美ら海大浦湾を埋めるな!9・23東京集会
 最裁判決でも不承認続く

 最高裁が9月4日、辺野古新基地建設問題についての国関与取り消し訴訟で、上告棄却の不当判決を下し、沖縄県の敗訴が確定した。
 この裁判は、沖縄県玉城デニー知事が、軟弱地盤対策を主とする工事変更申請を不承認処分とした(2021年11月)ことに対して、その後国が行政不服審査法を乱用してこの処分を取り消したり、承認するよう是正指示したりしていることは不当な国の関与であるとして、沖縄県が起こしていた裁判である。判決は、県が主張する「公有水面埋立法の承認要件の不充足性」(軟弱地盤、環境影響、工期長期化など)について何らの判断も示さず、不承認取り消し裁決を形式的に追認した不当判決である。
 敗訴確定によって知事に工事変更申請を承認する義務が生じたとも報道され、デニー知事の対応が注目されることとなった。このなか沖縄ではただちに翌5日、「オール沖縄会議」が最高裁判決抗議集会をひらき、那覇県民広場に700名が結集、「知事の不承認支持」をアピールした。
 東京では9月23日、「美ら海大浦湾を埋めるな!どうなっているの?辺野古新基地建設」と題する集会が、文京区民センターで開かれた。主催は、辺野古への基地建設を許さない実行委員会で約150名が参加。不当判決をふまえた闘いの現況、大浦湾埋め立て阻止をはじめ今後の運動方向について討議された。
 この集会では最初に、辺野古実の深沢さんが主催者挨拶。「国は判決が出る前から、大浦湾埋め立てに使う土砂を辺野古側埋立地に仮置きしたり、また、判決が出ると8日から大浦湾工事の発注を開始している。判決は国の是正指示が適法だとしただけで、いぜん工事変更は不承認のままであり、これらは違法工事である」と現況のポイントを示した。
 続いて、この集会に対しての玉城知事のメッセージ動画が示された。知事メッセージは、今後の対処方針に具体的に触れるものではなかったが、辺野古新基地建設反対を堅持し、東京の辺野古実などの運動にも明確な連帯の意思を表明するものであった。
 また、最近19日~21日の辺野古現地の映像が示された。次から次に土砂を積んだ台船がやって来て、辺野古側に大浦湾埋め立て用の土砂を仮置きしている違法工事状態がよく分かる映像であった。
 平和市民連絡会の上間芳子さんから、かなり広い領域にわたっての現地報告が行なわれた。知事が工事変更承認を行なわないかぎり、国は勧告・指示、代執行訴訟と年内に進み、承認を代執行して大浦湾埋め立て強行をねらう。これとどう闘うか。
 デニー知事に市民団体15組織が要請し、再度の不承認、埋め立て承認の再撤回を求める。再撤回の理由検討第三者委員会の設置へ。また、辺野古新基地建設阻止・真の自治をめざす「地方議員109」の動き、などである。
 全国規模では、「完成見込みのない新基地に湯水のような税金の無駄使いを許すな!」などの世論攻勢。国際的には、デニー知事の国連人権理事会でのアピール(別掲)を手始めに、基地による人権侵害、PFAS環境破壊の訴えを広げ、また「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」と連動して、東アジア平和構築の国際世論を。
 また、上間さんはシュワブ前座り込みリーダーのお一人であるが、辺野古でも安和でも塩川でも人員結集はたいへんになっているが、行動によって確実に工事を遅らせていること、機動隊がいない時には2~3人でもダンプを止められること、これら現場闘争を維持することの重要性も語ってくれた。
 上間さんは、「平和に敗者はない。戦争に勝者はいない」と報告を締めくくった。

埋立承認再撤回とは?

 上間さんの報告で詳しくは述べられなかったが、埋め立て承認「撤回」の方法については、翁長知事が2018年の「撤回」表明へ至る過程で、おおいに論議された経緯がある。最初15年に翁長知事が、13年の埋立承認に法的瑕疵があったとして承認取り消しを行なった。死去の直前の18年には、①埋立承認留意事項の違反、②新たに明らかとなった軟弱地盤の存在を理由として承認撤回を表明し、副知事が撤回を執行、玉城新知事がこれを受け継いだ。さらに玉城知事は工事変更申請に対し、21年に軟弱地盤対策の不備等を理由として不承認とした。これら取り消しや撤回や不承認は、政府の脱法的措置と司法の追随によって全て否定されたが、法的には公有水面埋立法や行政不服審査法などの枠内での争いに過ぎない。
 沖縄の自治権と日米の普天間県内移設合意、この二つでどちらが優先するのか、という真の争点は法的に論議されず、法的に決着がついていないままである。政府側の法的瑕疵を理由とする撤回ではなく、そもそも沖縄県民の公益に県内移設は反することを理由とする撤回、これを「公益撤回」と言う。この公益撤回によって工事が中止された場合、国の法的瑕疵が否定されている現状では、沖縄県は国に損賠責任を負うとも言われる。しかしこのリスクを考慮しても、新たな承認再撤回によって、政治内容での真っ向勝負をすべき時期に来ているといえるだろう。
 さて集会では、質疑応答・カンパ呼びかけの後、2団体から連帯アピール。
 10月21日・午後2時に新宿アルタ前から行なわれる「東アジアに平和を!琉球弧の島々を戦場にするな!新宿アクション」実行委からは、大仲さん(沖縄一坪反戦地主会関東ブロック)が参加を呼びかけ。同行動には、瑞慶覧長敏さん(沖縄を再び戦場にさせない県民の会共同代表)が参加発言する。
 大阪高裁での琉球人遺骨返還訴訟の東京支援者からは、9月22日の高裁判決について報告。判決は、第一尚氏末裔ら原告による旧京都帝大からの遺骨返還請求を棄却したが、大島真一裁判長は付言として、先住民族の権利についても触れており、国際法の傾向を示すものともなった。
 最後に、辺野古実の中村さんが、辺野古実が責任をもって取り組んでいる毎月第一月曜の防衛省前行動などへの参加を訴えて、終了した。最高裁不当判決に直ちに対峙し、展望をさぐる時宜にかなった集会であった。
 
知事・国連スピーチ

 玉城デニー知事が、ジュネーブの国連人権理事会で日本時間9月19日に行なったスピーチは以下の通り(主要部分)。

 米軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている沖縄の状況を世界中から関心を持って見てください。
 日本全体の国土面積の0・6%しかない沖縄には、在日米軍基地の約7割が集中しています。
 さらに日本政府は、貴重な海域を埋め立てて、新基地建設を強行しています。県民投票という民主主義の手続きにより明確に埋め立て反対という民意が示されたにもかかわらずです。
 軍事力の増強は日本の周辺海域の緊張を高め、不測の事態を招くことが懸念されるため、沖縄県民の平和を希求する思いとは全く相いれません。
 私たちは、2016年国連総会で採択された「平和への権利」を、私たちの地域において具体化するよう、関係政府による外交努力の強化を要請します。

 このスピーチは、知事がジュネーブに行く前に工事承認に転ずるという政府側の希望的観測を打ち砕き、知事の揺るぎない意思を示すものとなった。
 2015年の人権理事会では、翁長雄志前知事が、「沖縄人のアイデンティティがないがしろにされている」とスピーチした。今回の玉城知事スピーチの特長は、「軍事力の増強」に強い懸念を表明し、それが沖縄県民の平和的生存権と相いれないと主張した点である。実質的に、日本政府による南西諸島ミサイル配備をはじめとする軍拡政策に反対するスピーチであった。(東京W通信員)