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小心者の「武勇伝」

荻野誠人

 ラッシュにはまだ間がある駅のホームで小学生の男の子同士が争っていました。一人が電車に乗ろうとしているのを、もう一人が後ろから服を引っ張って、行かせないのです。困るのを面白がっている顔つきです。「離せよ」と繰り返し叫ぶお坊ちゃん風の男の子の目にはしだいに涙が。発車のチャイムが鳴り出しました。

 しばらく見ていた私(大人・男性・長身)は、これはちょっと度が過ぎてるなあと思い、「こらこら、何やってんの」と言いながら、間に入って二人を分けました。邪魔していた方は「ちえっ」と言って、相手の子を蹴飛ばそうとしましたが、届きません。「被害者」は走って、無事電車に乗ることができました。

 私は、残った男の子の顔は見たくありませんでしたし、周囲の目も気になりましたので、そのまま立ち去りました。

 私、文章では偉そうなことを書いていますが、実はかなりの小心者。相手が中学生くらいですと怖いので、ゴミのポイ捨てなどを目撃しても注意できません。自宅近くですと、家にいたずらされる恐れもありますのでなおさらです。

 小学生なら、体も小さいですし、「改心」してくれる可能性も高いと思って、何とか注意するように努力しています、もちろん優しい口調で笑顔で。情けない・・・。

 しかし、ホームの一件のような人目を引く行動は、私にとっては相当勇気の要ることで、なぜできたかよく分かりませんし、もう一度できるかどうか自信がありません。

2012・4・4


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