岸田首相は6月29日、スペインで開催されたNATO首脳会議に、日本の首相として初めて出席した。
 NATO首脳会議は、ロシアのウクライナ侵攻後の今回、12年ぶりに「戦略概念」を改定し、ロシアの位置付けを「パートナー」から「最大かつ直接的な脅威」に激変させた。また即応軍強化、ウクライナ武器支援強化、フィンランドおよびスウェーデンの加盟支持などを決めるとともに、異常なことに中国に対しても対抗姿勢を露わにした。
 そして米バイデン大統領は、NATOパートナー国とされる日本の岸田、韓国のユン・ソンヨル大統領を引き連れて、三者首脳会談という演出をやってみせた。
 まさに、ヨーロッパのあの悲惨な戦争を利用して、太平洋版NATO、米日韓軍事同盟を企み、東アジアに緊張と戦争を引き起こす策動である。しかし非欧米では、この分断策にのる者は多くはない。東アジア労働者民衆は決してあい戦わず、支配者を撃って国を変える、この国際主義の旗を高く掲げよう。(編集部)


最善の物価高対策は、最低賃金大幅引き上げ
 中央最賃7月山場の攻勢を!

 物価高対策が参議院選挙の大きな争点として浮上しているなか、6月28日に今年の最低賃金引上げの目安を決める中央最低賃金審議会が開始された。
 厚生労働省前では、全労連、全労協、最低賃金大幅引上げキャンペーン委員会が結集して、「最低賃金の引上げこそ最善の物価対策」、「最低賃金を時給1500円に」、「全国一律制の確立を」と気勢を上げた。
 参院選の公約で「全国一律1500円」を掲げているのは、日本共産党、社民党、れいわ新選組である。立憲民主党と沖縄の風は、「将来目標として1500円」を掲げているが全国一律の記載はない。国民民主党は、「全国どこでも1150円の実現」である。維新の会とNHK党は、最賃に関する記載がない。
 自民・公明連立の岸田政権は、「新しい資本主義の実行計画」で、2025年度にも最低賃金を全国加重平均で時給1000円とすることを目指すとした。現在の全国平均が930円だから、単純計算すると毎年17~18円(約2%)引き上げて4年かけて達成することになる。安倍政権は毎年3%引上げるとしていたので、23年に1000円に到達することになっていた。なぜペースダウンしたのか。安倍や菅の政治介入は、最賃審に軋みを発生させ、昨夏は公益委員案(全国一律28円案)を多数決で決める異例の事態となった。その後、日本商工会議所が最低賃金引上げ容認に転じたので、岸田も中小企業支援強化に方針転換したことによるのだろう。
 日銀の黒田総裁は就任当時のインフレ目標2%がやっと達成できたと喜んでいるが、それは日銀の低金利政策の成果ではなく、コロナ・パンデミックの継続、ウクライナ戦争、円安のおかげである。黒田総裁は「家計は物価高を容認している」と発言して、ひんしゅくを買ったが、「賃金が上がっていないので金融緩和政策を続ける」としている。日本の超低金利維持は現在、米欧の利上げと対比されて急速な円安をもたらし、石油・食料・飼料の輸入品高に結果しているだけ。自公政権は、いわゆる成長と分配の好循環をもたらすことに完全に失敗した。
 最善の物価高対策は今や賃金引き上げ、とくに最低賃金大幅引き上げである。今や最低賃金の引上げが、翌年の春闘の賃上げをリードしているといって過言ではない。連合は、今春の賃上げは加重平均で6160円、2・10%となり、賃上げの流れは引き継がれていると総括している。有期・短時間・契約等労働者の賃上げは加重平均で、時給24・54円、2・39%である。昨年の最低賃金の引上げが28円であるから、連合に組織された非正規労働者の賃上げが、これに追いついていない。
 昨年の最低賃金引き上げを受け、最低賃金を下回ったために賃金を引上げた中小企業はその総数の4割にものぼる。最低賃金の1・1倍以下で働く人は約800万人といわれている。最低賃金が高卒正社員の初任給を上回るケースが出てきた。
 今年5月の消費者物価は、前月に引き続き対前年比2・1%増加した。生活必需品では、4月4・5%、5月4・7%と上昇を続けている。賃上げのベースアップ分は0・62%だから、組織労働者でも大幅な実質賃金の低下である。とりわけ、最賃3%引き上げを頼みとするしかなかった最賃近辺の非正規労働者、ひろく低所得者層にとって死活問題である。
 選挙で賃金引上げを訴える候補者がいるが、国会議員が賃金を引上げてくれるのではない。賃上げを支持するという態度表明である。賃金は労使交渉で決まるものである。労働者が闘わない限り賃金は上がらない。
 また参院選で、臨時的な生活給付金や消費税の一時的減額を掲げる政党も多い。それらも必要だが、最賃引き上げこそが恒久的な改革策のカナメとなる。
 中央最賃審の審議の山場は、7月25日頃とみられる。この夏の最低賃金引上げ闘争は、労働者は2~3%程度の賃上げで満足しているのではないこと、これを見せつける重要な闘いである。(K)


韓国サンケン闘争
 籠城ハンストで決戦
  本社前では、6・24株主総会行動などが


 6月24日のサンケン電気22年度株主総会を境にして、韓国サンケン労組と支援の闘いは大きな転換点を迎えた。
 まず韓国サンケン労組は6月20日、ソウルにあるサンケン電気とLGの合弁会社アドバンスド・パワーデバイス・テクノロジーズ(APTC)の社屋に9名の組合員が籠城し、22日に会社前で記者会見と集会を行なうとともに、ハンガーストライキ闘争を宣言した。7月4日現在、ハンスト突入から13日を迎え、8名の組合員がサンケン電気との直接交渉を求めて決死の闘いを続け、交渉開始以外に自ら出てくることはないと決意を表明している。
 このハンスト闘争が始まるや、民主労総委員長、韓国国会議員、進歩党、労組などの激励訪問が行なわれ、「全国民衆行動」や全国金属労組などの声明が出されている。韓国サンケン労組を支援する「希望バス」が組織され、29日には籠城現場前で激励集会が開催された。また公共放送KBSが籠城後の取材を開始。韓国では、サンケン電気のみならず、このサンケン電気を支えるLG電子、LG財閥に対する批判の声が高まっている。
 このような緊迫情勢の中、日本では韓国サンケン労組を支援する会、韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会は、6月24日のサンケン電気株主総会に対する大規模な闘いを行なった。当日、新座市の本社前には、昨年総会時をはるかに超える110名以上。全労協組合員、争議組合員、日韓民衆連帯運動関係者、周辺住民や市民団体関係者のほか、大阪からも代表2名が参加した。本社前の狭い道路に交通整理員も配置し、万全を期する体制で臨んだ。
 朝9時半から集会。この総会に向けて、新たに尾澤孝司さん(支援する会事務次長)のお連れ合いの尾澤邦子さんが株主になっており、この邦子さんを送り出す闘いから開始された。尾澤邦子さんは、尾澤孝司さんとともに株主総会に対し、韓国サンケン労組に係わる12項目の質問をあらかじめ提出している。この回答を株主総会で迫る決意のほどが述べられ、熱い激励で送り出された。
 続いて集会は、支援する会の共同代表で全労協議長の渡辺洋さんが発言。オンラインで、韓国サンケン労組のオ・ヘジン支会長、キム・ウニョン副支会長が発言。また大阪から参加の発言が、大阪全労協事務局長の竹林さん、ユニオンネット代表で関生支部の西山さん。ゆいの会、ノレの会、サンケン太郎の歌を挟んで、東水労、清掃労組、全統一、東部労組、東京労組、全労JAL労組の各労組から連帯発言。
 その後、尾澤邦子さんが株主総会から戻り、会場での闘いと会社側の対応について報告した。議長をつとめた高橋社長は、韓国の問題は韓国で決めることとし、まともな返答は一切していなかったと報告された。まとめ発言を支援する会の鳥井事務局長、東京全労協の大森議長から受けて終了。
 韓国サンケン労組は今、自らの命をかけた決戦的闘いに臨んでいる。サンケン電気のみならず、LG財閥が包囲されている。日本では、ハンスト闘争に連帯して、埼玉市民の会が22日より連日早朝本社闘争を続けている。22日、23日には連続して市内デモも取り組まれた。(大阪では、6月4日に尾澤孝司さんを迎えて市民の会総会が開催され、翌日には統一マダンで韓国サンケン労組支援が訴えられた)。
 今こそ決戦のとき、サンケン闘争勝利を!(東京Ku通信員)


夏季特別カンパを訴える!
   改憲阻止・生活防衛の決戦へ

 読者・友人のみなさん!
 今号がお手元に届くころには参院選の結果が出ていると思われますが、その詳細がどうであれ、改憲発議や大軍拡などとの闘いが厳しさを増してくることは明らかです。岸田自民党は公約で、「改正原案の国会提出・発議を行ない、国民投票を実施して早期改正」、「GDP比2%以上を念頭に、5年以内の防衛力抜本的強化」などとしているからです。
 一つは、この9条改憲発議阻止など憲法闘争の重大局面に勝利するために、最大限広範な共同行動を実現して闘うことが問われています。その勝利は、次の総選挙を待つことなく、岸田自公政権を倒壊へ向かわせるでしょう。
 もう一つは、この改憲阻止の闘いとともに、生活防衛・最賃大幅引き上げ・一緒に生きぬこう!の労働者民衆運動を、生活の中から前進させることです。最大の生活破壊・人権破壊は戦争。これを許さない日本の民衆力量を強化し、韓国・沖縄・東アジア民衆との大連合を実現しよう! 
 労働者共産党と本紙はそのように奮闘します! ご支援・ご批判をお願いします!
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