韓国大統領選、保守反動に政権交代
 前進すべき進歩勢力統一

 3月9日に投開票された韓国大統領選挙は、まれにみる大接戦で、結果が出たのは翌朝に持ち越され、報道に釘付けとなった方も大変多かったのではないか。
 結果は、保守リベラルの与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が惜敗し、保守反動の野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソンヨル)候補が勝利したが、これを信じられない方も多くおられたのではないだろうか。このことから、李在明敗北の原因を追及する諸論評が散在する中、ここでは本紙1月号の論評での視点(進歩勢力の統一候補への努力を支持)に沿って、分析を試みる。その中で李在明敗北の位相も、解き明かされるものと考える。
 まず選挙結果について明示する。李在明候補は1614万7738票(47・83%)、尹錫悦候補1639万4815票(48・56%)と、僅か25万票弱(0・73%)でしかなく、これは、不正選挙と叩かれた金大中・朴正煕の選挙以来の接戦で、87年民衆大抗争によって勝ち取った大統領直接選挙制以来では最小の差であった。
 3位の正義党の沈サンジョン候補は80万3358票(2・37%)を獲得し、一部からは、この票を李在明側に加えるならば勝利していたではないか、と唱える向きも見られる。しかし、この論では、何ゆえに正義党が進歩陣営の共同候補建立作業から離脱したかを不問とすることになると言わねばならないだろう。
 本紙3月号の論評(共に民主党への過大評価に反対)に関連することとして、正義党は、現在運動圏には足場をほぼ持たない議会内政党・制度圏政党に純化しつつある。では正義党は、共に民主党に合流すれば良いのではないかとの主張もでてくるだろう。しかしながら、共に民主党には運動圏出身の議員も多数みられ(NL《民族解放》系)、PD《民衆民主主義》系の正義党はその中でも少数に転落する可能性も大きく、議会内での存在価値の激減に繋がるため、少数政党の看板を下ろすことはできないだろう。その看板にこだわって、正義党は進歩陣営共同候補擁立作業から離脱した、これが今回の大統領選敗北の結果を招いた一要因と言っても過言ではないだろう。
 もし進歩陣営の統一候補が実現していたならば、その公約項目ともいうべき韓国社会の進歩的改革を掲げた内容(11・13進歩勢力大統領選挙共同宣言)をもって、共に民主党に選挙協定をせまり、進歩陣営がまとまって李在明候補に批判的支持とすることもできただろう。進歩陣営統一によって大統領選での勝利は可能であったし、韓国社会の前進に寄与することが見られたのではないだろうか。
 われわれ日本の左派勢力ならびにその運動は、韓国に比べるならば非常に微弱であるが、今回の韓国大統領選挙の結果は、われわれに多大な教訓を残したと言える。日本においても、韓国においても、「第三極」政治勢力の形成は困難な道のりを控えていると言わねばならない。成功しなかったとは言え、今回の韓国における進歩陣営の潮流を超えた統一の試みは、社会を根本的に変えていく一歩として歴史を刻みながら、今後も前進することが期待される。
 尹錫悦次期大統領の政権引継委員会が発足し、文在寅政権はほぼ大統領権限を消失した。この政権引継委員会の構成メンバーは、検察関係者が大半を占め、検事総長出身の尹錫悦による次期政権(5月10日大統領就任)は、検察独裁政権とも揶揄されている。そればかりではなく、選挙戦公約では、女性家族省の廃止、性犯罪誣告罪強化、北韓への先制攻撃、サード再配備、日米韓軍事同盟、前政権への政治報復の意志表明など、極めて反動的な政策立案を画策しようとしている。
 このことに対し、韓国社会ではもう既に反発が広がっている。十万人を超える女性が、共に民主党に入党したと伝えられている。また尹錫悦の支持率は、発足前としては史上最低とも言われている。また国会においては、共に民主党が過半数をはるかに超え、国会運営は政権発足当初から行き詰まることが目に見えている。
 民主労総や進歩陣営にとっては、全面対決が当初から求められるだろう。16年、17年の「キャンドル革命」時に、その運動の主導的な役割を果した民主労総や進歩陣営が、再び前線に立つ機会が待っているだろう。われわれ日本の第三極勢力は、いまだ微力ではあるが全力で国際連帯の先頭に立つ覚悟でいる。(Ku)


日韓民衆連帯深める韓国サンケン闘争
 6月株主総会、全国包囲へ

 韓国サンケン労組と日本での支援の闘いは、3年目を迎えている。
 2月10日、韓国におけるサンケン電気の営業・開発部門を担うサンケンコリアのソウル市のビル前に、昌原市の韓国サンケン前とは別に、金属労組が一体となってテントを設営した。韓国サンケンの偽装解散が白日の下に曝される。
 2月17日、韓国KBS(日本のNHKに相当する公共放送)が、ドキュメント番組『日本へ走れ~日韓連帯で韓国サンケンの偽装廃業と闘う』を放映した。この作品は、プロデューサーのイ・ホギョンさんが作成したもので、日本の支援者数名を取り上げて、なにゆえにこの運動に係わるかを日常生活の目線から描き、また韓国サンケン労組員のテント闘争における親子の日常を描くという、大変優れた映像となっている。(イ・ホギョンさんは、昨年8月15日光復節にKBSで放映した、元在日韓国人「政治犯」事件の当事者・支援者を対象とした作品『スパイ』で、最高賞を獲得している)。また、この作品の特徴は、ナレーターを日本人が日本語で行なうという趣向を取り入れており、この闘いの一方の当事者が日本の支援運動であることを明確に示唆している。
 2月10日、刑事弾圧にも屈せず、闘病をも乗り越えて奮闘している尾澤夫妻に、韓国民主労総から感謝の盾が送られた。また3月7日には韓国金属労組から、韓国サンケン労組を支援する大阪市民の会、おおさかユニオンネットワーク、韓国サンケン労組に連帯する埼玉市民の会、および韓国サンケン労組を支援する会の日本の4団体に、感謝の盾が贈与された。日韓労働者民衆の連帯闘争の深まりの表れと言える。
 その日本における支援連帯の闘いでは、この2月にサンケン本社のある新座市の商工会議所への、2月・3月には大株主りそな銀行への争議解決要請行動を行なった。またサンケン電気の韓国における最大の取引先であるLG電子の日本法人LGジャパンへの、要請行動も行なった。
 6月下旬にも予定されているサンケン電気の株主総会に対しては、本年は全国闘争として取り組み、株主総会に内外から圧力を加え、経営陣を話し合いに引き出す闘いをさらに強化する方針である。
 尾澤裁判(いぜん日程未定)の勝利に向けた闘いも強化されている。3月19日、尾澤さんの地元、東京葛飾の「尾澤孝司さんを支える会」の報告集会がひらかれた。葛飾住民をはじめ50名が参加し、KBS『日本へ走れ』の上映や支援する会からの連帯挨拶がなされた。このようにサンケン闘争勝利の不抜の陣形が、日韓連帯で作られつつある。(東京Ku通信員)


反戦あらたに3月「19の日」行動

 ロシアのウクライナ侵略から3週間が過ぎ、戦闘は一段と激化、国外への避難民が327万人に達し、多くの市民が殺されている。原発への攻撃もあり、よもや大惨事という事態である。岸田政権は、ロシアの侵略反対を名目に、改憲と戦争準備に奔走している。
 こうした局面での3月19日、各地で「19の日」行動が行なわれた。東京では国会の衆参議員会館前で、76回めの「19の日」行動が、「ロシアのウクライナ侵略反対!即時撤退!改憲発議反対!辺野古新基地建設中止!『核共有』反対!いのちとくらしと営業をまもれ!3・19議員会館前行動」として闘われ、1千名が参加した。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、9条改憲NO!全国市民アクション。
 最初に、戦争をさせない千人委の藤本泰成さんが主催者挨拶、「日本は敗戦を通じて憲法に9条を掲げ、戦争を否定した。しかし安倍元首相は核シェアリングを主張し、岸田政権も戦争準備を進めている。これを許さず、ロシアの侵略に世界の反戦勢力とつながって戦争に反対しよう!」と訴えた。
 政党からは、立憲民主党・阿部知子、日本共産党・笠井亮の両衆院議員、沖縄の風・伊波洋一、社民党・福島瑞穂の両参院議員(共に代読)が挨拶。
 阿部さんは、「党は3月5日から、ウクライナ支援の運動を進めている。一刻も早く理不尽な攻撃をやめさせねばならない。米ソの侵攻でアフガンは荒廃した。憎むべきは、戦争であり殺りくだ。核軍拡の流れも阻止する」と表明した。福島さんは、「ロシアの侵攻で原発が攻撃されたことに驚愕している。核兵器や原発は直ちに撤廃すべきだ。参院選は7月10日になるだろう。立憲野党の共闘で勝たねばならない」と訴えた。
 市民団体からは、さようなら原発一千万署名市民の会の井上年弘さんが発言。「戦争を想定していない原発は、ミサイルによって簡単に破壊され大惨事を招く。日本には54基の原発があり、有事になれば原発がねらわれる。そういう時代になった。温暖化を口実に原発を動かそうとする動きがあるが、それは危険だ」と訴えた。
 続いて、ピースボートの野平晋作さん、「戦争に正しい戦争はない。これが平和運動の原点。ロシアの侵攻をやめさせ、直ちに停戦合意をさせる必要がある。NATOとロシアの直接対決は避けられている。しかしNATOの東方拡大を許さない声も必要だ。平和運動の真価が今こそ問われている」と的確な発言を行なった。
 宗教者ネットの昼間範子さんは、「米国のアフガン侵略に手を貸し、ミャンマーの民衆支援にも腰をあげない日本政府が、戦争反対を今ほど言っていることはない。そう言って戦場に防弾チョッキを送り、また敵基地攻撃を叫んで、沖縄を戦場とする戦争準備をしている」と岸田政権を批判した。
 最後に、総がかり実の菱山南帆子さんが、「参院選に向けて今、野党共闘実現の動きが開始された。市民と野党の共闘で勝利を!」と訴えつつ、以下を行動提起。
 3月21日、ウクライナに平和を!市民アクション。
  22日、女たちは戦争に反対する!ウィメンズアクション。
  29日、ロシアはウクライナから撤退しろ!日比谷集会とデモ。(その後、4月8日実施に変更された。午後6時・日比谷野音)。
 4月3日、総がかり行動青年PT街宣。
  19日、第77回「19の日」行動。議員会館前・午後6時半。
 5月3日、改憲発議を許さない!憲法大集会。有明防災公園・午前11時。
 改憲・戦争に向けて、かってないほどに厳しい情勢を迎えている。大衆闘争で反動の嵐をはねのけ、平和な世界を闘い取ろう。7月参院選では、自公、維新、国民など反動勢力を過半数割れに追い込み、勝利しよう。闘争・闘争のみが勝敗を決する。(東京O通信員)


水戸地裁判決から一年
 避難不可能な首都圏原発・東海第二は廃炉に!

 ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界的なエネルギー危機がすすみ、電力資本や自公・維新・国民民主などによって、原発再稼働の動きが活発化している。
 また東京電力は、3・16福島沖地震で東北の火力発電所が停止し、関東への送電量が減少したこと理由に、21日からの節電を呼びかけ、電力危機を演出して再稼働推進へ画策している。
 今まさに原発回帰論が噴き出し始めている。このなかの3月18日、水戸地裁判決(実効性ある避難計画が不備として東海第二原発の運転差し止めを命じる)から一年を迎えた。
 この東海第二差止訴訟は、茨城県や東京都など原告224人が提訴。水戸地裁・前田英子裁判長は、国際原子力機関IAEAが示す「深層防護」に着目し、第一防護から第四にあたる地震・津波の想定、耐震性は判断に誤りがないとする一方、第五の避難計画について、実現可能な避難計画と実行しうる体制が整えられているというにはほど遠いと批判。そして、数万・数十万の住民が一定の時間内に避難することは、それ自体相当に困難と指摘し、運転差し止めを命じた。
 水戸地裁判決を覆さないかぎり、東海第二の再稼働は難しい。
 2月1日、東海村村議会の原子力問題調査特別委は、再稼働推進派・「商工会」提出の避難計画早期策定を求める請願を審議し、反対議員の質問にまともに応えずに、15人中9人の賛成で採択した。他方、再稼働反対派の「慎重な策定を求める請願」は、3月14日に不採択となった。
 裁判は、被告・原告住民の双方が控訴し東京高裁へ。昨年12月までに、双方が控訴理由書と答弁書を提出。住民側はしっかり審理させる方針のもと、380ページもの控訴理由書を提出し、弁論はこれからと言われる。しかし水戸地裁の画期的判決も、新しい裁判長のもとで覆される危険性はある。
 東海第二の今年9月再稼働はすでに破綻し、事業者・日本原電は、安全対策工事を2024年9月に完了する見込みで対策を進めている。
 3・16地震で福島第一2号機プールの水位が低下し、冷却が一時停止された。使用済み燃料1542体を保管する5号機プールも冷却が自動停止、4時間半後に復旧した。大惨事がいつでも起こりうる事が示された。
 環境経済研究所長の上岡直見氏は、日本原研の東海処理施設が武力攻撃によって破損し、高レベル放射性廃液の一部が外部に放出された場合、首都中心に40万人の死者が出るとの試算を示した。
 原発と人類は共存できない。裁判闘争も含め、闘いで全原発を廃炉に追い込もう。(O)