5月「19の日」行動
  修正しても改憲手続き法
    在日ミャンマー人が訴え「民主政府支持を」

 5月19日、東京では66回めとなる「19の日」行動が国会衆参議員会館前で開催され、三回目のコロナ非常事態宣言下という厳しい状況のもとで、約400名が結集した。
 前日の5月18日、菅政権と自公は入管難民法改正案の今国会成立を断念した。コロナ失政で政権支持率を低下させ、政権運営に陰りがはっきりしてきたのである。菅政権支持率は4月調査から9ポイント下落し、31%(5・22毎日新聞調査)に落ち込んでいる。
 この局面で、5月の「19の日」行動は、「いのちとくらしと人権をまもれ!オリンピックよりもコロナ対策を!改憲手続法の採択を強行するな!5・19国会議員会館前行動」と銘うって行なわれた。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、安倍9条改憲NO!全国市民アクション。
 最初に、総がかり行動実の菱山南帆子さんが主催者挨拶。「闘いによって入管難民法改正案の今国会成立を断念させた。だが我々は、ウィシュマさんの命と夢を守れなかった。平和を守る闘いは命を守る闘い。過去最大の軍事予算もコロナ対策にあてるべきだ。菅を倒す。声を上げれば変えられる」と発言した。
 国会野党からは、日本共産党・山添拓、社民党・福島瑞穂、沖縄の風・高良鉄美、立憲民主党・杉尾秀哉の各参院議員が発言。
 立憲の杉尾氏は、最低投票率規定の欠如や広告規制の不徹底など欠陥だらけの国民投票法改定案が衆院を通過したことに触れて、こう発言。「4月25日、広島、長野、北海道の国政3補選で勝利を収めた。菅は追いつめられている。国民投票法改定案での我が党の修正案は、改憲への道を付けるものではない。広告規制の徹底化などをクリアしなければ、改憲はできない。」と修正について釈明した。
 しかし、付則に見直し条項をいれても、見直される保証はない。自民改憲4項目の討議入りを阻止する担保にもならない。この改定案が成立すれば、自公が改憲発議・国民投票へと突き進む危険性は高く、立民がその段取に、手を貸したことは明らかである。
 連帯アピールでは、在日ビルマ市民労働組合のミンスイ執行委員長が発言。「ミャンマーでは国軍によるクーデターが起きたが、日本政府は黙り続けている。米国のように強く非難する声明を出してほしい。私たちの質問には、一応慎重に見ているとしか答えない。平和を目指すとすれば、ミャンマーの民主政府を支援するべきだ」と日本政府の対応を批判した。(国軍に抵抗するミャンマーの連邦議員・民衆と少数民族は4月16日、国家統一政府NUGの樹立を宣言した)。
 続いて、平和をつくり出す宗教者ネットの江上彰さん。「沖縄戦の遺骨混りの土砂を、辺野古の埋め立てに使おうとしている。これは人間のすることか。戦争で殺され、採掘業者に殺され、辺野古でと3回も殺されねばならないのか。3月に県庁前でハンストを行なった具志堅隆松さんは再び、6・23慰霊の日に向けて6月19日からハンストを闘う。連帯を!」と呼びかけた。(玉城沖縄県知事は4月16日、遺骨に配慮するよう採掘業者に措置命令を出したが、採掘禁止は出せなかった)。
 また、政府の辺野古工事設計変更申請に対して、玉城知事が「不承認」を出した翌日からの連携行動「辺野古ブルーアクション」への、各地からの結集が呼びかけられた。
 最後に、戦争をさせない千人委の竹内広人さんが、「国会では、問題法案が次々と審議されている。その一つ、重要土地調査規制法案は、全ての人々とりわけ沖縄県民が丸ごと、調査と監視の対象となる。基地反対闘争などを規制する法案だ。今国会で必ず阻止を!」と訴えつつ、以下を行動提起。
 5月20日、新宿西口情宣。
 6月7日、総がかり行動全国交流集会(ウェブ会議)、午後6時。
 6月11日、ウィメンズアクション(午後6時、イトシア前)。
 6月19日、「19の日」行動(議員会館前、午後2時)。
 参院で改憲国民投票法改定案を阻止し、菅政権を打倒しよう。(東京O通信員)


入管法頓挫を共生社会のスタートに
  重要土地規制法案阻止し、辺野古ブルーアクションへ
 
 会期末が6月16日に迫った今国会では、デジタル改革関連法が4月6日に衆院を通過し(維新、国民民主が賛成、法案一部で立憲は反対)、参院で5月12日に成立。デジタル庁を9月新設、各自治体の個人情報を一元支配し、マイナンバーを事実上強制し、個人情報ビッグデータを国家・資本が利活用するためのものである。
 3年間動かせなかった自公の国民投票法改定案は、立民との修正合意によって、5月6日に衆院憲法審査会で採択され11日衆院を通過、参院で成立を狙う。
 その修正は、改定案に以下の付則を盛り込むもの。「国は、施行後3年を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」。「国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限」、「国民投票運動等の資金に係る規制」など。
 米軍・自衛隊の基地や原発などの周囲1キロを「注視区域」として、土地の売買と用途を規制し、土地所有者に勧告・命令を出せるとするのが、重要土地規制法案である。軍事基地周囲や原発立地点で、監視テントなどの妨害に使われる危険性が高い。5月28日、衆院内閣委員会で強行採決。
 また、土地登記義務化法が4月に成立した。これは、所有者不明土地対策を名目として行なわれてきた法整備の最後のものであるが、国が未登記の私有地を一方的に買収できるようになる。三里塚などの共有地も相続時に未登記となれば没収できる。国家の「公共性」を国民の人権・財産権よりも優先させるという点では、重要土地規制法案と同じである。
 他方、終盤国会の焦点であった出入国管理難民認定法の改定案は、衆院段階の5月18日に菅政権が成立断念を表明した。衆院解散があれば一旦廃案となる。批判世論が一つの事件で急速にひろがり、政治判断で成立断念に政府が追いやられたという点では、昨年5月に検察庁法改定案が頓挫した時に似ている。
 この入管難民法改定案は、難民認定申請中は送還が停止される規定の適用を2回までとし、3回目以降の申請は強制退去の対象にすると規定している。さらに退去強制拒否には刑事罰を新設する。これでは収容施設と刑務所の往復になりかねない。異常な長期収容を解決することにはならない。法案の底流には、人権軽視・外国人差別がある。すぐに退去できない人には、帰国した後の身に危険がある、日本ですでに家族がいる、故国に多額の借金を抱えたまま帰れないなどの理由がある。それらを考慮しない強制退去処分が、日本では以前から続いている。
 スリランカ女性のウィシュマ・サンダマリさんは、名古屋出入国管理局の施設収容中の3月6日、仮放免との医師意見も無視した当局の不当な処遇によって、死に追いやられた。これへの労働者市民の抗議行動が拡大し、国会では、死亡事故の真相解明のため映像開示を求めて野党が反発した。法案の採決を強行すれば批判の運動と世論がさらに拡大し、総選挙にも影響する、これを菅政権は恐れた。
 法案は止められたが、現状が改善されたわけではない。問題だらけの実習生制度、こんどは特定技能資格など、小手先の労働力利用策が在留資格を失う大きな背景となっている。コロナ後には来日労働者がまた大勢やってくるのに、何も改善しないのか。
 また、日本は難民認定が極度に少ない。19年度では難民申請1万375人に対して、認定はわずか44人。これまでの申請者は、ベトナム人とビルマ人が多くを占めるという。多くの在日ミャンマー人が国軍反対運動に参加しており、クーデター権力が退陣しないかぎり、これからは多くの人が難民化してしまう。
 改悪案の頓挫で、日本の難民政策・外国人労働者政策の抜本的改善、このスタートに立ったといえる。(A)