労働者共産党 第8回党大会決議(2020年11月)

  情勢・任務決議

  
    1、世 界 情 勢 

 ここしばらくの我が党の世界情勢認識は、6回大会・7回大会の情勢任務決議にも示されるように、大要次のようなものであった。
 第二次世界大戦を通じて成立したアメリカ帝国主義の「帝国システム」は、20世紀末のソ連「帝国システム」の急激な崩壊に続き、21世紀に入って次第に機能不全に陥りつつあり、国々や国際機関への支配統制力を後退させつつある。米国の世界覇権に代わる新たな世界は、安定的な多極化でもなく、再ブロック化と世界戦争を通じた新たな世界的覇権国家の登場でもない。
 この米国の後退と新興諸勢力の台頭という情勢の混沌化は、多くの国や地域で国家主義・民族主義の再強化をもたらすが、所詮これは一時的趨勢であるにすぎない。時代の流れは、アメリカ帝国と国民国家の黄昏であり、また国民国家の経済的土台である資本主義的生産力の行き詰まりであり、新しい生産様式と社会関係への移行にある。現代世界は、世界資本主義と人類社会存続の必要性との衝突が全面的に激化し、資本主義制度がしだいに人々から見捨てられ、新たな協同社会がしだいに台頭してくる世界である、と。
 これは現状分析というより、史的認識であるが、引き続き今8回大会においても、現状批判と実践方針の導きとなる重要認識である。この認識の妥当性は、今年発生した新型コロナウイルス世界恐慌によって一層明らかとなった。
 
 ①現在進行形の新型コロナ経済恐慌は、未知のウイルス感染症の拡大に直接起因するという特殊的性質とともに、現代世界が単一のグローバル資本主義であることによって、世界恐慌として勃発したという基本的性質をもっている。
 その特殊的性質として、防疫の必要から人の接触制限が行なわれ、第三次産業を中心として実体経済が急速に縮小することから始まる経済恐慌というのは、誰もが初めて経験する事態であった。誰もが、グローバル資本主義の次の破局は、2008年リーマンショックのように、金融投機市場のバブルが崩壊する金融恐慌から始まり、第二次産業などの実体経済に波及していくと予測していたのである。
 グローバル資本主義による自然破壊は、人類と未知のウイルスとの遭遇を急速に増やし、また金融商業都市への人口集中と都市間世界交通は、グローバルな感染拡大を容易にしている。現在の新型コロナ感染が終息したとしても、新たなパンデミック(世界的感染症大流行)が繰り返される危険性は高い。そして、発達した資本主義国では、第三次産業と個人消費がGDP(国内総生産)の多くを占めていることによって、パンデミック型恐慌による経済縮小の度合いは大きく、経済のみならず政治・社会・文化・思想にも大きな影響を与えつつある。労働者人民が各国・各地域で、現在から教訓を得て、「いのち」への被害を最小化し、「経済」への負担を公平化するなど、社会変革の闘争を強める必要がある。
 2020年新型コロナ経済恐慌は、グローバル資本主義を、最終的にではないが一定期間にわたって破局させる規模に達し、およそ40年続いた資本主義グローバリズムの転換点となった。これまでの新型感染症やマラリアなど既存感染症は、いわゆる発展途上国・中進国をメインとしていたが、新型コロナは、いわゆる先進国、帝国主義諸国にも拡大し、これを席巻したからである。
 各国のGDPは4-6月期(前年比・年率換算)に、米国32・9%減、EU40・3%減、日本28・1%減となり、いずれも第二次大戦後最大の落ち込みとなった。(1-3月期は各、5・0%減、13・6%減、2・5%減)。個人消費が4-6月期に、米国では34・6%も減少し、日本でも8・2%減少した。
 中国は、1-3月期の6・8%減から、4-6月期に3・2%増と持ち直したが、他の諸要因も重なり、ここ30年の中国の高度経済成長は完全に終焉したといえる。
 モノ・ヒト・カネ・情報のグローバルな行き来は、前2者が寸断された。4-6月期の米国の輸出額は64・1%減、輸入53・4%減となり、日本では輸出18・5%減、輸入0・5%減となった。18年から年3千万人を超えていた日本へのインバウンド(海外旅客)は、99・9%減の状態に激変した。
 今年の実質成長率についてIMFは7月に、米国8・0%減、ユーロ圏10・2%減、日本6・1%減、中国1・0%増、世界全体で4・9%減と予測している。なお世界全体の実質成長率は、リーマン恐慌時の09年は0・1%減、30年代世界恐慌時の1932年は7・6%減とされている。
 ③グローバル資本主義による失業・不安定雇用、格差拡大、環境危機の問題が、コロナ禍によって一層鮮明となり、また加速された。
 米国の失業率は、4月には14・7%で戦後最悪となった。リーマン時の米国失業率は10・0%で、1932年は25%とされている。日本は5月失業率2・9%とされているが、4月の休業労働者が527万人にものぼっており、米国式に統計すると11・5%の失業率となる。日本では過去最大の雇用調整助成金によって、完全失業の増大が一時的に抑制されているにすぎない。ILOは、4-6月期に世界総労働時間の14%が消滅したと試算した。
 また各国で共通するが、低賃金・不安定雇用の労働者ほど「3密」的労働環境の傾向にあり、感染リスクも階級差別的となっている。従来からの「南北」格差は、医療・防疫の格差として極端に現れ、また既発達国の国内でも、公的医療保険を欠いた米国のように、近年の格差拡大が命の格差として増幅されている。
 ④防疫と企業・国民生活の救済、グローバル経済の寸断に対応するために、中国、ロシア、インドを含む主要国政府は、企業・国民生活への統制を強めている。EU・英・日本など米国の同盟諸国においても、アメリカの覇権と戦略に抵触しない範囲で、以下のような主権国家再強化策を進めている。出入国管理の強化、国民直接給付を含む最大規模の財政出動、私権制限を含む経済・生活統制、検査体制強化とワクチン開発競争、経済・行政のデジタル化推進、部品供給などでの特定国依存の低減および一定の製造業国内回帰策などである。後2者は、アフターコロナで国際優位を得ようとする産業政策である。
 しかし、こうした主権国家再強化策は、過去の恐慌とは異なり、世界経済回復の牽引役がアフターコロナでは見当たらないという事態では、各国の生き残り競争にすぎないともいえる。
 また、巨額の財政出動策は、国家財政の危機をすすめ、自国通貨と国債の暴落というソブリン(主権)リスクを大きくする。リーマンショック以降、日本政府に代表されるように各国は大規模な金融緩和をすすめて、金融恐慌再発をしのいできた。しかし今後は、財政破綻と金融恐慌が相乗化してくる。
 また各国の生き残り競争は、グローバルな課題での協調対処を難しくし、自国第一主義というもう一つの主権リスクを増大させる。新型コロナ財政出動は、困ったときは国頼みとする国民統合イデオロギーを伴っている。それは、人民の生活を助けることもあるが、国家主義・排外主義への統合策ともなりうるものである。
 以上のことから、アフターコロナの政治勢力間闘争は、次のような様相となるだろう。一つは、このかんの新自由主義の手直し的継続を進めるしかない支配層の主流派である。その政策は、資本主義グローバリズムと主権国家再強化策とを抱き合わせて、不断に動揺していく。もう一つは、このかん新自由主義の弊害を指摘してきたブルジョア改革派、この継承である。その政策は、国連SDGsのように「持続可能な資本主義」について、あれこれ提案し一時的に矛盾を糊塗することである。
 三つ目は、社会を崩壊させだした資本主義に換えて、新しい社会システムを創造し社会を建直そうとする勢力である。共産主義者は、この第三極勢力の推進的一部分である。
 ⑦新型感染症の拡大とともに、人類の産業・生活に起因する、もう一つの社会存続危機となっているものが「気候危機」である。ここ数十年論議はあったが、地球温暖化の気候変動と、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増大がその要因であることは、ほぼ否定できない事実である。
 2018年にIPPC(国連気候変動政府間パネル)が「1・5℃報告書」を出し、これに沿って各国政府は、「2050年カーボンニュートラル」の目標を発表しつつある。資を本家政府は、経済成長と環境は両立するとして、新たな投資先としての脱炭素、CO?を排出しないとされる原発の推進などをねらっている。しかし、電力生産でCO?排出を減らしても、エネルギー総消費を抑制しないかぎり、排ガス・排熱・廃物は増え続ける。あと一世代もの間、環境負荷が高まってもよいという目標では、資本蓄積法則との妥協と言うほかはない。成長主義と今すぐ決別し、定常経済・格差是正経済に転換することを求める世界世論は、一層高まっていく。
 ⑧ここ3~4年間の東アジアでの最大の出来事は、2016~17年の韓国での「キャンドル革命」であり、その韓国民衆の闘いを土台に実現された2018年の2回にわたる南北首脳会談とその4・27板門店宣言、また同年の9・19ピョンヤン宣言であった。また板門店宣言が、2018年の史上初の米朝首脳会談とその6・12シンガポール合意を呼び寄せた。
 これらの諸合意で、朝鮮半島の統一、米朝国交正常化と朝鮮戦争終結などの道筋が付けられた。しかしその進展は、その後、米国の反動勢力、その日本での追従勢力、「韓米ワーキングチーム」などの抵抗によって、停滞する現状となっている。韓国・文在寅政権が、朝米の仲介に留まらず、当事者として民族自主の力量を発揮することが求められている。
 この現況に対応して朝鮮は、2019年末の朝鮮労働党5中総で、核武装を堅持しつつ経済発展に力をいれる「持久戦」を決定した。朝鮮の自衛的核武装は、かっての中国の自衛的核武装と同様に、帝国主義・覇権主義による軍事攻撃を抑止する一つの重要要素となっている。しかしまた、恒久平和の実現のためには、帝国主義・覇権主義を包囲する国際的枠組みと、それを実現させる国際連帯運動が不可欠である。
 朝鮮半島の統一と恒久平和を実現することは、朝鮮半島の非核化を保証するとともに、在韓米軍を朝鮮半島から撤退させ、それと連動して在日米軍を日本・沖縄から撤退させることに通じる。これは、アメリカ「帝国システム」の根幹を終わらせる闘いである。これによって東アジア階級闘争の新ステージが始まる。
 米中関係は、2020年の香港情勢などを契機に、米国が言う「競合国」規定関係からさらに険しくなり、中国が言う新「冷戦」的な対立へ発展している。米政権のポンぺオ国務長官は7月23日の演説で、ニクソン政権以来の対中関与政策を止め、民主主義諸国による対中国包囲政策に転換することを表明した。この転換は、大統領選向けの要素もあるが、世界覇権を台頭中国に脅かされる米国の歴史的傾向の反映であり、基本的には民主党新政権にも引き継がれるだろう。
 この米中対立は、資本主義国と社会主義国との体制間矛盾なのではない。大国興亡の確執に一般化することも正しくはない。それは、グローバル資本主義を共通の土台としたところの、超大国と台頭大国との大国間闘争であり、また、「代議民主制」と「党・国家官僚統治体制」という二つの異なった政治的上部構造の間での政治闘争という新しい歴史的局面である。ポンぺオはこのことを、「必要なのは封じ込めではない。これは複雑で新しい問題だ。ソ連は自由世界の外にいたが、中国は既に内側にいる」と表現した。この闘争は当面、米超大国による中国包囲網作りという反動攻勢で始まり、軍拡競争・世界経済覇権競争、また国民国家の支配統合能力の優劣をめぐる争いとして進行していく。
 中華人民共和国は近年、旧英植民地・香港の民心を得ることにすら失敗し、この国民国家統合力において大きな疑問符が付いた。今年6月末には、香港議会の頭越しに全人代常務委員会で、香港国家安全法を決めてしまうという大失態を演じた。この香港での失敗によって、日本帝国から中国に返還されたはずの台湾においても、両岸統一の民心を得ることはますます困難となっている。かって中国は、1989年の天安門武力弾圧事件によって国民統合の危機に瀕したが、その後はグローバル資本主義に全土を開放し、また党幹部自身が会社経営を新しい生き方として、経済成長で国民統合を修復していった。しかしアフターコロナでは、「世界の工場」の地位低下は必至であり、低成長時代の国民統合策は未知数である。「習近平新時代中国特色的社会主義」の前途は多難だ。
 アメリカ合衆国では、4年前のトランプ大統領の誕生で露わになった国民の分断と国民統合支配の動揺が、今秋の大統領選挙を経て、ますます進行している。超大国アメリカ本国での支配体制の動揺、黒人・有色系の人びとによる新しい民衆運動の高揚、若い世代を中心とする資本主義制度への不信と民主的社会主義への期待の高まり、これらは世界的転換が始まっていること、それがまず帝国主義のセンター国で開始されたことを示している。
 今期大統領選では、民主的社会主義者サンダースが民主党予備選で撤退し、第三極的勢力は分散化した。しかし大統領選は所詮、「議会民主制」という支配の装置にすぎない。米国のさまざまな革命勢力が団結し、民主党新政権に大きく対峙していくことを期待したい。
 アフターコロナ、中国でも米国でも、世界のいたる所で、民衆は動き出している。


    2、日 本 情 勢           

 8月28日安倍首相は、新型コロナ対策をはじめとした内外政策で行き詰まり、世論と共同闘争に追い詰められ辞任を表明。9月16日、安倍政治の継承を掲げる菅義偉内閣が発足した。
 菅政権は、総裁選で「自助、共助、公助」を繰り返すなど、労働者民衆に自己責任を押し付ける新自由主義の推進を掲げている。デジタル庁の設置や規制改革は、安倍政権が7月に閣議決定した新自由主義の政策、骨太の方針や成長戦略を実行に移すものである。
 また菅政権は、敵基地攻撃能力保有のため12月防衛大綱、中期防衛力整備計画、国家安全保障戦力を改定するなど、安倍前首相の意向に沿って施策を進めようとし、改憲さえも目論んでいる。
 菅政権は、これらの政策を内閣人事局による官僚への服従を強要し、新聞やテレビなどメディアへの支配を強化して強権的に推進しようとしている。日本学術会議の任命拒否はその表れである。菅首相は、森友、加計学園問題や「桜を見る会」の疑惑解明を必要がないとさえ主張、安倍政権の違法行為を裏から支えた人物である。
 しかし、いかに強権的支配と立身出世物語を振り撒いても菅政権は盤石ではない。行き詰った安倍政治推進に未来はない。人類社会は、国家と資本主義の下では社会が崩壊し存立できなくなるところにきているのだ。
 菅政権打倒の闘いを通じて、第三極政治勢力の形成が求められる時代を迎えている。
 
 Ⅰ 社会は大不況の時代に

 内閣府が9月8日に発表した2020年4~6月期国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動の影響を除いた実質が前期(1~3月)比7・9%減で、消費税増税後の昨年10~12月期より3期連続のマイナス成長を示した。このペースが一年続くと年率換算は28・1%減で、リーマンショック直後(09年1月~3月期)の年率17・8%減を大幅に超え、戦後最悪の落ち込みになる。これによって消費税引き上げで内需が失速、さらに新型コロナが直撃して外需・内需とも総崩れの景気の深刻な後退が数字で裏付けられた。
 政府の失政によって新型コロナの感染が拡大し、緊急事態宣言等で外出や店舗の営業が制限された。そのため自動車を含む物の購買や消費が減少、旅行・外食産業も打撃を受け、個人消費は、7・9%の大幅な減少になった。さらに輸出もマイナス18・5%と急減した。都市封鎖などで海外の経済が停滞し、自動車等の輸出が落ち込むとともに訪日観光客の消費が出入国制限によってほぼゼロになったことが影響した。
 また、先行きを懸念して企業が出費に慎重になり、設備投資が4・7%減少している。企業倒産件数(負債額1千万円以上)は今年最多の789件で、20年に休廃業や解散に追い込まれる企業は、全国で5万件を超える可能性が高まっている。
 コロナによる景気の深刻な後退は、雇用を破壊し失業問題を引き起こした。6月の完全失業率は2・8%195万人で、アメリカ等に比べると低いが、有効求人倍率は1・11倍で前月1・20から0・09ポイント低下、6か月連続の下落となった。解雇や雇い止めも2月4日から7月29日までに40032人に上り、5月の12000人から急増している。このうち非正規労働者は、少なくとも15000人を超えていると思われる。数字に示された失業者数は200万人に満たない。しかし休業者数は6月で236万人に上っている。休業者は就業者としてカウントされるため、失業率の急増を免れた格好になっている。従って情況次第では失業率が悪化する可能性が高い。来年前半には、6%に達するとの予測もある。さらに注目すべきは、6月の非正規雇用者数が104万人も減っていることだ。宿泊・飲食サービス・卸売り・小売り業・製造業での減少が著しい。そのうち女性が8割を占めている。
 コロナ災害が引き起こした景気後退はこれだけにとどまらない。一人あたりの実質賃金は1990年代半ば以降右肩下がりを続け、年収300万円超から1千万円以下の中堅層の比率が、97年62%から2018年58%に減少した。中堅層が崩れる形で300万円以下の所得層が32%から37%に増大、格差が拡大した。  
 一方、建設や重厚長大産業、自動車の組み立て産業等が中心だった大型投資が減少、90年代からは、世界に遅れをとりながらも経済活動のデジタル化が進み、コロナ禍で一層加速している。これらは経済の成長力をそぎ、雇用増を抑えて賃金抑制をもたらす。その上、米中対立の先鋭化は、景気の動向に重大な影響を与えている。日本にとってもグローバル化は、国や地域あるいは事業ごとに細かく分かれたモザイク型で進行する。
 コロナ災害を引き金に新自由主義の矛盾が噴出、社会は大不況の時代を迎えようとしている。コロナ災害の終息には少なくとも2・3年がかかると予測され、第2波第3波のコロナ禍が襲えば、景気の後退は一層深刻になると思われる。

Ⅱ 支配階級の内外政策の特徴
 
 政府は7月17日、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)や成長戦略を閣議決定した。その中心は、社会全体のデジタル化推進とそのための行政手続きのオンライン化、そしてマイナンバー制度の抜本的改善を掲げている。また新型コロナ対策については、PCR検査の幅広い実施など検査体制の充実や治療薬・ワクチンの開発促進、国内外でのサプライチェーンの多元化が上げられている。さらに成長戦略では、テレワークやフリーランス(個人請負)の拡大を通じた8時間労働制・解雇規制、兼業・副業などの多様な働き方の推進が打ち出された。
 政府・財界は、コロナ災害をバネに、遅れてきたデジタル化や働き方改革を強力に進めようとしている。テレワークやネットショッピング、教育におけるオンライン授業やオンライン診療を一過性に終わらせずに定着させ、骨太の方針の社会全体のデジタル化を強力に進めようとしている。ITによる情報と知識の生産・流通・消費が最大の価値の占有を生み、情報と知識の独占的所有が追及される社会、情報化と巨額のマネーが氾濫する社会に乗り遅れまいと奔走している。
 コロナ災害では、主に正規労働者の間にテレワークが急速に拡大した。政府・財界は、これら比較的高賃金で働く労働者に労働時間に縛られない年俸制などの採用に踏み込み、労働生産性を引き上げて利潤を獲得しようとしている。
 そして一方では、労働力の費用を引き下げて労働生産性を高め、利潤の拡大を追求する。
 成長戦略は、フリーランス(個人請負)の拡大を盛り込んだ。政府・財界は、労働者から労働者としての権利を奪って労働力の費用を引き下げ、利潤の拡大を図ろうとしている。そのために「多様な働き方を希望する者が安心してこうした働き方を選択できる就業環境の整備を進める」と表明した。
 一方成長戦略は、コロナ災害で兼業や副業などへの期待が高まっているとし、兼業先での労働時間は自己申告制として、本業企業側が兼業を認めやすいルール整備を図ることを盛り込んだ。労働者を低賃金で働かせ、過労死さえいとわない構えである。
 さらに雇用環境悪化に伴って正規労働者も減少し、IT化の推進による産業構造の変換対応と景気の調整弁として、ロボットのもとに労働する低賃金で不安定雇用の非正規労働者の拡大が予想される。解雇規制の撤廃も必ず仕掛けてくるにちがいない。
 IT化の推進は、雇用の縮小をもたらし、たくさんの失業者生み出す。そして一方では、高賃金の労働者とその対極に多くの低賃金で働く非正規労働者等が存在、労働の両極化が顕著になって格差が一段と拡大する。
 生きにくい社会に労働者民衆の不満と生活不安が増大する。骨太の方針は、マイナンバー制度の抜本的改善を掲げている。医療や学校の成績などあらゆる個人情報をひも付きにして、銀行の振り込みに使う口座さえも登録させようとしている。それは、デジタル化の巨大利権を生み出すとともに、労働者民衆に対する監視国家化を進めて反抗を抑え込む目的で掲げられている。自治体の情報を官民で共有し、ITで住民監視するスマートシティ構想も同様である。
 社会が大不況を迎える情勢で閣議決定された骨太の方針は、景気の後退を強め増々人類社会を崩壊の淵に引きずり込むことになる。
 アメリカ帝国主義は衰退する国力を補うために、日本に米軍駐留費負担の4倍増を要求するなど、同盟諸国に対しても覇権を露骨に行使しだした。そして台頭する中国を抑え込むため、「インド太平洋戦略」の名の下に封じ込めの軍事戦略を展開している。そうした中で日本政府は、米国の指揮・統制の下、米国の戦略に貢献する仕方で覇権国家として台頭しようとしているのである。
 そのために国家間のハイブリット戦(サイバー攻撃・偽情報の流布など)や人工知能・極超速技術・高出力エネルギーが強調され、中国をはじめとしたロシア・朝鮮対峙の最前線と位置付けられている。すでに自衛隊は高速滑空弾、無人機、宇宙作戦などの部隊創設拡充や高出力のマイクロ波・レーザーの研究開発、米英豪などとの共同演習を進めている。そしてオスプレイ17機、F35AとF35Bで147機、水陸両用車52両、イージス・アショア2基など装備の爆買いを進め、護衛艦2隻の空母化も行なっている。
 20年6月25日、政府はその中のイージス・アショアの配備撤回を決めた。直後に自民党国防族から適基地攻撃能力の保有論が浮上、首相や官房長官も呼応する形で敵基地攻撃能力の保有にむけた動きが進行している。敵基地攻撃能力の保有は、アメリカの容認なしには進められないが、先制攻撃ができる国への大転換になる。能力の保有には、ミサイル発射拠点の位置の特定や相手国の防空網を無力化するなど軍事力の一層の強化が求められ、関連装備の確保には、巨額の費用が必要になる。政府は自衛の範囲として憲法上可能との立場に立ち、これを推進しようとしている。
 一方南西諸島の石垣島や宮古島などには、警備部隊や地対空ミサイル部隊が配備され、沖縄では、辺野古新基地建設が強行されている。
 イージス・アショア配備撤回なら辺野古も見直しを、との声も無視して工事が続けられている。沖縄防衛局は20年4月12日、設計変更申請を強行した。そして、6・7沖縄県議選で基地に反対する県議25名が当選、過半数を超えても6月12日には工事を再開した。
 大浦湾側工事予定地には軟弱地盤が存在し、護岸の重みで震度1以上で完成後に、震度3以上で施工中に崩壊する危険性がある。活断層の存在も指摘されているが政府は工事を強行している。
 防衛省は、21年度末までにオスプレイ17機体制の完成を目指す。南西諸島防衛を強化するとして日本版海兵隊「水陸機動団」を立ち上げて相浦駐屯地に駐留させ、オスプレイは、佐世保から南面方面に海兵隊を運搬する役割を担う。陸上自衛隊は20年3月、「暫定」とされた木更津駐屯地の第一ヘリコプター団の下にオスプレイ部隊「輸送航空隊」を新たに編成。隊本部や整備隊、オスプレイ運用の107・108飛行隊など430名からなる体制を構築した。
 さらに5月末、北関東防衛局は沖縄の米軍海兵隊と米空母艦載のオスプレイも陸自機と合わせて整備することを通知、木更津駐屯地を一大整備拠点に変貌させた。日米一体化の共同訓練もありうる。
 また、政府はアメリカの世界覇権の衰退を補完する仕方で地域覇権国家となる道を選択、韓国敵視政策を強行に推進している。そのために安倍政権は、元徴用工の損害賠償請求を認めた韓国大法院判決に経済報復で応え、差別排外主義を扇動した。また、韓国で韓国人女性12名が元軍隊「慰安婦」問題で損害賠償を求めた第1回口頭弁論(4月)にも欠席、敵対している。
 そして、国内の高校無償化・幼保無償化制度から朝鮮学校を除外、韓国や朝鮮への敵視政策を強めて排外主義を扇動した。
 政府は、南の政権を従属化に置き、朝鮮半島有事に軍事介入できる体制を作ろうとしている。日本の戦争策動を許さず国境を超えた東アジア民衆との連帯実現は、第三極形成の重要な闘いである。
 このように政府は、アメリカの指揮・統制下の覇権国家としての台頭を狙って軍備を増強、米軍等との軍事訓練を重ねて強引に突き進んでいる。そのためにも政府は、安全保障関連法などを強行成立させ、憲法改悪にむけて突き進んでいる。コロナ災害を利用し、国民の命を守るべき時に緊急事態宣言を全国に広げ、緊急事態条項の必要性を主張した。政府は、集団的自衛権行使・海外武力行使ができるようになった自衛隊を憲法に追認させ、敵基地攻撃能力の保有を裏付けるためにも、改憲を強行してくることは間違いない。闘いを強めて阻止することが求められる。
 政府は、2030年度の電源構成に占める原発の比率20~22%を、いまだに維持し続けている。電力資本等原子力ムラは、反動政権が続く間に既成事実を積み上げ再稼働を強行しようと奔走している。一方新型コロナが猛威を振るい、温暖化による大災害も各地で発生している。脱炭素化を口実に原発の再稼働がねらわれている。
 20年7月、原子力規制委員会は、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の安全対策が新規制基準に適合するとした「審査書」を決定した。工場は、国策核燃サイクルの中核施設だが、すでに核燃サイクルは破綻し稼働時期も見通せない。
 一方40年超の危険な原発の再稼働を推進する動きも強まっている。30㎞圏内に94万人、首都圏に3千万人が居住する日本原電東海第二原発も再稼働にむけて準備が進められ、再稼働の賛否を問う県民投票条例案は、推進派の強力な反対で葬られた。
 関西電力も40年超の美浜原発3号機と高浜1号機を、21年1月頃と3月頃に再稼働させる工程を明らかにしている。
 原子力ムラは、住民の生命の危険を顧みることなく、利潤を求めて一基でも多くの原発再稼働をねらっている。
 支配階級の内外政策は、矛盾を激化させ、失業者をはじめとした労働者民衆の不満や怒りを激化させる。政府は女性差別、部落差別、民族差別などあらゆる差別を煽って排外主義の側に取り込み、労働者民衆の命と生活は二の次に新自由主義政策を推進する。今やコロナ災害では、感染者への差別が拡大、自粛警察も出現して社会的差別が助長される危険な兆候さえ進行している。

 Ⅲ 「第三極」形成の闘い
 
 菅政権は、前述の安倍政権の政策を実行に移すに違いない。
 10月13日菅政権は、「元徴用工問題に進展がなければ年内開催の中日韓首脳会談に出席しない」旨韓国政府に伝えた。日本製鉄に賠償を命じた元徴用工訴訟で韓国大邱地裁浦項支部は、資産差し押さえの関連書類が同社に届いたとみなす「公示送達」の手続きをとった。菅首相の声明はこれに対抗、韓国敵視政策継承の構えを見せている。
 また9月29日、元軍隊「慰安婦」問題でも加藤官房長官は、平和を願い、戦時下の女性に対する性暴力再発防止・根絶を願ってドイツに設置された少女像の撤去を求めた。
 加害国が撤去を要求する事態に、撤去を許さず、日本政府が事実を具体的に認識して公式に謝罪すること、証しとしての賠償と真相究明・再発防止教育の実施を求めて韓国民衆と連帯した闘いが、展開されている。
 徴用工問題では、日本政府の日韓請求権協定で解決済みとの立場を闘争の一層の強化で改めさせ、責任ある対応をとらせる必要がある。
 菅政権は、沖縄の民意を一顧だにせず辺野古新基地建設も強行しようとしている。沖縄防衛局は18年12月、辺野古側に土砂投入を開始、2年が経過するも県民の粘り強い反対闘争によって、計画の1年め分の工事も進んでいない。
 9月28日、辺野古の埋立工事の変更申請に係る告示・縦覧手続きが実施されたが、県に寄せられた意見書数は18904件にのぼっている。玉城知事は、これを受けて承認・不承認の判断を年明けか年度をまたいで実行すると思われる。2021年、重要局面を迎える新基地建設阻止闘争の課題は、沖縄・「本土」を貫く運動の構築だが、「本土」各地の取り組みで成果の第一歩になった。「本土」各地の闘争の一層の強化が求められる。
 さらに菅政権下の10月15日、日本郵便の契約社員が、正社員と同じ仕事で扶養手当や特別休暇がないのは不合理と訴えた3件の上告審判決が最高裁第一小法廷で行なわれ、年末年始手当など5項目が認定された。一方で最高裁は、非正規労働者の退職金および賞与差別反対を訴えた東京東部労組メトロコマース支部や大阪医科薬科大学労働者の主張を認めなかった。郵政労働者の勝利を踏まえ、幅広い労働者の団結で、最高裁の不当判決を撤回させ、非正規労働者の正規労働者と同等の待遇改善を勝ち取ろう。
 また、たたかう労働・市民諸団体は、コロナ災害で闘争を組織し、労働相談も開催、連帯する層の拡大に向け奮闘している。
 安倍首相を辞任に追い込むなど闘争は一歩一歩前進している。日韓民衆との連帯した闘い、辺野古新基地建設阻止、非正規労働者や失業層の闘いを拡大発展させ、新時代を切り開くための第三極政治勢力の形成が求められている。菅政権を打倒し、闘いの前進を勝ち取ろう。



    3、任 務

 人類社会は、ブルジョア国家と資本主義の下では社会が崩壊し、存立できなくなるところにきている。「新型コロナ世界的大流行」は、そのことを人々に気付かせ、また加速した。我々は旧体制の解体を目指すとともに、生きるために新しい社会を創造する人々の運動を発展させていかねばならない。それと並行して、われわれ共産主義者自身の時代認識・目標・活動形態を再編・整頓していかねばならない。共産主義運動もまた時代の子であり、「崩壊」の埒外にある訳ではないからだ。

Ⅰ 社会の在り方の根本的転換へ

  1、 コロナ災害への急場の対処

 新型コロナの世界的大流行の原因は、地球環境限界の踏み越え、国際金融商業都市への人口集中、格差・貧困問題の深刻化であった。これは産業成熟時代の資本主義がもたらした諸結果に他ならならず、資本主義の廃絶を含む社会の在り方の根本的転換を求めるものであるが、まずは以下のような急場の対処をなさねばならない。
 ①災害に対応できる医療・保健への転換。緊急に、このかん減らされてきた公的医療施設と保健所の増設・医療従事者の大増員とPCR検査の増加を実現する。
 ②休業、休校などに伴う経済的・生活的な困難への補償。雇止め・解雇をさせない。収入のない人々の生活保障。
 ③軍事領域への大規模財政支出をやめさせ、新型コロナ防疫と失業対策・生活保障に財政資金を集中する。日米地位協定を改定し、米兵によって新型コロナウイルスが持ち込まれている現実を日本政府・沖縄が規制できるようにする。人々の命よりも新型コロナの政治利用を優先する自公政権を退陣させる。
 ④コロナ災害を利用した国家による監視と統制の強化、社会に広がる相互不信と差別に抗して、民衆同士がいっしょに生き抜く関係、助け合い社会を創造していく。

  2、 これからの社会の在り方を求めて

 新型コロナの世界的大流行が、気候変動問題などと並んで人類社会の存立の危機を認識させる契機となったことによって、社会の在り方の根本的転換への志向が強まっている。自民党でさえも、「ポストコロナの経済社会に向けた成長戦略」(2020年6月25日、政務調査会)で「環境先進国」「地域分散型の『デジタル田園都市国家』」「格差の少ない温かな経済社会」を語り、「分断から協調」を主張する。人類社会を崩壊させる「成長」「金融」「資本主義」「国家」をオブラートで包まざるを得なくなっているのである。そうした中で我々は、これからの社会の在り方を人々と共に模索しいかねばならない。新しい社会の在り方の基本は以下となるだろう。
 我々は、物質的な生産と分配における「利潤目的」という制約を取り払うことによって、対象的自然との豊かな関係を創造していく道を拓く。
 人類は、産業(物質的な生産と分配)を成熟させ、もはや、物質・エネルギー変換の基本技術においては新産業の生まれない地平に到達した。そこにおいて人類は、物質的生活の豊かさを高めながら、対象的自然との間における物質代謝量の定常化なり減少さえ実現することができるようになる。
 国際金融商業都市への人口の集中を解消する。
 分散型の再生可能エネルギー、地産地消の循環型経済を発展させ、職住接近を実現し、人間の誕生・成長・死別(および対象的自然)との関りを基幹に据えた地域社会を構築する。それを基礎に住民自治と助け合いの関係を育み、そうした自治社会のネットワークとして人類社会を構想する。
 インターネット環境の中で発達する経済的諸要素の配分調整システム、および自動化を射程に入れた今日の生産・分配システムは、資本主義の下ではますます増大する恒常的な大量失業を生み、すべての民衆を個々に監視できるシステムとなり、限界を踏み越えて地球環境を破壊するマシーンとして機能しており、それらを社会的所有に転化し公共財とする。過剰化し賭博マネー化する貨幣資本も没収する。住民自治・助け合い社会のネットワークという主体形成がその前提となる。

  3、 当面の政治変革

 当面の政治変革のポイントは、次の四点である。第一は、世界覇権の維持に窮するアメリカを、日本・アジアから一掃するために闘う。第二は、没落するアメリカと運命を共にしようとし、コロナ災害の中で統治能力の限界を露呈した自公政権を打倒し、政権交代を実現する。第三は、資本主義によって社会が崩壊していく時代の労働者民衆の運動の在り方を発見し、発展させる。第四は、沖縄・韓国民衆との連帯を発展させることである。

 ①アメリカが企む軍事的・外交的・財政的、そして生活上の日本への負担の押し付けと闘う。日本に盾の役割だけでなく鉾の役割をも担わせる戦略的転換を、戦後の東アジア覇権秩序を覆す契機に転化する。東アジア版NATOづくりを阻止する。来年1月に発効する核兵器禁止条約を日本政府に批准させ、在日米軍の核持ち込み・核搭載を許さない。

 自公政権を打倒し、政権交代を実現する。
 辺野古新基地建設・米軍駐留費の大幅引き上げ・米国製兵器の爆買い、戦争する国づくり-改憲、敵基地攻撃能力の獲得・大軍拡と闘う。三里塚空港・第三滑走路建設に反対して闘う。原発再稼働・福島汚染水海洋投棄に反対して闘う。監視社会化、排外主義国民統合と闘う。性、肉体的・精神的・知的「障害」、「身分」、民族、人種、宗教などの相異を理由とした差別に反対する。

 大量解雇・大量失業時代の命とくらしを守る運動を発展させる。
 1)解雇撤回の闘争を!
 コロナ災害を契機に雇い止め・解雇が止まらない。連鎖倒産も起こってくる。失業者の大規模な再吸収がない時代の始まりである。解雇撤回の闘争は、そうした背景の中での後のない闘争になっていく。
 最賃1500円の早期実現。最賃審議会での当事者委員新設、全国一律制への移行など制度改革の実現。
 失業者の増大によって賃金引き下げ圧力が強まっている。しかし人が生きていけない賃金でよいのか、社会が成り立たなくなってよいのか、というベクトルがはたらく。格差是正、東京一極集中是正という新型コロナ世界的大流行の中で強まった社会的要請にも応える要求である。押し返すことは可能だ。
 2)生活保障を要求する闘いを!
 「コロナ」休業情勢下の生活保障は、解雇しない企業には政府が賃金補填するやり方では間に合わず、生活保護費支給拡大による対処、全住民一律の特別給付金の支給などを実施せざるを得なくなった。欧米ではベイシック・インカムの実験を始めている。大量失業時代に資本主義社会を成り立たせていくための制度づくりが模索されだした訳である。しかしそこには大資産家、大資本への財政支援を優先し、彼らの懐には手を触れない、という限界がある。生活保障を要求する闘いは、この限界と衝突する。
 3)仕事保障要求の闘いを!、そして仕事づくりを!
 失業者は、再就職が困難になる中で、仕事保障を要求して立ち上がらずにはおかない。しかし多くの過剰貨幣資本が実体経済に投資領域を見いだせずに投機マネー化する時代であり、財政的にも失業対策での公共事業支出に否定的な時代である。この壁を打ち破らねばならない。
 そもそもこれからの社会では、物の生産活動の比重が大きく低下していき、人と人・人と自然の関係を豊かにする活動が基幹になる。そこでは資本主義の利潤目的も、その賃金奴隷制としてのシステムも、さらには市場(等価交換)関係も、前進的役割を果たせない。そうした中で、資本主義とは異なる仕方での「仕事づくり」が求められていく。これからの大量失業時代を生きぬいていくには、そうした仕事づくりの発展がますます必要になる。

 ④沖縄・韓国民衆との連帯
 沖縄は、アメリカの中国包囲・インド太平洋戦略の最前線に位置づけられ、これに忠実な日本政府によって辺野古新基地建設と琉球諸島への自衛隊配備を強行され、台湾を含むこの一帯の戦場化の犠牲に供されようとしている。「自己決定権」を求めて抵抗する沖縄の人々と連帯して帝国主義戦争に反対し闘っていかねばならない。
 韓国は、アメリカの北東アジアにおける軍事展開の最前線であり、朝鮮とその背後の中国を睨む出撃拠点である。しかし朝鮮半島が戦場となるならば、再び南北同族相食む戦いと数百万もの犠牲を強いられる。朝鮮戦争の終戦と平和協定の締結、南北平和統一への韓国民衆の願いは強い。これに対して日本政府は、対北敵視・南北分断策を強めるだけでなく、韓国に対して植民地支配の謝罪を拒否する態度をあからさまにしだすなど、アメリカの先兵として朝鮮半島に覇権を求める野心を隠さなくなっている。その背後に在沖米軍、インド・太平洋米軍の存在がある。沖縄・韓国民衆と連帯して闘う道か、それとも米日帝国主義の戦争に取り込まれていくか、歴史的選択が問われている。

 Ⅱ 「第二極」勢力との的確な共闘・批判関係を
  
 1、資本主義が社会を崩壊させていく中で支配階級は、あくまでアメリカ一辺倒に固執し資本の利益を第一に、人が生きていけなくなってもかまわない自己責任だと開き直る傾向(「第一極」)と、民衆の包摂に一定力を注いで支配秩序の維持を策す傾向(「第二極」)とに分裂している。いま支配階級内部の政治の振り子は、「第二極」路線の方向にシフトしつつある。その変動をもたらしたものは、新型コロナ世界的大流行と「ブラック・ライブズ・マター」決起に象徴されるブルジョア的秩序への脅威の高まりである。安倍政権の退陣の背後にも、「第一極」路線の動揺と求心力の喪失があった。
 しかし日本の「第二極」勢力(野党共闘)は、新型コロナ世界的大流行が社会を脅かしている中で萎縮と翼賛化に陥った。われわれは、野党共闘勢力が自公政権との違いを、かれらなりに対決的に鮮明化し、「第一極」路線の建て直しと対決することを求めていかねばならない。

2、「第二極」勢力は、単色ではない。したがって異なる傾向に対応した態度が必要である。
 ⅰ)立憲民主・国民民主の潮流は「第二極」の主流である。立憲民主を代表する枝野は、「新自由主義」「自己責任論」を批判し「支え合い社会」を提唱する。路線的な立て直しを図る動きといえる。資本主義の今日的結果である「社会の崩壊」への対処、生きていけなくなっている人々の包摂、自然環境との調和を押し出す態度は、支持していく。しかし資本主義と日米同盟の擁護は前提であり、前面に出てくるようなら批判が必要だ。この党は、多様な階層と傾向の集合であるから、相応の対応が求められる。
 ⅱ)日本共産党は今年1月の綱領改定によって、中国共産党との再決別を通じて、モスクワ声明と61年綱領以来の体制間矛盾論を右翼的に清算し、「発達した資本主義国の社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」との新命題を立てた。この結果、世界革命の途上におけるロシア革命や中国革命の意義を否定し、20世紀における最大の歴史的意義は、第二次大戦後の多くの主権国家独立と国際民主主義運動の発展にあるとする新綱領となった。要するに、主権国家と議会制民主主義の永遠化であり、ソビエト・コミューン民主主義の全面否定である。当面策としては、「ルールある資本主義」を実質的意味とする「ルールある経済社会」を掲げ、「民主共和制」は革命後の国家形態でもあると強調してブルジョアにおもねって見せる。そして未来社会は資本主義の高度の発達とその下での闘争の成果と「地続き」であり、「生産手段の社会化」を土台に創られると論じ、それが「国家資本主義」であることを曖昧にほのめかす。共産党においては、国家と階級のない一つの共同社会という目標は現実の課題でなく、自己の哀れな未来社会論を覆い隠す小道具として使われているに過ぎない。この点の批判は、第三極の形成にとって重要だ。
 共産党はコロナ禍の中で、率先萎縮し大衆運動の停止を先導した。その理論的根拠は、資本主義を高く評価することに忙しく、新型コロナ世界的大流行と産業成熟時代の資本主義との深い結びつきを批判できないことに求めることが出来る。またコロナ災害の社会の崩壊の中から新しい社会システムと価値観が形成されてくる見通しを持てないことも、萎縮の主体的根拠である。議会主義から世論に迎合しているということもある。ともあれ萎縮の克服は求めねばならない。
 社民党は、19-20世紀の産業資本-産業プロレタリアートの拡大再生産時代の終焉とともに衰退し、いま消滅の危機を迎えている。現代をとらえられない左翼を象徴する姿と受け止め、第三極形成へのバネとしていかねばならない。
 ⅲ)れいわ新選組は、消費税廃止(野党共闘条件としては5%削減)、国債大量発行・大規模財政出動で大胆な貧困対策を主張し、当事者主義を唱えてきた。未来社会についての体系的な見解が無いこともその特徴であった。しかしコロナ災害に突入する中、自公政権が大規模財政出動等れいわ顔負けの政策を実施し、しかもポストコロナ社会が問われる局面を迎えて、存在意義が問われる事態に陥った。路線を問う働きかけが必要だろう。
 
 3、われわれはコロナ災害の中で、安倍退陣に引き続いて自公政権を終わらせる過程に突入している。それは、「第二極」勢力と共に社会の崩壊と闘い、新しい社会への道を開く過程でもある。われわれはその過程を、「第二極」勢力の限界をこえて進む用意のある「第三極」勢力を政治的に登場させる過程としても闘い取らねばならない。大きな正念場である。
 
 Ⅲ 第三極を

 「第三極」の推進軸となるべき、新しい左派共同政治勢力を立てるためには何から始めるべきか、難しい問題である。21世紀の革命運動は、19~20世紀の革命運動のそのままの継続とはならず、何らかの転換が必要であるということは衆目の一致するところである。旧来の日本革命の路線規定(革命の性格、打倒対象など)など基本的一致が必要な領域は継続するものの、議論の重点は、もはやそこにはないと考えられる。したがって、今日の革命運動の内容と形態についての大雑把なイメージである程度一致できる人々・グループの集まりを作っていくのが妥当のように思われる。そこで以下のように我々の「イメージ」を示すことで、議論と連合の輪を広げていくことにした。
 1、ブルジョア国家と資本主義が社会を成り立たせることが出来なくなり、社会が崩壊していく時代に入ったことを確認し、産業の成熟という地平の上に自治・連帯・共生の助け合い社会の創造、社会の建て直しを目指す。
 ここでいう「自治」とは人の誕生・成長・死別の課題を軸に据え、充実した地産池消・循環型経済を土台にもち、住民自身が共同的に自己統治することである。「連帯」とは経済的その他の支配・従属関係や等価交換関係を超え、足るを知り贈与・貢献でなりたつ社会=経済関係である。「共生」とは地球環境破壊を止め、対象的自然との豊かな関係を築くことであり、分散型の再生可能エネルギーに立脚し、原発廃止を含む。これらによって成り立つ社会を平たく「助け合い社会」と総称する。
 2、一つの超大国アメリカが他の帝国主義諸国をも多かれ少なかれ統制・支配することで成り立ってきた諸国家の国際体制が機能不全化していく時代に入ったことを確認し、覇権国を主軸とする諸国家に代わって助け合い社会の国境を越えた大連合が人類社会的な秩序を再構築することに助力する。これは、植民地主義と差別の歴史を清算する事業となる。被抑圧諸民族の自己決定権を支持する。
 3、既存の国家の転覆と新たな国家の樹立という目的に規定され、また中央集権的な産業化の時代における労働者階級の存在形態にも規定されたところの、革命組織の民主集中制原則の見直しが必要になっていることを確認し、助け合い社会の創造にも政治革命にも適合した革命組織を創り出していく。すなわち、個々人のイニシアチブを重視し、地域組織の自治を基礎としたネットワーク型で、しかも中央集権的組織以上に高度な集中力をも生み出す組織を展望する。大会は大方向の合意形成と中央組織の選出、中央組織は日常的には調整の機能を担うものとなるだろう。
検討願えれば幸いである。

 コロナ災害の中で、我々の組織活動の継続性・全国的連携を確保する課題が問われた。オンライン会議などに習熟していく必要がある。そのことも含め、わが党の組織活動を再強化していかねばならない。(了)