経済安全保障法案を廃案に
  企業・研究者の「適正評価」で、戦争体制へ動員

 岸田内閣は、戦争する国づくりの一環として、国が指定した経済安全保障上の機密情報を扱う人を認定する「セキュリティ・クリアランス(適性評価)」制度などの導入を盛り込んだ新法、「重要経済安全保障情報保護・活用法」を制定しようとしている。2月27日に同法案を閣議決定し、今通常国会(6月まで)に提出した。
 法案は、インフラ物質の供給網である「重要経済基盤」に関する計画や革新技術などの情報のうち、漏洩すると安全保障に支障を及ぼす恐れがあるものを「重要経済安全情報」に指定し、これを漏えいした場合は最長5年の拘禁刑を科すと定めている。重要経済基盤とは、電気やガス、鉄道や空港・港湾、電波通信や金融などの「重要インフラ」と、半導体・航空機部品・蓄電池などの「重要物質」供給網を指している。そこには人工知能AIや宇宙関係も政権の念頭にあるのは間違いない。
 そして、政府が指定した経済安全保障上重要な情報に接する必要がある公務員や民間事業者、大学を含む研究者などに対して政府が調査し、適格性を確認した上で情報を提供する仕組みである。
 法案はこの「適性評価」で、①家族・同居人の生年月日や国籍、②犯罪歴、③薬剤乱用や精神的疾患の有無、④飲酒習慣とその節度、⑤経済状態などにわたって国の行政機関が調査すると定めている。そのためプライバシーが侵害され、調査を拒めば、企業が取り組む研究開発や情報保全の部署などから外される可能性も高い。
 また経済安全保障という概念が不明確で、政府が自由に解釈して秘密指定ができ、漏えい時には重罰をもって対応できる悪法である。
 政府は、与党の裏金づくりと税金逃れをあいまいにして、戦争する国づくりと軍拡政策を支える産業づくりを目指して、この悪法を制定せんとしている。軍事転用可能な技術開発をする研究者や、政府の仕事を受注したいベンチャー企業などの「企業秘密」を政府が吸い上げ、企業を国家統制する入口にもなりかねない。
 昨年12月27日、大川原化工機事件の国賠訴訟で東京地裁は、警視庁公安部の逮捕および東京地検の起訴について違法性を判決した。この事件は、大川原化工機が中国などに輸出する噴霧乾燥器が軍事転用可能な規制対象であるとして、外為外国貿易法違反容疑をでっち上げたもので、後に起訴が取り消された事件である。
 経済安保法案は、その「重要経済安全情報」が、既存の特定秘密保護法の対象に加えられるため、経済・技術全般についての秘密保護法ともなってしまう。大川原化工機事件のような不当弾圧が頻発しかねない。
 岸田軍拡反対、改憲阻止の闘いと一つのものとして、経済安保法案を廃案にさせよう。(A)


2月「19の日」行動、岸田政権支持率激低の中
 岸田終わるだけでは自公は続く

 各紙の世論調査で岸田政権支持率がついに十%台へ転落するなか、全国各地で2月の「19の日」行動が闘われた。
 東京では国会前で、99回めの行動が、「金権腐敗の自民党政治糾弾!軍拡増税反対!強制代執行による大浦湾埋め立て着工糾弾!改憲発議反対!2・19議員会館前行動」として取り組まれ、900名の労働者市民が参加した。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、改憲NO!全国市民アクション。
 行動は、総がかり行動実行委共同代表の菱山南帆子さんの主催者挨拶で開始。「能登は大変な状況で復興が遅れているのに、岸田政権は、命は二の次の原発推進、カネ儲け第一にしている。支持率は毎日新聞調査で14%になっているが、選挙をすれば自公が勝つ。自分たちで行動しなければ、金権腐敗・企業優先の政治は変わらない。闘いを続けて希望のある政治をつくろう!」と訴えた。
 時事通信の2月9日調査では、岸田政権支持率は(前月比1・7%減で)16・9%、不支持は(6・4%増で)60・4%と初めて6割超え。朝日新聞の同17日調査では支持する21%、支持しない65%。また「今、総選挙としたら比例区でどの党に投票するか」の問いには、自民21%(前調査25%)、立憲14%(11%)、維新14%(14%)と出ている。
 菱山さんが言うように、自民政権支持率が低かろうが高かろうが、選挙では常に自民党に入れるという一定の岩盤保守層があり、したがって選挙で勝つためには普段投票に行かない人々が大きく動き出し、とりあえず野党第一党などへの投票へ向かうという情勢変化が必要である。
 さて行動では、各政党挨拶で、まず社民党の新垣邦男衆院議員が発言。「政府は、沖縄県うるま市に陸上自衛隊の訓練施設を作ろうとし、地元では大きな反対運動が起こっている。さらに、うるま勝連分屯地へのミサイル配備が策され、宮古・石垣・与那国のミサイル基地化が進められている。これを許さず、沖縄から政治を変え全国に広げ、政権交代を実現する」と訴えた。
 立憲民主党の屋良朝博衆院議員(九州沖縄比例区、昨年繰り上げ当選)は、「辺野古新基地は絶対にできない。半世紀以上たっても不可能。国は国民を騙して税金を投入している。ジュゴンの海を破壊し、珊瑚礁を台無しにした。中国とも敵対し、戦争を準備している。しかしアジアでは別の動きがある。世界を見ないと真実は見えない」と指摘した。他に、沖縄の風・高良鉄美、日本共産党・井上哲士の両参院議員も発言。
 市民からの発言では、ふぇみん婦人民主クラブの片岡さんが、イスラエルによるガザと西岸でのジェノサイド(3万人以上を殺害)を糾弾した。1月26日、国際司法裁判所はイスラエルに対し、ジェノサイド防止の暫定命令を出した。ネタニヤフ政権と米バイデン政権はこれに巻き返し、国連パレスチナ難民支援機関UNRWAへの資金援助停止の暴挙に出てきた。この援助停止への日本政府の参加を撤回させねばならない。
 
 ▼自衛隊の靖国参拝糾弾
 
 続いて、日本山妙法寺の武田隆雄さんが、自衛隊の靖国参拝を糾弾した。1月9日、陸幕の小林副長らが靖国神社を集団参拝。10日には宮古島駐屯地の警備隊長らが宮古島神社を参拝。また、昨年5月に海自練習艦隊の今野司令艦長らが靖国参拝していることも発覚した。自衛隊の「部隊参拝」を禁止する1974年防衛事務次官通達を無視し、これを見直そうとする動きである。戦争する国が必要とする戦死者顕彰へ向かっている。
 武田さんは、「靖国・宮古神社参拝は、文民統制の原理を破壊し、平和憲法と民主主義の破壊だ。防衛大臣は事実を調査し、責任の所在を国会で明らかにするよう求める。これを求める共同声明への賛同を!」と訴えた。
 最後に、松井菜穂さんが各地でのフェミブリッジ・アクションを紹介。憲法共同センターの高橋さんが、以下を行動提起して終了した。(2月内を略)
 3月1日、朝鮮独立運動105周年・キャンドル行動。
 4日、イスラエル大使館緊急行動。午後6時半。
 14日、有楽町ウィメンズアクション。イトシア前・午後6時。
 19日、第100回「19の日」行動。衆参議員会館前・午後6時半。
 通常国会で、24年度予算案が衆院を通過すると、改憲発議案作りが進む危険がある。今国会で発議しなければ、岸田の党総裁任期中の改憲はできない。4月28日衆院3補選に合わせた、崖っぷち岸田による破れかぶれ解散だってありえる。改憲発議阻止のためには、野党第一党を維新に取らせないことがポイントとなる。
 24「賃金底上げ」春闘、反戦平和の大衆行動を拡大し、岸田政権打倒・政権交代の気運を高揚させよう。(東京O通信員)


東電刑事裁判――草野判事は降りよ、口頭弁論を開け!
 巨大法律事務所と最高裁の癒着

 福島原発刑事訴訟支援団は、高裁不当判決破棄を求めて、最高裁第二小法廷の草野耕一判事が東京電力刑事裁判の審理を自ら回避すること、また大法廷で口頭弁論を開催すること、これを求めて連続闘争に決起した。
 昨年11月20日の最高裁前アピール行動に続いて、1月30日の最高裁前署名提出行動。2月11日には都内で講演集会を開催した。さらに3月8日には、最高裁前行動&報告集会を予定している。
 福島第一原発事故は、人々の暮らしと人生を破壊し、被害者・被災者は今も苦しみの只中にいる。それでも東電と司法が癒着し、当時の経営陣の唯一人も事故の責任を問われない現状が続いている。高裁無罪判決を破棄させ、業務上過失致死傷罪の刑事責任を取らせる必要がある。

1・30署名提出行動

 寒風が吹きつける最高裁前に、約70名の労働者市民が結集。署名提出の前段集会は、福島原発刑事訴訟支援団・佐藤和良団長の主催者挨拶で開始。
 佐藤団長は、「最高裁第二法廷の草野耕一裁判官は、東電と密接な関係にあり公平・公正な審議ができない。自らやめてほしいと全国に呼びかけ、その署名を今日最高裁に提出する」と発言し、昨年の1・18東京高裁不当判決を逆転する有罪判決を目指して闘う決意を表明した。
 次いで福島原発告訴団弁護団の海渡雄一弁護士が発言、「西村あさひ法律事務所に所属する複数の弁護士が、東電や関連会社に関係し、法的助言を行なっている。草野裁判官はその事務所の代表だった。寺西判事補事件の最高裁決定は、『裁判官は独立して中立公平な立場で職務を行なう』とした。法律家として良心があるならば、審議から回避すべきだ」と最高裁に向って訴えた。
 同弁護団の大川陽子弁護士は、福島原発事故国賠訴訟・最高裁第二小法廷の「2022年6・17判決での、少数意見・三浦守裁判官の発言はすばらしかった。この第二小法廷で、審理を真実に基づいて行なえば、必ず東電の責任が明らかになる。原発事故を起こせば大惨事になる。それでも東電は責任を取っていない。絶対に許さない」と闘う決意を表明した。
 告訴人からの発言では、郡山市に避難した蛇石いくこさん。「原発事故から十数年。東京地裁・高裁での不当判決で、東電の責任を最高裁で争う事態になった。大きな力で押しつぶされそうな現実がある」。しかし「署名には、市民の血と汗と涙が詰まっている。裁判官に良心があるならば自ら退くべきだ。この国の腐敗した構造を変えたい」と訴えた。
 福島原発神奈川訴訟原告団の村田さんは、「国と東電の責任を追及する裁判で、つい四日前に東京高裁で国の責任を否定する判決が出た。22年6・17最高裁判決以前には、高裁で国の責任を認める判決3、認めない1の結果であった。しかしその以後には、国の責任を否定する判決に変わった。司法の劣化が歴然としている」と指摘。
 集会後、「草野判事は退け!」「最高裁は口頭弁論を開け!」のシュプレヒコールに送られて、代表団が4539筆の署名を最高裁に提出すべく入館していった。

2・11講演集会

 2月11日都内で、「大手法律事務所に支配される最高裁!東電刑事裁判で改めて問われる司法の独立」と題して講演集会が開かれ、2百名近くが参加。主催は、福島原発刑事訴訟支援団。
 講演は、「裁判所・東電・巨大法律事務所のつながりと原発裁判」との演題で、ジャーナリストの後藤秀典さん。
 後藤さんは、司法と東電など電力資本との癒着の構造について、「特定の巨大法律事務所が最高裁判事の供給源となり、同時に最高裁裁判官の天下り先ともなっている。こうして形成された最高裁と特定の巨大法律事務所のパイプを中心に、巨大法律事務所、裁判所、国、東電など企業との密接な癒着構造が作られている」と暴露。それが「22年6・17の国を免責する誤った最高裁判決となって顕在化した」と述べた。
 巨大法律事務所とは、西村あさひ法律事務所のほか、長島、大野、常松、TMI総合の各事務所などであり、西村あさひは、今年8百人以上の弁護士を抱えている。
 草野耕一判事は、その西村あさひの元代表経営者であり、公正・公平な審理などできるはずがない。審理回避は当然の要求である。
 ちなみに巨大法律事務所の弁護士が原子力規制庁に勤務し、再び法律事務所に天下る事実も報告。規制当局と電力資本との癒着も指摘された。
 弁護団報告では、河合弘之弁護士が次のように述べた。「3・11以降、次々と起こる訴訟に電力側はカネに糸目を付けずに対抗。訴訟が起こるほど弁護士事務所が儲かるビックマーケットが出現した。金脈を見つけて巨大法律事務所は、最高裁に人を送り込み、天下り先にもなった。しかし、その構造を攻撃すればダメージになる。大いにやるべき」と述べ、巨大法律事務所が暗躍する背景を明らかにした。
 今や東電刑事裁判は最後の重大な時期を迎えている。脱原発勢力が世論を動かし、最高裁を二重三重に包囲して、東電の責任を明確にさせよう。(東京O通信員)