9・18代々木
 ワタシのミライ・再生エネ100%と公正な社会を
  脱原発・気候危機打開へ

 気候危機を止めるために、世界各国で同時期・一斉に取り組まれる「気候アクション」が9月18日、世界中の闘いと連帯して東京・代々木公園で開催された。
 「ワタシのミライ・再生エネ100%と公正な社会を目指して」と銘打ったこの集会には、延べ8000名が参加、脱原発と気候危機打開を掲げて、集会・イベント・パレードを繰り広げた。
 主催は、市民運動を加速させるべく新たに発足したネットワークの「ワタシのミライ」と、フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)東京ならびに、さようなら原発1000万人アクションの3者。(原水禁系の一千万人アクションは、このかん毎年3・11前後と秋季に大集会を行なっているが、この共催企画を秋季の集会としている)。
 集会は、ビーガン料理の屋台やプラカードを手作りするブースなどを設置し、またライブ・集会のプログラムで若者が気軽に参加できる雰囲気づくりに工夫が凝らされ、進行されていた。
 トーク1「原発問題・気候危機とどう向き合うか」では、福島原発告訴団の武藤類子団長がスピーチ。「汚染水の海洋放出を強引なやり方で強行している国であることを認識しなければならない」、そして「復興予算が最先端技術の開発などに使われ、被災者が望む復興が行なわれていない。災害を喰い物にした事業が展開されているのは大きな問題だ」と指摘した。
 さらに、汚染水問題にかかわって、トーク3「脱原発・気候変動運動のこれから」では、さようなら原発一千万人アクションの鎌田慧さんが発言。「岸田内閣の支持率が下落、それでも正すことをしない。汚染水の海洋法出では、福島県漁連の理解が進むまで処分しないとの約束を蹴散らかした。こんなに軽んじられるのは、私たちが反対の自己主張をしていない報い。声を出す文化をもう一度つくらないといけない」と訴えた。
 また、元京都大学原子炉実験所の小出裕章さんは、「放射能汚染水をマスコミはこぞって『処理水』と繰り返す。政権とマスコミの談合で原発事故の恐ろしさを隠蔽する。放射能汚染水130万トンを海洋投棄。トリチウムは消すことができない。放出は実害だらけだ。政府とマスコミが『処理水』と言い続ける暴走を止めないといけない」と、科学者の立場から批判した。
 トーク2「市民が声を上げる」ということでは、「ワタシのミライ」事務局の吉田明子さんが発言。
 「政府は、原発やエネルギー問題でも市民の声を聞いていない。再生エネルギー100%への移行と、人権や貧困なども含め弱者にしわ寄せがいかない公平な社会を目指し、気候危機の問題にも取り組んでいきたい」と決意を表明した。
 さらに、FFFの川崎彩子さんは、「原発事故と同じように、世界では気候災害で住まいを追われる人々が増えている。今後、世代やジェンダーにとらわれず、いろいろな人の声を集めた運動にしたい」と呼びかけた。
 集会は、最後にライブ演奏の後、2コースでデモ行進に出発。
 原宿コース(おもに労働団体)では、汚染水海洋放出中止、原発再稼働反対などがおもに訴えられ、渋谷コース(おもに市民団体・NGO・若者の団体)では、脱原発・脱火力・気候危機打開などがおもに訴えられた。全体として、原発NO!再エネ100%!公正な社会の実現! これらを街頭の市民に訴えて、一日の行動を終了した。(東京O通信員)


ALPS処理汚染水の海洋放出差止訴訟
 提訴で理性的な議論を

 岸田政権と東京電力は、内外の反対や懸念の声を無視して、福島第一原発敷地内に貯まる放射能汚染水の海洋放出を8月24日から強行し、9月11日まで続けて、1回目の7800トン放出を終了した。
 今年度内に、4回に分けて3万1200トン(タンク約30基分)を放出する、その中のトリチウム量は5兆ベクレルになるという。他の核種は不明である。
 放出開始時の汚染水総量は133万トンあり、毎日新たに汚染水が発生する(近年は約100トンに減っている)が、これら全てを約30年で捨ててしまうという。一方的な海洋放出は、一方的で空想的な福島第一廃炉見通しと関連している。政府・東電は、捨てるのはALPS(多核種除去設備)を通した処理水であるから、全部捨てても環境影響は「無視できる程のもの」としている。
 海洋放出を今後も、数週間の設備点検を挟んで、2回目(10月5日から)・3回目と強行するつもりである。メルトダウン核汚染水の意図的な外界への投棄は、スリーマイル原発事故でもチェルノブイリ原発事故でも行なわれていない。史上かって無かったこの暴挙、岸田政権・東電のこの暴走を、できるだけ早期に止めなければならない。
 そのための一つの方法として、「ALPS処理汚染水の海洋放出差し止め訴訟」が9月8日、福島地裁に提訴された。
 この裁判で請求するのは、国に対しては5月10日付のALPS処理水海洋放出実施計画の取消し、および放出設備の検査合格の取消し、東電に対しては放出作業の中止である。
 原告は、3名の漁業者をはじめとする福島原発事故被害者、避難者、太平洋沿岸各地の市民など151人。10月10日を期限にさらに原告参加を募り、10月末日に第二次提訴を予定している。
 訴訟の内容と意義について、原告弁護団共同代表の海渡雄一弁護士は、次のように語る(東洋経済・岡田記者取材からのまとめ)。
 ・訴状では、「二重の加害による権利侵害は絶対に容認できない」と書いた。原告の漁業者や被災地市民は、福島第一の事故で大変な被害を被った。そのうえ「処理汚染水」の海洋放出によって、「二重の被害」を受けることになる。しかも今回は国・東電の故意によるものであり、新たな加害行為だ。怒りをもって提訴する。
 ・政府・東電は、「関係者の理解なしに海洋放出はしない」という福島県漁連との約束を破った。このことの責任は重い。
 ・一般市民も、平穏生活権という人格権の一部が侵害されている。他に対策があるにもかかわらず、海に放射性物質を拡散させた。少なくとも以前より放射性物質が増えることは確かだ。
 ・トリチウムの健康影響については諸説があるが、世界中の論文の大半はトリチウムが内部被曝をもたらすとしており、少なくとも安全であるとは確認できていない。
 ・7月のIAEA包括報告書は、海洋放出はあくまで「日本政府の決定」としたうえで、「推奨するのでも支持するものでもない」としている。つまり、同報告書は海洋放出にお墨付きを与えるものではない。
 ・海洋放出は、ロンドン条約の1996年議定書に違反する。同議定書では、放射性物質の海洋投棄は全面的に禁止されている。日本政府は、それが禁止しているのは船舶や海洋構築物からの投棄であり、今回の放出は該当しないとする。しかし、今回用いた海底トンネル放出路が海洋構築物に当たらないというのは、条約の趣旨を無視するものだ。
 ・この裁判を通じ、まともな議論の場ができることの意義は大きい。これまで日本でも専門家や市民団体が海洋放出の代替案を示し、政府・東電に検討を求めてきた。太平洋16か国・2地域による太平洋諸島フォーラムも、日本の海洋放出の方針を批判して「専門家パネル報告書」(2022年8月)を公表し、科学的な提案・勧告をしてきた。しかし最近の日本では、「汚染水」と言っただけで非難されたり、「中国を利するだけだ」などの罵詈雑言を浴びせられている。理性的な議論が必要だ。
 ・上記の太平洋諸島フォーラム報告書が、「東電の各タンクの具体的な放射性物質の含有量に関する知識が著しく不足している」等々と指摘しているように、汚染水の実態は正確なところが分かっていない。裁判では、処理汚染水の実態が何であるのかについて、まず明らかにさせたい。
 ―――という訳で、この裁判は、おおいに注目・支援すべきものである。仮処分命令のような速効性は期待できないが、審理を通し、政府・東電に海洋放出を早期に中断させ、汚染水対策をやり直させる闘いの重要な一環となるものである。
 そして、この闘いはまた、当面の汚染水問題に留まらず、福島第一の事故収束と廃炉という長期的で、かつグローバルな課題への民主的な取り組みを促進するものともなるだろう。(W)


横堀農業研修センターの破壊・土地強奪を許すな!9・24現地集会
 成田空港会社の8・2提訴許さず

 9月24日、「横堀農業研修センターの裁判による破壊・土地強奪を許すな!9・24横堀現地集会」が、千葉県芝山町の横堀農業研修センターで行なわれた。参加者は38人で、三里塚空港に反対する連絡会、三里塚大地共有運動の会による共催。
 8月2日、成田国際空港会社は、三里塚芝山連合空港反対同盟(柳川秀夫代表世話人)と柳川秀夫さんなど4人の共有者に対して、反対同盟が所有する「横堀農業研修センター」(旧労農合宿所)の建物を収去し、土地を明け渡させることを目的にした裁判を千葉地裁に提訴した。
 集会では最初に、1989年10月、旧空港公団による火事を利用した合宿所の囲い込みに対する闘いを記録した映像「どっこい闘魂 ここにあり」を上映。
 柳川秀夫さん(反対同盟代表世話人)からのアピールが紹介された(別掲)。
 平野靖識さん(東峰地区・らっきょう工場)は、「ここは拡大する第3滑走路への接続点。早く決着をつけたい空港会社の焦りと横暴がある。空港会社が訴訟に訴えること自体が強制的手段で、受け入れることはできない。確信の下で闘っていきたい」と発言。
 山崎宏さん(事務局)は、「この間裁判による土地収奪が行なわれてきた。今回の裁判は運動の拠点、主体をつぶすための裁判と位置づけられる」と述べた。
 繁山達郎さん(事務局)は、「空港会社の主張は強制的手段を取らないという確認に反している。訴状では研修センターは年一回旗開きでしか使用してないと書いてあるが。研修センターは農作業、イベントなどで使用し、一昨年からは修理・畳替えなどを行なっている。資料を集めて反論していく。裁判への協力を。さらに登記義務化に対抗して共有地を守るために、移転登記を確実に行なっていこう」と訴えた。
 中川憲一さん(元管制塔被告)は、横堀農業研修センター(旧労農合宿所)裁判を支える会への賛同、第一回口頭弁論(期日未定)傍聴を呼びかけた。
 鈴村多賀志さん(田んぼくらぶ)は、「空港会社の訴状では、私たちは航空産業を支え、国際的位置に貢献していると。なぜこの土地が必要なのかは一言も書いてない。膨大な土地を削り緑を埋め立て、どれだけの幸せが地域にもたらされるのか。幻想に騙されて失うものがどれだけあるのか」と批判。
 野島美香さんは、「裁判所が権力を守る砦になっている。私たちの土地、生活を守るための裁判。少しでもがんばっていきたい」と発言。
 根本博さん(泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会)が南西諸島の軍事化反対を訴え、平田誠剛さん(ウシトラ旅団、元管制塔被告)のメッセージが紹介されるなどした。
 最後に、芝崎眞吾さんの掛け声でシュプレヒコール。
 集会後には、横堀鉄塔に移動して現地調査。終了後、有志が柳川さんを訪ねた。(S記)

●柳川秀夫さんアピール

 本日集まりの皆さん。ごくろう様です。
 1966年より57年間守られてきたこの地も収奪の対象になり、不本意ながら攻防の場所となりました。
 長きにわたり、この周辺がまがりなりにも樹木が繁り自然の状態を維持できていたのも、ここが守られてきたからに他なりません。
 雨が降らない日々が何カ月も続き、先日はとんでもない大雨が降りました。
 今や世界中、人類の生存にかかわる事態になっており、その中で更に緑の大地をひきはがし、コンクリートで固めようとすることはあらゆる意味で大罪であります。
 こういった事態に闘うわけです。
 そう多くの方法はないですけど、裁判での闘いをはじめ、全力を出して頑張ってゆきましょう。
 2023年9月24日