地域のユニオンで2000年春闘
 

わたしの地域では五十数名で、個人加盟制のユニオンを組織している。全員が中小企業に働く労働者で、今は失業している人もなん人かいる。一企業での組合員数はほとんどが一人で、多くても四〜五名だ。
 わたしの会社も製造業で従業員は三十数名いるが、公然と活動している労働組合員はわたし一人だ。ユニオンでは、一人組合のところでも条件のあるところでは、春闘や一時金のたたかいは公然とやっていこうと話し合ってきた。
 労働組合の力の弱い職場では、賃金をはじめとして労働条件は悪い。労働者の要求はあるのだが、一人組合では会社と交渉しても思うような賃上げはとてもむずかしい。会社はほとんど無視してくる。しかし、自分たちがどれ位の賃金を要求しているのかは、春闘をしなければ会社側には伝わらない。
 一人で会社と交渉するのはシンドイし、会社に対して対等に話をするのもむずかしい。わたしたちのユニオンでは、時間のとれる四〜五名が分担し合って、仲間の組合員の職場の団体交渉に参加している。
 中小企業なので、交渉相手はほとんどが社長だ。中小企業の社長だと普段、一対一で話をするときは「おまえ」とか「アホ」とか、労働者を見下した言葉をはいたりする者が多い。しかし見知らぬ人もふくめ、四〜五名で交渉するとわりとキチンとした、ていねいな言葉を使って対応する。
 賃上げなど、交渉ごとで決まる案件は、力関係が不利だと組合の要求はほとんど通らない。しかし、中小企業では、職場の健康診断を規定通りにやっていなかったり、有給休暇をとると皆勤手当てを出さなかったりするなど法律で定められた最低の労働条件を守っていないところが、まだまだたくさんある。
 わたしの会社もそんな会社の一つだ。今春闘の要求では賃上げの他に、職場の健康診断を規定に従ってキチンとやるよう要求した。会社はこの要求はさすがに無視できず、公式には改善の努力をすることを表明した。
 最低の労働条件でさえも、組合が要求しなければ会社は自分から改善しようとはしない。小さな組合でも、たとえ一人組合でもできることはある。この努力を重ねることが労働者の組合への信頼を深め、長期的には労働者の組合への参加を促すことになると確信している。
 会社は組合の力が弱いと判断すると、悪質な場合はあらゆる手を使って組合つぶしをしてくる。わたし自身も現状では、経営側との間で毎日、緊張関係にある。会社の組合つぶしは本来違法行為なので、いろんな場面でボロを出してくる。不当な組合つぶしに対しては、一つひとつ監視し反撃していく。
 一人の組合員では手に負えない場面もでてくる。地域のユニオンは、このたたかいでは大きな力を発揮する。職場の少数組合の仲間は、精神的に厳しい状況におかれることが多い。ユニオンでは同じ境遇の仲間が自分の体験を紹介しながら互いに励まし合うことができる。当該の組合員には大きな精神的支えとなる。それだけではない。会社の組合つぶしに対しては、ユニオンは直接その不当性、違法性について会社側と交渉し、改善させることができる。
 地域のユニオンの果敢な活動と職場の組合員のねばり強いたたかいを組み合わせることが、少数組合でも、たとえ一人組合でも公然と春闘をたたかい抜くことができる条件になっている。今春闘は賃上げの面では厳しいものがある。しかしわたしの地域では、ユニオンが活動していることによって、いままでは公然と賃上げ要求をすることもできなかった職場でも、春闘をたたかえる条件が広がってきている。職場でのねばり強いたたかいとユニオンでの仲間の連帯をいっそう強めて、労働者が職場や地域で自由に発言し、行動できるような状況をつくっていきたい。これからもいっそう奮闘したいと思っている。 (ユニオン労組員T)