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あんなに輝いていた21世紀はどこへ

はりがね


信じられる未来をもう一度・・・

 万博公園に行ってきた。筆者はちょうど万博の年に生まれたので実際に万博をみたことはないが、そこには光り輝く21世紀像と日本社会が描かれていたと伝え聞く。そういえば子供のころ描いていた21世紀像というのを覚えているだろうか? 小学校のときに21世紀の想像図を絵にかかされた記憶はないだろうか? 筆者も遠い昔にそんな記憶がある。そこには、稚拙ではあるが空飛ぶ自動車や月への宇宙旅行などをクラス中の誰もが描いていた。そしてなによりそれらは光り輝き夢にあふれていた。おそらく万博においてもそのような夢に満ちあふれていたに違いない。それらは日本の夢でもあり世界の夢でもあった事だろう。
 ところが筆者達が子供の頃描いていた21世紀像と現在の21世紀の実状とはかなり違う。空飛ぶ自動車も宇宙旅行もない。そして何よりあんなに輝いていたはずの21世紀がなんと薄汚れ虚無に満ちた世の中になってしまたことか。世の中はどんどん生きにくく、人々の心は荒んでいく一方だ。確かに世の中は便利になり生活の質も大きく向上してきた事には筆者も異論はない。それらはまさに先輩諸氏の努力の賜物だ。しかし、本当に人々は幸せになっただろうか? そしてこれからの時代を生きていく若者たちは本当に幸せになっていくだろうか? いま大人達の口から出てくる言葉は「これからは大変な時代だ」、「大失業時代到来」、「実力主義の台頭」、「リストラ・首切り」、「弱肉強食」・・・こんなものばかりだ。しかもかくいう人たちの多くは自らの幸せすら実感できないでいる。彼等は「すばらしい21世紀」を描きながらひたすらに働いた。ところが世の中は自分達にとって非常に冷たいものとなってしまった。自らがつくった世の中に自らが苦しめられている。なぜ一生懸命に何十年も働いた結果、人生の壮年期に至りリストラなどという仕打ちにあわなければならないのか? なぜ自らが育てた若い世代に向かって「最近の若者は気力が無い」「牙を抜かれた」「倦怠感漂う世代」などと言わなければならないのか? 今の世の中はいわば彼等の産物であり、彼等がこれから若い世代に引き継いでいく世の中でもあるはずだ。
 未来のことを正確に指し示す事のできる人などいないのは分かっている。しかし、せめて、信じられる、日々それに向かって生きていくに値する将来を描いてみせてほしい。「これからは大変厳しい時代だ」などと繰り返し恐怖感を煽る事によって若い世代を導くような事は止めてほしい。それが先人のつとめというものだ。将来像は結果としてウソでもかまわないと筆者は思っている。現に今の世の中の半分はウソではないか。しかしすくなくとも将来というのはその時点においては常に光り輝いているべきもののはずだ。
 エキスポタワーがちかく老朽化のため取り壊される。今こそもう一度「信じられる未来」を描き直すときではないだろうか?

(2002.04.21)


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