東アジア軍拡競争・9条改憲を加速する自民党選挙公約
  大軍拡「GDP比2%」断固阻止


 現在の総選挙は、自公政権の継続なのか政権交代なのか、が最大の争点である。しかし、その政治の中味の論争としては、口当たりの良い再分配政策の競い合いのようになっており、一億人の有権者の意識としては、安全保障政策(軍事・外交政策)は大きな争点となっていない。
 その要因は、最大野党の立憲民主党が、自公と同じ「日米同盟基軸」路線に立っており、「健全な日米同盟」への修正を唱える程度であるので、対立軸が見えにくいこととなる。また日本共産党も含めて「尖閣」問題などなどで対中感情が広く悪化していること、日本だけでなく東アジア各国でミサイル開発をはじめ軍拡が広がり、与野党の多くが「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している」という見方を共有していること等が考えられる。
 中国を仮想敵とする陸上自衛隊大演習が、総選挙戦の最中に強行されている。この大演習にも示される、アメリカ一辺倒で「中国包囲」網づくりに加担・推進する自公政権の政策の是非、また、自民党が総選挙公約で「GDP比2%以上」として大軍拡を挑発的に掲げたことの是非、これらが総選挙の大きな争点となっていないことは非常に問題である。コロナ対策や、コロナ災害で傷んだ生活や営業を立て直す経済政策、これらの争点も勿論大事である。しかし、命を奪い、生活・人権を根底から破壊する最たるものが戦争であるのだから、戦争の危険にはコロナ感染以上に敏感であるべきだ。
 自民党の総選挙公約は正確に紹介すると、「NATO諸国の国防予算GDP比(2%以上)を念頭に防衛関係費の増額をめざす」である。
 NATO諸国の軍事費目標を念頭に入れるという立て方は、NATO条約と日米安保条約との違い、また日本には憲法9条があるという独自性をまったく無視するものである。米英・欧州諸国のNATO条約は、一加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなして共同対処するという、フルセットの集団的自衛権行使の条約である。日米安保条約は、米国が本土あるいは世界のどこかで攻撃されても日本に参戦義務はなく、日本領域が攻撃されたときのみ日米が共同対処するという片務的な集団的自衛権の条約である。
 であったと言うべきか。2015年の安保法制(戦争法)強行成立、その前年の集団的自衛権行使容認7・1閣議決定によって、日米安保が条約改正をしないまま、NATO条約に近づいてしまった。日本領域が攻撃されていなくても、米国がどこかで戦闘状態に入いれば、場合によっては日本も参戦できることになった。日本が「存立危機事態」や「周辺危機事態」に陥ったと内閣が認定すれば、自衛隊が米軍などと共に武力行使できるようになった。
 自民党の言う2%は、軍事費の額の問題だけではなく、戦争法による日米安保のNATO化、東アジア版NATO作りを意味するものである。
 額の問題としては、日本の2021年度予算の防衛関係費は過去最大で、5兆3422億円。今年の実質GDP(国内総生産)は5400兆ぐらいと見込まれているので、1%すれすれとなる。
 日本の軍事費は、平和憲法と自衛隊の矛盾を激化させないという、かっての自民党の意図から、三木内閣時にGNP比1%内が目安として掲げられた。経済成長にも助けられ、この目安が公然と破棄されたことはない。近年では、民主党政権時に軍事費は若干削減された(それでもリーマン恐慌や大震災によってGDPが縮小し1%すれすれになった年もある)。しかし、12年末の第二次安倍政権成立によって13年以降増額となり、今年度で9年連続の軍拡となる。
 より問題なのは、軍事費の使途である。自民党の公約では、「敵基地攻撃能力」の文言は避けているが、「相手領域内でミサイルを阻止する能力の保有」を掲げている。ミサイル迎撃や離島防衛を名目としつつ、敵基地攻撃に転用可能な兵器の調達・開発がすすめられている。
 今年度では、「12式地対艦誘導弾」の射程を延ばす開発費に335億円が付いた。石垣島や宮古島で整備を強行しつつある陸自ミサイル部隊に、この改良型を配備すれば、台湾有事ではどうなるか。中国艦船の「第一列島線」内への封じ込めだけではなく、長射程巡航ミサイルで、台湾周囲の中国艦船を直接攻撃できるようになるだろう。当然、中国の中距離ミサイル1500発で反撃される。沖縄・琉球弧の再びの戦場化を絶対に許してはならない。中台関係に介入する日米の帝国主義戦争を阻止しなければならない。
 また、日米共同作戦で自衛隊が「盾」から「矛」に変わりつつあることを端的に示すものは、昨年度予算から爆買が始まったステルス戦闘機F35AおよびBである。元来ヘリコプター搭載の空母型護衛艦である「いずも」などに、垂直離発着機のF35Bを配備しようとしている。対潜ヘリを飛ばして米軍に攻撃目標情報を与えるという海上自衛隊の役割を削ってでも、自衛隊じしんが攻撃機をもつということである。
 10月3日、米軍のF35Bが「いずも」に離発着する訓練が行なわれた。海自がその動画を公開しているが、F35Bは飛行機という概念をくつがえす怪物である。
 オーストラリアが9月、米英豪の新しい安保協力の枠組みに参加し、これに伴ってフランスとの潜水艦建造契約を破棄し、米英から原子力潜水艦建造の技術供与を受けることにした。豪は南太平洋非核地帯条約の加盟国であるにもかかわらず、対中国を理由に原潜保有に走った。日本は、かって原子力船「むつ」が頓挫した経緯があるが、これで原潜保有の策動を強めるだろう。
 このままでは来年度予算で、日本のGDP比1%が破棄され、東アジア全体のさらなる軍拡競争の号砲となってしまう。この危機を、軍拡反対に国民の目を向けさせ、背景にある日本の外交路線を広く問う好機に変えていく必要がある。(W)


南西諸島での大軍事演習に反対!10・24行動
 沖縄・韓国・台湾は「捨て石」に

 10月24日、午後1時半から都内の文京シビックセンターにおいて、「南西諸島での大軍事演習に反対する!10・24集会」が開催され、またその後防衛省デモが行われた。呼びかけは、「大軍拡と基地強化にNO!アクション2021」および、「戦争・治安・改憲NO!総行動」(破防法・組対法反対共同行動や反戦実行委などが参加)。
 集会は、明治大学特任教授の纐纈厚(こうけつ・あつし)さんを講師にお呼びして、70名の参加により開催された。
 冒頭に司会の方が、9月~11月の今現在、陸上自衛隊10万の大演習が台湾有事を想定し、全国の部隊・食料物資を九州・南西諸島へと集中する機動演習として行われていること、これに連動して海・空自衛隊、米軍も展開し、民間のヘリなども動員されていることを指摘し、そのうえで纐纈さんの講演「中国脅威論を口実とした南西諸島軍拡のねらい」に入った。
 纐纈さんは、軍拡を目的とした「台湾有事」への過剰な危機感の流布にのせられないよう注意を促しつつ、昨年末の「第5次アーミテージ・ナイ報告」に言及し、アメリカの東アジアにおける軍事戦略の転換について語った。
 そのポイントはアメリカ「槍」-日本「盾」としてきた従来の役割分担を転換し、自衛隊に「槍」の役割を担わせることだ。それは米軍と韓国軍の関係においても言えると。そして韓国、南西諸島(琉球弧)、台湾を「防衛ラインの外側」の戦場と位置づけ、最前線任務を自衛隊と韓国軍に負わせ、米軍を戦略的後方から機動的に投入する構想のようだ。だがそれはアメリカが世界覇権を維持するために、また日本が地域覇権国家として登場するために、韓国、琉球弧、台湾の民衆を「捨て石」にするものであり、許してはならないと。
 問われている課題の深刻さと運動の現実とのギャップを前に、深く考えさせる提起であった。
 その後連帯アピールが、各地の反基地、大軍拡反対、治安弾圧反対などの諸運動からあり、韓国サンケン争議支援に対する弾圧で獄中にある尾澤孝司さんからのアピールも読み上げられ、成功裏に終了していった。
 午後6時からは、市ヶ谷の外濠公園に70名が集まり、防衛省に向けてデモ。警察の嫌がらせをはね返して、陸自大演習の中止を求める申し入れを貫徹した。(東京M通信員)


10月「19の日」行動、国会前600人
  総選挙勝利・政権交代へ

 衆院議員選挙が公示された10月19日、71回めの「19の日」行動が各地で行なわれた。
 東京では国会前で、「自公政権交代!政治を変えよう!総選挙勝利!10・19国会議員会館前行動」として、文字通り総選挙必勝の決意に貫かれた行動が行なわれた。雨模様の中、600名の労働者・市民が結集し、安倍・菅政権に続く岸田自公政権に鉄槌を下すべく断固とした集会となった。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、安倍9条改憲NO!全国市民アクション。
 衆院選は、289の小選挙区のうち4分の3に当たる217選挙区で、自公に対する立憲民主・共産・国民民主・社民の4野党一本化候補が立てられ、また、この4党とれいわ新選組を含めた一本化は213選挙区で実現した。
 自公政権打倒の絶好のチャンスが到来した。仮に今選挙で政権交代が成らずとも、議席を大幅に減らした自公政権は動揺過程に入っていく。自公政権の崩壊は、そう遠いものではない。
 集会は、憲法共同センターの小田川義和さんの主催者挨拶で開始。「6年前の10月19日、危機感の中で『19の日』行動が開始された。戦争勢力の妨害もあったが、違憲の戦争法廃止を求めて闘ってきた。今や、4党合意(立民・共産・社民・れいわと市民連合との9・8合意)のもと213選挙区で統一候補を実現し、今日選挙戦が始まった。市民と野党の協力で歴史を変える!」と表明した。
 政党アピールでは、日本共産党・伊藤岳、社民党・福島瑞穂(メッセージ)の両参院議員が発言。また立憲民主党代表の枝野幸男衆院議員が、「戦争法強行採決から6年、『19の日』行動が野党協力のテコとなった。2百を超える選挙区で自公との対決を実現し、自らの手で政治を変える闘いを創出した。政権獲得に向けてがんばる!」との熱いメッセージを寄せた。
 市民からの発言はまず、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん。沖縄県南部の遺骨土砂の埋め立て不使用を求める意見書が、全国109自治体で可決されていることが報告された。さらに衆院選にあたっては、「この土砂問題に各候補者がどう対処するか、選挙期間中に遺族および有権者へSNS・演説・チラシで態度表明することを求める公開質問状を準備している。ぜひ態度表明してほしい。沖縄を再び戦場にしないために、土砂問題にストップをかけるのは重要だ」と述べた。
 イラストレターの大島史子さんは、「家父長制の色濃く残る日本社会で、女性への性暴力事件が度々起こっている。安倍首相は性暴力事件をあいまいにし、加害者をかばいだてした。国を挙げて対策すべきなのに、国を挙げて女性差別に加担している。こんな国でいいのか」と、性差別社会を告発した。
 弁護士の宮子あずささん(東京新聞にコラム連載)は、「大震災など打ち続く災害に市民は不安にとらわれ、判断に自信を失って、オレについて来れば大丈夫という人になびいていく時勢で、そこを自公にうまくやられた。しかし、コロナは主体的な判断、人権尊重、適切な医療の大切さを鮮明にした。政治に目を向け、慎重に判断して、今度はやりかえそう」と訴えた。
 最後に、戦争をさせない千人委の勝島一博さんが、「立憲主義を確立するために、職場・地域で全力で闘い、10・31に勝利しよう!」と締めつつ、以下を行動提起した。
11月3日、11・3憲法大集会、国会正門前・午後2時。
 12日、ウィメンズアクション、有楽町イトシア前・午後6時。
 18日、新宿駅西口街宣・午後6時。
 19日、第72回「19の日」行動、衆参議員会館前・午後6時半。
 労働者共産党は昨秋の8回大会を経て、立民・共産など「第二極」勢力との的確な共闘・批判の関係をつくり、自公政権打倒の闘いをつうじて、労働者民衆による「第三極」勢力を登場させる闘いを開始した。
 まずは政権交代を実現させる。そして、沖縄・韓国民衆との連帯、非正規労働運動の前進など闘いを拡大して、ポストコロナの時代を拓く新しい政治勢力の形成へと進んでいこう。(記十月二十日、東京O通信員)