原発と戦争は共存できない
3・21ウクライナに平和を!原発に手を出すな!市民アクション

 3月21日、東京・代々木公園で、「ウクライナに平和を!原発に手をだすな!市民アクション」として集会と渋谷周辺デモが行なわれ、主催者発表で2500名が参加した。呼びかけは、「さようなら原発」一千万署名市民の会と、戦争をさせない千人委員会。
 元来この日は、福島原発事故十一周年の反原発の行動予定であったが、ロシアが2月24日にウクライナ全面侵攻を開始し、チェルノブイリ原発、ザポリージャ原発などウクライナの諸原発にも戦火が及んできたため、危機意識をもって反戦行動に切り替えられた。
 フクシマ周年行動は改めて、4月16日(土)に、「さようなら原発首都圏行動」として行なわれる。(江東区亀戸中央公園、午後1時半開会)。
 集会は、ピースボートの畠山さんの司会で始まり、最初に呼びかけ団体の一千万署名市民の会から鎌田慧さんが発言。「市民の犠牲をこれ以上出すな!私たちに何ほどのことができるか分からないが、ともかく声を出そうという行動です」と述べ、そしてこの戦争で「原発は戦争の目的となることがはっきりしました」と指摘した。落合恵子さん、澤地久枝さんも発言。戦争させない千人委からは飯島慈明さん(名古屋学院大)が発言した。
 ウクライナからは、ナターシャ・グジーさんが登壇し、日本語で発言してくれた。チェルノブイリ原発事故で避難し、音楽の道に入ったとのことで、唱歌「ふるさと」を独唱。「いつの日にか帰らん」、会場一同、ウクライナの国外避難民が300万人を超えている悲劇に思いを寄せた。
 日本の市民団体からは、チェルノブイリ子ども基金の向井さん、原子力資料情報室の高野さんなどが発言し、ピースボートが国外避難民緊急支援などを訴えた。
 この3・21集会は、「ウクライナに平和を!」「戦争反対!」「原発に手をだすな!」をスローガンに掲げた。これらは即時停戦、ロシア軍撤退を求めるものと言えるが、とくに原子力発電稼働国が戦場となっていることの危険性を強く訴えた行動であった。戦争と原発は両立しない、これがはっきりした。
 これについて日本の反原発団体では、2月25日即座に、原子力資料情報室が声明を出した。「おそらく1991年のスロベニア独立戦争以来となる、民生用原発が稼働する中での戦争が始まった。この戦争を強く憂慮し、速やかな停戦とロシア軍の撤退、そして紛争地域に近い稼働中原発の即時停止を強く求める」と声明し、また即時停止にともなう措置として、欧州各国などによる「ウクライナへの電力輸出」を求めた。求められているのは、原発国ではとにかく停戦、そして武器支援ではなく電力支援である。
 翌26日、たんぽぽ舎がその年次総会で、「あらゆる武力行使に反対する」緊急決議をあげた。決議は、「ウクライナからのロシア軍の撤兵を求めると共に、ロシア軍の侵攻を防げなかった米国、NATO諸国の外交政策に抗議する」と表明するとともに、「ウクライナは、設備容量で世界7位、欧州第3位の原発国」で、この「原子力大国に対する武力行使が、いったいどんな危険な事態を招くのか、各国とりわけ欧州の首脳は考えたことがあるのか。」「チェルノブイリ原発事故を超える甚大な放射能災害に見舞われる危険性を犯して、いったいどのような権益があるというのか。」と糾弾した。
 ロシアのウクライナ侵攻で、戦場においては、原発が「発電所」というより「核兵器」として扱われることが明確になった。交戦諸国は、まず「核」を管理下に置こうとして争う。原子炉じたいを攻撃する愚か者はいないと常識的には考えられるが、戦争の継続によって、電源・冷却機能の損傷の危険をはじめ、原子炉と核物質の管理態勢が脅かされることは確実である。不測の事態が起きた時に、かれらは責任が取れるのか。
 ロシア軍のチェルノブイリ原発への侵攻当初、使用済み核燃料の冷却機能が失われたと報じられて世界は肝を冷やした。これは回復したようだが、3月27日のウクライナ側の発表によると、チェルノブイリ原発周辺では、戦火が原因とみられる多数の森林火災が起きており、使用済燃料などの貯蔵施設に迫る危険もあるという。戦火が継続・拡大するなか、現在進行形の危機が、ウクライナのすべての原発に広がりかねない。
 現在のウクライナで、その諸原発をどちらが掌握しているにせよ、管理している方に核災害防止の第一義的責任がある。ロシア側にせよゼレンスキー政権側にせよ、ウクライナの各原発がどうなっているのか、どう対処しているのか、全世界に対して詳細に説明する責任がある。


 日本でのウクライナ反戦行動

 さて、2月24日の全面侵攻以降、ロシア大使館がある東京、総領事館がある大阪をはじめ、日本各地でも大小のウクライナ反戦行動が取り組まれている。比較的多人数のもののみを、以下記す。
 3月5日、在日ウクライナ人などの呼びかけで、渋谷の国連大学前から「ウクライナ支援パレード」に主催者発表で4000人。ロシア人、ベラルーシ人、日本人のほか、国軍がロシアから武器援助を受けているミャンマーの在日市民も多数参加。なお在日ウクライナ市民の言動では、ある意味自然なこととも言えるが、ウクライナ政府支援・抗戦支援という傾向が見うけられる。
 3月6日名古屋では、あいち総がかり行動実行委が200人規模で、ロシア軍即時撤退を求めて街頭宣伝。その後、日本ウクライナ交流団体の主催のデモ行進に合流して500人。
 3月9日大阪では、おおさか総がかり行動実行委の呼びかけで、「ウクライナに平和を」緊急行動が行なわれ約700人がデモ行進。
 3月11日東京では、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委の呼びかけで、「ロシアのウクライナ侵略糾弾!即時撤退を!新宿大アクション」が行なわれ、主催者発表で1200人が新宿中央公園からデモ行進。
 3・21代々木公園を含め、これら日本の反戦平和勢力・反原発勢力の取り組みでは、即時停戦、ロシア軍撤退を共通して求めるとともに、情勢に便乗した自民党や維新の策動(核配備論、改憲論など)を強く批判する行動ともなっている。またロシアの侵攻の背景として、米国NATOの東方拡張策・緊張激化策を批判する声も広くあげられている。(A)