反転攻勢の東電刑事裁判
 株代訴訟判決受け、弁論再開へ7・28上申書提出

 福島原発事故での東京電力旧経営陣の業務上過失致死傷罪を問う東電刑事裁判は、一審東京地裁では2019年9月19日、全員無罪の不当判決が下された。
 この逆転判決をねらって7月28日、30日、「弁論再開と最高裁判決等の証拠調べを求める!上申書・署名提出&報告会行動」が東京と福島県郡山市で開催され、28日の東京高裁前にはおよそ50名が結集した。
 東電株主代表訴訟の東京地裁7・13勝利判決(後述)は、厳しい闘いを強いられてきた東電刑事裁判に勝利の確信をもたらした。被害者参加代理人弁護士の河合弘之、海渡雄一氏ら4名は、それを好機と確信。控訴審6・6結審強行に対しての6・23上申書提出に続き、80ページにも及ぶ「弁論を再開し、続行期日指定を求める上申書」を作成し、7・28提出行動が行なわれた。主催は、福島原発刑事訴訟支援団。
 まず、高裁前アピールの集会。最初に佐藤和良支援団団長が挨拶。「7・13株代訴訟の画期的判決を受けてその証拠を再用し、刑事裁判を進めてほしいと申し入れる上申書を、1次提出後に集約した4074筆(合計1万6214筆)の署名とともに提出する。来年1・18公判前に弁論を再開させ、逆転判決に向けて闘う。協力してほしい」と訴えた。
 続いて海渡弁護士。「永渕一審判決は、長期評価の信頼性を否定したが、株代判決は信頼性を丁寧に説明した。一審判決を破棄させる内容だ。また、土木学会に依頼して対策を先送りし、水密化等の対策を講じなかった事実は、刑事裁判での証拠をもとに指摘している。3人の刑事責任は必ず問える」とその確信を示した。
 さらに大河陽子弁護士は、「株代訴訟は、刑事裁判の証拠を採用している。これがなくて勝利判決はなかった。原発事故は国の存立さえも危うくする等、多くの指摘が指定弁護士と一致している。株代判決を採用させれば必ず勝てる」と主張した。
 そして、東電株主代表訴訟原告の小川さんがアピール。「原告としても素晴らしい判決が出た。東電の責任を明らかにし、東電の体質そのものが問題と断じている。この判決を確定したかったが、被告側は控訴した。刑事裁判の勝利が大事になる」と述べた。
 集会に続いて、参加者は高裁正門前パレードを展開。パレードに送られて、佐藤団長、武藤類子副団長、海渡・大河弁護士が上申書提出に向かった。
 午後の学習会では、海渡弁護士が講演し、弁論再開の必要性や、株代判決が判例や証人尋問を丁寧に分析して下された事実を指摘した。
 株代判決は、会社に対する取締役の善管注意義務について、「事故を防ぐために必要な措置を講じる指示をしなかった」任務懈怠があったと断じ、その過失の重大性について、原発事故は「地域の社会的・経済コミュニティの崩壊ないしは喪失を生じさせ、我が国そのものの崩壊にもつながりかねない」との認識を、1985年最高裁判決をもとに確認している。
 また長期評価の信頼性についても、証拠や尋問をもとに「その分野における研究実績を相当程度有している研究者や専門家の相当数によって真摯な検討がなされた場合…著しく不合理など特段の事情がない限り…当該知見に基づく津波対策が義務付けられる」と結論し、その信頼性を認定している。
 さらに、渡辺敦雄・後藤政志元東芝原発設計技術者の証言をもとに、「防潮壁以外にも建屋や重要機器設置箇所の水密化、可搬型電源の高所設置など対策が可能であり、事故対策として有効で津波前に工事が完了できた」との判断を下している。
 株代判決は、永渕判決や国賠6・17最高裁判決を覆すに充分な証拠である。刑事裁判の反転攻勢の好機が訪れた。弁論を再開させて刑事裁判に勝利し、全原発廃炉に向けて奮闘しよう。(東京O通信員)

 東電株主代表訴訟7・13勝利判決

 7月13日、福島原発事故をめぐり旧経営陣が津波対策を怠り東京電力に巨額の損害を与えたとして、株主が損害賠償を求めた東電株主代表訴訟で、東京地裁・朝倉佳秀裁判長は、旧経営陣4人の過失を認め賠償金の支払いを命じた。
 4人とは、勝俣元会長、武藤栄元副社長とその上司・武黒一郎元副社長、清水正孝元社長で、福島原発事故で旧経営陣の過失を認定した司法判断は初めてとなる。(勝俣、武藤、武黒の3人は、刑事裁判の被告でもある)。
 「判決は、弁論再開の可能性がある東電刑事裁判の審理と結論に大きな影響を及ぼす」。東電株代訴訟弁護団は弁護団声明でこう述べ、勝利判決の意義を適切に評価した。
 株代訴訟は、長期評価の信頼性と結果回避義務等が主な争点で、政府の地震調査研究推進本部が02年に公表した地震予測「長期評価」と、これに基づく最大15・7mの津波予測の信頼性を判決は認定した。
 そして、東電の原発部門「原子力・立地本部」副部長の武藤副社長が08年6月、土木学会に検討を依頼し津波対策を先送りした事実を「著しく不合理で許されない」と指摘。武黒本部長は翌8月、武藤副本部長の不作為を是認したと判断した。また勝俣・清水は、09年2月の「御前会議」で14m程度の津波の可能性を聞きながら対策を指示せず、取締役としての注意義務を怠ったと指摘した。
 結果回避義務については、原子炉建屋や重要機器室に浸水対策を行なっていれば、「重大事故は避けられた可能性は十分にあった」との判断を下している。さらに判決は、原子力事業者には、事故を万が一にも防ぐ社会的義務があると言い切った。
 この株代訴訟判決は、東電刑事裁判・永渕反動判決を覆す有力な力になり得る。
 永渕判決は、勝俣元会長ら3人に無罪判決を言い渡すために、結果回避措置を原子炉停止のみに切り縮め、大物搬入口や部屋の水密化、代替電源の高台設置等を検討対象から外している。そして、「当時の社会通念の反映であるはずの法令上の規制は、絶対安全性の確保まで求められていたわけではない」と強弁した。
 長期評価については、「信頼性や具体性があったと認めるには合理的な疑問が残る」として、「運転を止めねばならないほどの予見可能性は認められない」と断言し、事故防止対策をサボタージュした3人の刑事責任を否定した。
 長期評価の信頼性を否定し、結果回避義務をねじ曲げた永渕判決は、今回の株主代表訴訟判決と大きく矛盾する。株代訴訟の勝利判決によって、永渕反動判決への反転攻勢が始まった。(O)


最低賃金ようやく「目安」出る、地方最賃審での闘いへ
 3・3%では物価高に届かず

 地域最低賃金の改定目安を決める中央最低賃金審議会の目安小委員会、その議論が昨年に続いて難航した。今年は4回目の7月25日の目安小委で、結論が持ち越しになった。なぜ、もめたのか。労使とも地域最賃をある程度引き上げることを合意していたが、問題は、この物価高をどう最賃に反映させるのかということで労使の対立が続いたからである。
 政府は、「新しい資本主義の実行計画」で2025年度にも全国平均で最賃時給1000円を目指すとしたわけだから、毎年20円程度、2%程度の引き上げを4年かけて行なうことで、暗黙の了解が成立していたのだろう。4月以降の消費者物価の上昇がなければ、これで収まっていたかもしれない。
 4月以降の消費者物価の上昇は2%を超える程度だが、それは生鮮食料品を除く総合指数である。今指摘されているのは、スクリューフレーションといわれる中低所得者層ほど生活が苦しくなる現象である。生活必需品(基礎的支出項目)がこの12年で15%上昇しているのに、ぜいたく品(選択的支出項目)は0・1%の上昇に過ぎない。生活必需品の物価上昇は、4月4・5%、5月4・7%、6月4・4%である。さらに8~10月に食品値上げ予定が目白押しで、中小零細企業労働者、非正規労働者にとっては、物価高が生活を直撃している。
 外国では、物価上昇に伴い最賃の引き上げが行われている。欧米ではすでに、円換算で時給1500円以上は当たり前になっている。韓国でも、23年1月から9620ウオンになる。円換算で1000円を超えることになる。外国では、多いところは20%以上、少なくとも5~6%の最低賃金引き上げを行なっているのである。
 日銀は7月21日の金融政策決定会議で、22年度の物価上昇予測を1・9%から2・3%に引き上げた。そして「もう一段の賃上げが必要だ」と述べた。7月22日に日本経団連は、今年の大手企業の賃上げ率は2・27%で4年ぶりに前年を上回ったと発表した。
 労働側委員も引くに引けなくなった。少なくとも昨年の目安一律28円(3・1%)を上回る額を主張する。使用者側は「骨太の方針」を超える目安額の決定には抵抗する。公益委員は案をまとめることができなかった。
 異例の第5回・目安小委が8月1日に開かれ、30~31円(3・3%)で決着がついた。しかし地方最低賃金審議会での闘いが続く。
 その一例。茨城県知事は7月27日、茨城労働局長と茨城地方最賃審議会会長に、「栃木県をはじめとする近隣県との格差解消に向け、目安額を3円以上上回る積極的な引き上げ」を要請した。近隣県を下回ることがないようにする格差解消が課題になる。(K)


7月「19の日」行動、国会前に600人
 発議は阻止できる!「3分の2」でも

 改憲勢力が参院選で圧勝し、改憲の危機がMAXとなっているが、その7月19日、参院選後最初の「19の日」行動が各地で行なわれた。
 東京では国会前で、「改憲発議反対!軍拡やめろ!辺野古新基地建設中止!ロシアはウクライナから即時撤退せよ!くらしといのちを守れ!7・19国会議員会館前行動」として、600名の労働者・市民が結集。参院選後の反転攻勢の闘いが始まった。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、9条改憲NO!全国市民アクション。
 最初に、司会を務める総がかり行動実の菱山南帆子さんが主催者挨拶、「亡くなった安倍元首相の悲願をかなえる改憲などとは言語同断。改憲勢力は負けそうな時に国民投票をしない。だから改憲できない世論をつくる必要がある。この闘いを強力に進める」と闘争方向を示した。
 政党挨拶は、日本共産党・田村智子、社民党・福島瑞穂、沖縄の風・伊波洋一の各参院議員と、立憲民主党・吉田晴美衆院議員。
 福島さんは、「安倍元首相の国葬に反対する。法的にも根拠のない国葬などさせてはならない。安倍は戦争法を強行し戦争の道へ引きずり込んだ。また政治を私物化し、説明すらしていない。徹底究明こそ必要。歪んだ政治を変えよう!」と訴えた。
 伊波さんはメッセージで、「自民党は軍拡を進め、台湾有事を想定した米日の共同訓練がなされている。米国が中国を攻撃すれば、台湾有事は日本有事。南西諸島などを戦場にした戦争が画策されている。世界平和を求めて闘おう!」と訴えた。
 市民からはまず、日本山妙法寺の武田隆雄さんが南部土砂問題で発言。国は、辺野古設計変更申請において、埋立て土砂の7割を沖縄島南部地区で調達するとした。それにより、沖縄戦跡国定公園内の熊野鉱山開発計画が持ち上がり、沖縄戦戦没者遺骨の散逸、基地建設埋立てに使用という戦争犠牲者への冒涜が危惧されている。この土砂採取は早ければ8月末にも始まる。開発計画の合意案撤回が緊急に問われている。
 武田さんは、「公害等調整委員会にあてた合意案の撤回を求める要請と、沖縄県にあてた合意案受諾撤回を求める要請の緊急FAXを、7月28日必着で調整委員会と知事に是非送ってほしい」と訴えた。
 次いで、女性による女性のための相談会の柚木康子さんが発言、「昨年3月以降5回めの催しを7月に行なった。貧困、DV等の相談が多く、最近はDVが増えている。クーラーもなく、食事を二日に一度にしているなど百件以上の相談があった。コロナで女性の就労機会が減ったことが原因。基本的人権さえないがしろにして、どこが先進国か」と報告。
 最後に、憲法共同センターの高橋さんが、「1人区で野党共闘が失敗し、野党が自公に勝利をプレゼントしたと言える。改憲を許さない草の根からの運動が必要」と訴えつつ、以下を行動提起。
 7月22日、8月17日、新宿駅西口情宣・午後6時。
 8月19日、「19の日」行動、議員会館前・午後6時半。
 9月1日、ウィメンズアクション、有楽町イトシア前・午後6時。
 9月19日、「さよなら戦争・さよなら原発9・19大集会」、代々木公園・12時半。
 かってない程の改憲の危機が訪れた。腰を据えて闘いの輪を広げる必要がある。(東京O通信員)