縮やさらなる出産率の低下、はたまた絶滅の危険性が懸念されています。現在約70万頭いても一気に激減する可能性も高いのです。そのような厳しい状況の動物を捕ることは止めるべきと考えます。もちろんマグロなどの魚類も状況に応じて水揚げをやめるべきですが…
 次に誰にも好きなものを食べる権利があるということですが、それを全て認めていては野生動物の多くは絶滅するのではないかと思います。例えば日本で野生の猿が増えたからといって「数も十分だし、おいしそうだから食べたい。」と捕獲して食用にするでしょうか? 確かに人間も生きるために他の動物同様食べるという行為を行いますが、動物は人間のように嗜好という食はありません。あくまでも生きるためだけの食です。ですから現在鯨を食べなくても他に食べるものがあるのですから、食べたいからとい うだけで希少な野生動物を捕ることは考え直さなければならないと思います。牛などの畜産動物に関しては現在の社会システムでは、人間の生きるための食の対象となっているため、野生動物である鯨同様に扱うのは困難かもしれません。しかし、捕鯨問題をきっかけに日常、人間の食の犠牲となっている動物を出来るだけ少なくすることを考えてもらえればと思います。
 そして捕鯨をしている人も生きるためだからというご意見ですが、戦後のタンパク源が不足していた時代とは違い、捕鯨の必要性はなくなりました。時代ともに衰退していく文化・職業は捕鯨に限ったことではありません。例えば象牙に関しても象牙細工の職人さんはもう象牙を使用することは困難でしょう。残念ながら象牙の輸入が再開されましたが、在庫分に関してのみですから、終りは見えています。そのように時代とともに人間の考えや地球全体の状況の変化によって仕事を失う人が出てくるのは、いつの時代にも生じてくるものですし、そのような場合は新しい将来性のある仕事に就けるよう、行政がフォローしていく必要があると考えます。ただ捕鯨に関していえば、現在世界で唯一調査捕鯨をしている日本(食用捕鯨は禁止なので)で捕鯨に関っ ている人は(財)日本鯨類研究所の人たちであり、調査捕鯨が出来なくなっても研究は可能ですので、仕事を失うことはないと思います。諸外国では、目視や自然死して うちあげられた死体で研究をしているのですから。
 また動物保護とはかけ離れますが、国際的な問題も考慮すべきと考えます。 「捕鯨は日本の文化だから」という主張を聞きますが、鯨は公海上で捕られており、世界共通の財産です。国際的に非難を浴びているにもかかわらず捕鯨をやめないということは、動物との共生以前に人間同士の共生も出来ないという情けない国民性をアピールすることにもなるでしょう。
 「鯨を食べたい」という欲求は生きるためというより、やはり嗜好の問題と言えるでしょう。人間は過去においても際限なく欲求を肥大化させ、たくさんの動植物を犠牲にしてきました。現在地球規模で起こっている環境破壊はそういった身勝手な人間の欲求が招いた結果といえるでしょう。他の動物や自然に配慮し、守っていくのは人間の義務ではないでしょうか。鯨肉が食べたいから食べる、毛皮がかっこいいから着る、珍しい希少動物も飼いたいから密輸してでも飼うという考えでは、地球に未来はないと思います。
 人間のことを考えても鯨肉を食べることは大変危険といえます。先に述べました重金属汚染のためですが、食用に許される許容量の約100倍の濃度が検出されました。ただ水産庁は鯨肉は日常食べるものではないので、大丈夫といっていますが、無責任です。その背景には調査捕獲した鯨肉の99%が食用として売られており、収入源となっているからだと思います。つまり鯨の1%しか調査のためのサンプルとして使われていないのです。鯨肉は畜肉のように、検査して市販されていない というのもおかしいと感じます。そして世界で唯一捕獲して調査しているにもかかわ らず、日本の鯨に関する研究は遅れていると感じます。重金属汚染についても指摘し たのは海外の研究者です。
 このように様々な考えによって捕鯨に反対しています。言葉足らずで申し訳ありませんが、ご理解いただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

 荻野誠人 2000・2・21
 大変お世話になっております。荻野誠人です。たびたびご丁寧なご回答を ありがとうございます。今回は色々と耳新しい情報を ありがとうございます。お忙しいところを恐縮ですが、また私見を述べさせていただきます。
 まず養殖以外の魚も野生動物ではないかと言うことですが、確かに魚も鯨も野生動物である点では同じです。し かし、魚が毎年何百、何千という大量の卵を生むのに対 して鯨は2〜3年に1回1頭という出産率の低い動物です。
★あ、卵の数を持ち出しても説得力に欠けると思います。説得なさるなら、どの位の割合で親になるかという数字を出さないと・・・。マンポウなんか一生に3億も生むらしいですが、親になるのは数匹らしいですし。
 さらに食物連鎖の頂点にいるため 、水銀やPCBなどの重金属による体内汚染の影響を最も酷く受けています。そして哺乳動物であるため、授乳によりこの汚染が子供へも移り、今後寿命の短縮やさらなる出産率の低下、はたまた絶滅の危険性が懸念されています。現在約70万頭いても一気に激減する可能性も高いのです。そのような厳しい状況の動物を捕ることは止めるべきと考えます。もちろんマグロなどの魚類も状況に応じて水揚げをやめるべきですが…
★IWC調査によるミンク鯨の生存数は1986年に南氷洋だけで45万頭位でした(孫引きの資料で恐縮ですが)。1979年はもっと少なかったのです。従って現在に至るまで20年間一貫して増えていることになります。そして現在は世界で100万頭近く(初めて訪問したIWCのHPで見た数字)もいるそうです。色々懸念のあるのは分かりますが、現時点では捕鯨即刻中止の理由は見当たりません。毎年調査をしているのでしょうから、その結果で継続・中止を決めればいいことではないのでしょうか。そして100万頭近くもいる動物はすでに稀少動物とは言えないと思いますが。
★「魚」で思い出しましたが、イワシは以前よりも数が減っていることは値段を見ても明らかではないかと思います。原因ははっきりしていないらしいですが、乱獲の可能性もあるそうです。ところがイワシを禁漁にしようという話は、私の知る限りでは、聞いたことがありません。一貫して増え続けているミンク鯨は即刻全面禁漁にせよと声高に叫ばれているのに、現に減っているイワシは放置するのでは釣り合いを欠いているのではないでしょうか? しかも「食物連鎖の頂点」で思い出しましたが、頂点だけを手厚く保護すれば生態系全体が崩れてしまう恐れもあります。このことは高校の教科書に載っていました。そうなれば、結局ミンク鯨自体にも悪影響を及ぼすでしょう。
 次に誰にも好きなものを食べる権利があるということですが、それを全て認めていて は野生動物の多くは絶滅す るのではないかと思います。
★私は乱獲がいいとは思っていません。あくまで種の保存に配慮しながら、という大前提があります。
 例えば日本で野生の猿が増えたからといって「数も十分だし、おいしそうだから食べたい。」と捕獲して食用にするでしょうか?
★鳥獣保護法のような法律については何も知りませんので、その辺はお許しください。もし猿を捕ってはいけないという法律がなくて、しかも、種の絶滅に至る様な乱獲をしないという条件でなら、猿を食用にするのは別に問題ないと思いますが。何か問題があるのでしたら、お教えくださいませ。
 確かに人間も生きるために他の動物同様食べるという行為を行いますが、動物は人間のように嗜好という食はありません。あくまでも生きるためだけの食です。ですから現在鯨を食べなくても他に食べるものがあるのですから食べたいからというだけで希少な野生動物を捕ることは考え直さなければならないと思います。
★繰り返します。私は乱獲を認めている訳ではありません。 あくまで種の保存に気を配りながらという前提があります。それに過去20年間増え続け、現在100万頭近くいる ミンク鯨はもう稀少動物とは言えないと思います。
★貴会のお考えで鯨肉は「嗜好」とおっしゃるのは、量がごく少ないからということですね?「他に食べるものがある」というのは牛肉や豚肉のことを指しておられるのでしょう。こういう肉は多くの人々が大量に食べているので、「嗜好」ではないということですね?牛肉や豚肉はなくなったら人々が大いに困るということでもありますね?そのお考えは、「鯨好き」という超少数派を解散させて、「牛豚鶏好き」という多数派に合流させようというお考えでもありますね。しかし、それは貴会が主張しておられる稀少動物の保護と矛盾していないでしょうか?貴会はすべての動物との共生を説いておられます。その動物の数が少なければなおさらでしょう。それなら、なぜ人間の少数派も尊重して、色々な好みの人々と共生しようとなさらないのでしょうか。なぜ、乱獲もせず細々と鯨肉を食べている超少数派を根絶しようとなさるのでしょうか。
 牛などの畜産動物に関しては現在の社会システムでは、人間の生きるための食の対象となっているため、野生動物である鯨同様に扱うのは困難かもしれません。しかし、捕鯨問題をきっかけに日常、人間の食の犠牲となっている動物を出来るだけ少なくすることを考えてもらえればと思います。
★前便でもご質問しましたが、同じご意見を繰り返していらっしゃるので再びご質問します。食用となる生き物の犠牲を減らすことは不可能ではないでしょうか。人間が減食する以外にどんな方法があるのでしょうか。
 そして捕鯨をしている人も生きるためだからというご意見ですが、戦後のタンパク 源が不足していた時代とは違い、捕鯨の必要性はなくなりました。時代ともに衰退していく文化・職業は捕鯨に限ったことではありません。例えば象牙に関しても象牙細工の職人さんはもう象牙を使用することは困難でしょう。残念ながら象牙の輸入が再開されましたが、在庫分に関してのみですから、終りは見えています。そのように時代とともに人間の考えや地球全体の状況の変化によって仕事を失う人が出てくるのは、いつの時代にも生じてくるものですし、そのような場合は新しい将来性のある仕事に就けるよう、行政がフォローしていく必要があると考えます。ただ捕鯨に関していえ ば、現在世界で唯一調査捕鯨をしている日本(食用捕鯨は禁止なので)で捕鯨に関っている人は(財)日本鯨類研究所の人たちであり、調査捕鯨が出来なくなっても研究 は可能ですので、仕事を失うことはないと思います。諸外国では、目視や自然死してうちあげられた死体で研究をしているのですから。
★色々と耳新しい情報をありがとうございます。 「財団法人」「研究所」の人たちだったのですか! 私の頭の中ではまだ「白鯨」「勇魚とり」の漁師さんのイメージでしたね。
 また動物保護とはかけ離れますが、国際的な問題も考慮すべきと考えます。「捕鯨は日本の文化だから」という主張を聞きますが、鯨は公海上で捕られており、世界共通の財産です。国際的に非難を浴びているにもかかわらず捕鯨をやめないということは、動物との共生以前に人間同士の共生も出来ないという情けない国民性をア ピールすることにもなるでしょう。
★ソウルオリンピックの前に、当局?がソウルの料理屋から犬料理を外させたというニュースがありました。外国人に変な目で見られないようにしようというわけでしょう。それを知った時、情けない国民だと感じました。自国の文化にもっと自信をもって堂々としているべきでしょう。それと同じことです。稀少動物ともいえないミンク鯨を種の保存には問題のない頭数だけ捕獲しているのに、外国から非難されるとしたら、非難する方がおかしいのではないでしょうか。それにどういう人が非難しているのか分かりませんが、IWCの政治的な偏向は百科事典にも載っているほどですし、グリーンピースのような「実力行使」に至っては論外でしょう。仮にそういう人たちに非難されていても、どれほどのことか、という気がいたしますが。
★外国の話が出たついでに勝手ながら長年の疑問をここで披瀝させて頂きます。スペインの闘牛は世界から厳しい非難を浴びているのでしょうか。残酷さの程度は捕鯨の比ではないと思います。しかもそれを「国技」にして誇ったり、闘牛士を英雄視したりしているのですから ますます信じられません。もし非難されていないのなら、なぜ捕鯨だけが?という大きな疑問が生じます。失礼ながらお聞きします。貴会はスペイン大使館へ抗議声明などをお出しになっていますか?もうなさっていたら、お許しください。念のため、私はマジメです。
 「鯨を食べたい」という欲求は生きるためというより、やはり嗜好の問題と言えるで しょう。人間は過去において際限なく欲求を肥大化させ、たくさんの動植物を犠牲にしてきました。現在地球規模で起こっている環境破壊はそういった身勝手な人間の欲求が招いた結果といえるでしょう。他の動物や自然に配慮し、守っていくのは人間の義務ではないでしょうか。鯨肉が食べたいから食べる、毛皮がかっこいいから着る、珍しい希少動物も飼いたいから密輸してでも飼うという考えでは、地球に未来はないと思います。
★「他の動物や自然に配慮し、守っていくのは人間の義務ではないでしょうか」というのは当然です。しかし、人間が生きていく以上全然他の生き物を犠牲にしないで済ますことは不可能です。
★まず、私は欲望を無制限に認めようとしているのではありません。地球の資源は有限、人の欲望は無限。従って、ある程度のところで欲望を調節しなければならないのは言うまでもありません。その範囲での各自の欲求の尊重になるわけです。この場合ミンク鯨だけを年間500頭というのが、限度になっているわけでしょう。鯨を食べたいという人がどの位いるか知りませんが、昔に比べれば、ずっと入手が困難になりました。値段もずっと高くなったことでしょう。つまりもうそれだけ欲望は抑制されているわけですよ。そういう条件下で細々と鯨を食べることが、どうして「際限なく欲求を肥大化」 「身勝手な欲求」「地球に未来はない」などという非難に値するのでしょうか。一方では日本では好きなだけ牛肉や豚肉が食べられています。「欲求の肥大化」という言葉はこちらの方に似つかわしいのではないでしょうか。
 人間のことを考えても鯨肉を食べることは大変危険といえます。先に述べました重金属汚染のためですが、食用に許される許容量の約100倍の濃度が検出されました。ただ水産庁は鯨肉は日常食べるものではないので、大丈夫といっていますが、無責任です。その背景には調査捕獲した鯨肉の99%が食用として売られており、収入源となっているからだと思います。つまり鯨の1%しか調査のためのサン プルとして使われていないのです。鯨肉は畜肉のように、検査して市販されていないというのもおかしいと感じます。そして世界で唯一捕獲して調査しているにもかかわらず、日本の鯨に関する研究は遅れていると感じます。重金属汚染についても指摘 したのは海外の研究者です。
★ああ、これは初めて知りました。知識不足でこの件では何も断言出来ませんが、100倍というのは強烈な数字ですね。事実ならこれは無視出来ません。また検査抜きというのも確かに問題でしょう。水産庁も捕鯨を守っていきたいのなら、検査などはきちんとやるべきでしょうね。そういう肉を売るのは違法ではないのですか?違法でないとしたら、もう少し事実を知らせるべきでしょうね。水産庁の「大丈夫」というのも、もっと科学的根拠を知りたいものです。(私は今のところ、水産庁の見解をHP上では見つけていません。) 昔マグロの汚染がさんざん新聞をにぎわせましたが、いつの間にか雲散霧消してしまった経緯もありますから、水産庁の意見が必ずしも 間違いだとは思いません。すでに他の所から反論も出てましたし。この件に関してはもっと情報を広めて、その上で食べる食べないは、 消費者に任せるべきでしょうね。タバコのように警告が書いてあっても吸う人はたくさんいますから、食べ続ける人もいるでしょう。
 このように様々な考えによって捕鯨に反対しています。言葉足らずで申し訳ありませんが、ご理解いただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。
★たいした活動をやっていない一会員の質問にここまで丁寧にお答えくださるというだけで、ありがたく思っております。この点は宣伝いたしましょう。捕鯨関係のHPが意外と沢山あることも初めて知り、色々と勉強になっています。 前便同様、失礼の点はお詫び申し上げます。それではお元気で。ご活動の発展を念じます。

 ※残念ながら、以上で議論は終わりましたが、NGOのKさんには改めてお礼を申し上げます。                                                    


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