東電刑事裁判・控訴審11・2で決定
  現場検証迫る署名推進を

 東京電力刑事裁判の控訴審・第一回公判が11月2日12時30分、東京高裁104号法廷で開廷されることが決定した。東電旧経営陣の、2011年福島第一原発事故での業務上過失致死傷罪を問う裁判である。
 勝俣恒久東電元会長ら旧経営陣3被告の弁護側は、「現場検証は不要」、「新たな証人尋問不要」、「推本の長期評価には、停止を基礎づける信頼性はない」などと発言し、19年9・19の一審東京地裁・永渕健一裁判長の無罪判決=忖度判決を守り抜き、逃げ切りを企てている。(推本=文科省の地震津波研究推進本部。推本の02年長期評価に基づき、東電の担当者は08年に15・7mの津波予測を出した)。
 公判が1回で終了してしまう可能性もある。第一回めで新たな証拠調べの必要が確認されるのか否かが、裁判の帰趨を決定するといっても過言ではない。
 したがって、「東電元会長らの強制起訴事件『福島原発刑事裁判』で東京高裁の裁判官に現場検証を求める署名」を強力に推進すること、そして11・2には大結集で高裁を包囲し、現場検証と証人採用を強く迫ることが求められている。
 大津波が襲えば一たまりもない岩盤を掘り下げたすり鉢状の地盤に、福島第一原発は設置されている。双葉病院とドーヴィル双葉、請戸の浜など現地の惨状も検証し、裁判官が自らの感覚で原発を動かす責任の重さ、役員の責任や義務を実感する必要がある。現場検証は、東電に責任をとらせる闘いの突破口になる。
 7月6日の東電株主代表訴訟では、(刑事裁判の被告でもある)清水正孝元社長、武藤元副社長ら4被告の尋問が東京地裁で行なわれ、被告は、大津波の危険性を認識していなかったなどと発言し、事故の責任を否定した。
 09年2月の清水社長(事故当時)出席の「御前会議」では、14m級の津波への言及があったことについても、「記憶にない」「知らない」などと発言し、御前会議は「意志決定の場ではない」とも主張して事実を否定、責任逃れに奔走している。
 「(事故)当時の社会通念の反映である法令上の規定は、絶対的安全性の確保まで求められていたわけではない」、また推本の長期評価に「予見可能性は認められない」、よって無罪とした東京地裁デタラメ判決の「論理」を覆すことも絶対に必要である。東電に事故の責任を取らせ、事故の真相を問うことは、脱原発、全原発廃炉の闘いにとって重要・不可欠の闘いになる。必ずや現場検証を実行させ、刑事裁判に勝利しよう。
 東電の無責任で杜撰な対応は、福島原発事故に限ったものではない。新潟・柏崎刈羽原発でも不祥事が相次いでいる。
 18年には、原発敷地内への侵入を監視し安全を守る侵入検知装置の故障が、複数箇所で発生。すぐには正常復帰できず、長期にわたって放置する不祥事が発生した。そして20年3月から21年2月には、侵入検知装置が16ヵ所で故障。うち10ヵ所は、代わりの対応も不十分で、侵入を検知できない状態が長期間続いていた。
 さらに20年9月20日には、柏崎刈羽原発の中央制御室に東電社員が他人のIDカードで不正入室、翌日東電は原子力規制庁に報告したものの公表せず、隠し続けた。報道で明るみに出て公表したのは21年1月23日。事件を隠して、再稼働のための審査を通そうとした疑いが浮上している。
 原子力規制委員会は、柏崎刈羽原発のこれら核物質防護不備問題で東電に対し、核燃料の原子炉装填など「核燃料の移動を禁じる是正措置命令」を出した。それは、運転禁止命令に準ずる処分で、4月7日処分が事実上確定した。
 しかし東電は、21年度中の再稼働を断念したものの、22年度以降の柏崎刈羽再稼働を目指し、書き直した東電経営再建計画を7月21日に公表した。経営再建計画は、柏崎刈羽7号機を22年度以降に、6号機を24年度以降に再稼働することを収支の前提とするものである。運転する資格があるのかと国から問われている状態での、東電の無責任な居直りである。
 しかし、その国は菅政権のもとで、脱炭素化を口実としての原発推進政策である。6月18日閣議決定の経済財政運営指針(骨太方針)では、「原子力については可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進める」としている。7月21日に公表された国の「エネルギー基本計画」素案では、2030年の電源構成を「原発比率20~22%」とし、前計画と同じ%を掲げた。これでは、可能な限り依存度低減どころか、大々的な再稼働・新増設路線となる。
 いっぽう新潟県内でも、再稼働に前のめりになったと見られる花角英世知事のもとで、県の有識者会議「原発の安全管理に関する技術委員会」の規模の縮小が画策されている。
 会は、02年に発覚した東電の原子炉データ改ざん・隠蔽事件をきっかけに設立された。縮小は14人のうち、柏崎刈羽原発再稼働に慎重な立石雅昭新潟大名誉教授や、福島原発事故は津波襲来前の地震動によると主張する鈴木元衛研究者ら4人を70歳超ルールで、そして他3人を解任し、7名に縮小する。県は独自に、再稼働の前提として福島事故の原因究明を東電に求めてきたが、これを曖昧化し再稼働容認へ転ずることがねらいだ。
 福島事故を引き起こした東電が、菅政権の方針、新潟県の対応に助けられて、事故後初めて自社の原発である柏崎刈羽の再稼働を強行せんとしている。
 東電は、責任逃れとカネのためなら、事実さえも隠蔽する不誠実極まりない企業だ。
 科学ジャーナリストの添田孝史さんは、福島原発事故に関連して、08年に東電が東北電力の貞観津波想定を書き換えさせた事実を指摘している。
 貞観地震タイプの再来を想定すれば、福島第一原発は炉心溶融に陥ることが東電の計算から予測されていた。貞観地震の最新の知見を取り入れた東北電力報告書が公表されれば、東電も同様の対策を迫られ多額の資金が必要になる。それを避けようと東電が工作した事実が、検察に提出されたメールから明らかになっている。また、日本原電・東海第二原発の津波予測についても、下方修正させようと東電は奔走したようである。
 事実と科学的知見に基づかず、隠蔽さえする東電に原発を運転する資格はない。
 無念の死を遂げた被害者と遺族、被災者の思いを受け止め、全力で闘って東電に責任をとらせよう。そして全原発廃炉に向けて前進しよう。まずは、控訴審で勝利だ!(O)


原発大復活の「エネルギー基本計画」案
  許すな10月閣議決定

 7月21日、経済産業省は新たな「エネルギー基本計画」の素案を公表した。
 素案では、温暖化ガス排出量を2030年度に13年度比46%削減するという国際公約をふまえ、再生可能エネルギーの30年度発電比率目標を36~38%に設定、19年度実績のおよそ2倍とした。そして原子力発電は、脱炭素化を口実に、現行計画目標の20~22%を維持などとした。合わせて59%を脱炭素電源で発電するとの計画を提示した。
 国際エネルギー機関(IEA)が集計した、昨年の日本国内発電実績速報では原発は4・3%である。素案での原発20~22%維持には、現在までに新規制基準で再稼働にこぎつけた10基と、再稼働申請をした原発との合計27基を全て運転することが前提になる。さらに、原則40年運転を一度だけ60年まで延長可能とする延長規定を複数の原発で適用し、また小型モジュール炉など次世代炉とされるものの研究開発推進も必要となる。しかも、稼働率を、福島第一原発事故以前の平均を上回る8割に高めなければならない。
 支持率低迷の菅政権は、秋の総選挙への影響を避けるため、計画案が意味するこれらの事実を隠している。しかし素案は、福島原発事故に続く大惨事を引き起こしかねない無謀な計画で、原発による20%もの供給は不可能と言われている。石炭火力比率を下げれば原発は維持という、無責任な数値合わせである。
 6月23日、関西電力は、運転開始から44年の美浜原発3号機の再稼働を強行した。「原則40年、最長20年」のルールができて以降、最初の40年超え再稼働となった。これを許せば、40年超え、あるいは間もなく超える原発が次々に再稼働されてしまう。
 原子炉容器は運転に伴う中性子の照射を受け、徐々に材料の粘り強さ(靭性)を失っていく。原子炉使用開始後の年月とともに次第に脆化。既設陸上原子炉の多くは、使用期間中に脆性破壊に対して危険な状態になると言われる。エネ基本計画は危険な冒険以外の何ものでもない。
 経産省は7月12日、原発推進の布石として2030年時点での発電コストの新たな試算を有識者会議で披露した。
 それによると事業系の太陽光発電は8円代前半から11円代後半で、原発は11円代後半からと発表し、太陽光よりやや高いが同等とされた。しかし、これは真っ赤な嘘で、原発事故の賠償や生活保障を誠実に実施し、廃炉を完遂するならば、原発が最高のコストになることは明確である。ちなみに陸上風力は9円代後半から17円代前半、LNG火力は10円代後半から14円代前半とされている。
 福島原発事故では、いまだに2万2千人以上の避難者が存在する。それを考慮に入れない発電コスト論では、同じ過ちを繰り返すことになる。
 この第6次エネルギー基本計画案は、原発再稼働の活性化を生む。今求められるのは、再生可能エネルギーのより大きな拡大とそのための諸条件の整備、そして全原発の廃炉である。
 エネ基本計画案の10月閣議決定を許さない闘いを。闘争こそが力だ。(O)


官邸前金曜行動が開始
  毎月第3金曜日、原発ゼロの声を上げ続けよう!

 新しい形で、反原発・官邸前金曜行動が始まっている。「毎月第3金曜日・声を上げつづけよう!」と呼びかけられている。
 6月18日、第1回「原発いらない金曜行動」が首相官邸前で行なわれ、450名が参加。鎌田慧さん(ルポライター)が開会挨拶、柳田真さん(たんぽぽ舎共同代表)が開催に至る経過報告を行ない、多くの発言の後、下谷保さん(パルシステム元理事長)が閉会挨拶した。「放射能汚染水を海へ流すな!」「老朽原発再稼働するな!」「東海第二原発うごかすな!」などがコールされた。7月16日には、第2回めが290名で行なわれた。
 主催は、「原発いらない金曜行動」実行委員会。
 この行動は月1回・第3金曜であるから、次は8月20日、9月17日と続く。午後6時半より。首相官邸前(地下鉄丸の内線・千代田線「国会議事堂前」駅など下車)。
 今年3月で、首都圏反原発連合によって9年間続けられてきた毎週金曜・官邸前行動が、活動休止となった。しかし、首相官邸・国会に対する反原発の継続的な行動は必要だという声は広くあり、「たんぽぽ舎」や「経産省前テントひろば」など市民団体が主導して、「原発いらない金曜行動」実行委が立ち上げられた。
 振り返ると福島原発事故後、2012年に民主党・野田政権が初めての原発再稼働を強行せんとした時期には、再稼働反対・金曜行動が大きな結集軸の一つとなった。「6・29首相官邸前20万人」というのも金曜行動であった。
 その後、超党派的な結集の場は変化していったが、各電力会社などへの行動とは別に、政府に直接、原発ゼロを迫る共同の場として、新たな金曜行動は活きてくるのではなかろうか。(W)