カデナ包囲へ闘いのウネリを 

                       《沖縄からの通信》


名護のヘリ基地反対協議会は、四月三日、現在の状況と運動のすすめ方について、市民に報告する記者会見を行ない、声明を発表した。
その声明で、「現状では市長候補者選考ができない等、現時点でのリコール請求の開始は困難であるとの確認に至」ったことが表明された。そして今後の取り組みとしては、「リコール請求を含めた市民ぐるみの創意的な取り組みを展開し、また市長候補者選考にあたっても広く市民に開かれたものとし」ていくなどを明らかにし、新基地建設を「断固として阻止する不退転の決意」を改めて表明した。(声明全文は、二面に掲載)
これによって、七月沖縄サミット前の、名護での市長リコール政治決戦はなくなった。(マスコミの多くは声明をして、リコール運動を「断念」と誤報しているが、今後、市長候補者が決まればサミット以降にリコールを開始すると受け取ってよい。)
これにより、沖縄サミットを迎え撃つ沖縄・全国の大衆運動が、どのような政治状況をかちとり、それがサミット以降の名護の運動にどうつながっていくか、ということがより一層問われることになった。沖縄サミットへの反対あるいは対抗の運動によって、日米安保と沖縄軍事基地の有害無益さを浮かびあがらせ、基地なき沖縄を世界にアピールすることができるならば、現在の名護での一時的困難はのりこえられ、新基地建設阻止のたたかいはより有利となることもできるだろう。
名護の市長リコールは、九七年の市民投票時を上回る九〇〇余の署名受任者を用意しながら、市長候補者の決定が困難をきわめ、六月の県議選の日程(この間、署名運動は停止となる)も迫ってきて、リコール署名の運動にのりだすことができなくなったわけだが、このことは結局、「選挙」ということになれば、政党が、とくに共産党が問題になることが背景にある。
反対協は市民運動、労組、政党がくっついて、通常の反戦反基地の共通のたたかいではスムーズに一致できるが、「選挙」となると異なる利害、政党間の利害がぶっかり合ってしまう。
沖縄の市民運動がもう二歩、三歩も成長したそのときには、共通の戦略を諸党派にも受け入れさせることによって、このような問題は解決できるのかもしれない。いかに、そのような力量と、共通の戦略を獲得していくのか? その中での女性たちの役割は? ということが大きくは問われている。

三月三十日、世間の人びとをアゼンとさせることが起こった。沖縄人の基本的人権を獲得し守っていくべき県議会が、それを投げ棄てたのである。
県議会の総務企画委員会と本会議が、一坪反戦地主などを県の機関から排除すべし、とする陳情を賛成多数で採択したのである。おどろくべき感覚!
同三十日、一坪反戦地主会は、この陳情とその議決を「民主主義を根底から否定する」「ファシズム宣言」であると糾弾する声明を発した。(声明は二面に掲載)
この「一坪排除決議」の具体的背景は、新・平和祈念資料館の問題である。
昨年八月まで秘密裡にすすんでいた新資料館での展示改ざん─沖縄戦の歴史資料を改ざんし、天皇制・軍国主義の悪行を県史から消すという企みがあばかれ、県民世論から総スカンをくって稲嶺は逃げ回った。
沖縄戦の体験から生まれている反戦反基地の感情は、その時代の沖縄人であれば誰でも持っている。一坪反戦地主は、その感情を意識的に市民運動として、「一坪も貸さない、平和的な生産の場にする」ということを言っているにすぎない。
「一坪排除決議」は、沖縄人の魂をゆさぶり続ける「一坪」が憎いあまり、ノイローゼになり、「賛成討論ナシ」の無言のままでの「ギャング団の挙手」を行なったのである。 陳情提案者たちは、「知事による資料館監修委員の排除人選をやりやすくする」と公言し、決議の瞬間、日の丸の扇子を両手に万歳、万歳を叫んで何度もとび上った。最低の県議会!
四月十一日、四者協(一坪反戦地主会・反戦地主会・違憲共闘・弁護団)主催によって、県議会の「一坪排除決議」に対する抗議集会が市民広場でもたれる。

このかん平和市民連絡会も、ヘリ基地反対協も、日本内外から人を招き、学習会や市民講座を重ねている。これらは、沖縄の市民運動が全国・全世界の市民運動と連携を求め、求められ、全世界の中に自らを位置づけることでもある。
三月十六日に那覇に招いたアンジー・ゼルターさん(イギリスの反核兵器市民運動の女性活動家)は、次のように話した。
「国際法は核兵器の使用を犯罪と決めている。その使用は必然的に一般市民に対するジェノサイドをもたらす。イギリス人民は誰でも、ジェノサイドは人類として絶対に許すことはできないという思想を持っている。行動に出る前に徹底的に民衆に説明し、イギリス人の反ジェノサイド文化を最大限活かして、私たち三人の女性は大工用ハンマーでミサイル原潜施設を破壊した。ジェノサイド反対の人民を向こうにまわして、裁判所は私たちを無罪にする以外はなかった」。
われわれ沖縄の市民運動は、沖縄の文化をどう活かし、どう人びとに語りかけるか、問いが突きつけられている。
四国・徳島で住民投票に勝利した第十堰住民投票の会からも講師が来た。その講演では、「何か催しものを開けば、一番数の多いのは共産党。ここにもいっぱいいらっしゃってますが、市民運動の中では、どうか遠慮すべきところは遠慮して下さい。やさしい感性を持ち、大衆を信頼して下さい。お手元のグッズはみな市民の中の芸術家たちが討論し合って、作ったものです。私どもの市民運動は、沖縄と異なって、共産党などを入れず、すべて市民だけでやっています。」と述べた。
その後、講師とは、市民運動の組織やグッズの製作過程について熱心な質疑が交わされた。市民を一歩下とみる説教調を廃し、活発な討論と参加を作り出そう!
沖縄の運動の内実的なひろがりの、また一つの顕著な例として、四月中旬、大田前知事を団長とし一般市民を多数含んで、沖縄人が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問する。昨年の沖縄社大党に続く訪朝団である。
反基地の大衆行動を起こすたびに、「米軍アジア十万人のプレゼンスは、アジアの平和のために必要」「北朝鮮に対する抑止力」という戦略的言葉が降ってくる。沖縄人が朝鮮を訪問し朝鮮人との友好交流を深めることは、この言葉と真っ向うから対峙することであり、沖縄基地の「存在理由」と真っ向うから対立することである。
沖縄人の朝鮮訪問は、反戦反基地運動の巨大な戦略的提起となっている。
このように、沖縄人のたたかいは全世界に目を向けて、着実に前進しつつある。それは、帝国主義者の七月サミットを充分に意識し、対峙しようとするものでもある。
四月十七日には、平和市民連絡会(参加三十五団体)による「沖縄から平和を呼びかける4・17集会」が開催される(午後六時半、那覇・教育福祉会館)。4・17は、日米安保再定義から四年目、改悪特措法成立から三年目の屈辱記念日である。この日から、7・22カデナ大包囲へ向けて、たたかいのウネリは始まる!
地球市民たちと連帯を深め、全世界の平和をたたかいとろう!
新たな軍事基地はいらない! 名護市民・ヘリ基地反対協を支援しよう!
                                  (記・四月三日)