目次ホームページヘ  作者別作者別

蔦の葉通信195号

喜多村蔦枝

 自分の暮らしはこれでいいのかと時々思うのは、2001年秋、群馬県館林市在住の久保田昭三氏より突然お手紙を頂いてからです。
 その中に個人通信『風樹小屋から』第129号が同封されていて、ピカソの壁画ゲルニカやスペイン映画『蝶の舌』の話などがありました。ちょうどその映画を見たばかりでしたので大変興味を覚えました。
 その久保田昭三氏の著書『風来好日』WAVE出版を読みました。
 『月々3万円あれば悠々自適! 何もなくて豊かな暮らし』と本の帯にあります。
 晴れた日は自転車風来号のペダルをこぎ、雨の日は用事の方を順延、パソコンや携帯電話からは遠ざかる、1929年生まれの自称(のん)びりおじさんです。15坪の庭を菜園にして風来園と名づけ、15坪の借地を風来農場と呼んで野良仕事を楽しみ、米以外の農産物はなるべく自給自足を心掛けています。
 農具は小さなスコップだけ、草や生ゴミは土に埋め込み、保存できる豆や芋をどれだけ作れるかに主眼をおいた畑仕事です。
 ここで私が目を見張るのは、手作り料理をたくさん知っていて、この本はそう、料理本でもあります。若いころ北欧でヒッチハイクの経験があるからなのでしょうか、『足るを知る』生活です。
 風樹小屋と呼ぶ自宅に一人住まい、訪ねて来る人を迎え、コミュニケーションはあくまで外に向かって開かれている・・・。
 年金の三分の一を暮らしに、三分の一を不慮の事故に備え、後はこの世を去った後、不自由な人に回してあげられるように。加齢するほどに基金は大きくなる・・・・・・という提言。
 宮沢賢治やソローの『森の生活』を読んで考える精神の豊かさがあります。生活の根底はやさしさで貫かれ、それに圧倒されます。
 小さく暮らして大きくしなふかに生きるびりおじさん。このような本を読み静かに過ごす事が、今こそ重要ではないかと思いました。


目次ホームページヘ  作者別作者別

ご感想をどうぞ:gb3820@i.bekkoame.ne.jp