5・24狭山事件の再審を求める市民集会
  鑑定人尋問請求で山場

 5・23不当逮捕から59年。狭山事件は、9月上旬開催の三者協議までに、鑑定人尋問を請求する局面を迎えている。
 こうした5月24日、東京・日比谷野外音楽堂で「不当逮捕から59年!東京高裁は鑑定人尋問・再審開始を!狭山事件の再審を求める市民集会」が開催され、コロナ対策で1300人に絞られたうえで、部落解放同盟や各地の狭山住民の会をはじめとする人々が結集した。主催は、狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会。
 狭山弁護団は、現在の第3次再審請求で証拠開示された取調べ録音テープなどから、寺尾確定判決の根拠となった警察官の法廷証言に偽証を確認。刑事訴訟法435条2号に基づく再審理由の追加申立書を4月8日、東京高裁に提出した。435条2号は、「原判決の証拠となった証言」が「確定判決により虚偽であることが証明されたとき」を再審請求の理由としている。
 取調べ録音テープからは、石川さんが犯行の内容や死体の状況を知らないなど「自白」が実際の体験ではなく、警察官の誘導で作られたことが分かる。「矛盾なくスラスラ自白した」、「本人が言った通りに自白調書を作成した」などの警察官法廷証言が、石川さんを陥れるための虚偽証言と判明したのである。
 これと別に弁護団はこれまで、刑事訴訟法435条6号にある無罪を言い渡すべき「明らかな証拠をあらたに発見したとき」に基づいて、およそ250点もの新証拠を提出してきた。コンピュータを用いた筆者異同識別により、石川さんが脅迫状を書いていないことを科学的に証明した福江鑑定。蛍光エックス線分析によるインク元素の分析によって、有罪証拠の万年筆が被害者のものでないと科学的に証明した下山第2鑑定等、多くの新証拠が石川さんの無実を明らかにしてきた。
 これら新証拠を加えて、鑑定人尋問・再審開始の道はいっそう拡大したのである。
 さて集会は、組坂繁之解放同盟中央本部委員長の開会挨拶で開始、「部落出身であるが故に石川一雄さんは、権力の生けにえになった。この勝利なくして部落解放はない。努力の中で無実を証明する真実が出てきた。今年は何らかの形で再審を求める。見えない手錠を外すために」と表明した。
 次いで石川一雄さん・石川早智子さんが登壇しアピール。一雄さん(再審請求人)は、「全国各地からのご参加に誠に心強い。この第3次再審で必ず鑑定人尋問・再審を勝ちとる。是非とも石川の無実を晴らすために力を貸してほしい。水平社創設100年の年にけじめをつける」と闘う決意を語った。
 弁護団報告では、中山武敏狭山弁護団主任弁護士、中北龍太郎弁護団事務局長が発言。中北さんは、「新証拠246点を提出した。それらから鑑定人の人々を限定し、近々鑑定人尋問を請求する。鑑定人尋問はどうしてもくぐらねばならない過程だ。鑑定人尋問を再審開始の突破口にしたい。いよいよ山場だ」と訴えた。
 片岡明幸解放同盟副委員長・狭山闘争本部長が基調提案。「弁護団が鑑定人尋問の請求をこの夏にするのは間違いない状況だ。下山第2鑑定・福江鑑定など10あまりを請求するが、実現のためにも下山第2鑑定に絞って宣伝する必要がある。」「狭山は差別に基づく冤罪事件。原点に立ち返って最後の決戦に!」と呼びかけた。
 袴田さんを支援する清水・静岡市民の会から山崎俊樹さんが連帯アピール。5月23日に東京高裁で第5回三者協議が行なわれ、袴田事件の鑑定人尋問実施が決まったことが報告された。
 集会は、鎌田慧市民の会事務局長の発言の後、集会アピールを採択。鑑定人尋問・再審開始を求めるとともに、証拠開示や事実調べを保障し、検察官による抗告を禁止する再審法の改正を求めた。
 団結ガンバローの後、東京高裁・大野勝則裁判長に再審開始を求めて、霞ヶ関デモ行進を敢行した。(東京O通信員)


5・25釜講座「仕事づくり・街づくりツアー」
  働いて社会とつながる釜ヶ崎

 「あなたと釜ヶ崎を結ぶ」市民団体・釜ヶ崎講座が、新たな試みとして「仕事づくり・街づくりツアー」を企画し、5月25日午後、30名が参加して釜ヶ崎を歩いた。
 この日の講師・案内人は、釜ヶ崎支援機構理事長の山田実さん、釜ヶ崎に事業拠点を置く「バリアフリーサービスつばさ」の代表理事・穴澤一良さん、釜ヶ崎支援機構相談員で若年層等への多様な生活支援事業にたずさわる小林大悟さんのご3人。
 山田さんには、特別清掃事業事務所、シェルター(野宿者緊急避難所)ならびに労働センター、支援機構お仕事支援部へと案内してもらい、就労の実情や反失業の闘いの歴史を語ってもらった。穴澤さんには、就労継続支援B型作業所「ほんでなぁ」で、施設での日常作業と取り組みについてお話を伺った。小林さんには、西成区委託のサービスハブ構築・運営事業「どーんと西成」の取り組みを中心に語ってもらい、今日の若者の仕事・生活感を学ぶことができた。
 山田さんは、90年以降の西成総合「センター開放」や市・府庁前野営闘争などを振り返り、「特掃は、バブル崩壊後の釜ヶ崎での反失業闘争の一つの成果だった。だが国・行政の施策にはおのずと限界があることも、闘いの中で皆が感じとってきたことだ。江戸期より貧民街として形成された釜ヶ崎だが、今の新自由主義社会が人にもっとも苛烈とするならば、私たちは現状に満足することなく、今後も社会を作り替えていく必要がある」と語った。旧南職安があった「お仕事支援部」では、自転車修理等の作業は見学できなかったが、登録労働者への携帯電話や面接用スーツの用意もあるとのことで、生半可な就労支援ではないことも分かった。
 穴澤さんに先導されて、作業所「ほんでなぁ」に到着。穴澤さんは、作業所概要ならびに相談・通所者の個々の生活実態を説明し、「釜ヶ崎に行けば何とかなると言われるなか、障がいをもつ人が、この作業所をはじめ釜ヶ崎の社会資源といわれるものに頼らざるを得ない現状がある。だがそこに誇りとやりがいを持って職員も、通所に来る人とともに仕事・生活での生きがいを追求している」と語った。穴澤さんは、センター建て替えについても取り組み、新センターはまさに、様々な貧困や軋轢からくる生きづらさからの解放を助ける窓口として機能するべきと主張する。
 最後は、太子にある「どーんと西成」へ。元保育園跡地を利用し、「ひと花センター」(西成区単身高齢生活保護受給者社会的つながりづくり事業運営)と棲み分けしながらの運営だ。サービスハブ構築・運営事業とは、西成区で生保受給の15~64歳を対象とした就労・生活・通院・社会的つながり等の支援事業。小林さんはそれを解説しながら、「一口に支援と言っても、様々なワケを抱えてのその人の実情を共有することが大事。特に今時の若者はコミュニケーションを取るのが不得手な人が多いと感じる。窓口への付き添い、居宅の片付け等一つひとつが大事で、取り組みの中での共有・一体感を重視している」と語った。小林さんは、「新型コロナ住まいと暮らし緊急サポートプロジェクトOSAKA」にも携わり、一昨年来のコロナ禍による非正規労働者などの失業拡大に対して相談会活動を立ち上げ、生活・就労支援を続けている。
 今回の講座企画は、就労を通じて街づくりに奮闘する釜ヶ崎を、広く市民に知ってもらうものであった。企画は、地域の労働者・住民のための新センター機能の充実、特掃の労働条件拡充など安心して働き暮らせる釜ヶ崎実現の闘いへ、連帯を広げることにもなるだろう。(大阪I通信員)


五月「19の日」行動、全国署名を提出
 9条不戦を全世界へ

 60万2403筆の「憲法改悪を許さない全国署名」が、5月19日の第78回「19の日」行動で国会に提出された。
 この行動、「ロシアのウクライナ侵略反対!即時撤退!改憲発議反対!軍拡やめろ!辺野古新基地建設中止!いのちとくらしを守れ!5・19国会議員会館前行動」には、自公・維新のウクライナ侵略に乗じた改憲策動に反撃すべく、750名の労働者・市民が結集した。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、9条改憲NO!全国市民アクション。
 5月2日発表の共同通信世論調査では、9条改憲の必要性「あり」が50%で、「なし」48%と拮抗し、昨年同時期の調査で必要51%・不要45%に比較しても、9条改憲論が必ずしも強まっていない実態を浮き彫りにした。
 5月3日発表の朝日新聞世論調査では、9条について「変える方がよい」33%、「変えない方がよい」59%と大差が付いた。その反面、自民党の自衛隊明記付加の改憲案については「賛成」55%、「反対」34%と逆転している。
 また共同通信調査では、岸田政権の間に改憲の気運は「国民の間で高まっていない」が、「どちらかと言えば」を含めて70%にも上っている。
 それでも自民党は、ウクライナ戦争で危機感を煽り、7月参院選の勝利を前提に向こう3年間で改憲実現をめざす構えを見せている。今通常国会で衆院憲法審査会は毎木曜定例化を強行し、すでに13回も開催させた。24年に改憲発議、25年国民投票実施のシナリオである。
 改憲野党の日本維新の会は5月18日、憲法9条に自衛隊を明記する改憲条文イメージを発表した。これは、戦争放棄の9条1項と戦力不保持の2項を残し、「9条の二」として「自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する」を新設するもの。自民党の9条改憲案とほぼ同じ内容で、参院選の公約に反映させる。
 自公・維新など改憲勢力は、参院で3分の2超を得て、改憲着手を画策する。改憲の危機はかってない程に高まっている。しかし、労働者民衆の闘いによってこれを打破できることも、紛れもない事実である。民衆の支持のない改憲に大義はない。
 さて「19の日」行動では、うず高く積み上げられた全国署名を前に、まずその国会提出行動。立憲民主党・鎌田さゆり衆院議員、社民党・服部良一幹事長、日本共産党・赤嶺政賢衆院議員が「力を合わせて参院選で改憲阻止の結果を出そう」とアピールした後、駆け付けた野党各党の国会議員に署名が提出された。
 続いて、戦争をさせない千人委の藤本泰成さんが主催者挨拶、「ウクライナ侵略を口実に、軍拡、敵基地攻撃能力保有、核共有が叫ばれている。この危険な動きを止めよう。今こそ9条の不戦の誓いを全世界に発信する時だ。安保法制を廃止し、改憲を阻止しよう」と訴えた。
 市民からの発言では、岸本さとこ杉並区長選挙予定候補が発言、「6・19投票の区長選に野党統一候補として立候補する。この国会前行動に参加し、平和を守ることの大切さを強く思った。区長選に勝って参院選に弾みがつくよう頑張りたい」と決意を述べた。
 安保法制違憲訴訟の会の福田護弁護士が発言、「22地裁に25件提訴し、22件の判決が出た。憲法判断を回避しての原告敗訴。残り3件で、主戦場は高裁に移る。東京の1件では5月24日に東京高裁で判決が出る。最高裁に上告して憲法判断を迫ることになるだろう。いよいよ決戦の時だ」と報告した。
 辺野古工事変更「不承認」に対する国交省の取り消しを不服として、沖縄県は5月9日、国地方係争処理委員会に審査を申し出た(8月8日までに判断)。これについて、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実の木村辰彦さんが発言、「県は係争委審査のほか、裁判闘争の準備も進めている。工事は不承認のままだ。違法な新基地建設を中止させ、憲法が生きる沖縄をめざして闘おう」と訴えた。
 最後に、総がかり実の菱山南帆子さんが、「韓国では今、日本大使館前で2回めの『19の日』行動が闘われている。9条を絶対に変えさせない、それが我々の戦争責任の取り方だ」と発言しつつ、以下を行動提起。
 5・23および5・30、官邸前月曜連続行動、午後6時半。
 5・26、野音沖縄集会。
 6・14、有楽町ウィメンズアクション、午後6時。
 6・16、新宿駅西口情宣、午後6時。
 6・19(日)、第79回「19の日」行動、議員会館前・午後2時。
 ロシアの次は中国が攻めてくる式の、マスコミの悪らつな宣伝も許さず、自公・維新の改憲策動を打ち砕こう。(東京O通信員)