「安保3文書」12・16閣議決定強行弾劾!
 「反撃能力」で戦争突入

 岸田自公政権は、実効性が疑われるカルト被害者救済法を成立させるやいなや、逃げるように12月10日臨時国会を閉会した。これで統一教会問題を終わらせる魂胆である。しかしこの問題の追及は、死んだ安倍、そして細田、下村、そして(12月11日に安倍継承者然として台湾を訪問して日中関係を挑発した)党政調会長・萩生田らを打倒するまで終わることはない。
 そして国会閉会のままの12月16日、「安保3文書」改定の閣議決定を強行した。
 その改定「国家安全保障戦略」では、中国・朝鮮・ロシアを公然と敵国扱いとし、「反撃能力の保有」、5年後の軍事費GDP比2%などを宣言し、戦争をやったら「有利な形で終結させる」などと言ってのけた。
 「国家防衛戦略」(前・防衛計画の大綱)では、「相手の領域において我が国が有効な反撃を加える」長射程ミサイルを、陸・海・空自衛隊が「必要十分な数量整備する」などとしている。
 「防衛力整備計画」(前・中期防衛力整備計画)では、「5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって、同盟国等の支援を受けつつ、阻止・排除できるように防衛力を強化する。おおむね10年後までに、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する」などとしている。5~10年以内に戦争する気充分の、まさに異常な文言である。
 その軍事費は、23~27年度の5年間で「43兆円程度」(過去5年の1・5倍)、27年度を8・9兆円とするとしている。総額ありき、財源は軍拡増税という手当りばったりの軍事費倍増である。調子に乗った安倍派は、国債で軍拡という軍国主義を叫んでいる。
 まさに、米政権の言うがままに米軍の攻撃戦力を肩代わりし、しかし米軍から攻撃データはもらって、米国の替わりに日本が東アジアで戦争をする日本の先鋒・弾除け化路線である。
 立憲民主の主流や日共のように、米国目線で安保環境は厳しいとし、その中で防衛力強化はどこまで許容されるか、などという立て方では全然闘えない。
 求められているのは、米国の覇権維持のための世界戦略から決別し、新しい東アジアをめざす日本の立ち位置である。この外交路線の転換を、国境を超えた大衆運動が主導する必要がある。米中対決の狭間に、朝鮮半島・日本・沖縄・東アジア労働者民衆の大合流を実現しよう!(A)


首相官邸・国会前などで抗議続く—闘いはこれから
  「3文書」実施は阻止できる


 「安保3文書」閣議決定に反対する行動は、遅ればせながらも12月に入り全国各地で取り組まれた。

  12・4

 東京では12月4日、行動の口火が切られた。
 いわゆる「台湾有事」なるものによって醸成されている日本の「防衛力」強化、これを狙う岸田自公政権が「安保3文書」改定を強行せんとする直前、資本主義を超える新しい時代を拓く反戦実行委員会(反戦実)などが参加する「戦争・治安・改憲NO!総行動実行委」(総行動)と、「大軍拡と基地強化にNO!アクション2022」が、4日の昼、新宿アルタ前での緊急情宣を行なった。「敵基地攻撃能力」確保という、日帝歴代政権が保持してきた「専守防衛」の枠を突破して侵略軍への変貌を画策する事態に、NO!を突き付け民衆の決起を促す訴えを行なった。
 また当日夜には、上記2団体主催で文京区民センターにおいて、中国問題の専門家である明治大学教授の丸川哲史さんによる講演「プロセスの中の台湾-米中対立と東アジア冷戦から見る」を主題に、「新しい国家安全保障戦略に反対する12・4討論集会」がもたれ、約50人が参加した。
 丸川さんは語った。米中対立の起因は、コロナ禍を発端にトランプ米前政権が、コントロールされてきた米中関係を崩したことに始まり、現バイデン政権に引き継がれている。中華人民共和国と米国との歴史関係は朝鮮戦争にまで遡り、中ソ論争の勃発後は米中間は接近の歴史をたどってきた。そのような歴史関係からも「中国の今日の発展は、人民共和国だけでなく、さらにそれ以前からの現代中国形成の歴史的軸線の上にある」とし、一方旧西側陣営は「やや単純化した対立構図、つまり軍事同盟の再構築に向かっているように見える」とし、相互の「自制」を望みたいと結んだ。
 参加団体のアピールが、武器取引反対ネットワークと反戦実から行なわれた。
 反戦実からは、現在の日韓情勢について報告が行なわれた。ユン・ソンヨル韓国保守政権の発足後、米韓日の合同軍事演習が頻繁におこなわれ、朝鮮半島情勢が危機的状況を呈するなか、ユン・ソンヨル政権は東アジアの危機を醸成する役割しか果たしていない。このような中での梨泰院惨事の責任追及が、政権退陣にまで上り詰めている。また韓国サンケン闘争の終結後、尾澤裁判闘争勝利への参加協力を!と訴えた。(記Ku)
 12月9日には、「大軍拡と基地強化にNO!アクション2022」などによる「STOP大軍拡アクション」の呼びかけで、「大軍拡ごり押し閣議決定にNO!首相官邸前行動」が夕刻行なわれ、各地から約300名が参加した。

  12・15

 閣議決定強行の前日の12月15日は、首相官邸前や国会前で少なからずの団体・人々が閣議決定阻止を訴えた。午後6時半からは衆参議員会館前で、「安保関連3文書閣議決定反対12・15国会議員会館前緊急行動」が行なわれ約800名が結集、「敵基地攻撃能力保有許すな!軍拡反対!軍事費倍増反対!閣議で勝手に決めるな!」と叫んだ。主催は、戦争させない・憲法壊すな!総がかり行動実行委と、9条改憲NO!全国市民アクション。
 この12・15緊急行動では、最初に菱山南帆子さん(9条壊すな実行委)が主催者挨拶、「もう、ほんと怒ってます。国会素通りで、何の説明もされてないのに、国の形を変えるようなことを明日の朝決めるなんて!」「他方では明日のゴハンが食べられないという人もいるのに、攻めて来たらどうすんだと不安に付け込んで、カネをむしり取る。カルトと同じ!」「自民党内では軍拡財源をめぐって茶番劇ですが、街角の反応は変わってきています。何でも閣議決定で、というのを作ったのは安倍政治。この政治を変えよう!」と訴えた。
 国会議員挨拶は最初に、立憲民主党の大河原雅子衆院議員。「戦争はしない・させない・見に行かない。崖っぷちにいることを多くの人に知ってもらわねば。立民も厳しい意見を頂いている。マインドコントロールから立民を覚めさせたい」と、車椅子から訴えた。
 沖縄の風・伊波洋一参院議員は、「米軍は引いて日本が中国のミサイルに対処する、米国のために中国と戦争する、それが3文書です。年末に日米共同作戦完成、そのための改定です」とズバリ糾弾。他に社民・福島瑞穂、共産・小池晃の両参院議員も発言。
 市民発言は最初に、中野晃一さん(市民連合運営委員)。「長丁場の闘いになる。5年間のスパンで3文書を撤回させねば」と冷静に今後の闘いを語った。
 日本山妙法寺の武田隆雄さん。とくに沖縄南部土砂問題に触れ、「1月から鉱山開発が開始されんとしている。戦没者遺骨の尊厳を守る1・4魂魄の塔集会に参加を!」と訴えた。
 最後に、戦争をさせない千人委の田中さんから行動提起。「明日は朝から、向こうの首相官邸前で閣議決定やめろ!の行動です」。他に今月の「19の日」行動等々を確認してこの日は終わった。
(記W)

  12・16

 そして12月16日。首相官邸前では朝8時半から、9条壊すな実行委などによる「閣議で勝手に決めるな!」の緊急行動が約300人。集会では時折、閣僚を乗せて官邸へ入る車両へ抗議のシュプレヒコール。午前の閣議では3文書ではなく、海上保安庁強化の閣議決定を強行している(海保予算も27年度までに1・4倍化)。3文書改定を強行する閣議は夕方か。昼からは各団体が官邸前集会に入いる。
 正午の官邸前では、「戦争・治安・改憲NO!総行動」と「大軍拡と基地強化にNO!アクション」の共催による、「新しい国家安全保障戦略反対12・16緊急行動」が始まり約60名が参加。
 はじめに、行動を象徴するシュプレ。「新しい国家安保戦略を作るな!閣議決定するな!」「防衛費倍増反対!防衛増税するな!税金を戦争に使うな!」「反撃能力を持つな!先制攻撃やめろ!トマホーク買うな!アジアの軍事緊張高めるな!」「琉球弧の戦場化をするな!辺野古新基地建設反対!」「憲法改悪反対!」の声を官邸へぶつけた。
 主催者挨拶は、戦争に協力しないさせない練馬アクションの池田五律さんで、このかんの行動を報告。12・4集会での丸川講演を踏まえて、「戦争、戦争とあじっているのが日本」。緊急事態条項改憲をもくろむ憲法審査会に対し、国会前行動を取り組んできた。「岸田は、ウクライナ戦争による物価高を有事の物価高と言い、43兆円もの大軍拡の税負担は国民の義務とまで言った。岸田はもう戦争気分」。敵基地先制攻撃能力を批判して、「アメリカの言いなり、言いなりといわれるが自身がやりたいのです。主になりたいのです」と、岸田(日本帝国主義)の本音を突いた。自衛隊の組織再編、民衆への情報操作なども国家安全保障戦略に盛られるだろうが、これらの実施を阻止せねばならないし、阻止できると確信すると結んだ。
 発言は他に、破防法・組対法反対共同行動、STOP大軍拡アクション、反戦実、練馬アクション、島じまスタンディング、琉球弧の自衛隊配備に反対するアクション、東京・地域ネットワークなど。
 緊急行動は、閣議決定が強行されても、その実質化を許さない闘い、これを確認して終了した。(記Ku)
 午後4時半過ぎ、岸田首相は国家安全保障会議を開き、「安保3文書」改定の閣議決定を強行した。
 その日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は抗議声明、「財源も実効性も民主的正当性もない。違憲の安保政策の大転換は許されない。『2023年安保』のたたかいへ!」を発表した。声明では、2015年安保法制闘争を回顧しつつ、「私たち主権者が大きな声をあげて、予算を組ませなければ、計画を頓挫させられる。まだまだ止められるし、止めねばならない」と訴えた。
 翌12月17日、東京北部4区の市民や区議によって「とめよう軍拡!もつな敵基地攻撃能力!池袋アクション」、東池袋公園で200名の抗議集会。朝霞駐屯地について池田さん、一坪関東の大仲さんも連帯発言して、怒りのデモ行進を行なった。
 屈することなく、新年へ闘いは続く。
(まとめ編集部)