12・28〜1・4第53回釜ヶ崎越冬闘争、1・5府市要請行動
  特掃・月13回、賃金7500円を

 昨年12月28日の「突入集会」から始まり、本年1月4日早朝まで、「第53回釜ヶ崎越冬闘争」は勝利のうちに終了することができた。仲間どうしが支え合い、仲間の生命を守り抜く闘いを最後まで闘い抜くことができた。
 大阪・釜ヶ崎の越冬闘争は、1970年第一回目が行なわれ、以降途切れることなく闘われ、今回で53回目を迎えた。第一回目の越冬闘争からのメンバーが中心となって、1972年に「釜共闘」が結成され、釜ヶ崎の闘いの発展を闘い取ってきた。釜ヶ崎の闘いの「原点」といわれる闘いだ。
 今回も、昨年10月末の「顔合せ」以降、釜ヶ崎で責任を持って活動している団体・個人によって「実行委員会」が結成され、討論を積み重ねた。今回の越冬闘争スローガンは、以下のように確認された。
 *働いて飯を食わせろ!特掃の月13回実現、単価7500円への賃上げを!
 *大阪府・市はコロナによる失業・困窮対策費を拡大しろ!
 *旧センター建て替え工事に伴う野宿者の行き場所を確保しろ!
 *公用地・センター跡地の売渡しは許さんぞ!
 *大阪市はセンター跡地に労働者・地域のための福利施設を創れ!
 *老朽原発の即時廃炉を!労働者、住民を被曝させるな!
 *沖縄の民意を蹂躙する辺野古新基地建設反対!
 *自衛隊の軍備拡大・基地強化、南西諸島の対中国前線基地化反対!
 *ウクライナ戦争反対!即時停戦を!
 等などである。
 また、対大阪府・市との交渉をねばり強く進めることによって、越冬闘争に勝利する布陣を闘い取ることができた。
 「臨泊」の年齢制限が取り払われたこと、また締め切り後でも相談に応じ「臨泊」利用を可能としたことは大きな成果であり、これに対応する態勢を作り出すことができた。実際このことによって、例年29日以降、相談に訪れた仲間に対して集団野営だけではなく、「臨泊」利用というもう一つの選択肢を示すことができ、期間中、10名前後の仲間が「臨泊」入所を果たすことができた。
 「臨泊」は12月29日時点で193名が入所し、後で合流した仲間を含めても200名程度であり、「南港臨泊」の最盛期3千名と比べても15分の1に激減している。これは、生活保護への包摂を軸とした行政の施策、コロナ禍における3度の給付金、貸付金の効果、また「特掃」輪番の廻りがよくなり月10回程度仕事にありつけるようになったこと、これらの結果であろう。
 しかし、まだ50名前後の仲間が、地域内で野宿して年越しをせざるを得なかった。200名を超える仲間が「臨泊」を利用せざるを得なかった現実を見れば、「安心して働き生活できる釜ヶ崎」に向けた闘いの更なる発展が求められている。
 「月に13日以上仕事に就かせろ!『特掃』賃金を7500円にしろ」という釜ヶ崎労働者のつつましい要求は、特掃事業が始まって以来一度も賃上げが行なわれていないこと、また、このかんの急激な物価高を考えても、道理ある要求だ。もし、これが実現できないのであれば、①旧労働センターで高齢者に向けての仕事の紹介、②生保住居費の単給での支給、これらを実現し、「働いてメシの食えるしくみ」として使えれば、野宿の問題は解決できるし、まして「臨泊」など必要ない。シェルター「常宿化」の問題も解決し、「炊き出し」に並ぶ必要もなくなる。
 次は、釜ヶ崎内外を貫く団結の問題だ。
 今回の越冬闘争には、釜ヶ崎労働者だけではなく、多くの学生が参加してくれた。また、地域内外で医療・介護・福祉に関わる仲間も多く参加してくれた。「突入集会」には、反原発を闘う「若狭の家」、辺野古新基地建設に反対する大阪行動、日本軍「慰安婦」問題関西ネットワーク、そして狭山再審実現を闘う「神戸市民の会」、これらの仲間たちが、コロナ禍にもかかわらず駆けつけてくれた。
 岸田政権による原発推進、戦争への道に抗し、共に闘う信頼できる仲間たちだ。「原発も基地(戦争)も、差別も失業・野宿もない、安心して働き生活できる社会」の実現に向けて、さらに団結を深めていこう。
 また次は、センター建て替え問題だ。この問題は、釜ヶ崎の未来を見すえた重要な問題だ。すでに跡地南側には8千㎡の労働施設を建設することが決定しており、議論は、北側の大阪市の持ち分へと移っている。南側のように、ワーキンググループ(WG)によるボトムアップでの議論に向け、その人選も始まっている。
 前述した様に日頃、医療・介護・福祉に関わる仲間たちによる意見交換・議論も始まっており、こうした仲間たちによって、より使い勝手のよい、釜ヶ崎労働者・住民のためのエリアへと計画が具体化していくだろう。
 いずれにしろ今年は建て替えが大きく動く年となる。裁判(大阪府が旧センター周辺からのテント等の明け渡しを求めた裁判)の結果によっては、旧センターの解体工事が開始される。
 このかん行政の働きかけによって、旧センター周辺で野宿をしていた仲間の多くが生活保護へ移行したり、仮移転した職安・労働センター周辺へと移っているが、行政は残っている仲間への強制的な追い出しは慎むべきだ。いくつもの選択肢を用意し、ねばり強い説得で解決に当たるべきだ。
 今越冬の成果を固めつつ1月5日、萩小の森から集会・地区内デモ行進をした後、府・市要望書提出行動を闘った。
 幸いなことに越冬期間中、そして今日まで「仲間の死」と出会うことはなかった。しかし冬の寒さはまだまだ続く。1月末には記録的寒波も予想されている。
 そうした中、仲間の生命を守り抜くため、旧センター周辺、仮移転の職安周辺で、そしてシェルター利用者を対象とした「炊き出し」も継続している。「越冬闘争延長戦」が続いている。(釜ヶ崎S)

 1・3「釜歩きツアー」
   西成・釜ヶ崎の
  女性史たどって


 「釜ヶ崎講座」は今越冬闘争のなか、年末31日と新年3日、「越冬闘争連帯行動」と「新春釜ヶ崎歩きツアー」をそれぞれ開催、延べ44名の参加があり、釜ヶ崎の運動や歴史を紹介し、今後の闘いへの理解を訴えることができた。
 31日は、越冬実行委=人民パトロール梯団60名とともに、みなみ・戎橋へ。
 新春1月3日は、水野阿修羅さんに今回も水先案内人を引き受けていただき、釜地域内を中心にまわった。今回の釜ツアーでは、水野さんは釜ヶ崎での女性・子供の問題に触れ、「婦人アパート」といわれた一角の前で、西成・釜ヶ崎の女性・婦人労働者について次のように語った。
 かつて、1950~60年代、西成地域内は女性の人口比率が半数を超えた時期もあった。生活苦で追われるように、浪速区や釜ヶ崎の低額アパート等で暮らし生計を立てた。また「ひとり親」の子は学校に行かない子もかなり多かった。高度成長期に入ると、みなみや千日前などへ水商売に勤める婦人もあった。1972年多数の死者を出した「千日前デパート火災」で犠牲になった女性も、そのような人が多かったと聞く、という説明であった。
 それから半世紀の今日も、資本=会社の利潤第一の世が続き、とりわけ女性の賃金差別は続き、労働の権利が著しく侵される中、女性に生活苦と精神的軋轢はより重くのしかかっている。
 新労働センターが出来たら、男性のみならず、様々な理由で釜ヶ崎に来る婦人労働者やシングルマザーの就労支援と生活安定に対応できる公的仕組み、これを実現していくべきという思いに駆られる。労働者・住民のための新センター機能を求める闘いは、反失連・センター行動委を中心として今年も強められる。連帯しながら釜ヶ崎講座は市民への発信を続けたい。(講座会員I)


地域最賃、年度内にもう一度改善を
    最賃大幅引き上げは
  非正規労働者の春闘


 今、日本では政府も財界も労働団体も、日本経済の再生は、賃金をどれだけ上げられるかに懸っていると口を揃えている。賃上げが天下公認なのであるから、これで23春闘での大幅賃上げや、年内の地域最低賃金の大幅引き上げが実現できなかったら、一体なんだということになる。
 まして昨年来の物価高騰で、日本では四半世紀続いている実質賃金の低下が、さらに下がり続けている。最賃近辺の労働者や失業者には、まさに生存権の問題である。消費者物価指数は12月前年比で4・0%、食料品では7・4%も上がり、2月には更なる値上げラッシュが予想されている。
 これに比して、昨秋に実施された地域最低賃金の改善は3・3%、全国平均で時給961円でしかない(この改定は昨年6月までの、物価が上がり始めた初期の情勢しか考慮されていない)。連合の今春闘要求も、5%(定昇2%、賃上げ3%)程度で、地域最賃については今年度に1000円以上を求めるにすぎない。
 岸田首相も1月23日の施政方針演説で、「まずは足下で、物価上昇を超える賃上げが必要です」と明言している。しかし、最低賃金については何も語らず、「労働市場改革」ばかりを語っている。いわゆる「持続的に賃金が上がる構造を作り上げる」ものとしての、要するに生産性を上げるものとしての、「三位一体の労働市場改革」(成長分野への労働移動、日本型の職務給の確立、リスキニング支援)である。グリーンやデジタルと言っても、それで賃金が上がる保証はまったくない。法制度的に最賃を上げることが最も持続的で、波及力のある賃金改善となることは明らかで、少子化対策にもなるはずだが、岸田政権は、賃金底上げ(ボトムアップ)に関心がない。
 ①地域最低賃金は、年に何回も改善することができる。
 最賃再改定の課題で、この岸田政権の賃金政策姿勢が政治的な壁となっている。最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会(下町ユニオン、全国一般全国協、全国生協労組連、郵政産業ユニオンなど)が、昨秋来3度、最低賃金の再改定を、「秋まで待てない、年度内にもう一回最賃改善を!」と政府厚労省に要請してきた。
 このかん加藤厚労相は、「最低賃金の改定は年度内に1回と決められているわけではない」と回答しているが、いぜん最賃の再改定を中央最低賃金審議会へ諮問しないままである。
 「消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当である」。昨年8月の中央最賃審の答申にこうあるが、その後の物価高騰は「大きな変化」ではないのか。加藤厚労相が答申を尊重しないのは職務怠慢である。
 ②地域最賃は、各地域ごとに改定できる。
 キャンペーン委員会の12月23日・厚労省要請では、中央最賃審の藤村会長への質問書も提出している。質問は、会長に「大きな変化」の認識はあるかと問うとともに、各都道府県の最低賃金審議会が独自に対応し、地方労働局長に建議すればよいのか、とも問うている。半世紀前に中央最賃審が「目安」を出すようになって、その下で各地方が一斉にという形になっているが、制度的には各地方で改定できる。1円でも2円でも独自に改善する地方が出てくると、その影響は大きいだろう。
 ③地域最賃の要求は、組織労働者の企業内(自治体内)最賃要求と連動する。
 地域最賃の少しづつの改善で、公務員の高卒初任給と同程度になりつつある。連合の企業内最賃要求は1150円以上。EU最賃指令の賃金中央値60%以上は、日本でいうと1240円以上。当面の地域最賃=高卒初任給=1240円、これを非正規・正規の統一要求で闘おうという提案もある。
 ④地域最賃の改善は、未組織労働者・非正規労働者の春闘である。
 このかん多くの労働者が、最賃が上がれば自分の時給も上がるということを実感している。地域最賃改定の直接の影響は、およそ1千万人に及ぶといわれる。連合の総組合員数よりずっと多い。今春の最賃再改定に力を入れるにせよ、あるいは、今夏の年度改定を目標とするにせよ、時給1500円を求める国民春闘が必要だ。(W)