2023年の最低賃金大幅引き上げ闘争勝利へ
 なくせ!時給1000円以下
 めざせ!一律1500円以上



 今年の地域最低賃金の改定はどうなるのか。その「目安」を示す中央最低賃金審議会の3者(労働・経営・公益)審議が始まろうとしている。その前の6月中に、岸田政権が経済財政「骨太」方針を出し、最賃についても政権方針を示して、これに誘導せんとするだろう。例年は7月末に目安答申が出される。
 先立つ3月15日に、安倍政権以来8年ぶりの政労使会談が行なわれた。ここで岸田首相は、2022年の地域最賃である全国加重平均・時給961円を、今年23年に1000円越えにする目標を示した。芳野連合会長は歓迎し、十倉経団連会長らも反対はしなかった。そして首相は、この最賃改善に対応した価格転嫁を進める方策を年内に出すとしている。
 21年の最賃改定では、全国一律28円(3・1%)アップの目安が出された。これで、全都道府県を4ランクに分ける地域格差拡大のやり方が崩れ出した。しかし22年改定では、4ランク制を維持したまま、加重平均3・3%アップ961円が難航の末、目安として出された。(その後の今年4月に、4ランク制を3ランク制にすることが決められたが、地域格差是正のためには小手先すぎると言うべきだ)。
 3月政労使合意が言う加重平均1000円以上のためには、今夏答申4・1%以上アップが必要である。本当に実現できるのか。人口を加味する「加重平均」では、首都圏など大都市都府県の改善率で平均値は大きく左右される。加重平均1000円を実現しても、その実、ほとんどの県では時給1000円は到底手が届かないままなのである。
 ある意味こうしたペテンによって、1000円実現しました!と言って、岸田政権が解散・総選挙に出てくることもありうる。
 しかし、この4・1%でも、このかんの物価高騰には追いつかないのである。総務省による22年度の消費者物価指数は、基礎的支出項目で4・9%増である。基礎中の基礎の食料品や外食は、何でも1割は上がっているというのが生活実感である。そのうえ6月から、電力独占10社中の7社が家庭用電気代を14%~42%も大幅に上げることを、岸田政権は認めた。最賃近辺の人々にとっては、今すぐ1割以上の収入増がなければ、生活は窮地に追い込まれる。
 今年の春闘では、大企業で満額回答などもあったが、連合平均では定昇込みで3・7%(うち中小労組は3・4%)の妥結に留まった。物価に追いつかず、実質賃金は低下し続けている。連合の非正規の組合員は5・6%で改善がみられるが、大手スーパーのパート従業員確保策という市場的要因にも助けられている。今春闘の賃金改善は、「官製春闘」の枠内であり、労働運動で闘い取ったとは言い難い。
 また、「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」などの諸労組は、地域最賃の再改定を求め続けたが、結局無視された。格差拡大に終わった春闘と言わざるをえない。
 支配層の今の政策は、賃金も上がるが物価も上がる、リ・スキリングで成長産業に移動せよ、社会的に必要だが利益が出ない産業はNPOや協同組合でやってくれ、という傾向になっている。これを岸田は、新自由主義を一定軌道修正する「新しい資本主義」と称している。
 
 ●今年の闘い方は?
 
 以上を念頭に入れると、今年の最賃闘争はどうすべきか。
 一つは、全道府県での「時給1000円以下の撲滅」である。
 長年にわたって日本の労働運動は、「どこでも誰でも1000円以上」を掲げてきた。ようやく19年から東京都と神奈川県でこれを越え、22年に大阪府がこれに続いた。(その結果、また物価も加味して、現在では多くの人が「どこでも誰でも1500円以上」を掲げるようになった)。しかし今現在も、1000円以上はこの3都府県でしかない。全都道府県での1000円越え、これを今年の最賃闘争の実際の目標とすべきである。
 現在Cランク下位は853円である。これを今年1000円にさせるのは、一見とてつもない目標のようにも思える。しかし、いわゆる最賃決定3要素で言う「企業の支払い能力」論は、このかんの「官製春闘・官製最賃」によってすでに否定されている。中央・地方政府の政治介入によって最賃は決まり、政策(社会保険料負担の減免、価格転嫁促進、直接給付など事業者支援)によって推進されるのである。財政を出動させるなら、軍拡(向こう5年間で43兆円)ではなく、最賃改善にこそ財政を投ずるべきだ。
 もう一つは、今年から5年間ほどかけて、「全国一律1500円以上」を実現するスタートの年とすることである。
 政府は今後の課題を、「加重平均1000円達成後の方針については夏以降に議論」(4月11日・加藤厚労相)として先送りしている。政府に最賃改善を続行させる闘い方が問われている。5年間で1500円実現として政府に迫るとすると、Cランクでは毎年約140円、内部格差が大きいAランク・Bランクでは毎年約80円~130円の改善が必要となる。全労連のアクションプランでは、5年の経過措置をとって29年に実現としているが、全国一律制のための最賃法改正も前提となる。
 したがって、また一つは、曖昧な何%アップではなく、各地方ごとに具体的な目標額を立てて臨むべきである。多くの県で1000円、多くの道府県で1100円、東京都1200円というところか。
 賃金と最低賃金を上げなければ、日本資本主義が成り立たないところに来ている。(少子化という労働力再生産の破綻、外国人労働者に日本が選ばれなくなる、市場の成長性に魅力なしで不動産投機だけ、など)。堂々と、異次元の最賃大幅アップを主張すべきだ。(A)


5・23狭山
 事実調べ請求に、東京高裁今夏判断か?
  冤罪60年を今こそ晴らそう!

 石川一雄さん別件逮捕から60年の5月23日、「無実を叫び60年!袴田再審に続け!東京高裁は事実調べ・再審開始を!」狭山事件の再審を求める5・23市民集会が、東京・日比谷野外音楽堂で開催された。雨の降りしきる中、全国各地から解放同盟員や労働者市民が結集し、色とりどりの傘が会場を埋め尽くした。主催は、狭山事件の再審を求める市民集会実行委。
 狭山事件弁護団は昨年8月29日、東京高裁第4刑事部(大野勝則裁判長)に事実取調請求書を提出し、11人の鑑定人尋問と、万年筆インク資料についての裁判所による鑑定とを実施するよう求めた。足利事件、布川事件など多くの再審請求で新証拠について鑑定人尋問・再鑑定を実施、再審開始・無罪が確定している。袴田事件でも、鑑定書を作成した科学者への証人尋問が昨年行なわれ、再審開始が確定した。狭山事件も、そうした決定的な局面にある。
 集会は、西島藤彦部落解放同盟中央本部委員長の開会挨拶で開始。西島さんは、昨年8月の鑑定人尋問請求後、1年にも満たない短期間で個人51万名・団体2344の署名獲得を報告。「何としても鑑定人尋問を大野裁判長の退官前に実現する。年内に扉を開きたいと石川さんは、満身創痍の中で本集会に駆け付けた。袴田さんに続いて狭山の再審を勝ち取る。これ以上時間を引き延ばすわけにはいかない」と決意表明した。
 石川一雄さん・石川早智子さんアピールでは、最初に早智子さんが発言。「別件逮捕されて60年。当時マスコミはひどい報道をした。今は事件を真摯に取り上げる報道もなされている。石川の悲しみ、苦しみ、怒りを自らに重ね闘う人々の団結が作り上げられた。これが狭山の60年だ」と述べた。
 次いで、再審請求人・石川一雄さん。
 わが無実叫び続けて60年 動かせ司法万座の声で
 と詠み、「雨は悪夢だ。60年涙なみだの日々だった。しかし、人前では涙を見せず勝利するまで元気に闘う。冤罪が晴れるまで全力で闘う」と決意を表明した。
 弁護団報告は中北龍太郎狭山弁護団事務局。「昨年8月、鑑定人尋問と万年筆インク鑑定を裁判所に請求。しかし検察は今年2・3月に、採用の必要なしとの不当な意見を提出した。弁護団はこれに断固反論。請求の実現を突破口に再審の扉を開く」と、弁護団の総力を上げて闘う姿勢を示した。
 基調提案は片岡明幸解放同盟中央副委員長。「狭山闘争の60年は被差別の人々に勇気と希望を与え、差別や人権問題を取り上げる切っ掛けにもなった。さらに被差別部落の教育を高め、生活の向上にもつながった。しかし、勝たねば効果も半減する。請求に対し裁判長は、この夏にも判断を下すだろう。最後のゴングが鳴っている」と現況を評価した。
 連帯アピールは、袴田さんを救援する清水・静岡市民の会の山崎俊樹さん。「4月の第1回めの三者協議で、検察は7月10日まで待ってくれの一言だった。5点の衣類が袴田さんの無実の証拠であり、57年苦しめた原因でもある。証拠価値がなくなった以上、有罪の立証を放棄し、一刻も早く再審開始・無罪判決を出すべきだ。5月29日、2回めの三者協議に注目したい」と報告した。
 市民の会アピールとして、鎌田慧・狭山事件の再審を求める市民の会事務局長が、締めくくりの発言。「高裁確定判決を出した寺尾裁判長は、部落差別を学ぶと言った。しかし、学習ではなく感じることだ。部落の人々の苦しみや悲しみを感じ共に生きる。その気持ちがないかぎり理解できない。理解できない結果が、石川さんを60年も苦しめた。しかし今、証拠がそろい無罪は明確だ」と闘争勝利の決起を呼びかけた。
 集会は最後にシュプレを上げ、霞ヶ関デモ行進に出発した。
 狭山闘争はまさに正念場。鑑定人尋問・再審開始を実現し、60年に及ぶ冤罪・狭山事件の無罪を勝ちとろう。そしてまた、再審法の改正(再審請求での証拠開示の法制化、検察官の抗告禁止など)を実現しよう。今その時が来た。(東京O通信員)