韓国大統領選を前に、民主労総10・20ゼネスト、11・13労働者大会
 「平等社会実現!」へ総力戦

 韓国では来年3月9日投票の大統領選挙を前に、「平等社会実現!」を求める民主労総など労働者民衆の闘いが高まっている。
 文在寅(ムン・ジェイン)大統領はその任期を終了つつあるが、格差社会是正など「キャンドル革命」の公約を結局裏切ることとなった。現在、与党「共に民主党」の後継大統領候補である李在明(イ・ジェミョン)、保守野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)が有力候補として争っているが、民主労組と連帯関係にある正義党や進歩党も、大統領候補を立てている。民主労総にとって、この大統領選へ向かう現在の過程が、「権力交代か、体制交代か!」などを掲げた示威と要求実現の決戦となっている。
 この韓国民主労総の闘い、および韓国サンケン闘争との関連について、近況を報告したい。
 10月20日に行なわれた民主労総のゼネストは、110万民主労総組合員のうち55万名が参加する大ストライキであった。「不平等打破と平等社会への大転換のための第一歩、10・20全面ストライキ」と命名し、全国14地域で街頭に出て、集会・デモンストレーションを行なった。
 民主労総のヤン・ギョンス委員長は、7月の大衆行動主導がコロナ感染対策に違反するなどを口実とされて、9月2日に不当逮捕されている。
 10・20ゼネストでのソウルの集会では、このヤン委員長に代わり、ユン・テックン首席副委員長が主催者アピールを行なった。警察の妨害、弾圧にもかかわらず、西大門交差点に宣伝カーをつけ、3万人が結集し果敢に闘われた。集会司会は、副委員長の一人で、全国金属韓国サンケン労組副支会長のキム・ウニョンさんが、力強く行なった。
 「キャンドル革命」以降は、通例では警察による弾圧もほとんどなかったが、先のソウル市長選挙で保守反動派が勝利することにより、民主労総や平和・統一をめざす民衆団体に対する規制が強まっている。このゼネストのデモに係わって、キム・ウニョンさんは11月4日、民主労総本部への出勤時に公安警察に囲まれ、スマホを取り上げられるという暴挙にあったが、弁護士を通して取り返した。
 このゼネストでも民主労総は、韓国サンケンに見られるような外国進出企業に対する規制法の制定を要求している。
 11月13日にはソウルで、1970年に「おれたちは機械ではない。労働法を守れ!」と叫んで焼身抗議自殺を遂げたチョン・テイルさんを記念して毎年開催されている、「全国労働者大会」が行なわれた。この闘いに対してもソウル警察は不許可とし、道路封鎖など事前弾圧に打って出た。しかし民主労総は、開催場所を告知せずに不意を突く形で、チョン・テイルさんが闘った場所、東大門で2万人の大集会を敢行した。
 今後も、民主労総や統一・平和をめざす民衆運動団体は、来年2月に企画されている不平等打破の大集会など諸行動を続けていく。3月大統領選挙を山として、闘う体制を築いている。
 会社清算撤回・職場復帰を求める韓国サンケン闘争との関連では、韓国サンケン労組を支援する会などによる11・3木曜行動のサンケン本社前で、キム・ジョエン進歩党代表がオンラインで次のように発言した。
 「わたしは、大統領候補として立候補を表明した。労働者のための大統領になるためだ。そのためには、韓国サンケンの状況を黙って見過ごすわけにはいかない。このようなサンケン電気の横暴について韓国全土に、そして世界に知らせていきたい。また、韓国に外資系企業の横暴を規制する法律があれば、このようなことが起こらなかったかもしれない」。韓国の政府と国会に、外資企業規制に具体的に取り組ませねばならないということだ。
 11月18日の木曜行動では、池袋のサンケン東京事務所前行動で、次のようなやり取りがあった。韓国サンケン労組のオ・ヘジン支会長が、サンケン電気のI氏との電話でのやり取りの中、「韓国政府がサンケン電気に召喚を要請したら、どうなのか」と質問したら、I氏は行かざるを得ないのではないか、と答えた。
 これを受け11月24日、韓国サンケン労組は記者会見を開き、「政府の雇用労働部が、サンケン電気本社の責任者を召喚すべきだ」と表明している。韓国政府が動くことにより、打開の道が開かれる可能性もあるといえる。
 また、支援する会の尾澤孝司さんが、逮捕拘束されて200日にもなるというのに未だ釈放されていない。日本全国と韓国で、釈放を求める署名が進行しているが、即時の奪還が不可欠といえる。さいたま地裁への署名提出は、この12月には行なわれる予定である。
 日韓労働者民衆連帯の力で、韓国サンケン闘争勝利、尾澤さん奪還をかちとろう!(東京Ku通信員)


11・2東京高裁、東電刑事裁判二審が始まる
  現場検証を!2・9控訴審までが勝負


 東京電力旧経営陣3人の福島第一原発事故での刑事責任を問う控訴審の初公判が、11月2日、東京高裁(細田啓介裁判長)で開始された。一審では、東京地裁(永渕健一裁判長)が一昨年、不当にも無罪判決を下している。
 開廷前の高裁前には、3百名超の人びとが駆けつけ、ヒューマン・ディスタンス・チェーンを行ない、現場検証の実現と、事故で無念の死を遂げた被害者・遺族、被災者十年の思いに報いる有罪判決を下すことを求めた。
 控訴審は、一審判決に大きな誤りがないかをチェックする事後審で、短時間で終了する可能性もある。新たな証人・証拠の採用は、やむを得ない理由があると裁判所が認めた場合に限り実施される。
 裁判は来年2月9日、第2回控訴審の開催が決定した。要となる現場検証・証人尋問の実施は、次回決定する。闘いの高揚で、裁判を仕切り直しにする必要がある。
 2019年9月19日の無罪判決は、「当時の社会通念の反映である法令上の規定は、絶対的安全性の確保まで求められていたわけではない」、また「事故を回避するには、原発の運転を停止するほかなかった」と主張。そして02年公表の地震予測長期評価について「信頼性や具体性があったと認めるには、合理的な疑いが残る」等を根拠にした超反動の判決であった。控訴審はこれらによって、長期評価の信頼性や結果回避義務などを主な争点に争われる。
 第一回控訴審では、検察官役の指定弁護士が、①長期評価は国の唯一の公式見解で、信頼性が充分認められること。②一審判決は結果回避義務を正しく理解せず、運転停止は最終手段であり、防潮堤の建設、建屋への浸水防止、非常用発電機の水密化など措置を講ずれば事故は回避できたこと。③現場検証の否定は問題。裁判官が謙虚に裁判に向き合うことを主張して、現場検証の実施を強く求めた。
 これに対し旧経営陣側は、「控訴には理由がなく、一審判決に誤りはなし」として棄却を求め、早期の逃げ切りを図った。(被告人は、武藤栄、武黒一郎の両元副社長が出廷、勝俣恒久元会長は欠席)。しかし、2回めの控訴審開催が決まった。
 終了後、「控訴審での勝利をめざす東電刑事裁判 11・2控訴審初公判報告集会」が参院議員会館で開催され多くの労働者・市民が結集した。主催は、福島原発刑事訴訟支援団。
 報告集会ではまず、支援団副団長の武藤類子さんが開会あいさつ。「一回だけで控訴審が終ったらと不安だった。次回で、証人調べと現場検証の実施か否か結果が出る。現場を実際に見ることと、写真で説明するのは大きく異なる。今日、福島から多くの人が参加した。2回めも大結集しよう」と訴えた。
 次いで、福島原発告訴団弁護団の海渡雄一弁護士が、控訴審を報告。「指定弁護士が新たに証人申請した証人が3人いる。気象庁で地震の長期評価を担当した元幹部と、元東芝の原発技術者・渡辺敦雄さん。3人めは、地震の専門家・島崎邦彦元原子力規制委員長代理だ。一審後に新事実をつかんだようだ。現場検証と証人尋問で、永渕判決を木端微塵にする」と決意表明した。
 民事の東電株主訴訟のほうでは10月29日、東京地裁の朝倉裁判長らが福島第一原発を視察した。
 これについて河合弘之弁護士が発言。「控訴審の焦点は、まず現場検証だ。株主代表訴訟で私も現場検証に参加した。6時間もの間、裁判官もよく調査し、ひしゃげた設備の鉄骨を見て、津波の恐怖と対策の大切さを実感した。水密化も難しい話ではない。全ての原発裁判は関連し合い、刑事訴訟はその要だ」と主張した。
 甫守一樹弁護士は、「控訴審は延長戦。一審判決はゼロにはならない。だから、すぐ押し切られることもある。運動の成果で現場検証をさせ、仕切り線まで押し戻す。この3か月が踏ん張り所。長期評価の信頼性を認めてもらう必要がある」と述べた。
 北村賢二郎弁護士は、「今日は傍聴人として参加した。株主代表訴訟の現場検証は、本当にいいタイミングだった。これが良い方向に働くかも知れない。色々な裁判が有機的につながっている。潮目が変わってきた。検証で裁判長の見る目も変わる」と述べた。また大河陽子弁護士や、会場確保に奔走した福島瑞穂参院議員も発言。
 報告会は、最後に傍聴人感想。福島県からの傍聴者は、「傍聴人は30人、記者は31名で、警備に7人が配置されて、私たち被害者が悪い事をしたかのように扱われた。入廷する時も身体検査でいやがらせを受けた。次回は今以上の結集が必要だ」と怒りの発言であった。
 次回第二回控訴審が、当面の刑事訴訟最大の山場となる。闘いはまず3か月、運動と世論を拡大し、裁判を仕切り直しに持ち込もう。
(東京O通信員)


総選挙後初の「19の日」行動、国会前一千名
 改憲阻止!寂聴さんの遺志ひき継ぐ


 総選挙後初めての「19の日」行動が、全国各地で行なわれた。その総選挙では改憲勢力(自民・公明、維新)が、衆院3分の2の310を大きく上回る334議席を獲得している。
 東京では、第72回「19の日」行動が、「改憲発議反対!辺野古新基地建設反対!敵基地攻撃能力保有反対!11・19国会議員会館前行動」と銘打って行なわれた。改憲の危険を感じとって一千名の人びとが国会前に結集、改憲を絶対許さない意志を全国に示した。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、9条改憲NO!全国市民アクション。
 まず、戦争をさせない千人委の竹内広人さんが主催者挨拶、「今衆院選で改憲の危険が高まった。低投票率で、有権者の半分近くが投票していない。何故訴えが届かなかったのか。世論の力で改憲発議を何とか止めねばならない。投票に行かなかった人々の支持も集めて、改憲を阻止する。安倍・菅継承の岸田政権を打倒しよう!」と訴えた。
 政党からは、社民党・福島瑞穂、立憲民主党・石垣のりこ両参院議員、日本共産党・笠井亮衆院議員が挨拶。石垣さんは、「改憲勢力が3分の2を上回るゆゆしき事態になった。国会は数の力で決まる。阻止するには議員を増やしていくことだ。参院選では野党共闘で勝ち抜く」とし、参院選勝利への決意を表明した。
 笠井さんは、「総選挙では、野党共闘に危機感を持った改憲勢力に勝てなかった。しかし、野党が一本化し対決構図を作った213小選挙区の内、62で競り勝ち、32で僅差になった。野党共闘これしかない。夏の参院選では何がなんでも勝つ」と述べた。
 市民からの発言は、福元勇司オール沖縄事務局長が電話でアピール。福元さんは、「岸田政権は安倍・菅政権と変わらず、いぜん辺野古埋め立て工事を強行している。浅瀬の工事が進行し、土砂量で6%が埋め立てられた。」「近々、知事は設計変更申請に不承認を発表する。連帯し、皆の力で基地建設を阻止しよう」と呼びかけた。
 続いて、改憲問題対策法律家6団体連絡会の大江京子弁護士、「メディアは野党共闘失敗と宣伝しているが、一定の成果を上げている。落ち込んでいる暇はない。来年夏の参院選では、32の一人区で共闘を進め何としても勝っていこう。岸田は、任期中に改憲の目途をつけると言う。25年まで総選挙はないとすると、参院選が勝負となる」と指摘した。
 最後に、総がかり実の菱山南帆子さんが、「改憲反対の戦線を立て直して前進する。先日9日に亡くなられた瀬戸内寂聴さんが、19の日行動に参加して『9条を変えてはならない』と発言した。この意志を引き継ぐ。市民と野党が一緒に闘わない、これではさらに少数派だ。デマと分断を許さず共闘を。新しい政治の芽を増やそう。闘いはこれから!」と訴えつつ、以下を行動提起。
 12月6日。臨時国会開催日行動、議員会館前・正午。
 14日。ウィメンズアクション、有楽町イトシア・午後6時。
 16日。新宿駅西口情宣、午後6時。
 19日(日)。第73回「19の日」行動、議員会館前・午後2時。
 さて、共同通信社による来年7月参院選の結果予測(今衆院選比例で各党が得た票数から試算)では、32一人区で自公30勝・野党共闘2勝などとなった。これに維新なども合わせると、参院でも改憲勢力が3分の2を超えることになる。(なお19年参院選では野党10勝、16年では11勝)。
 参院選での野党一本化は無論必要であり、一人区では必ず実現せねばならない。しかし、それ以上に自公政権を打倒する各勢力の力量の強化、各大衆闘争の高揚、非正規労働運動の前進などが問われる。選挙戦だけでなく、社会的基礎からの前進が必要だ。
(東京O通信員)