東電刑事裁判
 東京高裁6・6第3回控訴審で結審を強行
 —判決は来年1月18日に

  年内に弁論再開を

 6月6日、第3回・福島原発刑事裁判控訴審が開廷された。福島原発刑事訴訟支援団はこの日、一審永渕反動判決の破棄と公正な判決を求めて、今法廷での結審の延期を要求し、6・6東京高裁前アピール行動・裁判闘争を貫徹した。行動には、東京高裁前を埋め尽くして労働者・市民が結集し、力強いシュプレヒコールが発せられた。
 民事裁判で国家賠償責任を判断する6・17最高裁判決と7・13東電株主代表訴訟判決の吟味は、刑事裁判でも公正な判断を下すうえで重要な意味をもっている。結審を延期しての充分な審議は、司法の独立にとって必要不可欠と言っても過言ではない。
 刑事訴訟支援団は、第3回控訴審に向けて、公正な判決を求める署名活動を推進し5月20日、1万2140筆(第一次集約)の署名を提出した。そして、5月23日から6月3日までの内9日間を設定して、ランチタイム・スタンディング闘争を実行し、延べ297人が結集した。
 6・6控訴審では、東京高裁・細田啓介裁判長は支援団の要求を無視して、結審を宣言。後日、来年1月18日の判決言い渡しを決定した。
 最高裁判決等を見すえ時間をかけて判断という日程で、自己保身を図る意図が透けて見える決定となった。それでも、検察官役を務めてきた指定弁護士らが大きく押し返した結果とみることができる。
 東京高裁前アピール行動は、武藤類子刑事訴訟支援団副団長の挨拶で開始された。武藤さんは、「東電は大津波が来ると分かっていたのに何もしなかった。大きな責任がある。正当な判断をするためにも結審を伸ばしてほしい」と述べ、一連の行動のねらいを明らかにした。
 続いて被害者参加代理人・海渡雄一弁護士が発言。「6月17日予定の最高裁判決等を見た上で判断すべきだ。最高裁判決は必ず踏まえねばならない。今日結審させてはならない」とアピール。
 次いで会津の片岡さん、郡山市の橋本さんら各地に避難した人々の発言がなされ、最後に北村健二郎弁護士が登壇し、「今回の裁判は他に大きく影響する。細田裁判長は何事にもとらわれず、自分自身で、独立の気概で、判断をしてほしい」と裁判官の良心に訴えた。
 闘いは大きく盛り上がり、「充分な審理を続けて!」、「現場検証をして!」のシュプレヒコールを高裁にあびせて行動は終了した。
 第3回控訴審の評価については、午後の報告集会で、河合弘之弁護士らが展開。
 河合さんは、「最高裁は、推本の長期評価を信用できないとは言えない。永渕一審判決の基礎が揺らぐ。細田裁判長は半年以上の時間を取って判断、矛盾のない形で穏当な判決を出そうとしている。指定弁護士が押し返した」と評価。大河陽子弁護士も、「ありとあらゆる行動をした。結審にはなったが、最高裁判決を見て、との結果になった。何とか押し返した」と主張、闘う決意を示した。
 報告集会の閉会挨拶で武藤副団長は、「傍聴席から結審の強行に抗議の声を上げたら、怒りの抗議の渦になった」と報告した。告訴から11年。厳しい局面にはあるが闘いはこれから、大衆闘争を発展させ裁判に勝利して、脱原発を推進しよう。

弁論再開求めて上申書提出

 6月23日、東電刑事裁判で被害者参加代理人を務める河合弘之、海渡雄一弁護士ら4名が、東京高裁の弁論を再開し、6・17最高裁判決の取り調べを求める「続行期日の指定を求める上申書」を東京高裁に提出した。
 福島原発刑事訴訟は、①02年推本(文科省地震津波研究推進対策本部)の「長期評価」に基づき原発への津波襲来が予測できたか否か、②防潮堤の設置や原子炉建屋の浸水対策を講じていれば、事故が防げたのかどうか、の2点を中心に争われている。河合弁護士らは、その一つの柱・長期評価の信頼性があることを前提に6・17最高裁判決は判示していると指摘して、上申書を提出した。
 民事4件について6・17判決は、仮に経済産業相が、長期評価を前提に事故を防ぐための措置を講じるよう規制権限を行使し、東電に義務付け、履行させたとしても、事故が発生した可能性は相当にあるとし、国の賠償責任はないとする統一判断を下した。そして、長期評価の信頼性については、明確な判断を避けている。
 しかし、河合弁護士らは、最高裁判決は国の責任を否定したもののその理由では、長期評価に信頼性があることを前提に判示していると結論付けた。すなわち、「長期評価に基づいてなされた東電の津波水位計算に従って津波対策を実施する前提で最高裁の判断がなされていることは、東京地裁無罪判決の論理とは大きく異なっている」と指摘する。さらなる審理が必要なのは自明なことである。
 さらに最高裁判決では、三浦守裁判官が、推本の長期評価には津波対策を基礎づける信頼性があり、国が対策を指示していれば事故を回避できた可能性は高いとし、「国は03年7月頃には、東電に技術基準適合命令を発すべきだった。国が規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠き、国家賠償法上、違法である」と明確に指摘した。しかし三浦意見は、3対1の接戦の少数意見として敗北している。刑事裁判の弁論を再開するのは当然であろう。
 6・6控訴審で、指定弁護士側がわずかに押し返した。年内に審理が再開されるべきだ。福島原発刑事訴訟支援団と連帯して闘争を拡大し、裁判に勝利して東電に責任を取らせよう。(東京O通信員)