安倍国葬反対から、「アベ教育」の検証・清算へ進もう!
  2014年改定検定基準の撤回を

 7月12日の安倍元首相の葬儀(安倍家の葬式)に合わせて、東京都をはじめ山口県、帯広市、仙台市、川崎市、吹田市、三田市、福岡市の8教育委員会が半旗の掲揚を強制した。文科省から各教委への半旗掲揚の通知は無かった、にも関わらずである。
 都教委では、都立校255校に通知を送付して複数校が掲揚。都の担当者は「事務連絡をしただけで、掲揚は各校校長に任せた」などと逃げを打つが、上位機関が依頼すれば強制と受け取られるのは当然だ。弔意の強制は、子どもや教育労働者の内心の自由を侵す行政手法で、安倍元首相の業績の承認とその価値観を子どもたちや教育労働者に刷り込む行為であり、絶対に許されない。
 安倍「国葬」では、半旗掲揚・弔意強制の全国化が懸念される。文科省や総務省に通知を出させないことが必要であるが、通知を出せない場合でも、各教育委員会が弔意強制に加担することのないよう社会的な包囲が問われる。
 安倍元首相は、偏狭な民族主義、戦後憲法の軽視、新自由主義などを推進して日本の政治・社会、日本の教育を歪めた張本人である。安倍「国葬」に反対するならば、国葬を中止させるだけではなく、「アベ政治」「アベ教育」が検証され、その歪みを清算していく必要がある。
 本稿では、その検証・清算の一つとして教科書問題を取り上げ、「2014年改訂検定基準の撤回」という課題を提起する。

  進む「アベ教育」の具体化
 

 安倍元首相による反動教育の実行は、2006年12月の教育基本法の全体にわたる改悪である改正「教育基本法」の成立と、翌07年の学校教育法の「改正」で着手された。
 第一次安倍政権は、改悪教基法に「育成すべき資質・能力」を引き出すための仕掛けを組み込み、改悪学校教育法において、学力の三要素(①基礎的知識・技能の習得、②思考力・判断力・表現力、③学びに向かう力・人間性の涵養)を法で規定した。
 第二次安倍政権下の17年小中学校指導要領改訂、18年高等学校指導要領改訂は、それを本格的全面的に適用する最初の攻撃となった。
 改訂された学習指導要領は、戦争できる国を担う子ども、新自由主義社会を支える労働者、これらの育成に必要な学力(=学力の三要素)を身に付けさせるため、小学校での英語教育等、必要な教科科目の新設・学習内容を設定し、また主体的対話的な深い学び=アクティブラーニングの学習方法で学ばせる方向を示した。さらに、評価をもとに組織的計画的に教育活動の質の向上を図るカリキュラムマネージメントの実現を掲げている。
 安倍教育政策に組み込まれたこうした一連の教育課程政策の具体化が進行し、今春から高校で新学習指導要領による教育課程が開始された。23年度から使用される高校教科書(主として2・3年用)の検定結果は、今年3月29日に文科省から公表されたが、多くの問題を内包している。

  今検定での教科書介入

 今検定は、高校の新学習指導要領に基づく2回めの検定で、選択科目を中心に検定申請数241点(冊)のうち239点が合格。商業科関係の2点が申請を取り下げた。
 合格した内の専門教科を除く189冊での検定意見総数は6267点、1冊あたりの平均検定意見数は37・0件に上った。それは、旧指導要領に基づく16年度検定の26・9件を大きく上回り、政府による教科書内容への介入が強化された事実を物語っている。
 その中でも特筆すべきは、「政府見解」による教科書記述の変更が強まられたことである。
 政府見解は、「従軍慰安婦」、「いわゆる従軍慰安婦」(93年河野官房長官談話)等の記述を許さず、「慰安婦」なる用語を強制。さらに、朝鮮半島から労働者を官斡旋・徴用などで強制連行し奴隷的条件下で働かせた事実を否定して、「強制連行」等の記述を許さず、「徴用」への変更を強制した。この件では、教科書12点に14件の修正検定意見が付けられた。政府による歴史的事実の改ざんは、子どもを戦争へ駆り立てる常套手段である。
 「慰安婦」など記述の強制は、歴史修正主義勢力に組する日本維新の会・馬場伸幸衆院議員による質問主意書の提出に端を発している。馬場は「従軍慰安婦」や「強制連行」を否定する質問主意書を提出し、昨年21年4月27日、当時の菅内閣はこれに応えて「政府の統一見解」なる答弁書を閣議決定した。
 次いで維新の藤田文武衆院議員が、「政府の統一見解」に基づいて、今後の検定のみならず現在使用中の教科書でも削除・訂正を求め、萩生田光一文科相がそれを承認した。
 文科省は決定を受けて、関連する教科書会社の編集担当役員を対象にした異例の説明会を5月に開催。6月末までの訂正申請、8月頃の訂正申請承認の日程を伝達した。
 「政府の統一見解」答弁書は、①「従軍慰安婦」や「いわゆる従軍慰安婦」ではなく、単に「慰安婦」という用語を用いるのが適切。②朝鮮半島からの移入の経緯は様々であり、「強制連行」または「連行された」と一括りに表現するのは適切ではない。法令に基づく「徴用」などにするべきと指定している。
 こうした検定の基準はどうなっているのか。14年に改訂された検定基準(小中高全体の検定教科書に適用)は、①「特定の事柄を強調し過ぎていたり」しないこと、②「通説的な見解が明示されている」こと、③「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」を掲げている。
 「慰安婦」等記述の強制は、改訂検定基準の③によるものである。昨年の一連の出来事は、14年検定基準の「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」を踏まえて、仕組まれたものと考えられる。昨年の検定は、その7年前の改訂基準を念頭に閣議決定を行ない、踏み込んだ記述修正を求めたのである。
 この14年「改訂」検定基準は、当時の安倍首相、側近の萩生田光一の意を受け、下村博文文科相が決定したものである。憲法26条に違反し、子どもの学習権を侵害する代物である。教科書は閣議決定に従えでは、行政権力の「不当な介入」に当たるというほかはない。
 検定基準③にあたるものとして、領土問題記述もある。
 新指導要領の科目・地理探究では、尖閣諸島は日本の「固有」の領土であり「領土問題は存在しない」と言い切り、竹島や北方領土も「我が国の固有の領土」と主張して、指導要領解説で「それぞれ韓国とロシア連邦に不法占拠されている」と記述している。地理歴史科、公民科の各教科の新指導要領と解説も同様の記述をしているため、ほとんどの教科書が政府の見解に沿った内容で記載している。「政府の統一的な見解」は、時の政府に都合の悪い事は書かせない基準として猛威を振るっている。
 さらに、基準①②にあたるものとして、南京虐殺事件記述がある。政府は、中国侵略戦争による南京大虐殺の事実を覆い隠そうとして、事件の名称を「南京事件」と記述させた。
 またさらに実教出版「精選日本史探究」の南京事件では、「通説的見解がないことを明示していない」との検定意見が付き、「犠牲者数は20万や10万、それ以下など諸説あるが」との箇所を、「諸説あって確定していない」と書き換えさせた。南京国際戦犯法廷の犠牲者数20万ですら一つの通説として認めないと言うのでは、歴史への冒涜というほかはない。
 「アベ政治」の教育反動化は、かっては反共、今は反「ジェンダー平等」を自民党との共有点とする統一教会の策動、これと密接に関わってきた。安倍、萩生田、下村はまさに、教育政策での統一教会癒着トリオである。
 その清算はまずは、2014年改訂検定基準の撤回が問われる。関連して21年4・27答弁書の撤回も必要だ。そして、改悪教育基本法を廃止し、当面旧教育基本法を再生することを目指すべきである。(O)


韓国民主労総の統一・平和運動と連携し
  米韓合同軍事演習反対8・22米大抗議

 8月22日の午後6時、「米韓合同軍事演習反対!8・22米大使館抗議行動」が、米大使館に面する東京・虎ノ門で行なわれ、約40名が参加した。呼びかけは、資本主義を超える新しい時代を拓く反戦実行委員会。
 韓米両政府は、8月22日から9月1まで韓米合同軍事演習「ウルチフリーダムシールド」を強行した。2018年の南北首脳「板門店宣言」、朝米首脳「シンガポール合意」の以降、毎年の韓米合同軍事演習は大幅縮小や指揮所演習どまりとなっていた。しかし今回は、4年以上実施されていなかった野外実動演習も再開され、5月発足の韓国ユン・ソンヨル政権は総力戦態勢で臨んでいる。
 「台湾有事」では、米軍の中台介入戦争に、日本の自衛隊が参戦する態勢が作られつつある。朝鮮半島ではどうか。米主導で米韓日の軍事連携が整えられれば、半島に再び日本軍が侵出するという時代になりかねない。「朝鮮有事」では、自衛隊が米軍支援だけでなく、「反撃能力」をもって朝鮮を直接攻撃するというとんでもない事態もありうる。
 抗議集会では、反戦実の松平さんが、以下のように主旨発言。世界覇権を手放さないとするアメリカは、8月2日下院議長ペロシ訪台で中国を挑発し、東アジアでも戦争の危険が高まっている。朝鮮壊滅戦争としての韓米合同演習の再開は、この危険をさらに大きくする。この戦争の危険のなかで、日本では安倍銃撃後、岸田政権の動揺が始まり、政治の転換が問われている。韓国・沖縄民衆、東アジア民衆と連帯して、東アジアで戦争は起こさせない。戦争を阻止し、政治と社会を変える闘いに進もう。
 次いで、民主労総副委員長のキム・ウニョンさんが、リモートでかなり長い発言。アメリカは現在はロシア、長期的には中国を敵として、アジア版NATOをすすめ、韓日首脳を6月NATO首脳会議に参加させて、韓米日三角軍事同盟を作ろうとしている。このなかで日本の軍拡、12年式ミサイルの長射程化に代表される軍拡は、とても脅威となる。韓国も日本も、反中反ロではなく平和・中立の外交であるべきだ。民主労総はこのかん、韓米合同演習反対などを掲げて「統一先鋒隊キャラバン」を展開した。今日から米大使館前では演習抗議集会が始まる。韓米同盟も日米同盟もいらない。米軍は東アジアから出ていけ。
 在日韓国人民主勢力からは、在日韓国青年同盟、統一マダン東京実行委のお二方が発言。沖縄一坪反戦地主会関東ブロック、戦争・治安・改憲NO!総行動、労活評から連帯発言。
 夕暮れの虎ノ門界隈は、仕事帰りの人が多い。韓米合同演習反対!米軍は出ていけ!琉球弧の戦場化を許さない!などのシュプレを響かせて、行動は終了した。(東京A通信員)