大軍拡国会  政治路線の対決にならず
 共生社会実現では争点拡大

6月「19の日」行動

 国会会期末を二日後に控えた6月19日、軍拡・反動諸立法の強行成立と今後の課題をふまえて、全国各地で「19の日」行動が行なわれた。
 東京の国会前では、91回めの「19の日」行動が、「安保3文書撤回!軍拡増税反対!南西諸島のミサイル配備反対!改憲発議反対!暮らしをまもれ!6・19国会議員会館前行動」として行なわれ、1300名が結集した。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、9条改憲NO!全国市民アクション。
 行動は、総がかり実の菱山南帆子さんの主催者挨拶で開始。「戦争につながる悪法が次々に可決・成立した。必ず総選挙で岸田を打倒する。岸田政権は、支持率急落で弱腰になっている。それは闘いの成果だ。今どの地域でも人が集まり、闘う気迫に満ちている。毎月19日に闘いを継続しよう!」と訴えた。
 政党挨拶では、最初に立憲民主党・打越さく良参院議員(新潟)。「奨学金返済に悩み、命を絶つ人がいる。頑張って学んだことが生きることを諦めさせる、これでいいのか。軍拡43兆円あれば、どれだけの人々を救えるのか。一人ひとりの命と尊厳を守る。それが政治」と訴えた。
 沖縄の風・高良鉄美参院議員は、「6月18日で辺野古の座り込みが7000日になった。新基地建設を阻止する。そして沖縄の戦場化阻止、ミサイル配備にも反対して宮古、石垣など各地で闘いが続いている。沖縄の問題は国民全体の問題だ。政府は主権在米、我々は主権者の声を上げて闘う」とアピール。他に日本共産党・小池晃、社民党・大椿ゆうこ両参院議員も発言。
 市民発言では、改憲問題対策法律家6団体連絡会の田中隆弁護士が、憲法審査会の現状を説明。「緊急事態下での国会議員の任期延長、これを改憲派は改憲の突破口にしようとしたが、三つの壁(後述)に阻まれている。これが国会内外の良識の力であり、闘いの成果だ」と報告。
 続いて、移住者と連帯する全国ネットワーク・山岸素子事務局長が、6月9日に強行成立した「改正入管難民法」について発言。「すでに収容や送還の動きが厳しくなる兆候が出て、当事者から不安の声が出ている。各地の収容所訪問や支援活動にあたる弁護士・支援者の連携で、当事者を孤立させず、送還の動きを現場で止めさせることが求められている。一年後に施行になる。廃止を求めて闘っていこう!」と訴えた。
 最後に、憲法共同センターの高橋信一さんが、「来秋までの総裁任期中の改憲、岸田のこの目標をまず阻止する。そして改憲・大軍拡・大増税との闘いは長く続く。腰を据えて闘おう!」としつつ、以下を行動提起。
 7月19日、第92回「19の日」行動、議員会館前・午後6時半。
 7月27日、新宿駅東南口街頭宣伝、午後6時。
 7月31日、有楽町イトシア・ウィメンズアクション、午後6時。
 2つの署名、「大軍拡・大増税に反対する請願署名」、「憲法改悪を許さない全国署名」の推進。

今国会闘争の特徴

 今国会では、年末の「安保3文書」閣議決定の立法化である2023年度予算案が早々と3月28日に成立し、国営兵器工廠もありうる「防衛産業強化法」が、維新、国民民主のみならず立民も賛成に回って6月7日に成立、予算案とセットを成す今後5年間で軍事費43兆円の「防衛財源確保法」が、最後の仕上げとばかりに6月16日に成立させられた。
 予算案と財源確保法は、おもな野党が全て反対したが、多くは財源策にケチを付けるだけで軍拡反対になっていない。軍拡を引っぱっている外交・安全保障路線(対米一辺倒のアジアNATO化路線)と対決しなければ、反戦平和にはならない。画歴史的な軍拡予算案と軍拡2法案に対し、今国会で国論分岐の大闘争を作りえなかったことは、今後に大きな課題を残した。
 また、原発60年超運転を可能とする「GX束ね法」は5月31日、「マイナ保険証法」が6月2日、「改正入管難民法」が6月9日、「LGBT理解増進法」が6月16日と次々に成立した。これら全てに維新、国民が賛成しており、維新に次いで国民民主の実質的な与党化が確定した。
 しかし、入管法改悪では、連日国会前をはじめ全国的に反対運動が打ち抜かれた。共生社会に逆行する政治に対しては、若者の参加など闘争拡大の芽が生まれてきている。
 自民党の多数派などが抵抗を続けたLGBT法案の顛末も、時代錯誤の日本的右派を若い世代から孤立させることとなった。しかし、この議員立法の新法は、維新・国民案を取り込んで「性自認」が消え、かつ、あろうことか「全ての国民が安心して生活できること」という留意事項が入れられて、性的多数派が性的少数派(LGBT当事者)を危険視する差別的立法ともなってしまった。
 健康保険証を廃止しマイナンバーカードを強制するマイナ保険証法は、その成立後も、マイナ普及の拙速かつ設計ミスによる混乱が各地で続出している。しかし岸田政権はいぜん、来年秋には保険証廃止の方針を変えていない。
 岸田政権の内閣支持率は、軍拡への批判というよりも、これら入管法改悪、マイナ保険証法への批判、LGBT法での対応、また少子化対策の財源確保を先送りしたことなどによって落ちている。6月17日の毎日新聞世論調査では、前月比12%減の支持率33%に急落した。
 岸田はさんざん解散風を吹かせていたが、国会終盤のこれらの事態によって腰砕けとなり、立民提出の内閣不信任案が否決されて今国会は終わった。軍事外交問題が大きな対決点になりきれず、他方で、移民や性的少数派との共生という問題が国会内外の大きな争点となっていることは、一つの客観的傾向である。

危なかった衆院憲審

 なお今国会の憲法審査会では、維新・国民・有志の会3会派が3月30日に緊急事態改憲案を発表し、これに自・公を加えた5会派が統一文案を作成せんとして、改憲発議が現実味を持つ事態となっていた。しかしそれは以下の理由で失敗し、6・15論点整理で終了となった。
 理由の①は、参院では、憲法第54条・参議院の緊急集会の積極的役割を強調する議員が多く、公明党は、民主国会の復元力は54条が改憲案より大と主張した。②憲審の参考人質疑では、54条2項の参院緊急集会は70日(同1項の、解散から40日以内の総選挙、その選挙後30日以内の国会召集という衆院不在の最長期間)を超えた開催が可能とする憲法学会の支配的見解が示され、自民党参考人・大石氏もこれに同調した。③54条は国民主権で理がある、改正の用なしとする野党主張が有利となった。
 要するに、参院緊急集会の開催期間を70日以内と決めつけ、衆院議員任期を延長する緊急事態条項によって改憲の突破口を開こうとした目論見は、今国会では失敗した。これで、岸田の来秋9月・党総裁任期までの改憲はきびしくなったが、今秋臨時国会へ攻防は続く。
 反動諸立法は粗製らん造されたが、闘いを粘り強く続け、改憲・戦争・差別勢力を追い詰めていこう。(O)


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 読者・友人の皆さん!
 アメリカの世界覇権維持策に追随する日本の大軍拡が、今回の国会で通ってしまいました。今秋は総選挙の可能性もあるのに、国会野党は、立民も共産も惨たんたる状態にあります。
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